怪獣のお母さん

情無合成獣スフィアマザコンザウルス

読切(脚本)

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怪獣のお母さん
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〇黒
  ・・・ある日、世界中に”怪獣”が溢れた。
  海から、陸から、宇宙から
  そして忘れ去られた神話の時代から・・・
  人類は霊長の座から転がり落ち、滅びに抗い戦う日々が続いている。
  そんな時代。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・まあ」
七瀬ダン「僕は滅んで当然だと思うけどね」
七瀬ダン「人間なんか」

〇廃墟の倉庫
「見つけたぞ・・・ウィオーナ」
七瀬ダン「あれが今回のターゲットだ。肉食性の中型怪獣・カブラサウルス。身長5m、体重2t」
ウィオーナ「・・・・・・」
七瀬ダン「今まで人間の子供を狙って食べてた変態野郎、死んで当然のゲス怪獣さ」
ウィオーナ「・・・・・・!!」
七瀬ダン「そして・・・」
七瀬ダン「その分脂が乗っておいしいヤツだ」
ウィオーナ「・・・・・・♪」
七瀬ダン「手筈通り、まずは俺がスキを作る。後は・・・頼むよ」
ウィオーナ「!!」
七瀬ダン「よし、それじゃ・・・」
七瀬ダン「・・・・・・作戦開始だ!!」
カブラサウルス「!!!!」
七瀬ダン「喰らえ化け物!!!!!!」
七瀬ダン「食いついた・・・こっちだ!!」

〇廃倉庫
七瀬ダン「はあっ・・・はあっ・・・」
七瀬ダン「よし、ついてきてるな・・・」
七瀬ダン「・・・・・・ウィオーナ!!」
七瀬ダン「距離を取れウィオーナ!! 火炎放射で目を潰すんだ!!」
カブラサウルス「・・・・・・・・・」
七瀬ダン「・・・よし、これにて任務コンプリート」
ウィオーナ「・・・・・・♪」
七瀬ダン「頭は残しといてよ、討伐の証拠なんだから」
ウィオーナ「♪」
七瀬ダン「・・・・・・ふふっ」

〇寂れたドライブイン
村人「ありがとうございます!!おかげで助かりました!!」
村人「これで、子供達が襲われる心配も無くなります!!」
七瀬ダン「いえいえ、こちらこそ・・・」
村人「あの・・・それでなんですが」
村人「本当に対価はこれでいいんですか?もっと高価なものが・・・」
七瀬ダン「いえ、これで十分ですよ」
七瀬ダン「じゃあ、帰ろうかウィオーナ」
ウィオーナ「!!」
村人「・・・・・・・・・」
村人「・・・・・・怪獣使いの青年、か」

〇廃工場

〇荒れた倉庫
七瀬ダン「ただいまぁー」
七瀬ダン「やっぱり我が家は落ち着くねぇ」
ウィオーナ「♪」
七瀬ダン「さあて、今日は遠出した分豪勢にいこうか」
七瀬ダン「アルコールは飲むだけじゃない、料理にも使えるし・・・」
七瀬ダン「燃料にもなる」
七瀬ダン「お肉〜♪お肉〜♪ 怪獣のニク〜♪」
ウィオーナ「〜〜♪♪」

〇廃工場

〇荒れた倉庫
七瀬ダン「・・・まさか降ってきちゃうとはねぇ」
七瀬ダン「雨は嫌なんだよな・・・片頭痛になっちゃうから」
ウィオーナ「〜・・・」
七瀬ダン「・・・・・・・・・」
七瀬ダン「・・・・・・!!」
七瀬ダン(この嫌な感じ・・・また・・・!?)

〇血しぶき
七瀬ダン「・・・・・・ア」
幻聴「おいグズ、お前はなんでそんななんや!?」
七瀬ダン「あ・・・あ・・・」
幻聴「そうやってお父さんとお母さん苦しめて楽しんどるんやんね!?ほんま性悪やなお前!!」
七瀬ダン「ちが・・・ちが・・・う・・・」
幻聴「何がちゃうんじゃアホンダラが!!仕事もせずに怪獣遊びなんぞしよってからに!!」
幻聴「言っとくがな!?仕事言うんはサラリーマンや!!お前のやっとるんはただの単純作業じゃ!!」
幻聴「なんでそんなでき悪いんやお前!?ほんま、ほんま出来損ないやな!!」
幻聴「もう人間やめてお前の好きな怪獣にでもなったら!?人間以下やもんお前なあ!!」
七瀬ダン「あ・・・あう・・・ああ・・・ア・・・」
幻聴「なんやその態度は!!それが親にする顔か!?ああ!!!?」
七瀬ダン「あ・・・・ウア・・・・・・・」
幻聴「悪いんはお前やろがボケカスが!!何被害者面しとんじゃ!!ちゃんとせえ!!」
七瀬ダン「ひ・・・・・・あ・・・あ・・・」
「・・・・・・たす・・・・・・けて・・・」

