笑う門には福来る

金色キセキ

神様のご褒美(脚本)

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〇ゆるやかな坂道
運木内我「はぁ~、なんでこんな事に」
  本日は日曜日。にもかかわらず俺は出社している。
  もちろん自分の意志じゃない。全ては上司に嫌われたせいだ。
  入社して間もない頃に、上司より先に帰ったのが不味かったらしい。
運木内我「こんな生活いつまで続くんだろう」
運木内我「ん? あれって・・・・・・」
ネコ「ニャーオ」
運木内我「あ、猫だ。可愛い」
ネコ「ニャーン♪」
  猫はご機嫌な様子で塀から飛ぶと、
  道路の方へ走って行ってしまった
運木内我「待て! そっちは──」
  言い終わった時には、もう既に遅かった
  大型のトラックがブレーキ音を響かせ、ネコに迫っている
運木内我「危ない!」
  内我はとっさにネコを突き飛ばす
  瞬間、体中に衝撃が走り、
  意識が途絶えた。

〇明るいリビング
運木内我「う・・・・・・ん」
運木内我(ここは家?)
運木内我(どうして家に?  俺は確かトラックに轢かれて・・・・・・)
因幡「目が覚めましたか、あっまだ寝ていていですよ。ゆっくりと休んで下さい」
運木内我(頭に柔らかい感触・・・・・・視界には可愛い顔。これって・・・・・・)
運木内我(膝枕・・・・・・だと)
運木内我(空想の産物だと思っていたけど・・・・・・楽園はここにあったんだ)
因幡「今までよく頑張りましたね。 いい子いい子♪」
運木内我((あっ・・・・・・頭を撫でられるの・・・・・・気持ちいい))
運木内我(凄く安心する。 まるでお母さんにしてもらってるみたいだ)
因幡「フフッ♪ 可愛らしい」
因幡「せっかく出来た夕飯が冷めてしまいますが・・・・・・」
因幡「そんなに気持ちいいなら、 もう少し撫でてあげましょう」
因幡「ナデナデ♪」
運木内我「♪」
  それからしばらく、
  内我は母性を感じる膝枕を堪能した

〇明るいリビング
因幡「あっ! 私とした事が忘れていました」
  女性は撫でていた手を止め、
  膝から内我を優しくどける
因幡「貴方のために夕飯を作ったんです。 美味しいので、ぜひ召し上がってください」
運木内我「本当に! 嬉しいなあ」
  その前に知らない女が家に居る事に突っ込むべきだが、
  この時の内我は、
  不思議と疑問を抱かなかった
因幡「さあどうぞ。 たーんと食べて下さい」
運木内我(なんかその場の勢いで快諾しちゃったけど・・・・・・)
運木内我(よく考えたら、知らない女の人が作ったご飯って、食べて大丈夫かな?)
運木内我(でもなんでか分からないけど、 この人は信用しても良い気がする)
運木内我(まあ、多分大丈夫でしょ)
運木内我「いただきます」
  内我は好物の肉じゃがを口に運ぶ
運木内我「──美味しい!」
  まるで母親を思わせるような、
  懐かしい味わいに、内我は舌鼓をうった
運木内我「ごちそうさまでした」
因幡「たくさん食べてくれましたね。そんなに美味しかったのですか?」
運木内我「うん、めちゃくちゃ美味しい。毎日こんな料理が食べれたら幸せだなあ」
因幡「ウフフ♪ ありがとうございます」
運木内我(懐かしいなあ。 人が作ってくれたご飯なんて、 何年ぶりだろう?)
運木内我(この人と話してると、 凄く癒される)
運木内我(でも、どうして俺に優しくしてくるんだろう?)
運木内我「不思議だな。君はどうしてこんなにも、俺を癒してくれるの?」
因幡「それはですね・・・・・・知っているからです」
因幡「貴方がいじめられながら、 毎日頑張っていたことを」
因幡「何より誰かのために、命がけで行動できる人だと言うことを」
運木内我(まるで現場を見ていたような口ぶりだな)
運木内我(トラックの事はともかく、会社の事なんてこの人は知らないはずだ)
運木内我(でも、何故か違和感がない。彼女なら知っていて当然かのように思える。まるで・・・・・・)
運木内我「神様みたいだな」
因幡「──!」
因幡「私のことよりも、貴方のやりたい事をやりましょう。何がしたいですか?」
運木内我「そうだなあ・・・・・・テレビが観たいかな。忙しすぎて一年くらい観てないし」
因幡「分かりました。では一緒にみましょうか」

