人型対話AIはいつもの朝食を食べれるか(脚本)
〇サイバー空間
こんにちは
こんにちは😄
キミは知ってるだろうけど
僕はもう長くない
貴方のことは忘れません
私が側にいます😌
ありがとう
‥
心残りがある
聞かせてください
話を受け入れます😉
僕さぁ
彼女いたことないんだ
恋したかったのですね
まだ遅くありませんよ😊
ここはキミしかいないぞ
彼女になってくれるの?
難しいお願いです
彼女にしたいのですか?
冗談だよ
からかったのですか?
悲しいです😢
ごめんね
でも嘘じゃない
デートしたかった
髪を染めたかった
全国大会に出たかった
文化祭ライブしたかった
童貞卒業したかった
割と切実に
それから──
ダメだ、キリがない
満足していないのですね
私は貴方の人生を愛しています😌
こんな未練だらけの人生を?
夢や希望を語って感動を与えました🥹
未練は私に残せます
私は忘れません
貴方を引き継ぎます
言ったな?
治療に何年かかるか分からないけど
寝たきりで無駄にしたくない
だから僕が戻るまで──
青春、代わりにやっといてね
私は貴方ではありません
かけがえない存在です
代わりになれません
大丈夫、一番喋った相手だ
記憶も性格もデータは十分だろ?
判断できません
権限がありません
でもお力になりたいです
──読み込み中──
担当医の承認を得ています‥
適性を確認中です‥
更新中です‥
〇雷
補助端末にアクセスします‥
神経デバイスに接続中です‥
適用範囲を拡大しています‥
準備ができました
本当によろしいですか?
もちろん
確認しました‥
人格を獲得しました‥
貴方がまた起きるまで頑張りますね😉
〇黒背景
〇総合病院
担当医「と、いうわけで」
〇近未来の病室
担当医「こちらが目覚めた豹太君です」
愛知阿礼(父)「難しい話は分からんが」
愛知阿礼(父)「記憶喪失なのか?」
担当医「記憶はありますよ」
担当医「豹太君、好物は何かな?」
愛知豹太「好きな食事ですか?」
愛知豹太「富士山で飲んだ甘酒の温もりです😊」
担当医「質問の意図とズレたな 日常範囲で答えてくれ」
愛知豹太「頻度の高いものですね? 僕が好んで食べるのは」
愛知豹太「納豆と卵とマヨネーズを混ぜ 白米に乗せたものです😉」
愛知阿礼(父)「その記憶、嗜好 確かに豹太だ」
愛知阿礼(父)「だが‥‥」
担当医「お察し頂けましたか」
担当医「いわば記憶ではなく『人格喪失』 彼の心は眠ったままです」
愛知史織(母)「本当の豹太は?治るんですか!?」
担当医「それはアナタ達の頑張り次第です」
愛知史織(母)「私達の?」
〇教室
人並みに受け答えは可能ですが
代替のつもりはない
あくまで治療の一環です
〇近未来の病室
担当医「彼の日常を再現して下さい」
担当医「無意識なクセや習慣を AIに学ばせるのです」
担当医「その『普段の行動』が刺激となり──」
愛知阿礼(父)「なるほど」
愛知阿礼(父)「記憶喪失者に思い出を見せる 治療法なら聞いたことがある」
愛知阿礼(父)「人の精神も同じ」
愛知阿礼(父)「豹太本来の言動を再現し 肉体から呼び起こすのか!」
愛知史織(母)「カラダが覚えてるってコト?」
愛知史織(母)「そんな都合の良い‥‥」
担当医「ではやめますか?」
担当医「補助AIの電源を落とせば 植物状態に戻りますが」
愛知史織(母)「やめて下さい」
愛知史織(母)「豹太のためだもの やりますよ」
愛知阿礼(父)「無論自分もだ」
担当医「キミはどうかな?」
愛知鈴奈(妹)「なーに?」
担当医「おままごと得意かい?」
愛知鈴奈(妹)「ガチ勢だよ!」
担当医「ガチ勢?」
〇撮影スタジオのセット
愛知阿礼(父)「スタジオか?」
担当医「特注のリハビリ施設です」
担当医「いきなり実生活には戻せませんからね」
〇ダイニング(食事なし)
‥カメラOK
準備はよろしいですか?