〇荒れた倉庫
七瀬ダン「──────ッ!!!!」
七瀬ダン「・・・・・・また、俺・・・」
ウィオーナ「・・・・・・・・・ッ」
七瀬ダン「・・・あ・・・」
七瀬ダン「・・・・・・ウィオーナ・・・」
ウィオーナ「・・・・・・♪」
七瀬ダン「・・・・・・・・・ッ!!」
七瀬ダン「うわあああああん!!!!」
七瀬ダン「ウィオーナ!!ウィオーナあああ!!」
ウィオーナ「・・・・・・クルルッ、クルルッ・・・」
七瀬ダン「うぐっ・・・うええっ!!ウィオーナああ・・!!」

〇廃工場

〇荒れた倉庫
七瀬ダン「・・・・・・ねえ、覚えてる?」
ウィオーナ「・・・・・・クルルッ」
七瀬ダン「あの日も、こんな雨の日だったね・・・」

〇空
  ・・・・・・あの日俺は、あいつらからの虐待に耐えかねて家を飛び出した
  まああいつらが”出ていけ”なんて言ったから、それで溜まった感情が爆発したんだけどね
  そこで、俺はウィオーナに出会った
  ウィオーナは、ずぶ濡れでボロボロの俺を抱きしめて、温めてくれたね
  種族も違う俺を、抱きしめて、愛してくれた
  あの時も嬉しくて嬉しくて、
  わんわん泣いたっけ・・・
  ・・・あいつらが、俺を連れ戻しに来た時もウィオーナが守ってくれたっけ
  おかしいよな、人間の親は世間体を守るためだけに、サンドバッグにしていた子供を取り戻せるって思ってて・・・
  怪獣の親が、子供を守るために戦ってくれている・・・
  結局、あいつら諦めて帰っちゃうんだもんな。お笑いだよ
  ・・・怪獣ハンターで生計立てといて言うのも何だけどさ
  こんなモンが人間なら、人間なんて滅びて当然だと思うよ
  だってウィオーナの・・・怪獣のお母さんの方が、よっぽど優しいもん

〇荒れた倉庫
七瀬ダン「俺にとって・・・ウィオーナは全てだよ」
七瀬ダン「ウィオーナは俺の、お母さんで、お姉さんで、先生で、それでいて・・・」
七瀬ダン「・・・恋人だ」
ウィオーナ「・・・・・・ぎゃう♡」
七瀬ダン「・・・大好きだよ、ウィオーナ」
七瀬ダン「ウィオーナさえいてくれたら、俺は何も要らない」
ウィオーナ「・・・・・・ぎゃう」
七瀬ダン「・・・ずっと、ずっと側にいてね」

〇荒野
  ・・・・・・誰かが言った
  いずれ人類の時代が終わり、再び”彼ら”の時代がやってくると
  それは、一万二千年も待つ必要もないのかも知れない・・・
  だが・・・たとえ人類の時代が終わろうとも、構わないとさえ思える
  こんなに優しい”怪獣のお母さん”が地上に満ちるとしたら、きっと・・・
  ・・・人間の時代よりもずっと、すばらしいモノに違いないのだから

〇黒
ウィオーナ「・・・・・・・・・・・・」
ウィオーナ(・・・・・・私も、愛してますよ)
ウィオーナ(かわいいかわいい、私のぼうや・・・)

コメント

  • 同じ言語を話しても、ただ血が繋がっているというだけでも、心が通いあうには十分ではないということですね。人間関係が殺伐としているこの時代に、とてもメッセージ性の高いストーリーだと思いました。

  • 相棒のフィオーナとモンスター狩りをするファンタジーかと思いきや、後半は一転してシリアスな親子関係の話になり、最後のほうでタイトルの「怪獣のお母さん」の意味がわかってハッとしました。実の親よりも信頼できる愛の存在は子供にとって希望でもありますが切ないお話ですね。

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