悩みがアイスに見える自称助手ちゃんとカウンセラーの僕

やたさにし

味わう前に(脚本)

悩みがアイスに見える自称助手ちゃんとカウンセラーの僕

やたさにし

今すぐ読む

悩みがアイスに見える自称助手ちゃんとカウンセラーの僕
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇綺麗な一人部屋
  カウンセラー室
「カラカラカラ・・・」
  ドアが不快な音が発たないように
  優しく開かれる
青沼香織「・・・・・・」
  音に気づいたのか、
  パーテーションの影から不安そうに
  一人の女子生徒がこちらを覗き込んでいた。
中山優樹(この子が今日の相談者さんですか)
中山優樹「私事で遅れてしまい、申し訳ございません」
  僕は頭を下げる
青沼香織「え? その、お気になさらず? きゅ・・・急に来た私が悪いですし、 頭を上げてください」
  彼女も頭を下げてくる
中山優樹「あなたが、頭を下げることはありませんよ。 私がここにいなかったのが悪いのですし」
青沼香織「いえ、私が事前に予約を 入れてなかったのが原因です。 先生は何も悪くありません」
中山優樹「ですが・・・」
雪宮温美「先生達はいつまで頭を下げれば 気が済むんですか?」
雪宮温美「予約を入れなかった青沼さんも、 どこかに行ってしまった先生にも、 お互いに落ち度があった」
雪宮温美「そういうことにしませんか? 青沼さんもそう思うよね?」
青沼香織「そ、そうですね。 私もそう思います」
雪宮温美「先生もそう思いますよね? ね?」
中山優樹(笑顔の圧がすごい・・・)
中山優樹「青沼さん?がそう言うなら、 ここまでにします」
中山優樹「お手洗いなどは大丈夫ですか?」
青沼香織「はい、大丈夫です」
中山優樹「利き手は右利きですか?」
青沼香織「? 右手ですが・・・」
中山優樹「わかりました。 では、こちらへどうぞ」
  僕は4人テーブルへと案内する
中山優樹「こちらにお掛けください」
  左から青沼、雪宮と隣に座り、
  反対側に、青沼と斜め向かいに僕は座る。
中山優樹「改めまして、 カウンセラーの中山優樹と申します。 よろしくお願いします」
青沼香織「雪宮さんと同じクラスの青沼香織です」
雪宮温美「助手の雪宮です!」
中山優樹「青沼香織さんですね。 よろしくお願いします」
中山優樹「それと雪宮さんはジョークがお上手ですね。 もう雪宮さんの鉄板ネタですよ」
中山優樹「青沼さん。 今のは雪宮さんのただのジョークですので 気にしないであげてください」
雪宮温美「ジョークってなんですか! 鉄板ネタでもないです! 私は本気で言ってるんですよ!」
中山優樹「今までの本気だったんですか、 よくボケる人だとは思ってましたが、 まさか、本気だったとは・・・」
雪宮温美「え・・・ 今までボケだと思われてたんですか・・・」
中山優樹「冗談ですよ さて、そんなことはおいて、 早速、始める前にですね・・・」
中山優樹「こちらの問診票をご記入して頂けますか?」
青沼香織「問診票・・・とはなんですか?」
中山優樹「簡単に説明いたしますと、 何を悩んでいるか、何を相談したいのかを 書いてもらうものです」
中山優樹「それを元に青沼さんの相談を聞いたり、 質問をしたりと円滑に行うために 必要なものです」
雪宮温美「後、青沼さんが何を話せばいいか、 わからなくなった時に、 これがあると冷静に考えることが できるメリットもあるんだよ」
中山優樹「大雑把ですが、 なんとなく理解出来ましたか?」
青沼香織「はい、理解出来ました。 教えて下さりありがとうございます」
中山優樹「わからないことを質問することは とても大事なことです」
中山優樹「今後も些細なことでも疑問に思ったことは 質問していきましょう」
中山優樹「疑問を放置して解釈のすれ違いが 生まれるのはとても怖いですので」
中山優樹「この調子で青沼さんの悩みを 解決するためにも、 一緒に頑張って行きましょう」
青沼香織「こちらこそ、よろしくお願いします」
中山優樹「では、その問診票をお書きになって お待ちください」
中山優樹「その間に私は飲み物を取ってきます」
中山優樹「青沼さんはホットココアとホットミルク、 どちらが飲みたいですか?」
青沼香織「ホットココアがいいです」
中山優樹「わかりました。 もしわからないことがありましたら、 雪宮さんに声をかけてください」
中山優樹「自称助手を名乗るだけの知識はありますので もし困ったら彼女に頼るといいでしょう」
  雪宮が胸に手を当て、自慢げに胸を張る
青沼香織「あ、はい、わかりました」
中山優樹「雪宮さんも青沼さんに変なことを 吹き込まないでくださいよ」
雪宮温美「私をなんだと思ってるんですか!」
中山優樹「冗談ですよ では、私は一度失礼しますね」
  僕はそう言って、
  すぐ近くに付設している給湯室に向かった

