エピソード1(脚本)
〇オフィスのフロア
戸塚平一「宝くじに当たってしまった」
戸塚平一「しかも、え!!」
戸塚平一「0が1.2.3・・・」
戸塚平一「!!」
戸塚平一「100億円!?」
野寺「先輩、どうしたんですか」
野寺「すごい汗ですよ」
戸塚平一「いや、え、そのなんでもないよ」
ここで宝くじ買ったら100億円が当たったなんて言ったら衝撃が強すぎるだろう。なにより、ここは職場だし。
野寺「先輩、本当にすごい汗ですね。そんなに代謝いいイメージなかったけどな」
野寺「あ、そうそう。先輩に頼まれてた書類作っておいたんでメールで送っておきますね」
戸塚平一「あ、うん。わかった、ありがとう」
それにしてもこの100億円どうしよう
〇通学路
とりあえず、貯金するのが妥当か。でも、100億円だぞ。
やっぱり、まずは引っ越して車買って。いや、この際海外に移住するのもありだな
〇シックな玄関
戸塚平一「ただいま」
戸塚真子「おかえりー」
戸塚真子「ねぇ、さっき気づいたんだけどさ、気づいたら1週間連続で夕飯揚げ物になってた!!」
戸塚平一「あ、そう。揚げ物好きだからいいよ」
戸塚平一「そんなことよりさ、移住するならやっぱりハワイかな。でも、オーストラリアの広大な自然で暮らすのも」
戸塚真子「そんなことより・・・?」
うわ、やばい。移住先を考えてたらつい、口が滑ってしまった。
〇アパートのダイニング
わー。俺だけ揚げ物なしだ。おかずキャベツのみ!
正直きついな。まぁ俺が悪いけど。
あれ?
うちの娘も!!
戸塚真子「うふふ」
〇通学路
そんなこんなで宝くじの話を言い忘れてしまった。まぁ、昨日は梨花も彼氏の家に泊まるとか言ってたし。
野寺「先輩、おはようございます!!」
戸塚平一「おお、おはよう」
野寺「先輩、最近呑みに連れてってくれないじゃないですか」
戸塚平一「ああ、ごめん。だって、ほら最近忙しかったじゃん。部長もなんか機嫌悪かったし」
野寺「それはそうですけど」
戸塚平一「どこにでも連れてってあげるよ。もうすぐ仕事もひと段落するし」
野寺「カウンターで食べる高級寿司とか食べたいですねえ」
戸塚平一「いいよ。連れてってやる」
野寺「まじすか」
初めて100億円を感じることができた
〇オフィスのフロア
僕は100億円持っているので心に余裕ができたのか知らないが、ずっと感じていた違和感に気づいてしまった。
お弁当がおかしいのである。
僕の職場ではお弁当は欲しい人だけが買うシステムになっている。
しかし、実際のところお弁当を毎日購入している人は社内の8割を超えている。
そんな、8割の人の胃袋を占めるお弁当が何故か・・・
鶏肉だらけなのである。
部長「はーい。みなさーん。お弁当きました。各自受け取ってお昼休憩取っちゃってくださいね」
戸塚平一「お弁当お願いします」
お弁当配達員「はーい」
は!!チキン南蛮!!
鶏肉!!
あ、献立表。そうだ献立表見ればいいんだ
2/3が鶏肉料理だ。これは完全に故意的だ
加賀美「ま、またチキン!!」
気づいてる人いたんだ
部長「おい!!食べ物にケチをつけるとは君はどういう神経してるんだ。礼儀というものを学んでこなかったのか。この無礼者!!」
加賀美「す、すみません」
部長「あと、スカートも短いぞ」
こわ!!
〇オフィスのフロア
色々と考えてみたが、お弁当について少し引っかかるものがあった
最初は鶏肉が他の肉より安いから、お弁当での使用頻度も上がっているものだと考えた
だけど、例え鶏肉が安いからといってこんなにも使うだろうか
部長「はい、みなさん。注目。うちの実家の養鶏場から今年も大量の卵が届きました」
部長「みんな持って帰りづらいことは重々承知してるけど・・・」
これだ!!
〇オフィスのフロア
戸塚平一「あの、部長」
部長「おう、まだ帰ってなかったのか」
戸塚平一「あの、部長の苗字って田中ですよね」
部長「そうだ、田中拓郎だ。それがどうした」
戸塚平一「もしかしてなんですけど、毎日お弁当届けてくれてる「田中フードカンパニー」って知り合いだったりしますか?」
部長「おー、よくわかったな。実は弟がやってる会社なんだよ」
ビンゴ!!
戸塚平一「あの、献立の変更ってお願いできますか」
部長「なんでだ」
戸塚平一「鶏肉を使った料理を減らしてほしいんです」
部長「なんでそんなことを俺に言うんだ」
戸塚平一「部長が全て仕組んでいるんじゃないですか!?」
部長「はあ!?何を言ってるんだ」
戸塚平一「部長の実家って養鶏場ですよね」
戸塚平一「さっき電話で「田中フードカンパニー」に確認したんです。そしたら、部長の実家の鶏を使ってるって」
部長「そ、それの何が悪いんだよ」
戸塚平一「僕の願いはただ一つです」
戸塚平一「1か月の鶏肉料理の割合を3割以下にすること。それだけです」
戸塚平一「僕もう鶏肉食べたくないんですよ。好きだったのに」
戸塚平一「あ、あと、加賀美さんへの当たり気をつけてくださいね。あれじゃパワハラ、セクハラですよ。イマドキそんな人いませんよ」
部長「おい。そんだけ言って分かってんだろうな」
部長「正義のヒーローみたいな立ち回りしやがって。お前は俺が動けば一発なんだからな」
おう!!かかってこい、部長
〇通学路
どうやら僕は会社を辞めるらしい。意外とあっさり辞めれるんだな
これが100億円の力か
なんか辞めるならもっと会社の悪事を暴く!みたいな感じで辞めればよかった
〇シックな玄関
戸塚平一「ただいま」
戸塚真子「お!おかえり!ごめーん、また揚げ物作っちゃった」
戸塚平一「全然大丈夫だよ」
戸塚心「お父さん、お帰りー」
戸塚梨花「お帰りー」
戸塚平一「ただいま」
〇アパートのダイニング
戸塚平一「そうだ、お父さん、会社辞めてきた」
100億円という想定外の数字に冷静かつ慎重に行動している父親の姿が、嵐の前の静けさの雰囲気を醸し出していて、家族へ告白した後の状況に期待が高鳴りました。
1億円ならまだしも100億円となると現実味がなくて、喜びよりも戸惑いが勝つかもしれませんね。100億円を手に入れたのに今ひとつはじけきれていないお父さんの感じがリアルだな、と思いました。これから家族が知った時の反応が楽しみなような怖いような。