暁までのアナタ

翠碧緑

後編(脚本)

暁までのアナタ

翠碧緑

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〇名門校の校門(看板の文字無し)
  今になってみれば、アイツはただの一言も学校に行っていないとは言っていなかった。
  そうだ。嘘は一言もついていない。
  だけど、それがなんだ?
  結局のところ、私は、緒玉 梓は、アイツにとって、自分の存在を共有する価値の無いものだったのだ。

〇入り組んだ路地裏
  あの夜、私は家出というものをした。
  きっかけは親との喧嘩。
  さらに言えば、父と私の血の繋がりが無いことが判明したのが、原因だった。
  気色が悪い。
  他から種を貰ってきた母も。
  それを許容し、私を凝視してくる父も。
  私は幸せだった。けれどそれは仮初めのもので、薄皮一枚はがせばすぐに影が差した。
  だから、私は日向を捨てようと思った。
  闇夜のどこかに居場所を求めた。
  でも、そこにもまた闇はあって。
  一番見たくない男の視線を感じていたときに、それは現れた。
  狂暴さを持った可愛らしい顔。
  他人を威嚇するフクロウ。
  ソレに興味を持つなというのが無理な話だった。

〇レトロ喫茶
緒玉 梓「・・・・・・」
ナズナ「よう」
ナズナ「なにしてんだ、座れよ」
緒玉 梓「・・・・・・」
ナズナ「お前が僕の顰めっ面を面白がるのもわかる気がするな」
ナズナ「頼んでないのに、来るようになったな」
緒玉 梓「────」
緒玉 梓「ナズナ・・・今朝のことなんだけどさ」
ナズナ「視てたよ」
緒玉 梓「視たの?」
ナズナ「『愛佳の中』からな」
緒玉 梓「・・・・・・」
緒玉 梓「じゃあ・・・やっぱり、あんたって・・・」
ナズナ「そういうことになるな」
緒玉 梓「・・・・・・」
ナズナ「僕は彼女の中に生まれた存在だ」
緒玉 梓「・・・正直に言うと、演技であって欲しいと思ってる。設定、キャラ付けでもいい」
ナズナ「はははははっ!!」
ナズナ「品行方正で通ってる愛佳が、演技であっても今朝の駅みたいな行動はしないよ」
ナズナ「知り合いに『初対面ですよね?』なーんてさ」
緒玉 梓「それは・・・そうかもだけど」
ナズナ「解離性人格障害だよ。ようは病人なんだ愛佳は」

〇黒
  幼い頃から厳しい教育を受けていた愛佳は、ルールに縛られていた。
  でも、教育で得た知識なんてすぐ矛盾する。
  『どうしてあの車は横断歩道にいるわたしを無視して走り去っていくの?』
  『どうしてあの子達はお菓子を学校に持ってきているの?』
  『どうして毎日悪いニュースが流れるの?
  みんな、どうしてわたしができるようなことができないの?』
  愛佳はやってはいけないことに興味を持つと同時に、それをしないように自分を縛り付けた。
  教えられたことをしなくてはいけない。
  でも、正しいと思っていることが他人と違う。
  そうして、愛佳は壊れた。
  それは、学校の掃除中のこと。
  花瓶を落としたんだ。
  途轍もない恐怖とストレスが愛佳を襲った。
  ”やってはいけないことをやっている自分が存在している”。
  その矛盾を解消するためだったのかもしれない。
  愛佳は”その犯人を忘れた”んだ。
園原 愛佳「先生に知らせなくちゃ!」
  それが切っ掛け。
  『園原愛佳』が絶対にしないことをしてしまったときに、それの罪を被る存在。
  それが、僕だ。
  女性らしくしなきゃいけない愛佳にはできないことをする。
  言ってはいけない他人の愚痴を言い続ける。
  寝なきゃいけない時間に、遊び続ける。
  そうして愛佳は、安定した生活を得たんだ。

