黒歴史家族

枕蔵

秘密の小部屋(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
黒川ゆま子「お父さん、いってらっしゃい。今日、飲み会の日だっけ?」
黒川マナブ「いや。今日は早く帰るよ。たけしも、はづきも遅刻するなよ」
黒川たけし「大丈夫だよ。いってらっしゃい!」
黒川はづき「気をつけてね!」
黒川ゆま子「私も今日は卵が特売の日だから、午前中には出かけるわ!さあ、あなたたち、早く食器を下げなさい」
黒川たけし「うん。はづき、食器はやっておくから、部屋からランドセル持ってきな」
黒川はづき「ありがとう、お兄ちゃん!」
黒川ゆま子「今日はシチューよ!デザートに、プリンも作るわね。楽しみにしててね。いってらっしゃい~」

〇建物の裏手
D「ケッ」
D「相変わらず、つまんねー家族だな」
D「盗聴器をつけられてるとも知らず、平和ボケした会話毎日繰り広げやがって」
D「下調べは完璧だ。卵の特売は10時から。長い行列になるから帰りは遅い。鍵は、玄関マットの下に隠していている。防犯対策はゼロ」
D「こういう平凡な家に、短時間で泥棒するのが一番安全なんだ。お宝を狙うから足がつくんだ」
D「引出しのへそくりやお年玉の残りを、狙うのが俺流だ」
D「さ、皆出ていった。いっちょやってやりますか」

〇おしゃれなリビングダイニング
D「ふーん。卵の特売に飛びつくにしては、結構いい暮らししてるじゃねえか。これは箪笥の中にも期待できそうだ」
D「まずは、家の中の引出しを全部調べよう。模型の机の引出しさえも、容赦しない男だ、俺は」
  シャッ  ガタッ  ザザー
  
  ガララ  ギィー  シャーー
  
  ザッ  ガクク  キィ──
D「あれ?  金がない!  どの引き出しにも、小銭さえない」
D「おかしいな。めっちゃ時間ロスしたけど、まあ引き出しだけが隠し場所じゃないからな」
D「次は、額縁の裏や小物入やバッグの中を探そう」
  ガサガサ  ガシャ カンカン 
  
  カサー モゾモゾ カサカサ 
  
  カタカタ ガタンガタン  カーン
D「何なんだよ! どこにも金目のものがないぞ!」
D「これはあれだな、隠し部屋に貴重なものを全部閉じ込めてるパターンだな」
D「脱衣所の窓、あれは、窓じゃなく扉だな。 鍵は、針金でなんとかなりそうだ。よし、決めるぞ」

〇小さい倉庫
D「ビーンゴ!」
D「手間取らせやがって。 さあ、お宝ちゃん、逢いたかったぜ」
  ガサコソソ──
  
  
  何だこれは!
D「剣いらねー!剣たくさん出てきた。 金棒もある!セーラー服に、ドレス、着物もある!お面に、ピンクのルーズソックスも!」
D「いったいなんなんだよ!ここは仮装パーティーの控室か!本やノートや巻物も積まれてる!ガラクタばかりだ、最悪だ!」
D「なんだ? 物音がするぞ。母親が帰ってきたか?」
黒川たけし「俺だよ、泥棒さん」
D「お前、学校じゃねえのか!」
黒川たけし「忘れ物を取りにきたんだ。        この隠し部屋によく気がついたね。 ここだけは見られたくなかった」
D「こんなガラクタをか? ふざけるな!」
黒川たけし「ここにあるのは、全部僕たち黒川家の黒歴史なんだよ」
黒川たけし「妹のはづきは、昔、自分を勇者だと思いこんでいて、あらゆる剣をおねだりして、学校にも持ち込んでいたんだ」
D「こどもなら当たり前だよ!かわいいもんじゃねえか」
黒川たけし「そうだよね。ありがとう。 母は魔法陣の中に詩を書くドレスの上に着物を羽織る文筆家、父は本当の鬼の鬼ギャルだった」
D「・・・・・・」
黒川たけし「黙るなよ、普通だって、言ってくれよ! 僕の風をあやつるエアーボーカリストの一人バンドマン不老不死な人設定だって、別に」
黒川たけし「恥ずかしくないって言ってくれよ!」
D「俺、帰るわ こんな家で盗る物ないわ」
黒川たけし「黒川家の秘密を知って無事に帰られると思うなよ ここに、黒歴史を詰め込みすぎた結果を見せよう」
黒川たけし「いでよ! 黒魔人!」
黒魔人「来たぞ」
D「なんなんだよ!お前は!」
黒川たけし「魔人だよ。ここにある黒歴史が混ざりに混ざり合って、黒魔術になり、偶然に召喚されたんだ」
黒川たけし「黒魔人よ、この泥棒が二度と悪さしないように、こらしめてやれ」
黒魔人「了解」

〇おしゃれなリビングダイニング
黒川ゆま子「あれ? どうして、たけしが家にいるの?」
黒川たけし「色々あって・・・・・・」
黒川ゆま子「部屋も散らかってるし・・・・・・もしかして、母さん探偵の出番かしら!?」
黒川たけし「母さん探偵? また黒歴史が増えていくよ・・・・・・」
黒川ゆま子「な、なによ──!! これは黒歴史にはならないわよ! おじいちゃんのそれは、黒歴史っぽいけど」
黒魔人「お、俺がか? まさか!  プロジェクトマッピングも駆使して泥棒も退治した魔人だよ? 黒歴史になるはずがないじゃないか!!」
黒川たけし「そうだね! 黒歴史も役立つんだよ! ハッハッハ」
黒魔人「お前が一番黒歴史を作ってるよ! 最近ラジオネームでレストランの予約して、去り際に花びらまいていくらしいじゃないか」
黒川たけし「かっこいいだろ!」
  今日も黒川家は黒歴史で事件を解決に導くために、
  黒歴史を作り続けてゆくのだった

コメント

  • 家族全体で、壮絶な黒歴史の山ですね。しかも何やら進行形な様子で。。。業の深い4人家族だなーと思っていたら、、、おじいちゃんww

  • 泥棒さん、とんだ災難でしたね! 外から見ていて、一見なんの変哲もないような家族もこのようなケースがあるということ、肝に命じて次なる活動に役立ててほしいですね。

  • 家族の黒歴史が混ざり合って黒魔術になって黒魔人を召喚するという設定に笑っていたらまさかのおじいちゃん・・・。あの小部屋は黒川家の日々更新される黒歴史であっという間に埋まってしまいそうですね。

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