宇宙Babyあるはちゃん‼

くらま

あるはちゃんと!(脚本)

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〇宇宙空間
  宇宙は広い。
  とても壮大だ。
  そんな宇宙の中では、わたしたちの予想もつかないようなことも多々起こりまして。
  問題はそれがよそではなくわたしんちで起きたってこと。

〇一軒家

〇男の子の一人部屋
あずき「べいとー。そろそろ出なくちゃだよー!」
あるは「ばぶー」
べいと「ふむふむ、なるほど」
あずき「何がなるほどだ」
あずき「あるはの子守してくれるのはありがたいけど、あんたも幼稚園行かなくちゃなんだから」
べいと「わかってる」
あずき「・・・で?」
あずき「あるは、ずいぶんはしゃいでるけど、何の話してたの?」
べいと「量子もつれとその今後の展開について」
あずき「はあ?」
あるは「ばぶー、ばぶっ! きゃはは!」
べいと「僕らの科学水準がいかに拙劣なものであるか、あるはに笑われてしまった」
あずき「お、おう・・・」
べいと「やっぱ凄いよ、宇宙生命ってのは!」
  我が家に奇妙な出来事が起きたのは一月前のこと

〇大きい研究所

〇研究所の中
  ママの勤め先である研究所
律「天田君、この前のブラックホールの観測結果なんだけど・・・」
律「えっ・・・何?」
  ハロー、聞こえているだろうか、人類
律「何この声? 聞こえてる、みんな?」
研究員「ええ、何か頭に直接響くような・・・」
  そう。私は君たちの意識に直接話しかけている。
  私は天の川銀河を統括する宇宙生命体である。
  簡潔に言う。
  我々の目的は、君たち人類が、我々の一員として迎えうるにふさわしい知的生命体に進化したかどうか見極めることである。
  合格なら、君たちは天の川銀河の生命としてこれまで通りの暮らしが約束される。
  だが、もし不合格ならグレートリセット。
  君たち人類はこの宇宙に初めから存在しなかったものとして抹消される。
律「なんですって?」
律「・・・その判定基準は?」
  ランダムであなた方の形成する共同体の最小単位であるところの『家族』に我々の一部たる意識を送り込む。
  そこでの観測によって判定は下される。
律「そんな曖昧な!」
  見波律。あなたの家族が選ばれた。健闘を祈る。
律「ちょっと待って!」

〇一軒家

〇明るいリビング
あずき「ママ!」
律「はあはあ、あずき・・・」
律「何か変わったことなかった・・・?」
あずき「それが・・・」
あるは「ばぶー!」
あずき「あるは、浮いてるの」
あずき「これってどういうこと?」
律「話せば長いけど、簡潔に言えば、宇宙人のようなものが宿ってる」
べいと「へえ? あるはに?」
律「いえ・・・」
律「たぶん、あるはがくわえているおしゃぶりに・・・」
あずき「おしゃぶり?」
あるは「ばぶう!」

〇明るいリビング
  それから一月経って、今に至る。
春彦「みんなー、朝ご飯できたよー」
あずき「ママはー?」
春彦「まだ寝てる。昨夜も遅くまで仕事してたから」
春彦「あるはちゃん、ほんと凄いなー。どうやって飛んでるの? 超能力?」
あるは「ばぶー」
あずき「あるは、何だって?」
べいと「我々にとって物質と意識の境はもはやなく」
べいと「それらは相対化された後に同質として組み替えられ、諸君らの物理法則には何ら干渉されない、だって」
あずき「・・・ばぶーしか言ってないんだけど?」
あるは「ばぶう!」
べいと「あなたたちの言語は圧縮可能」
あずき「百歩譲ってそれはよいとして、なんでべいとにだけ意味が通じるの?」
あるは「ばぶぶー!」
べいと「彼らにとって、この星の人間は打算的であるらしい」
べいと「まだしもそうではない子供だけに意思疎通を可能とした」
あずき「べいと・・・あんたが一番打算的じゃん!」
べいと「失敬だな、マイシスター」
あずき「幼稚園児が眼鏡クイクイすんな」
あずき「あとなんでおしゃぶりに取り憑いてんの?」
あるは「ばあぶ!」
べいと「おしゃぶりを媒介することで、あるはの自由意志及びその発育への影響を最小限にとどめている」
春彦「そういや、明日はあずきちゃんの誕生日だね」
春彦「久しぶりに家族みんなで外食。楽しみだね」
あずき「うん・・・」

〇一軒家

〇明るいリビング
律「ただいま~」
あずき「おかえり」
律「ふう、疲れた」
律「どうだった? あるはは何ともなかった?」
あずき「うん、いつも通り」
律「そう。ならいいけど」
律「何かあったら、それこそ人類の危機だもの」
あずき「ママ、ちょっとここの問題わからなくて」
律「疲れてるの。べいとに聞いて頂戴」
あずき「・・・ママ、明日わたしの誕生日」
律「わかってるわよ」
あずき「ならいいけど・・・」

