阿澄家の変わった日常

不思議胡桃

阿澄家の変わった日常(脚本)

阿澄家の変わった日常

不思議胡桃

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〇一戸建て
  朝七時。海星の部屋にピピッ、ピピッ、と目覚ましの音が鳴り響く。

〇男の子の一人部屋
  海星は目覚ましを止める。ベッドから出て、制服に着替え、家族がいるリビングに向かう。
  そして今日から高校二年生が始まる。
海星(緊張するなぁ)
  まぁ、それよりも大事なことが一つある。
海星「どうか今日は当たりませんように・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
「おはよう」
  妹の咲はスマホをいじっていて、父の龍二は新聞を読んだまま、ペットのリンはお座りをしている。
  誰も挨拶をしてくれない
  そんなこと海星も分かっていた。リビングには緊張感が漂っている。
咲「母さん、みんな揃ったよ」
  咲が母の花南を呼び、キッチンからリビングに向かってくる。
花南「それじゃあ、ルーレットスタート!!」
  阿澄家に変わったルールがある。毎朝全員の名前を書いたルーレットを回す。
  そして当たった人は何かミッションを家族に与えられる。
  何故こうなったのか。事の発端は母が元ヤンでの時、ルーレット回して当たった人が悪さをするというゲームをしていたらしい。
  昔のように刺激が欲しいらしく、再び家族でやることになった。
  母以外の三人と一匹は当たりませんようにと願う。
  ルーレットが徐々にスピードが落ちていく中、僕たちの鼓動は早くなる・・・。
  そして、ルーレットが止まる。
花南「今日は海星に決定!!」
  海星は思わず天を仰いだと同時に咲と龍二は隠れてガッツポーズをし、微笑んでるのが分かる。
  朝食を食べながら海星のミッションを考える家族会議が始まる。
  父は早々に朝食を食べ終え、仕事に向かった。
花南「今日までの課題とかないの?」
海星「ないよ、今日は始業式だけだし」
咲「そういえば、お兄ちゃんの高校ってクラス替えあったよね」
海星「おい、咲。余計な事を言うな」
  咲は海星がコミュ症だと知っていてわざと告げ口をしている。
咲「でもお兄ちゃんは関係ないか。お兄ちゃんはすぐに友達作れるもんね」
海星(ほんと、一度でいいから咲を引っ叩きたい)
花南「決めた! 海星のミッションはSNSアプリのルインで、連絡先を五人と交換すること」
海星(終わった。マジで終わった。こんなの出来るはずがない)
花南「もちろん出来なければ三千円貯金してもらうから」
  朝食を食べ終え、家族会議も終了した。
  海星は洗面所で髪を整え、鞄を持って学校に行く。

〇シックな玄関
海星「行ってきます」
咲「頑張ってね、お・に・い・ちゃん」
  珍しく見送ってくれたと思ったら、玄関まで煽りに来た。
  こんなに笑顔がイラっと来たのは初めてかもしれない。

〇川に架かる橋
  緊急連絡。
  海星は通学途中、友達の前田林太に連絡を取る。
  林太は幼稚園からの幼馴染。
  陽キャだけど、実は隠れオタク。人望が厚いため、助けを求める。
  海星は林太に事情を説明したら、すぐに返信が帰って来た。
  面白そうだから嫌!!
海星(こいつ、学校で会ったら一発殴ってやる)

〇大きな木のある校舎
  いつも早くに来ている海星は朝早くなら人も少ないし、勇気を出して交換できるかもと早歩きで教室に向かう。
  新クラスは事前に連絡されている為、階段を上り、二年三組の教室に向かう。