〇レトロ喫茶
緒玉 梓「そんなのさ・・・」
ナズナ「いいんだよ」
ナズナ「僕は彼女の為に生まれたんだ。これでいいんだ」
緒玉 梓「ナズナ・・・」
ナズナ「その『ナズナ』の花もさ、雑草を触るなって叱られて、それ以来彼女の封印した好みだったんだ」
ナズナ「梓の質問で思い出したみたいだけどね」
ナズナ「嬉しかった」
緒玉 梓「・・・・・・」
ナズナ「愛佳が僕を感じてくれたみたいでさ」
緒玉 梓「ちょっと待って。じゃあ・・・あの子はあんたを認識してないの?」
ナズナ「そりゃそうだろ」
ナズナ「僕を認識したら、愛佳が壊れちゃうよ」
ナズナ「大したことでもないのに、すぐ罪悪感背負っちゃうんだからさ」
緒玉 梓「そんな・・・」
ナズナ「梓が気負うこと無いよ」
ナズナ「でも、そうだな」
緒玉 梓「ん?」
ナズナ「だからこの間の約束は無理なんだよ」
ナズナ「僕は・・・愛佳が起きている間は、出ていけない」
ナズナ「・・・・・・」
緒玉 梓「・・・・・・」
緒玉 梓「あんたは、どうしたいの?」
ナズナ「えっ?」
ナズナ「だからさ・・・」
ナズナ「・・・梓」
緒玉 梓「あんたは気に入らないだろうけど、はっきり言うわ」
緒玉 梓「私は『ナズナ』がいいの」
ナズナ「────────」
ナズナ「・・・はあ?」
ナズナ「愛佳よりも僕を? あり得ない」
ナズナ「だって・・・」
ナズナ「だって僕は・・・」
緒玉 梓「・・・言ってしまった」
緒玉 梓「ええ、そうよ!!」
緒玉 梓「私が知ってるのは、『愛佳』じゃない。 愛佳と同じ顔なだけのひねくれ者だけよ」
ナズナ「・・・嘘だ」
緒玉 梓「残念ながら、受け取りなさい」
ナズナ「おかしい!」
ナズナ「僕は愛佳の膿なんだ!! ただの憎悪の捌け口なんだよ!!」
ナズナ「無自覚に壊れた人間の、影でしかないんだ・・・・・・」
緒玉 梓「大丈夫。それがいいの。それでいいの」
ナズナ「・・・た、ただの物珍しさだろ!?」
緒玉 梓「ううん」
緒玉 梓「あんたは私に静かな時間があるってことを教えてくれたの」
緒玉 梓「夜はただ眠るだけじゃない。そうじゃない生き方もあるってね?」
ナズナ「・・・そんな高尚なこと言った覚えはない」
緒玉 梓「あははははっ!! いざ知ってから話してみると、あんた言い回しがエリートって感じ」
ナズナ「・・・・・・」
緒玉 梓「んー? ナズナフェイスしてどうしたー?」
ナズナ「糞女!!」
緒玉 梓「嫌われたー?」
ナズナ「とにかく、もうこんな僕に関わるな!!」
緒玉 梓「行っちゃった」
緒玉 梓「ふーん・・・」
緒玉 梓「じゃあ今度は私の番かな」
緒玉 梓「白日を教えてあげる」
緒玉 梓「覚悟しろー?」

〇川沿いの公園
  夜は危ない。
  なぜそう感じるのだろう。
  人間の本能に根差したモノから?
  それとも統計的に見た悪事の多さから?
  では逆に、昼は安全なのだろうか?
  昼に争いは無い? 
  昼に悲しむ人はいない?
  馬鹿馬鹿しい。
  昼と夜の類似性をいくら説いたところで・・・
  夜が昼になるなんてことは出来ないんだよ
ナズナ「・・・・・・」

〇綺麗なダイニング
園原 愛佳「お母さんおはよー」
母親「おはよう。今日も元気ね」
園原 愛佳「うん! 毎日楽しいよ!」
母親「愛佳らしいわね~」
園原 愛佳「えへへ」

〇街中の道路
園原 愛佳「とはいうものの・・・なんか最近少し疲れてるかも」
園原 愛佳「よく眠れてないのかな? 朝がつらい・・・」
園原 愛佳「はあ・・・」
???「眠そうね。へーき?」
園原 愛佳「平気だよ?」
???「そりゃ良かった!!」
園原 愛佳「えっ?」
???「おっはよー!!」
園原 愛佳「お、おはようございます・・・?」
???「昨日はごめんね!! ”他人”と勘違いしちゃってさ!!」
園原 愛佳「いえいえ」
緒玉 梓「私、梓っていうの。よろしく!!」
園原 愛佳「園原 愛佳です」
緒玉 梓「駅同じだったよね? 一緒に行こ!」
園原 愛佳「えっ? ちょっ・・・えっ?」

