英雄親子は名誉を捨てる

筑豊ナンバー

10話「求めていた者」(脚本)

英雄親子は名誉を捨てる

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〇暖炉のある小屋
アレックス・ワトソン「もうお前の仲間はいない。少なくともこの村にはな。助かりたいならてめえらの残りの戦力を答えろ」
邪教徒「・・・・・・貴様らただですむと思うな!」
邪教徒「ぐっ!!」
不知火 白夜「お前が喋っていいのは質問に対する答えだけだ」
邪教徒「おーおー!!誰かと思えば裏切り者の英雄様じゃないか!どの面下げて俺の前にたってんだ?」
不知火 白夜「勝手にしゃべるな」
邪教徒「赤目の旦那!気を付けろ!コイツはすぐに人を裏切るぞ!」
不知火 白夜「黙れ!」
アレックス・ワトソン「落ち着け!殺したら何にもならないだろ?」
邪教徒「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
アレックス・ワトソン「何が可笑しい?」
邪教徒「貴様らは我々を殺し全てが終わると思っているだろ?それが滑稽でな!」
不知火 白夜「なに?」
邪教徒「魔王様は復活する必ずだ!全ての準備は整った。もう誰にも止められない!」
アレックス・ワトソン「な!?」
邪教徒「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
  男は自ら舌を噛みちぎったそして血を吐き出しながら絶命する最後の瞬間まで笑い声を上げた。
アレックス・ワトソン「なんなんだコイツは?!」

〇教会の中
ミカ「クッ!!」
不知火 明花「どうした?なまってんのか?英雄が聞いて呆れるぜ」
不知火 明花(さっきからのコイツの剣に殺意がない。  こいつはそもそも俺を殺そうとしていないのか?)
不知火 明花「なぜ攻撃してこない!?手加減のつもりか?偽善者が!なめやがって!!」
ミカ「ッ!!?」
  忍者刀を振り上げ、日本刀をき飛ばしそのまま丸腰になったミカの首に刃をあてる。
不知火 明花「なぜだ!なぜまともに戦おうとしない!? 答えろ!でなければこのまま殺す!」
ミカ「私は貴方を殺さない。偽善かもしれないけど私は魔王を最後の犠牲者にするって決めたから!!」
  ここまで来て目の色一つ変えない。
  死を覚悟している者の目だ。
   気に食わねえ。
不知火 明花「あーそうか!わかったよ。このままあんたもあんたの友人も死ぬ。それを受け入れたってことにだろ?」
ミカ「いいえ。私を殺しても構いません!だからもうやめてください!!」
不知火 明花「そんな都合のいい話があると思ってんのか?」
ミカ「・・・・・・」
不知火 明花「まぁいいさ!お前を殺したあとすぐにお前の仲間も送ってやるからよ!」
ミカ「だったら私は!」
  袴に2本の刀。間違いない。魔王を倒したと言われる「魔王殺し」の姿だ。
不知火 明花「そーだよ!最初からそれで来れば良かったんだ!」
不知火 明花「チッ!」
  ミカはノーガードで構える事なく最低限の動きでかわしてくるため一項にこちらの攻撃が入る気がしない。
  あまりにも次元が違いすぎる。
  今まで感情をここまで読み取れなかったのは魔王以来で攻撃するたびに恐怖心が強まっていく。
  このままじゃ殺られる。
不知火 明花「なら!こんなのはどうだ?」
  明花が右手で「何か」を引っ張り上げた瞬間周囲に仕込んで置いた糸が一斉にミカに絡まり拘束した。
不知火 明花「どうだ?動けないだろ?」
ミカ「・・・」
不知火 明花「な?!」
  ミカは刃を自分めがけ振り下ろした。
  目を疑う光景だった。
  明らかに自分自身を切ったはずのミカは無傷で巻き付いた糸のみを切り落としているのだ。
不知火 明花「ウソ‥だろ?」
  あっけに取られていればミカはこちらへゆっくりと歩いて距離を詰めてきていた。
   間合いまで詰められてからは一瞬だった。
  一振りで得物を弾かれる。
  ニ振りで隠し持った糸を切り落とされた。
  三振り目は首元でピタリと止待った。
ミカ「私の勝ちですね!」
  無表情だったミカの顔は安心したように笑顔になりもとの姿に戻った。
不知火 明花「なぜ殺さない!なぜだ!!」
ミカ「私は人殺しは嫌いですから! ずっと言ってるじゃないですか」
不知火 明花「お人好しかよ」
ミカ「そう思ってもらえて構いませんよ。‥それにわたしが本当に助けたかったのは貴方ですし」
不知火 明花「は?」
ミカ「戦争中、ちょっと医療をかじってたのでわかったんですよ。貴方が使ったのは「毒」ではなく「麻痺」の薬品だったって」
不知火 明花「そうだっのかよ‥」
  完敗だ。ミカは全部わかった上で俺のとこに来た。
   それも居場所がなく復讐以外の生きる理由を失った俺を助けるために。
不知火 明花「俺の負けだ。好きにしてくれ」
  何をさせられても文句は言えない。
  俺は敗者、ミカは勝者だ。
ミカ「なら私と──」