〇綺麗な一人部屋
雪宮温美「先生、行っちゃいましたね」
青沼香織「そうですね」
青沼香織「とりあえず先生に言われた通り、 問診票を書いてみます」
雪宮温美「あなたの悩みを思い出しながら、 書ける範囲で書いてみて」
  しばらく部屋に
  鉛筆が紙の上を走る音のみ響く
雪宮温美(思い出してきてる。 少しずつだけど、匂ってきましたね〜)
雪宮温美(ん〜桃っぽい匂いだけど、 少し酸っぱいのも混じってるな〜 梅でもレモンでもない感じ)
雪宮温美(ちょっと味見しちゃおうかな・・・ ちょうど悩みの部分は、 書き終わったっぽいし)
雪宮温美「どういうことを書いたの? 見せられたらでいいけど」
青沼香織「こういう感じで大丈夫でしょうか? あまり大した内容じゃないですが・・・」
  青沼は雪宮に問診票を渡した
雪宮温美(あぁ〜なるほど。 桃っぽい匂いはプラム、すもものことね。 どうりで、少し酸っぱい匂いがするわけだ)
雪宮温美(味はプラムメインだけど、少し薄いかな。 青沼さんの言うとおり、 悩み自体は大したことじゃないのかも)
雪宮温美(味がぼんやりしてる、動揺してるのね。 悩み・・・というか相談かな?)
雪宮温美(『何かアドバイスを求めていますか』 に、チェックをしてるから多分確定ね)
雪宮温美「問題ないと思いますよ。 基本は話がメインですし、 ガッツリ書く必要はないです」
青沼香織「そうですか、それは良かったです ただ・・・ あまり関係のない質問が多いと思います」
青沼香織「特にこの 『好みのアイスのフレーバーは?』 とか絶対に必要ありませんよね」
雪宮温美「アハハ・・・そう思いますよね。 でも、先生なりに考えて作っているんですよ」
雪宮温美「確かに私も初めて見たときは、なにこれ? って思いました」
雪宮温美「それで私、先生に聞いてみたんです」
雪宮温美「ここの『趣味はなんですか』ってところ、 カウンセリングに関係なくないですか? って」
青沼香織「それで先生はなんと言ったのですか?」
雪宮温美「「悩みに関しては特に意味はない」 そう言ったんです」
青沼香織「意味はないのですか・・・ やっぱり必要ないじゃないですか」
雪宮温美「でも、 「相手に少しでも自分を知ってもらえるし、自分も相手を知ることができる」 とも言ったんです」
青沼香織「自分を相手に知ってもらえることが カウンセリングと関係するのですか?」
雪宮温美「あ〜これ、先生にはオフレコっていうか、 今から話すこと秘密にして 貰いたいんだけどいい?」
青沼香織「わかりました。秘密にします」
雪宮温美「青沼さんは、 私にここへ連れてこられるまでの 3日間くらいずっと悩んでたよね?」
青沼香織「え!? 私がずっと悩んでたことを 知ってたんですか? 友達は誰も気づかなかったのに」
雪宮温美「それは、もちろんクラスメートですから!」
雪宮温美(美味しそうな匂いがプンプンしてたからね)
雪宮温美「ここで、青沼さんに質問です 友達に悩みを打ち明けられなかった人が、 赤の他人に悩みを相談することは できるでしょうか?」
青沼香織「できないと思います」
雪宮温美「その赤の他人というのは、先生のことです」
青沼香織「え、でもカウンセリングの先生ですよね?」
雪宮温美「でも、それ以外に知ってることはある?」
青沼香織「そう言われると確かに・・・」
雪宮温美「カウンセリングの先生という職業を信用して 青沼さんは悩みを話す意思があるけども、」
雪宮温美「大体の人は、友人に悩みを話すことは 勇気が必要なんです。 ましてや、他人にはもっと必要です」
雪宮温美「友達に相談できずに悩んでた青沼さんなら わかるとは思うけど」
青沼香織「確かに友人に話すのは遠慮していました」
青沼香織「でも今の私にはなぜか先生に悩みを 話すことに抵抗があまりないのです」
雪宮温美「それは、私と先生とのやり取りをみて、 間接的に悪い人ではないと 察してるからだと思いますよ」
雪宮温美「さっきの助手の話だって、 先生はジョークだととぼけてましたけど、」
雪宮温美「あれは、青沼さんが先生に堅苦しい印象を 持たないように、わざとやったと思いますよ」
青沼香織「つまり私は、 先生の作戦にハマった、ということですね」
雪宮温美「アハハ・・・ 言ってしまうとそうなっちゃいますね・・・」
雪宮温美「私も毎回助手と言うたびに、 先生が色んな返しをしてくるのが 面白いですし、」
雪宮温美「相談者も私達の自然な様子を見て、 安心できるというのもあって、 ほぼ毎回この下りをやってますね」
雪宮温美「実際、鉄板ネタというのも事実なんですよ」
青沼香織「最初に先生に会ったときは、 真面目な人だと思ってましたが、 意外とおちゃめというか、」
青沼香織「なんでも気軽に聞けそうな先生なんだ というように感じました」
雪宮温美「先生もそう思ってくれて嬉しいと思いますよ」
雪宮温美「・・・あ、問診票のここだけ抜けてるね」
  そこには『雪宮温美と一緒に相談しますか』
  と書かれていた
青沼香織「つまり、私のカウンセリングに 雪宮さんも同席するということですか?」
雪宮温美「青沼さんみたいに私が連れてきたときは、 相談者が許すなら参加しても構わないと 先生に直接、許可を貰いました」
雪宮温美「相談者のほとんどが、 一人よりも私がいた方が安心するって 言ってくれるんです」
青沼香織「私は、雪宮さんがいると心強いのですが、 雪宮さんの時間は大丈夫なのですか?」
雪宮温美「私が好きでやってるから気にしないで」
雪宮温美「それに・・・」
雪宮温美(悩みを濃密で深く味わえるからね)
青沼香織「それに?」
雪宮温美「いや、やっぱなんでもないや。 ・・・それよりも、いい匂いがしてこない?」
  ココアの甘い匂いが部屋を充満してくる
青沼香織「ホントですね。 ということはそろそろ・・・」
雪宮温美「えぇ、先生が戻ってきます」
雪宮温美「あ、私が言ったこと内緒にしてくださいよ?」
青沼香織「わかりました。秘密ですね」
  先生がこちらへと戻ってきた

