美人留学生ジェシカの訪問(脚本)
〇一軒家
〇おしゃれなリビングダイニング
今日からうちに留学生がやってくる。
オーストラリアの高校から、僕の高校に二週間、
語学留学に来ている女の子が、うちにホームステイすることになっているのだ。
(どきどきするなあ、どんな子なんだろう)
夏菜「ちょっとお兄ちゃん、なにニヤニヤしてるの、気持ち悪い!」
千秋「いや、なんでもないよ」
夏菜「ふ~ん? あやし~」
千秋「本当になんでもないって」
〇おしゃれなリビングダイニング
ピンポーン
千秋「留学生だ! はーい、どうぞ~」
ジェシカ「Hi! 初めまして、会えてうれしいデス!」
ジェシカ「ワタシはジェシカです! お願いします」
千秋「おお、美少女だ・・・・・・!」
夏菜「ちょっと、お兄ちゃん?」
千秋「ごめん、つい」
ジェシカ「Oh! ここが忍者の家ネ!? 普通の家みたいダヨ」
夏菜「ま、ままままさか! 現代に忍者がいるわけないでしょ! ね、お兄ちゃん」
千秋「ああ、ごく普通の家ですから」
千秋「でも、海外の人からすれば、日本といえば忍者とか侍とかなのかな」
(というか、夏菜はなんでそんなに動揺しているんだよ)
ジェシカ「わかってるヨ」
ジェシカ「そういうことにしておかないと、裏切り者扱いされて打首ネ」
(深い誤解があるような・・・・・・)
夏菜「そういうこと! もう、びっくりさせないでよね」
千秋「夏菜はなんで怒ってるの」
千秋「それに、変な知識を植え付けたらだめだよ」
千秋「ていうか、ジェシカさんも物騒な言葉知ってるな!?」
〇おしゃれなリビングダイニング
春子「はいはい、二人ともジェシカちゃんと仲良くね」
ジェシカ「サムライのお出ましダヨ」
千秋「ああ、姉さん」
ジェシカ「姉様だったネ」
ジェシカ「姉様はサムライだったヨ」
千秋「いやいや、姉さんは帯刀しているけど、侍じゃないよ」
千秋「趣味で帯刀してるだけ」
ジェシカ「趣味で・・・帯刀?」
千秋「単語が難しかったかな」
ジェシカ「そこじゃないヨ」
夏菜「あれ、お姉ちゃんすごい荷物」
夏菜「どうしたの?」
春子「秘密のルートで入手したの」
春子「今日はお祝いにごちそうを作るから、その買い物」
ジェシカ「姉様、かたじけないヨ」
春子「異国からの姫様がやってくるんだから、これくらいのおもてなしをしないと!」
夏菜「なにこれ、まぐろ!?」
夏菜「しかも丸ごと一匹!?」
ジェシカ「ノンノン、食材として魚を数えるときは、一尾って数えるヨ」
千秋「へえ、そうなんですね」
千秋「って留学生なのにマニアックな知識持ってるな!!」
ジェシカ「厳密にいえば、丸ごとなら一本二本って数えることもあるネ」
ジェシカ「解体されると一丁二丁になって、刺身になると一切れ二切れって数えるヨ」
千秋「詳しすぎるだろ」
ジェシカ「ワタシ、日本文化がとても好き! たくさん勉強してきた」
夏菜「めちゃくちゃいい子じゃん」
夏菜「お兄ちゃんと交代して、私のお姉ちゃんになってくれないかな」
千秋「夏菜はお兄ちゃんのことが嫌いなの?」
夏菜「そういうところがね」
千秋「え・・・」
春子「はいはい、そんなことより、さっそくまぐろの解体ショーを始めるわよ」
千秋「そんなことより!?」
夏菜「さんせーい」
夏菜「でもなんでまぐろの解体なの?」
春子「せっかくなら日本らしいものに触れてほしいじゃない」
春子「日本文化を学べる食事といえば、まぐろの解体ショーしかないでしょ」
千秋「それはどうだろうか」
千秋「って、刀で解体するの!?」
春子「当たり前」
ジェシカ「Wow、サムライソードかっこいいヨ」