〇教室
  音楽を聴きながら席で待っていると教室のドアが開く音が聞こえた。
  開いたドアの方に顔を向けたが一瞬で顔をそらした。
  なぜなら入って来たのが学校で一、二を争うほど可愛いと言われている風見幸奈だった。
  友達何人かと教室に帰って来た。
海星(さすがに無理。俺なんかが女子に話したらなんて思われるか分からないし、そんな勇気もないし)
  海星は何もしないまま席でずっと携帯をいじっていると林太が教室に入ってきた。
林太「おはよう、海星。 順調か?」
海星「順調なわけないだろ、からかうなら手伝ってくれよ」
林太「嫌だね、俺は彼女の所に行くから」
  と林太はスタスタと教室から出ていった。
  ちなみに林太は彼女も可愛くて有名だ。そんな人とオタクを隠して付き合っているのか。答えは否。彼女も隠れオタクなのだ。
  まぁ、そんな事より自分の心配をする。
  今日は始業式とホームルームしかない。
  でも教室には女子しかいない。
  しかも徐々に幸奈の友達が集まって来る。
  海星は気まずくなり、トイレに避難した。
  結局何もしないまま始業式が始まる。
  海星の学校は一学年八クラスもあり、体育館に入らない。
  二、三年は教室で始業式の模様を映像で見ている。
  始業式が終わり、ホームルームの途中。
  一件のメッセージが届いた。
  お兄ちゃんならもうミッションクリアしたよね、なんならクラスの全員と交換したよね
  こんな時にまで咲が煽り分を送ってくる。
海星(マジで殴りたい。 妹じゃなく弟だったら殴っていたかも・・・)
  そしてホームルームが終わり、みんなが帰ろうとする。
海星(どうしよう、勇気を出して隣の人に話してみるしか・・・)
幸奈「みんな!! よかったら連絡先交換しない。 クラスのグループルインを作ろうよ」
  男たちは幸奈からの誘いを断るわけがなく、嬉しそうに幸奈の周りに群がる。
幸奈「私とは交換しないよ、誰かに誘ってもらってね」
(なんでこの私が男と連絡先を交換するわけないでしょ)
  男たちは見るからにガッカリしている。
海星(俺は幸奈グループの人の連絡先を知らない。これで一人は交換できる)
  俺は兆しが見え思わず微笑んだ。
  俺が近づこうとした時・・・
  林太が傍に来た。
林太「お前は俺が誘ったから、もう帰っていいぞ」
海星「え・・・」
海星(こいつマジで何してんだよ!!)
林太「海星が早く家に帰ってゲームしたいと思ったから」
海星「俺が今、どういう状況か知ってるだろ」
林太「わりぃ、すっかり忘れてた」
  結局、誰とも交換できないまま学校が終わった。

〇男の子の一人部屋
海星「マジでどうしよう、このままじゃ十八時までに間に合わないって」
  どうしようか考えながら、ルインを眺めていた。
  そして、一つ案を思いついた。
  グループルインから勝手に追加することだ。
海星「もう、この方法しかない」
  海星は適当に連絡先を追加した。

〇おしゃれなリビングダイニング
  十八時。夕食の為、徐々にみんなリビングに集まる。
海星「父さんは?」
花南「今日は帰ってこないらしい」
花南「そんな事より、連絡先交換できた?」
海星「できたよ」
  俺は母に携帯を見せた。
花南「確かに、新しい連絡先が五人増えてる」
咲「本当に!! 私にも見せて」
咲「本当に増えてる・・・・・・けど」
  咲は何か言いたげだったが・・・。
花南「海星ミッションクリア!!」
  海星は無事にクリアし、胸をなでおろす

〇一階の廊下
  部屋に戻ろうとした時、咲が声を掛けてきた。
咲「どうして女子と連絡先を交換してるの」
  どうやら、適当に追加してたら、その中に幸奈の連絡先を追加したらしい。
海星「べ、別に咲には関係ないだろ」
  これ以上、深く掘り下げられないように、部屋へ避難した。
咲「関係なくないし」

〇男の子の一人部屋
  これで長い一日がとうとう終わる。
海星「どうか、明日は別の人に当たりますように」

コメント

  • ミッションの内容は、ちょっとストレスだけど不可能ではないギリギリの感じなんですね。他の家族のパターンも見たくなりました。犬のリンまでが緊張して待っているのが可愛すぎました。 

  • 元ヤンのお母さんの遊びめっちゃおもしろいです😂
    海星へのミッションは一見、コミュ障にとっては鬼畜な内容に思えるのですが、実はお母さんは海星に、友達を作って楽しい学校生活を送って欲しいからこそ、あのミッションにしたのではないかな?と思いました!

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