第4話「決められたルールの中で」(脚本)
〇教室
天王寺修徳「待て筋太! そこは俺の陣地だ!」
菅原筋太「うるさい! 俺は人より筋肉が多いんだ! 多く食べる義務がある!」
三上大和「もぐもぐ」
天王寺修徳「大和! しれっと食べてんじゃねえ! 1人3口って決めただろうが!」
三上大和「僕は2人より口が小さいから 3口じゃ少ないんです!」
天王寺修徳「くそ、こうなったら・・・へっくしょん」
三上大和「ああっ!?」
菅原筋太「くしゃみかけるんじゃねえ!!」
天王寺修徳「いたっ!?」
樋口ユウナ「高校生が食パン1枚 取り合ってんじゃないわよ・・・」
天王寺修徳「・・・これには理由があってだな」
〇警察署の食堂
天王寺修徳「昼休みだ! あー腹減った」
天王寺修徳「おばちゃん、 焼きそばパンとカレーパンと、あと」
おばちゃん「ごめんね。ここからここまでのパンは Kランクに売れないよ」
天王寺修徳「え? それってまさか」
校長「そのまさかだ。今日から校則を追加した。 Kランクの食品購入には制限がかかる」
天王寺修徳「またかよ! てかこれ意味あんの?」
校長「脳はエネルギーを消費する。優秀な頭脳は その分多くの栄養分を欲するわけだ」
校長「そこで優秀な頭脳に栄養素が行き渡るように、偏差値に応じて買える量を分けたのだ」
天王寺修徳「Kランクが買えるのって・・・」
おばちゃん「あいよ、食パン1枚」
天王寺修徳「育ち盛りの高校生が足りるかよ! くそ、学食行こうぜ!」
菅原筋太「ダメだ。 学食じゃ豆腐定食しか買えなくなってた」
菅原筋太「しかもKランクは おかわり不可だった・・・」
天王寺修徳「ぐぬぬ・・・ 自販機でジュース飲んで我慢するか」
自販機「学生証ヲカザシテクダサイ」
天王寺修徳「あれ? こんな機能ついてたっけ?」
自販機「Kランクニ購入可能ナドリンクハ コレダケデス」
天王寺修徳「この暑いのにホットおしるこ!!」
〇教室
天王寺修徳「てなわけでみんなで 食パン分け合ってんだよ」
天王寺修徳「あっ! 話してる間に食うんじゃねえ!」
樋口ユウナ「さすがにかわいそう・・・」
菅原筋太「カロリーが足りない・・・ 筋肉の悲鳴が聞こえる」
天王寺修徳「何か食べ物持ってない? 何でもいいから!」
樋口ユウナ「何かあったかな・・・」
天王寺修徳「噛み終わったガムでもいいから!」
樋口ユウナ「か、噛み・・・変態!!」
天王寺修徳「痛っ!!」
菅原筋太「怒らせちゃった・・・」
三上大和「今のはないですよ」
天王寺修徳「・・・俺も反省してる」
三上大和「どうしましょう。僕、お腹空きすぎて 頭が働かなくなってきました・・・」
天王寺修徳「・・・俺に考えがある」
〇図書館
菅原筋太「図書室に食べるものなんてあるのか?」
天王寺修徳「じー」
三上大和「さっきから料理の本ばっかり見て 何やってるんです?」
天王寺修徳「俺の記憶能力で食べ物の写真を記憶して 腹を満たそうかなって・・・」
菅原筋太「絵に描いた餅って言葉知ってるか?」
天王寺修徳「でも頭の中の俺は頭の中の食べ物を 頭の中で食べれて頭の中では 幸せになれるはずだろ?」
菅原筋太「だめだ、おかしくなってる」
三上大和「あ、でも、本を憶えるのって使えるかも」
天王寺修徳「え?」
〇教室
樋口ユウナ「・・・みんな元気?」
天王寺修徳「おっす」
樋口ユウナ「あれ? 少し元気になった?」
天王寺修徳「まあ、ビタミン摂取してるからな」
樋口ユウナ「何か食べるもの見つけたの?」
天王寺修徳「お前も食べる?」
樋口ユウナ「・・・なにこれ、草?」
三上大和「修徳さんの能力で植物図鑑を憶えて、 食べられる野草を採ってきたんです」
菅原筋太「校外マラソンのときとかに 土手で見つけて調達したりな」
樋口ユウナ「もはやサバイバル・・・」
天王寺修徳「ただそんな我慢ももうすぐだ。 これがあれば!」
樋口ユウナ「なにこれ? お米?」
天王寺修徳「種もみだ。寮でこっそり米作りをすれば 来年にはお米食べ放題・・・」
樋口ユウナ「どんだけ長いスパンで考えてるの」
ピンポンパンポーン
放送「校長の黒崎だ。 本日のKランクの追加校則を発表する。 Kランクは稲作禁止」
天王寺修徳「盗聴器でもあんのかよ!」
放送「まあ野草くらいは見逃してやろう」
放送「ただし種子の保有は禁ずる。 学内の植物生体バランスが崩れるからな。 その種もみは没収だ!」
天王寺修徳「お、俺たちの明日が〜〜〜!」
樋口ユウナ「・・・ここ、世紀末?」
〇宿舎
天王寺修徳「くそ、校長め。 ここぞとばかりにKランクの今日の授業、 全部体育にしやがって・・・」
菅原筋太「・・・俺はもうダメだ」
樋口ユウナ「・・・修徳・・・修徳!」
天王寺修徳「ん? なんだ、お前か」
樋口ユウナ「何だとは何よ。 差し入れ持ってきてあげたのに」
菅原筋太「なんだって!」
栄子「先日の下着泥棒の お礼もしたかったので・・・」
栄子「これ、おにぎりです」
三上大和「あ、ありがとう! Kランクにも味方がいるんですねぇ・・・」
天王寺修徳「・・・いや。 せっかくだけど、それは受け取れない」
樋口ユウナ「え?」
天王寺修徳「自分たちで何とかしてみるからさ。 ほら、行くぞ!」
菅原筋太「ええっ! おにぎりが・・・」
樋口ユウナ「・・・わかった。そうするわ。 栄子、行こう」
三上大和「ああ、行っちゃった・・・ なんで断ったんですか!?」
天王寺修徳「だって俺たち校長に 目を付けられてるんだぞ」
天王寺修徳「俺たちを助けたら、あいつらもどんな 嫌がらせをされるかわからないだろ」
三上大和「それは・・・そうですね」
天王寺修徳「何か考えてみようぜ」
天王寺修徳「そうだ、革靴って食べれるって聞いたけど 上履き食べれないかな?」
三上大和「そもそも革じゃないですよ」
〇教室の外
樋口ユウナ「・・・・・・」
栄子「だから受け取ってくれなかったんだ。 私たちのこと考えて・・・」
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