〇広い改札
佐野「愛佳ー。おはよー」
園原 愛佳「おはよう・・・」
佐野「どうしたの?」
緒玉 梓「おっはよー!!」
佐野「どちら様!?」
緒玉 梓「私、梓。愛佳とはさっき親友になったの」
佐野「・・・・・・」
緒玉 梓「じゃあ行こっか!!」
佐野「え~・・・?」
佐野「愛佳、変な人に絡まれてない?」
園原 愛佳「・・・・・・」
佐野「愛佳?」
園原 愛佳「えっ、あっうん。なんか悪い人じゃない気はするから・・・」
佐野「やっぱり愛佳は優しいねー」
園原 愛佳「ううん。普通だよ」
緒玉 梓「電車行っちゃうんだけど!?」
佐野「ご、ごめん!! 梓さん!!」
園原 愛佳「・・・・・・」
___「うぜえなあ・・・」
園原 愛佳「あれ?」
園原 愛佳「・・・?」
緒玉 梓「・・・・・・」
緒玉 梓「ははーん?」
園原 愛佳「なんですか?」
緒玉 梓「もっと気軽に接していいよ」
園原 愛佳「いや・・・そんな・・・」
緒玉 梓「梓って呼び捨てでいいし」
園原 愛佳「あ、あずさ・・・」
緒玉 梓「そうそう」
園原 愛佳「?」
緒玉 梓「どしたん?」
園原 愛佳「いや・・・なんか・・・」
園原 愛佳「いや、なんでもないよ」
緒玉 梓「あははっはっ!!」
園原 愛佳「!?」
緒玉 梓「いやー、私あんたはやっぱ嫌いかも」
園原 愛佳「あの・・・突然なんです?」
緒玉 梓「えーっとね・・・」
緒玉 梓「あんたの体にしか興味ないって話!!」
園原 愛佳「なっ、なんなの!?」
緒玉 梓「顔だけはいいねあんた」
園原 愛佳「このっ・・・!!」
佐野「・・・愛佳が、怒った?」
園原 愛佳「!?」
園原 愛佳「・・・・・・」
園原 愛佳「こんな人放っておいて、行こうか」
佐野「えっ? うん・・・」
佐野「ごめんね? 普段はあんな子じゃないのに・・・」
緒玉 梓「お気になさらず~」
緒玉 梓「ふふっ・・・」
緒玉 梓「少しは”らしい”ところもあるじゃん」

〇名門の学校
佐野「愛佳、大丈夫?」
園原 愛佳「なにが?」
佐野「今日ずっと不機嫌そうだったし・・・」
園原 愛佳「フキゲン? 私が?」
佐野「やっぱり朝のこと気にしてる?」
園原 愛佳「そんなことないよ」
佐野「・・・私、この後用事あるから一緒に帰れないけど、本当に大丈夫?」
園原 愛佳「平気だよ」
佐野「うん・・・。じゃあね」
園原 愛佳「・・・・・・」

〇駅の出入口
  怒ることは・・・、機嫌を損ねるということは良くないことだ。
  まわりに気を遣わせるし、不快にさせる。
  絶対にしてはいけない行為だ。
  それを・・・私が行っていた?
  社会に要らない無駄な行為を・・・?
園原 愛佳「────────」
  今日も何事も無かった。
  平和な日々だ。
  私は良い人なのだ。
緒玉 梓「よっす」
園原 愛佳「──────」
緒玉 梓「って、ちょっと!! 無視~?」
緒玉 梓「そ、の、は、ら、ま、な、か、さぁーん!!」
園原 愛佳「あの・・・やめて貰えます?」
緒玉 梓「おお、来た来た」
園原 愛佳「・・・・・・」
緒玉 梓「私、これでも人の気持ちを察するの得意なの」
園原 愛佳「じゃあ・・・」
緒玉 梓「遊ぼ」
園原 愛佳「・・・は?」
緒玉 梓「こっちこっち」
園原 愛佳「えっ!? ちょっと引っ張らないで!!」