ジェシカ「ワタシもサムライになりたいネ」
春子「千秋、お父さんを呼んできて」
春子「ショーには盛り上げ役が必要でしょ」
ジェシカ「Hmm、父様は盛り上げるのが得意ネ?」
〇おしゃれなリビングダイニング
お父さん「〽目に映る あなたの姿と まぐろショー この瞬間を お祝いしよう」
千秋「ご覧の通り、父は歌人なんです」
ジェシカ「Oh・・・ツッコミが機能してないヨ」
お父さん「〽こんにちは 初めましての お嬢さん 今日から君も 家族の一員」
ジェシカ「父様優しいヨ」
春子「さあ、それじゃあ盛り上がってきたところで、しゅばばばっと解体するわよ!!」
ジェシカ「すごいヨ、目にもとまらぬスピードでまぐろが解体されていくネ・・・」
春子「あら、おなかのあたりに何か・・・」
春子「これは!?」
千秋「なんだ!? まぐろのお腹から大量の・・・金貨!?」
ジェシカ「oh my goodness! これがホントのへそくりネ」
千秋「うまいこと言ってる場合ですか!? まぐろにへそはないでしょ!」
千秋「にしてもなんでこんなところに金貨が?」
千秋「ずいぶん古いものみたいだけど」
夏菜「ど、どうしてこれがここに・・・!?」
千秋「夏菜、何か知っているのか?」
春子「なるほど、そういうことね」
夏菜「お姉ちゃん、もしかして」
春子「あら、私がなにも知らないとでも思っていたのかしら」
〇おしゃれなリビングダイニング
春子「あなたの正体はとっくに見破っているのよ!」
夏菜「あぶない!!」
夏菜「刀を振り回さないでよ!!!!」
春子「おっと、あなたも手裏剣投げてこないでくれる? あぶないでしょ」
春子「まあ、遅すぎて避けるまでもないくらいだけど」
夏菜「はあ!?」
千秋「ちょっと!! やめろよ、二人とも」
千秋「手裏剣も刀も危ないだろ!? なんでそんな危ないもの持ってるんだ!?」
春子「ちょっと」
夏菜「お兄ちゃんは黙ってて!!」
春子「そうよ、黙ってなさい」
千秋「ええ・・・ひどい」
千秋「ねえ、父さんもあの二人を止めるの手伝ってよ」
お父さん「〽言葉より 伝わるものが ときにある 今がその時 手出しは無用」
千秋「そんなあ」
ジェシカ「ワタシ、なんだかわくわくしてきたヨ。これが本場のバトルロイヤルネ」
千秋「おい、あんまり近づいたらあぶな・・・」
ジェシカ「大丈夫ダヨ!」
夏菜「はああああっ!」
春子「とおりゃああああ」
千秋「って、えええええ!?」
千秋「(ジェシカさん、まな板で二人の攻撃を防いでいる!?)」
千秋「(ジェシカさん、いったい何者なんだ)」
ジェシカ「安心したまえ、みねうちダヨ」
ジェシカ「一度言ってみたかったセリフネ」
春子「へえ、なかなかやるわね」
ジェシカ「では母上、ワタシに免じて続きを調理してほしいヨ」
ジェシカ「ワタシの腹の虫が泣き止まないネ」
春子「もちろんよ」
春子「じゃあ、千秋も手伝ってくれる?」
千秋「ああ、もちろん」
千秋「夏菜も手伝え」
夏菜「えー食べる専門なのに~」
ジェシカ「ワタシも手伝うネ」
ジェシカ「切り刻むのと叩き潰すのは得意ダヨ」
千秋「物騒だな」
千秋「それほんとに料理の話ですか」
お父さん「〽めでたしめでたし」
ジェシカ「明日が楽しみネ」
ジェシカさん、なかなかクセの強い子だなーと思って読んでいたら、立花家の面々はそれを上回る個性が……この組み合わせ、一体どうなっていくのでしょうか
「ほのぼの系クレイジー(+ちょっぴりアクション)」という新しいジャンルの誕生に立ち会った気分です。短歌を詠んでるんじゃなくてセリフを区切って言ってるだけのお父さんがいい味出してますね。