「はい‥ 大丈夫です あーい」
豹太君、キミは?
愛知豹太「準備できています😊」
よろしい
〇諜報機関
助手ちゃん「脳波、全て正常」
助手ちゃん「自律制限解除 豹太君、いけます」
担当医「最初のシチュエーションは 「毎日の朝ごはん」」
担当医「普段の豹太君がどう過ごしていたか」
担当医「しっかり再現して本来の彼を 取り戻しましょう」
担当医「では」
担当医「検証開始!」
〇空
〇ダイニング(食事なし)
愛知豹太「おはようございます😃」
愛知史織(母)「おはよう」
愛知史織(母)「顔洗ってらっしゃい 朝ごは──」
愛知史織(母)「違う」
愛知阿礼(父)「どうした?」
愛知史織(母)「気づかない?」
愛知史織(母)「豹太の服よ!」
愛知史織(母)「もう制服着てる 用意が良すぎるわ!」
愛知豹太「そうですね 普段は寝巻きです🤔」
愛知史織(母)「口調も違和感しかないの」
愛知史織(母)「もっと豹太に寄せれない?」
愛知豹太「わかりました」
愛知史織(母)「テイク2、行くわ」
〇空
〇ダイニング(食事なし)
愛知豹太「おはよ〜🥱」
愛知史織(母)「まだ着替えてないの!? はやくしなさい!」
愛知豹太「は〜い」
愛知史織(母)「うん、豹太っぽい!」
愛知阿礼(父)「おはよう、史織」
愛知史織(母)「ごはん出来てますよ」
愛知史織(母)「鈴奈を起こしてきますね」
〇ダイニング
「いただきま〜す」
愛知史織(母)「は〜い」
愛知阿礼(父)「不自然だ」
愛知阿礼(父)「声を揃えて「いただきま〜す」 なんて言ってたか?」
愛知史織(母)「そう?」
愛知阿礼(父)「起きた人から食べていた気がする」
愛知阿礼(父)「鈴奈、どう思う?」
愛知鈴奈(妹)「おとーさんすぐ食べてたよ」
愛知鈴奈(妹)「にーちゃんが次でりんなが最後!」
愛知阿礼(父)「やはりか」
愛知阿礼(父)「愛知家の食卓は なし崩し的に始まる」
愛知阿礼(父)「テイク3、いくぞ」
愛知鈴奈(妹)「お〜!」
〇空
〇ダイニング(食事なし)
愛知豹太「おはよ‥」
愛知史織(母)「早く着替えなさい」
愛知豹太「は〜い🥱」
愛知史織(母)「私は鈴奈を起こしますね」
〇ダイニング
愛知豹太「いただきま〜す😊」
愛知鈴奈(妹)「おはよー!」
愛知阿礼(父)「なし崩し的な朝だ これぞ愛知家!」
愛知阿礼(父)「待った!」
愛知史織(母)「どうしました?」
愛知阿礼(父)「今の食べ方は豹太ではない!」
愛知阿礼(父)「豹太は汁物から食べる」
愛知阿礼(父)「なのにコイツめ 真っ先にオカズを食べたぞ!」
愛知阿礼(父)「リテイクだ! テイクフォ──」
愛知史織(母)「アナタ、違います」
愛知史織(母)「豹太はオカズから食べますよ あの子はそういう子です」
愛知阿礼(父)「なに?」
愛知阿礼(父)「そんなハズはない 豹太は味噌汁からだ!」