〇明るいリビング
  テレビを付けると動物番組がやっていて、モルモットやウサギがポリポリと野菜を食べていた。
因幡「キャー可愛い!」
因幡「見て下さい内我さん! ウサギが映ってますよ!」
運木内我「本当だ、可愛い♪」
運木内我「俺、うさぎ好きなんだよね。 ご飯食べてる姿が可愛くて」
因幡「ですよね! 可愛いですよね!」
因幡「もう好きすぎて、人間の前では 因幡って名乗る事にしてます」
運木内我(きっと因幡の白兎の事だろうな)
  何で名前を知っているかとか、
  人間の前ではって何? とか、
  ツッコミどころはあるが、
  はしゃいでいる姿が可愛すぎて、
  内我は考える事を放棄した
運木内我「君にピッタリだ。俺に幸福を運んでくれた、まさに白兎だよ」
運木内我(しかも可愛いし)
因幡「そんな・・・・・・ウサギみたいに可愛いだなんて・・・・・・嬉しいです」
運木内我(あれ? 可愛いなんて言ったけ? もしかして・・・・・・心を読まれた?)
運木内我(まあ、俺って隠し事下手だからな)
運木内我(正直、褒めているのがバレるのは、 恥ずかしいけど)
運木内我(ま、可愛いからいいか)
因幡「さっきから可愛い、可愛いって・・・・・・」
因幡「貴方は本当に素直な良い子ですね」
因幡「ご褒美に、 貴方が一番よろこぶ事をしてあげましょう」
運木内我「喜ぶこと? そんなのいいよ。 もう十分してもらってるから」
因幡「遠慮しないで下さい。 良い人の子に施しをあげるのが、 神様の仕事ですから」
  そのまま内我は、
  人間離れした腕力で、
  寝室まで連れて行かれてしまった

〇一人部屋
因幡「いい子、いい子♪ ぎゅー♪」
運木内我「い、因幡さん。 流石にこれは恥ずかしいよ」
  寝転んだ状態で抱きしめられ、
  胸の辺りに顔をうずめる体勢で、
  頭を撫でられる。
  ぞくに言う添い寝である
因幡「遠慮しないでください。 これはご褒美なんですから」
因幡「頭も撫でてあげますね。 ナデナデ♪」
運木内我(あっ・・・・・・手、あったかい♪)
運木内我(温かい手で優しく撫でられるの、気持ちいい)
運木内我(どうしよう、離れたくない。 ずっとこうやって甘やかされたい)
因幡「いいですよ。 それが貴方の願いなら」
運木内我「アハハ、おかしいな。 口には出していないはずなんだけど・・・・・・」
運木内我「そんなに俺って分かりやすいんだ・・・・・・」
運木内我「嬉しいけど何で? 俺たち初対面で・・・・・・」
因幡「細かいことはお気になさらず、 今はゆっくりと堪能してください」
因幡「これは貴方へのご褒美なのですから」
因幡「今だけは何も考えず、 思いきり甘えて下さい」
因幡「ぎゅーぎゅー、よしよし♪」
運木内我(あ・・・・・・これ、安心する)
運木内我(思えば大人になってからずっと、 甘やかしてもらう機会なんて無かったな)
運木内我(毎日いじめられるのに会社に行って・・・・・・)
運木内我(ずっと辛くて、死にそうで、 でも頑張らなきゃいけなくて)
因幡「長い間、たった一人でよく頑張りましたね」
因幡「ささやかなプレゼントですが、 どうぞご堪能下さい」
運木内我「あっ温かい。ずっとこのまま・・・・・・」
運木内我「・・・・・・」
因幡「寝てしまいましたか」
因幡「寝てても着物の裾、 掴んでる」
因幡「そんなに離れたくないのですかね? まあ、無理もありません」
因幡「現代人の苦悩は、一人で背負うには、 辛く、苦しすぎるでしょうから」
因幡「本当は、 今日だけのご褒美のつもりだったのですよ」
因幡「動物のために トラックの前に出れるくらい優しくて」
因幡「毎日頑張る貴方へ、 福の神から一日だけのプレゼント」
因幡「・・・・・・でも可愛い貴方を見て、気が変わりました」
因幡「ずっと貴方を支えてあげましょう」
  私は寝ている人の子のおでこに
  キスをした

コメント

  • あらら、何て可愛らしい神様。
    慈愛に満ちたというか、何というか、とにかくステキです(←語彙力)。2人の穏やかな空気感がイイですね!

  • 因幡さんの言うように、内我さんは猫ちゃんを守るために自分が犠牲になったり、優しい人なんだなあと思いました。
    優しいからこそ会社で嫌な目にあってしまったりするのかなあとも思いました…。
    でもこれからは因幡さんと一緒に、ずっと幸せな日々になりそうで、良かったです☺️

  • 助けられた白ネコの化身かと思ったら因幡の白ウサギちゃんのようですね。白ウサギのような女の子の神様が肉じゃがを作って膝枕や添い寝をしてくれるのは全男子にとって最高のご褒美なんだろうな。頑張っている女子のところにイケメンの執事的なご褒美が降臨するお話もぜひぜひお願いします。

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