〇ヨーロッパの街並み
リンカ「やっとついた!」
  東の国に到着した一行。
  ここからは別行動だ。
不知火 白夜「じゃあ俺はこれで」
リンカ「え?せっかくだし町を案内してよ!」
不知火 白夜「俺は明日から仕事なんだよ。他をあたれ!」
リンカ「え~・・・」
アレックス・ワトソン「白夜。何度も助けられたな。ありがとう」
不知火 白夜「こっちの台詞だ。じゃあまたなアレックス。今度は飲みに行こう」
リンカ「まぁしょうがないか・・・」
リンカ「付いて来てよ。昔の記憶だからあんまり宛にならないかもだけど。町を案内するから!約束もあるしね」

〇教室
ミカ「大丈夫?体の調子は?」
ラン「大丈夫だよ!なんか昨日の記憶はぶっ飛んでるけど!」
ミカ「きつかったらすぐに言ってよ!」
ラン「大丈夫だって!」
  麻酔を打たれたあと、まあまあの勢いで地面に倒れ込んだため強く頭を打っていたように見えた。
  少し心配だが元気そうでよかった。
  念のため様子はみておこう。
不知火 白夜「席に着け。ホームルームを始める」
  無傷でリンカの救出に成功した後仕事だからと普通に何事も無かったかのように復帰してきた。
  かなり疲れはたまっているだろうに一切それを感じさせない毅然な態度は軍人時代のブラック労働で身に付いたものだろう。
「突然だが転校生を紹介する」
不知火 白夜「北の島国から来た不知火 明花だ」
不知火 明花「死ね!!クソ兄貴!!」
不知火 白夜「この通りなかなか気が荒いが運動神経はなかなかのものだ。スポーツにでも誘ったりして仲良くしてやってくれ」
「今先生に殴りかかってなかった?てか「兄貴」って?」
「あの子めちゃくちゃ美人じゃん!どヤバそうだけど!!」
不知火 明花「ご紹介に与りました。不知火 明花です」
「え!」
「不知火ってまさか!?」
不知火 明花「皆様お察しの通り私は不知火 白夜の実の妹です。兄が何時もお世話になってます」
「えェエエエエエエエエエエエエエ!!!!?」
不知火 明花「色々あって疎かになっていた学問を取り戻すため、ここで勉学に励んで行こうと思います」
不知火 明花「迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします」

〇要塞の廊下
不知火 白夜「無責任なことを頼むようだが・・・明花のことをよろしく頼む。 今更兄貴ズラ出来る立場じゃない。お前になら安心して頼める」
ミカ「・・・わかりました。ただし!ちゃんと仲直りしてください!」
不知火 白夜「・・・」
ミカ「明花はあなたの事を誤解している。 あなたはただ「裏切った」だけでは無いじゃないですか!」
不知火 白夜「俺が裏切ったのは事実だ」
ミカ「でも!!それじゃあ!!」
不知火 白夜「俺にはもうアイツになにしてやれないんだ。 頼んだミカ」
  白夜は「裏切りの英雄」と呼ばれている。
   由来は仲間、主君である魔王、家族を裏切ったからだ。
  彼が教師になったのは今思えば明花がいつか現れたときの居場所を作っておくためだったのだろう。
  彼が抱えている物は戦争が終わった今、より重く辛いものに変わったことだろう。
   白夜の背中は何処か寂しく見えた。

〇ファンタジーの学園
リンカ「いやー歳は離れてるけどこうしてデートするのも面白いもんだね」
アレックス・ワトソン「・・・デートか・・」
  怒られる覚悟で言った冗談だったが以外にもアレックスは笑った。
リンカ「着いたよ。ここが君の娘さんが通ってる学園だ」
アレックス・ワトソン「・・・ここにあの子がいるのか・・・」
リンカ「ここからは君一人の方がいいだろ?」
アレックス・ワトソン「・・・」
リンカ「じゃあ後で東部協会に来てくれ。そこで待ってるから」
アレックス・ワトソン「わかった」
アレックス・ワトソン「・・・」
  もう少しで会える。
  やっとこの時が──
ミカ「あの!」

次のエピソード:11話「再開と決断」

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