神様からの三行半

金平 旺大

第五話(脚本)

神様からの三行半

金平 旺大

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〇黒
コマ「霊は感覚がないように思われていますが、 嗅覚と聴覚はしっかり働いています」
コマ「嫌がる匂いや音で、霊の集中力を切って、 生身の身体から霊を追い出すのです」
コマ「そうすれば、 私が霊に直接ダメージを 与えることができます。 あわよくば、 その時に倒せるかもしれません」
ツクヨミ「ほぉー、 それで、どんな匂いや音が嫌いなんだ?」
コマ「霊は良い匂いを嫌います。 キンモクセイなどは特に効果的です」
ツクヨミ「ちょっと、花に詳しくないんだけど、 キンモクセイって花屋で売ってるのか?」
コマ「あまり売ってないでしょうね。 木ですから、枝ごと折ってこないといけませんから、」
コマ「それに今の時期は咲いていないと思います」
ツクヨミ「じゃあ、どうやってキンモクセイを嗅がせるんだ?」
コマ「Diorなんていかがでしょう」
ツクヨミ「でぃ、Dior?」
コマ「あそこの香水はキンモクセイの香りに近いと言われていますから」
コマ「もし買って、霊を倒しましたら、 神社の狛犬にも 一振りしておいてくれると ありがたいです」
ツクヨミ「・・・それはどういうことだ」
コマ「一度、匂ってみたいと思っていまして」
ツクヨミ「俺にサンプルを運ばせるな」
ツクヨミ「・・・それで音は?」
コマ「急に大きい音がすると、 びっくりして霊は飛び出します。 なので、Diorを嗅がせて集中力を切らして、大きな音で追い出す」
コマ「その作戦でいかがでしょう」
ツクヨミ「それで大きな音って何で出すんだ?」
コマ「ブブゼラです」
ツクヨミ「あの、 サッカー南アフリカワールドカップで 現地の人が応援のために吹いていた細長いラッパのことか・・ (説明終了)」
コマ「はい、ワールドカップのあの時期、神社でもうるさかったのです。 タケハ様が気に入ってしまって、あれを吹くたびに・・」
コマ「私は何度も土台から 落ちそうになりました。 今は神社裏の物置き小屋に置いてあります」
コマ「あれは霊でもびっくりします。 私が保証します」

〇一軒家
ツクヨミ「そう神様が言ってたんだ」
タイシ「これが・・ブブゼラ・・」
ツクヨミ「背中に縦にして隠せば見えないと思うから、頑張って」
ツクヨミ「あと・・・」
  プシュ
  プシュ
  プシュ
タイシ「うわっ、何この匂い」
ツクヨミ「女の子にモテる魔法のアイテムだよ」
タイシ「匂いがきついよ」
ツクヨミ「大人になって使うときは 用法用量を守って正しく使ってくれよ」
タイシ「よくわからないけど、 行ってくる」
タイシ「つねおくん、遊ぼー」
つねお「なんだ、おまえか わざわざ家まで来て・・・ 殴られに来たのか?」
つねお「ほら、殴ってやるよ」
つねお「うっ、クサッ。 こんなにくさいと、・・せっかく合わせた人間との波動が、・・ずれて、いく・・」
ツクヨミ「今だ」
  タイシはつねおの耳元で、力いっぱいブブゼラを吹いた。
つねお「うわーーーーー 耳が、おかしくなりそう」
ツクヨミ「こ、これは・・」
ツクヨミ「本当に霊が飛び出してきたぞ」
タイシ「えっ?えっ? どうしたの?」
ツクヨミ「タイシは下がっていろ」
コマ「ここからは私の出番ですね」
霊「くそっ、 子供から俺を追い出したのはおまえらか」
霊「おまえらに 俺の気持ちがわかってたまるか」
霊「俺は両親の言うことをずっと守って、」
霊「・・ママが病気になった時も 神社で何度も祈ったのに、 俺は、俺は・・」
霊「神社の帰り道 物取りの暴漢たちに殴られて 殺されたんだよ」
霊「その上、 俺の葬式でママは、ずっと兄貴にすがりついて、兄貴の名前ばかり呼んでいたんだ」
霊「一人、空の上で見ていた俺の気持ちがわかるか?」
コマ「・・それはお気の毒です あなたのせいだけでは ないかもしれません」
コマ「しかし、他の人間を傷つけていい理由にはなりません」
霊「!!!」
コマ「ガルルルル」
霊「おまえもボコボコにしてやる」
  決着は一瞬でついた
  コマの研ぎ澄まされた牙が
  ぼんやり見えている男性の霊を一瞬で
  ずたずたに切り裂いた
霊「うぎゃーーーーー」
  形を失った霊は
  あっけなく空に溶けていった
ツクヨミ「すげぇ」
つねお「・・・あれ?どうしたんだろ 何か変な夢を見てたような・・」
タイシ「つねおくーん」
つねお「おー、タイシ。 どうした? 「にゃんたまり」をしに来たのか?」
タイシ「うん、 「にゃんたまり」強くなったよ」
つねお「そりゃ楽しみだな。 ・・・あれ、タブレットがないぞ。 ちょっと取りに行ってくる」
タイシ「あぁ、待ってよー」

〇一軒家
ツクヨミ「・・・オーラが消えてたから、 成就したかわからなかったな・・」
コマ「成就したのではないですか。 あの子は喜んでいることですし」
ツクヨミ「・・そうだな」
コマ「??? どうしたんですか?」
ツクヨミ「・・タケハも両親の言うことは全部聞いていた。 俺は両親の愛情を毛嫌いしていたけど、 あいつは、それを求めて・・」
ツクヨミ「良い子を演じてたのかもしれない、 と思ったら、 ちょっとブルーになってね」
コマ「・・・私にはわかりかねますが、 そうお考えになるのであれば、 タケハ様への接し方を変えてはいかがでしょうか」
ツクヨミ「・・・あいつの眼差しは怒りに満ちていた。 タケハが落ち着くまでは、 俺が一人で頑張るつもりだ」
ツクヨミ「それが俺ができる タケハへの接し方だ」
コマ「・・・・・」
コマ「ああいう霊は、 ちょこちょこ現れますので、 すぐに連絡をくれれば駆け付けます」
ツクヨミ「そう言われても・・」
コマ「鳥居の近くに来ればすぐに私はいますよ」
ツクヨミ「いや、タケハに会うかもしれないだろ?」
コマ「わかりました」
  そう言うとコマはゆっくり、スーツの内側に手をやり、心臓でも取り出すかのように身体の奥底に右手を滑り込ませた。
コマ「これをどうぞ」
  コマの右手に握られていたのは
  勾玉だった。
  その平べったくいびつな形は
  老人の耳のようにも見えた。
コマ「これは、数人の神様が狛犬に命を吹き込むために手作りした勾玉です。 私の内部にはこれが入っているのです」
コマ「不思議な力が込められていて、 私はおそらくその石のおかげで こうやって動けるのです」
コマ「紐がついていますので、 ツクヨミ様がつけていてください。 勾玉は私と一体なので、 だいたいの状況は把握できます」
ツクヨミ「そんなもん もらってもいいのか?」
コマ「大丈夫です。 まだ体内には数個の勾玉があります。 一つ少なくなったからといって問題ありません」
ツクヨミ「そっか、 それなら付けとくか」
コマ「それでは、マンションまでお送りいたします」
ツクヨミ「おぅ、頼んだぜ」

次のエピソード:第三話

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