〇ネオン街
園原 愛佳「・・・・・・」
緒玉 梓「カラオケでも行こっか?」
園原 愛佳「・・・まだ遊ぶの?」
緒玉 梓「うん」
園原 愛佳「勉強する時間が無くなっちゃう」
緒玉 梓「へえ、ちゃんとするんだ」
園原 愛佳「私たち学生だよ?」
園原 愛佳「勉学の為に学校に行ってるんでしょ?」
緒玉 梓「くっ・・・」
緒玉 梓「あっははははははっ!!」
緒玉 梓「あんたつまんなすぎでしょ!?」
園原 愛佳「そんな風に言われる覚えはないよ」
緒玉 梓「まあ、個性的っちゃあそうね」
園原 愛佳「個性的・・・?」
緒玉 梓「毎日、自宅学習するのが普通だと思ってるの?」
園原 愛佳「え? 普通でしょ?」
緒玉 梓「だとしたら、大半の学生は普通じゃないわ」
園原 愛佳「・・・・・・なぜ?」
緒玉 梓「あんたが、どういうヤツかはわかった」
緒玉 梓「じゃあ、カラオケね」
園原 愛佳「なにがどういうわけなの!?」
緒玉 梓「れっつごー」
園原 愛佳「れっつごー?」
緒玉 梓「楽しんでんじゃん?」
園原 愛佳「!?」
園原 愛佳「ちっ、違うよっ」
緒玉 梓「あはははっ!!」
園原 愛佳「違う!!」

〇川沿いの公園
緒玉 梓「いやあ・・・歌うまいねあんた」
園原 愛佳「ねえ、あ、あず・・・さ」
園原 愛佳「どうして、私に構うの?」
園原 愛佳「あなたと私は明らかに合わないと思うの」
緒玉 梓「朝言ったと思うけど、あんたの体に用があるの」
園原 愛佳「・・・つまり、なんなの?」
園原 愛佳「意味がわからない・・・」
緒玉 梓「いきなり、こんなこと言われて困惑しかないだろうけど、私は真剣よ」
緒玉 梓「私はあんたが気に食わない」
園原 愛佳「・・・・・・」
緒玉 梓「全てをアイツに押し付けて、自分は日差しを歩く。 そして、そのことに気付きもしない残酷さ」
緒玉 梓「たまにはさ、”昼”をアイツにあげてもいいんじゃない?」
園原 愛佳「・・・あまり、変なことを言いたくはないけど、あなたは頭がおかしいと思う」
園原 愛佳「そう。頭がおかしい・・・」
園原 愛佳「人を無理矢理連れ出して・・・。 かと思えば、面と向かって悪口を言う」
園原 愛佳「信じられない。不良よ」
緒玉 梓「はっ・・・」
緒玉 梓「やっと出てきた悪態がその程度?」
緒玉 梓「ねえ、良い子ちゃん。 今何時か知ってる?」
園原 愛佳「・・・・・・」
園原 愛佳「・・・────」
園原 愛佳「・・・私、何を?」
緒玉 梓「楽しかったね。 ”勉強サボって遊ぶの”」
緒玉 梓「あと”あんた結構すぐへそ曲げる”よね」
緒玉 梓「”こんな夜遅くまで遊んだ”けど、親には連絡したの?」
園原 愛佳「あ、頭が・・・痛い・・・」
___「いってえ・・・」
園原 愛佳「・・・?」
___「おい糞女。 黙ってりゃあ、愛佳のこと馬鹿にしやがって」
園原 愛佳「承知しない・・・ぞ?」
園原 愛佳「今のは・・・なに?」
___「おいおい、マジかよ」
___「どうしちまったんだよ愛佳」
園原 愛佳「私が、私を呼んでる?」
ナズナ「愛佳!! 愛佳ー!!」
園原 愛佳「────────」
園原 愛佳「なにこれ・・・」
  気持ち悪い・・・
ナズナ「・・・────」
ナズナ「あー・・・ははは」
ナズナ「だよなあ・・・」
園原 愛佳「・・・・・・?」
園原 愛佳「なに・・・?」
緒玉 梓「・・・・・・」
緒玉 梓「ごめんね。二人とも」
緒玉 梓「ねえ『愛佳』、痛みはね? 他人におしつけちゃだめなの」
緒玉 梓「ねえ『ナズナ』。 苦しさを自己完結しちゃ駄目よ」
園原 愛佳「・・・・・・」
園原 愛佳「・・・・・・」
園原 愛佳「わかってんだよ!!」
緒玉 梓「およ?」
園原 愛佳「なに、説教垂れてンの? 家出女の癖に」
園原 愛佳「人の事情に突っ込んで、掻き回してンじゃねえぞ!!」
園原 愛佳「私の生活に介入してくんな!!」
園原 愛佳「これでもなあ・・・、好きで良い子ちゃんやってきたのよ!!」
園原 愛佳「ちっ・・・」
緒玉 梓「えー・・・っと、どっち様で?」
園原 愛佳「愛佳よ!!」
ナズナ「・・・ちなみに僕も困惑中」
園原 愛佳「全部思い出した・・・。 何がナズナよ・・・、ちょっと喜んでんじゃねえぞ?」
緒玉 梓「こりゃあ・・・また」
ナズナ「・・・・・・」
ナズナ「・・・そうか。 僕ですら”愛佳の一部分”に過ぎないのか・・・」
緒玉 梓「そりゃ・・・相当よ?」
園原 愛佳「なんじゃこりゃあ? 夜遊びしただけで、何気取ってんのよ」
園原 愛佳「恥ずかしッ!!」
緒玉 梓「確かに・・・壊れたわね」
ナズナ「始めてみる一面だ・・・。 いいなあ」
緒玉 梓「えー・・・?」
園原 愛佳「梓っ!!」
緒玉 梓「あっ、はい!」
園原 愛佳「行くわよ!!」
緒玉 梓「どこに?」
園原 愛佳「決まってるでしょ!?」
緒玉 梓「あー・・・。はいはい」