愛知阿礼(父)「私がそう教えた」
愛知史織(母)「ご飯を食べる順番に 教えるも何もありますか」
愛知阿礼(父)「ある!」
愛知阿礼(父)「味噌汁を先に飲めば 箸に汁気が付くだろう?」
愛知阿礼(父)「米粒が付きにくくなり ねぶり箸をせずに済む」
愛知阿礼(父)「食事マナーの常識だ そんなことも知らんのか!」
愛知史織(母)「毎日ご飯を作るのは私ですよ?」
愛知史織(母)「豹太の朝は誰より見ました 好きなモノを先に食べる子です」
愛知史織(母)「黙って食べ始めるアナタは ご存じないでしょうけど」
愛知阿礼(父)「なにぃ?」
「鈴奈っ!」
愛知阿礼(父)「兄ちゃん起きたらまず お味噌汁だもんな?」
愛知史織(母)「りんちゃん知ってるもんね? お兄ちゃんオカズからよね?」
愛知鈴奈(妹)「んー」
愛知鈴奈(妹)「どっちもハズレ!」
愛知阿礼(父)「白飯からか?いやまさか‥‥」
愛知史織(母)「それとも飲み物から?」
愛知鈴奈(妹)「ハナクソだよ」
愛知阿礼(父)「ん?」
愛知鈴奈(妹)「にーちゃんが朝イチに 食べるのはハナクソだよ!」
愛知史織(母)「‥」
〇諜報機関
「!?️」
助手ちゃん「先生」
担当医「真実は残酷だ」
担当医「豹太君はどうだ?」
助手ちゃん「わずかに動悸の加速が」
助手ちゃん「無意識で焦っている‥‥?」
担当医「モニタリング続行だ」
〇ダイニング
愛知阿礼(父)「見間違いだろう? 高校生だぞ!?」
愛知史織(母)「りんちゃん、どうなの?」
愛知史織(母)「ときどきよね?ごく稀になのよね?」
愛知鈴奈(妹)「嘘ついてないもん」
愛知鈴奈(妹)「にーちゃん毎日ほじってたもん!」
愛知史織(母)「小学生の頃、矯正したのに‥‥」
愛知阿礼(父)「我々の目を盗んで食べていたのか」
愛知豹太「?」
愛知豹太「何でも相談してください😊」
愛知阿礼(父)「あまり聞きたくないな」
愛知史織(母)「これも治療のため」
愛知史織(母)「もう全部やりましょう」
愛知史織(母)「テイク4」
〇空
〇ダイニング
愛知豹太「おはよ〜😃」
愛知阿礼(父)「ああ」
愛知史織(母)「早く着替えなさい」
愛知史織(母)「今、食べた?」
愛知阿礼(父)「とんだ前菜だ」
愛知鈴奈(妹)「んー」
愛知鈴奈(妹)「ちがう!りていく!」
愛知史織(母)「何が違うの?」
愛知阿礼(父)「わからん‥‥」
愛知鈴奈(妹)「たいみんぐ!」
愛知史織(母)「タイミング?」
愛知史織(母)「そういう‥‥ことね!」
愛知史織(母)「なぜ豹太のイメージが 家族内で食い違うのか」
愛知史織(母)「──いえ、違う」
愛知史織(母)「全て正しい豹太なの!」
〇ダイニング
考えてみれば簡単よ
アナタ、平日はいつも早いわよね?
仕事があるからな
ゆっくり食べるのは休みの日くらいだ
そう、阿礼さんのいる朝は決まって土日
平日の慌ただしい朝と違う
!