〇男の子の一人部屋
あずき「べいとー。この問題だけどさあ、あんたわかる?」
べいと「うん?」
べいと「ああ、こんな簡単な証明問題もわからないのかい?」
あずき「いや、うん、もういい。なんかムカつく・・・」

〇女の子の一人部屋
あずき「なんだかなあ・・・」

〇空

〇明るいリビング
  翌日
春彦「律さんから電話があって、仕事押しちゃうから、今日は外食無理だって」
あずき「そう・・・」
春彦「ごめんね、あずきちゃん」
あずき「どうしてパパがあやまるの?」
春彦「外食はなくなったけど、誕生日なんだもん、パパ、腕によりをかけてご飯作るから」
春彦「買い物行ってくるね!」
あずき「行ってらっしゃい」

〇男の子の一人部屋
あずき「・・・あんた、何やってるの?」
べいと「明日幼稚園でやらされる遊戯の練習」
べいと「隣の子と手を繋いだ後のステップがマジでウザい・・・」
あずき「幼稚園のお遊戯を罰ゲームみたいに語る五歳児って・・・」
あずき「あるはは?」
べいと「さっきまでそこにいたけど?」
べいと「あ、メモ帳に書置きがある。ママを迎えに行くって」
あずき「なんでアナログ!?」
あずき「とにかく探しに行かなくっちゃ! べいとは留守番、パパとママに連絡して!」

〇海辺の街

〇池のほとり
あずき「あるは!」
あるは「ばぶ!」
あずき「よかった~、心配した~」
あずき「赤ちゃんのくせに一人で出歩かないの!」
あるは「ばあぶ!」
あずき「心配してくれたんだろうけどさ・・・」
律「あずき!」
あずき「ママ」
律「あるはは・・・おしゃぶりはちゃんとある?」
律「おしゃぶりをなくしていたら大変だもの」
あずき「なんでおしゃぶりの心配なんかしているの!」
あずき「まずは、あるはが無事見つかったことを喜ぶべきじゃない!」
律「あずき・・・」
あずき「ママはいつもそう! わたしたちのことなんて全然見てなくて!」
あずき「自分の研究のことばっかり!」
あずき「家族と宇宙人、どっちが大事なの?」
あずき「こんなおしゃぶりなんて!」
  わたしはおしゃぶりを海に投げ捨てた
律「あずき、何てことを!」
律「あれが無くなってしまったら、人類は…!」
あずき「人類がどうとか、そんなの知らないから!」
律「あずき・・・」
春彦「律さん。あずきの言う通りだよ」
春彦「まずは二人が無事に見つかったことを喜ばないと。僕らはこの子たちの親なんだから」
律「そう・・・そうね。そのこと、すっかり忘れてた」
律「ごめんなさいね、あずき」
あるは「おぎゃああああ! わあああん!」
春彦「大変。よしよし。泣かないで、いい子だから」
春彦「おしゃぶりがなくなっちゃったからかな?」
べいと「そんなこともあろうかと」
  べいとは予備のおしゃぶりをあるはにくわえさせた
あるは「(泣き止み)ばぶ! ばぶぶ!」
べいと「お、あるはが元に戻った」
あずき「え? どうして?」
あるは「ばぶぶう!」
べいと「現惑星とその文化における存在定義の同一性・・・」
あずき「要約すると?」
べいと「おしゃぶりなら何だっていい」
あるは「ばぶう!」
べいと「母はたしかに家族を見ていなかった」
べいと「だが、あずきは見ていた」
べいと「家族は補い合うもの。あっぱれ!」
あずき「あっぱれって・・・それ、ほんとにあるはが言ってんの?」
べいと「僕の意訳に決まってるだろ」
あずき「五歳児の言語センスよ・・・」
春彦「グレートリセットだっけ?」
春彦「とりあえずは人類の破滅は免れたみたいじゃない、律さん?」
律「そうね。わたしが間違っていたみたい」
律「一生懸命、家族を支えているつもりだったけど。かえって負担になっていたのかしら?」
春彦「そうじゃないよ。ほんのちょっぴり頑張り過ぎただけ」
律「そうなのかしらね。うん、きっとそう」
律「今日はもう仕事お終い。これから、みんなで外食にしましょうか!」
あずき「やったあ!」
べいと「お寿司で。光物が食べたい」
あるは「ばぶう!」

コメント

  • 乳児のおしゃぶりを介して5歳児が通訳って!可愛すぎる設定にめまいを覚えながら読みました。あずき以外はみんな頭のネジが多すぎたり少なすぎたりして、プラスとマイナスが補い合ってこそ家族なんだな〜としみじみしました。

  • 人類の存亡を賭けた存在となった見波家、この設定って楽しいですね! べいとくんの五歳児離れした数々の言動、面白すぎますww

  • 通訳するべいとをはじめ、セリフが軽妙でサクサク読めてとても楽しかったです❗️

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