一滴の不穏

富士鷹 扇

バター飴 (脚本)

一滴の不穏

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〇黒

〇団地

〇マンションの共用廊下
「サチコ、朝刊取ってきてちょうだい」
「はぁい」
サチコ(雨かぁ・・・)
サチコ「?」
サチコ(飴ちゃん入ってた)
サチコ「・・・」

〇黒

〇ダイニング
サチコ「お父さん」
サチコ「新聞」
父「ああ」
母「サチコもご飯早く食べなさいね」
サチコ「うん」
サチコ「いただきまーす」

〇団地

〇ダイニング(食事なし)
サチコ「・・・」
サチコ「お兄ちゃんは?」
母「さあ?」
母「まだ寝てるんじゃない?」
サチコ「そっか」
母「はいはいはい」
「・・・」
父「ごちそう様」
父「行ってくるよ」
サチコ「いってらっしゃーい」
「今日も遅いの?」
「ああ」
サチコ「・・・」
サチコ「ごちそうさま」
サチコ(学校いかなきゃ)

〇団地
「いってきまーす」
「気を付けてねー」
「うん」

〇マンションの共用階段
サチコ(あ)
サチコ(飴ちゃん拾ったんだった)
サチコ(食べちゃお)

〇黒
(バターみたいな味がする)
(・・・)
「この味、嫌いかも」

〇黒

〇団地

〇マンションの共用廊下
サチコ「あ」
サチコ(また飴ちゃん入ってる)

〇ダイニング(食事なし)
サチコ「お兄ちゃん」
コウジ「ん?」
サチコ「飴ちゃんいる?」
コウジ「いや要らね」
サチコ「そっかぁ・・・」
母「その飴、どうしたの?」
サチコ「新聞受けに入ってた」
コウジ「なんだそりゃ」
母「嫌ね、誰かのいたずらかしら」
サチコ「お母さん食べる?」
母「食べるわけないでしょ」
母「捨てなさい、気持ち悪い」
サチコ「・・・もったいなくない?」
母「ダメよ食べちゃ」
サチコ「んー・・・」
コウジ「毒入ってるかもしれないぞ?」
サチコ「どく!?」
母「そうよー」
母「だから食べちゃダメだからね」
サチコ「・・・はーい」
サチコ(食べちゃったこと黙ってよ・・・)

〇黒

〇団地

〇マンションの共用廊下
サチコ「やっぱり今日も入ってた」
サチコ(今日ので八個目)

〇黒
(お母さんには捨てろって言われたけど)
(なんかもったいないから、こっそり集めてた)
「・・・」
(でも、これ美味しくないし)
(こんなにあると邪魔)
「捨てちゃお」

〇黒

〇マンションの共用廊下
サチコ「うわっ」
  その日、新聞受けには10個以上のバター飴が押し込められていました。
サチコ「ええ・・・」
サチコ(もう集めてないから要らないのに・・)
サチコ「全部要らない」
  私は散らばったバター飴をかき集め
  適当にゴミ箱に捨てました。

〇団地
  大量のバター飴を捨てたあの日以降
  飴玉が新聞受けに入れられる事はありませんでした。
  でも、半年くらい経ったある日・・・

〇ダイニング(食事なし)
父「コウジ、そっち持ってくれ」
コウジ「あいよ」
サチコ「あれ?」
サチコ「そのソファーどうするの?」
  ある夏の日曜日、父と兄がリビングのソファーを運びだそうしていました。
父「知り合いから新しいソファーを貰うことになったからな」
父「もうボロボロだし、このソファーは捨てる事にしたんだよ」
コウジ「染みだらけだもんな、これ」
父「よし、ゆっくり運ぶぞ」
コウジ「おう」
母「もう、埃まみれね・・・」
サチコ「雪積もってるみたいだね」
母「あら?」
  母と一緒に掃除をしていると
サチコ「あ」
  あのバター飴が、埃まみれになったあのバター飴が、落ちていました。
サチコ(・・・全部捨てたのに)
サチコ「・・・」
父「うわあ!?」
母「え、どうしたの!?」
兄「やっべえ! 父さんが階段から落ちた!」
母「嘘でしょ!?」
サチコ「た、大変っ」
サチコ「・・・」

〇団地
「あなた、大丈夫!?」
「あいたた・・・ だ、大丈夫 ちょっと腰打っただけだ」
「もう、しっかりしてよね」

〇黒
  幸い、お父さんは軽い打撲だけで済みました。
  あの時のゴタゴタで
  ソファーの下から出てきたバター飴の事を忘れていましたが
  ふと思い出した時に
  あのバター飴は何だったのか
  誰が新聞受けに入れたのか
  新聞受けに入っていた飴は全て捨てたのに
  どうしてソファーの下から出てきたのか
  気になって胸がモヤモヤすることがあります。

コメント

  • 演出が巧みで独特な世界観に惹き込まれます。
    何となくこれくらいの不穏さはありえそうな気もしますね。
    何だそんなことかと笑えるオチがあるのか、はたまた……

  • わー!!!!!!!正に題名にぴったりのお話です!!!無性に惹きつけられますね・・・!!!
    これは、話がどんどん広げていけそうですし、各話完結の微ホラーにしても良いですし、とっても面白いと感じました!!!✨😊
    あと、スチルの雰囲気がいつも良いですよね✨センスの良さを感じます!!!✨

  • 怖いけど怖すぎないホラー…このテイストならホラーが怖い僕でも安心して(?)読めます😊
    お父さんが転んだ事も飴と関連性が有るのか無いのか、なんの説明も無いのが良いですね!

    台所を見下ろすスチルの角度や構図がまたなんでもない日常なのに何故か不穏に感じて良かったです。

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