〇黒
園原 愛佳「赤信号を渡る人がいる」
園原 愛佳「ゴミを落とす人がいる」
園原 愛佳「そんな人を見る度につらかった」
園原 愛佳「必死にルールを守ろうとする自分もまた、そんな人間なのだと言われてる気がして・・・」
園原 愛佳「知っていた。わかってた」
園原 愛佳「私にもそんな部分があるってことを・・・」
園原 愛佳「でも、だからって・・・受け入れられなかった」
ナズナ「・・・・・・」
園原 愛佳「あんな・・・あんなに見苦しい人達になりたくなかったの・・・・・・」
園原 愛佳「”当たり前”の違う存在が恐ろしかったのっ・・・!!」
ナズナ「そうだね」
園原 愛佳「ごめんなさい・・・あなたに押し付けた」
ナズナ「本望だって言ったら、困っちゃうかな?」
園原 愛佳「・・・・・・」
ナズナ「きみはもう”まとも”に戻った」
ナズナ「だから・・・僕はもう必要ないけど・・・」
園原 愛佳「駄目・・・。 『アレ』の相手を私だけにさせる気?」
ナズナ「あはは・・・。だよねー」
園原 愛佳「本当に・・・、どうしてナズナを気に入ったのよ」
ナズナ「顔って言ってた」
園原 愛佳「それでなんで私は違うの・・・?」
「・・・・・・」
「あははははっ!!」

〇レトロ喫茶
緒玉 梓「私は不愉快です」
ナズナ「なんでだよ」
園原 愛佳「今度は何よ?」
緒玉 梓「また、二人だけで会話してたでしょ!?」
緒玉 梓「この疎外感だけはなんとも言えないっ!!」
ナズナ「落ち着け、迷惑だろ・・・」
緒玉 梓「まあ、いいけどね」
緒玉 梓「やあーっと、ナズナとお昼にお出掛けできたし」
園原 愛佳「誰か忘れてない?」
緒玉 梓「黙れよオマケ」
園原 愛佳「はあっ!?」
園原 愛佳「誰かさんがこの間、連れ出したせいで親に叱られたし、外出禁止食らったんですけど??」
ナズナ「マジでうざいよなー、謝ってんのに」
緒玉 梓「今のどっち?」
園原 愛佳「ナズナ!! わかってて言ってるでしょ!?」
緒玉 梓「私的に、あんたの方がキレてる印象があるわ」
園原 愛佳「はあ・・・」
園原 愛佳「そろそろカラオケ行こうか・・・」
緒玉 梓「あいよー」
ナズナ「あれ以来地味にハマった愛佳なのである」
緒玉 梓「ねー」

〇入り組んだ路地裏
  日の差す、慣れているはずの路地を歩く。
  いつも自分の視ていた景色とは同じはずなのに、その印象は違う。
  こっちの方がいいとは思わない。
  どちらが良いとかじゃないのだ。
  きっとこうしてみんな”二つ”を見る。
  僕は私だけを視て、私は僕を知らなかった。
  そんな固定された時間に差し込んできた光。
  眩しすぎるのが難点だ。
緒玉 梓「どう? こっちも悪くないでしょ?」
  きっと、青信号を渡る人もいる。
  横断歩道の前で停車する人もいる。
「そうかもね」

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