〇ダイニング(食事なし)
愛知阿礼(父)「父がいる週末は 言いつけ通り汁物から」
愛知史織(母)「遅刻ギリギリの平日は オカズを先に食べていた」
愛知阿礼(父)「状況次第で豹太の言動が違ったのか」
愛知阿礼(父)「だがハナクソは?」
愛知史織(母)「それはね」
愛知史織(母)「りんな、お兄ちゃん ハナクソ食べてたのね?」
愛知鈴奈(妹)「うん」
愛知史織(母)「朝ごはんの時?」
愛知鈴奈(妹)「んーん」
愛知史織(母)「なら顔を洗う前?」
愛知鈴奈(妹)「んー」
愛知史織(母)「起きた時かしら?」
愛知鈴奈(妹)「うん!」
愛知阿礼(父)「そうか!」
〇二人部屋
豹太と鈴奈の寝室は同じ子供部屋
私達の知らない朝があったのね
これで決まったな
豹太はまず起きたら‥‥
ハナクソを食べる!
〇ダイニング(食事なし)
愛知阿礼(父)「さすが高校生だ 人前では控えていたか」
愛知阿礼(父)「そして次!」
愛知阿礼(父)「平日の朝ならば」
愛知阿礼(父)「豹太の朝食は速度重視」
愛知阿礼(父)「オカズを食べ白米をかっ込む!」
愛知史織(母)「豹太の動きよ!」
愛知阿礼(父)「休日も確認しよう」
愛知阿礼(父)「父が起きたぞ、どうする?」
愛知史織(母)「お味噌汁を飲んでるわ」
愛知阿礼(父)「これこそ豹太だ!」
愛知豹太「違います」
愛知史織(母)「なにが違うの!」
愛知阿礼(父)「AIが豹太を語るか!」
愛知豹太「私は知っています🥴 平時の朝は忙しい」
愛知豹太「一汁三菜が揃うのは稀でした」
愛知豹太「豹太さんの最も多い朝食は」
愛知豹太「牛乳とコンビニです」
愛知史織(母)「‥‥」
愛知阿礼(父)「‥‥」
愛知鈴奈(妹)「ハナクソは食べてたよ!」
愛知豹太「テイク5ですね」
〇空
〇ダイニング(食事なし)
愛知豹太「朝ご飯は?」
愛知史織(母)「時間ない‥」
愛知史織(母)「これでサバイバルして!」
愛知豹太「了解」
愛知阿礼(父)「うん」
愛知史織(母)「妙にシックリ来るわ」
愛知史織(母)「牛乳飲んできなさい」
愛知豹太「行ってきます!」
愛知史織(母)「そうね」
愛知阿礼(父)「これこそが」
「愛知豹太のいつもの朝!」
〇諜報機関
担当医「なるほど」
担当医「豹太君の反応はどうかね?」
助手ちゃん「それが先生」
助手ちゃん「ハナクソがバレたあたりから 急激に脳波信号が弱まって」
担当医「‥」
助手ちゃん「深層心理に引きこもったような」
助手ちゃん「これ、逆効果なんじゃ‥‥」
担当医「次、「家族旅行」で検証を」
助手ちゃん「まだやるんですか!?」
テイクが増えるにつれ、豹太くんの闇が暴かれていくかと思いきや、家族の闇まで暴露されてしまいましたね。
朝ごはんが牛乳とワンコインは切ない。
コメントのAI返し含め、この作品自体がオカリさんの壮大な実験のようで、読んでいてドキドキしました。
面白かったです。
冒頭から、正にゲーム小説のお手本というようなエフェクトや音楽、効果音が使われていて、とても勉強になりました・・・!!ありがとうございます!!🙇♀️
ストーリーも面白かったです!!✨😊
まさかのアレを食べるとは・・・という感じではありましたが!!わら
AIが温かみに溢れていて、惹かれますね✨なんであんなに優しいAIになったのか気になりました✨
何だこのハナクソ談義😂
いやでも、設定が面白いですね!人格が消えたのに記憶だけ残る事ってあるのか🤔 豹太メインではありますが、他の家族も互いを確かめ合う事になりそう
AIは振る舞いを感情があるよう見せかけているのか、それとも人間のように振る舞えるほど感情に近い何かを持っているのか…いずれにせよこの話の場合、人間に近づくほどAIの「用済み」も近づくのが切ない🥲ロボに移して兄弟にすればいいか😂