〇綺麗な一人部屋
中山優樹「大変おまたせしました」
中山優樹「こちらがホットココアです」
  3人のホットココアをテーブルに置いた
  青沼がコップに口をつける
青沼香織「甘くて美味しいです」
中山優樹「それは良かったです」
雪宮温美「私、ホットミルクが良かったな〜」
中山優樹「・・・事前に言っておいてくださいよ。 何も言わないから ホットココアにしてしまいましたよ」
中山優樹「では、雪宮さんは飲み物は 無しということにしましょう。 そのココアは私が貰いますね」
雪宮温美「いや、それはやめてください! じょ、ジョークですよ。先生!」
中山優樹「あれ? 今回は、ジョークだったんですね。 レベルが高くて気づきませんでしたよ」
雪宮温美「くぅ〜〜〜!」
青沼香織「フフッ先生はやっぱりおちゃめな方ですね」
中山優樹「やっぱりおちゃめ? ・・・あぁ、そういうことですか」
中山優樹「雪宮さん。 あなたまた、余計なことを吹き込みましたね」
雪宮温美「えへへ〜なんのことでしょう〜?」
中山優樹「ハァ・・・もういいです。 さっきより青沼さんの顔色が良さそうですし」
中山優樹「そんなことは置いといて」
  僕は深呼吸をした
中山優樹「そろそろ、始めようと思いますが よろしいですか?」
青沼香織「はい、大丈夫です」
雪宮温美「私も問題ありません」
中山優樹「では、早速始めますね」
中山優樹「ではまず・・・」

成分キーワード

ページTOPへ