水鬼

🟣人皮(ひとか)🟣

第2話(脚本)

水鬼

🟣人皮(ひとか)🟣

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水鬼
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〇システムキッチン
  朝。
  みずき達の住まい。
赤座「フンフ〜ン♪」
  鼻歌交じりで赤座が料理をしている。
蓮「赤兄、おはようさん」
赤座「はよ!」
蓮「今日はお弁当いるんやね?」
赤座「おお、仕事だからな!」
トンカチ「あーちゃん、れーちゃん、おはよう!」
赤座「はよ!」
蓮「トンちゃん、おはようさん」
狼「おはよう・・・」
赤座「はよ!」
蓮「狼ちゃん、おはようさん♪」
トンカチ「ろーちゃん、おはよう!」
狼「いい匂い・・・だね」
赤座「そうか!」
赤座「メインのおかずは、赤座さんお手製ソーセージだぜ!」
蓮「お手製て・・・自分で作ったん?」
赤座「まあな!」
赤座「先生に良い材料貰ったからよ!」
蓮「せんせに貰うたて・・・まさか材料って・・・」
赤座「おお!人間だ!」
蓮「止めてやァァァ!!」
赤座「ん?」
赤座「しょうがねえだろ?皆の前で原型そのまま食えねえんだからよ!」
狼「赤座・・・普通のご飯も食べるのに・・・なんで人を食べるの?」
赤座「まあ、アレだ・・・お前等菓子ばかり喰ってて身体もつか?」
狼「ううん・・・」
赤座「俺にとっちゃ普通の食いもんてのはソレよ。力出ねえし腹もすぐ減るしよ・・・」
赤座「しょうがねえんだよ!」
蓮「さよか・・・」
狼「でも・・・怖い・・・」
トンカチ「あーちゃんも、トンカチみたいに自然発電使えると良いのにね!」
赤座「いや・・・そりゃ無理だろ」

〇工事現場
  赤座は、とある工務店に勤めている。
  勿論、自分の正体・・・
  
  飢饉を切っ掛けに同族喰いを繰り返した為に、鬼と化した一族の者と言う事は隠している。
  身分証明書も曖昧な赤座だったが、深刻な人手不足と個人店ということもあって店主は喜んで受け入れた。
  体力も腕力もある赤座は周りから頼られている。
赤座「おはようございまっす!」
  元気な声が現場に響く。
親方「おはよう赤座」
作業員「赤座ちゃん、おはよう」
作業員「今日も元気だねぇ」
赤座「っす!」
親方「よし、今日も頑張っていこうや」
赤座「はい!」

〇工事現場
  仕事終わり。
「お先です!」
親方「お疲れさん」
赤座「お疲れ様っした!」
親方「なあ、赤座」
赤座「なんすか?」
親方「たまには、ウチで飯食ってかないか?」
赤座「いいんすか?」
親方「おお」
親方「母ちゃんに電話しねえとな」
親方「ん?」
赤座「どうしたんすか?」
親方「電話が繋がらねえんだ・・・」
親方「仕方ねえ、家に向かおう」
赤座「はい!」

〇一軒家
  親方の家に向う赤座達
「やめてください!」
「帰って!」
  女性の叫びにも似た声がする。
親方「母ちゃん?!」
  声の方へ向う
手下「うるせえ!」
手下「いいから店の権利書を出せ!」
  屈強な男たちが初老の女性を囲んでいる。
親方「やめろ!」
  男達に割って入る親方
奥さん「あなた!」
手下「店主か」
手下「むしろ丁度いいな」
親方「何だと?」
手下「店の権利書を渡しな!」
手下「タダとは言わねえよ! 金なら言い値で出してやるからよ!」
親方「ふざけるな!」
親方「誰が貴様らになんか渡すか!」
手下「この野郎」
手下「こんなジジイしか居ねえ店! 潰したってかまわねえだろう!」
赤座「ああ?」

〇一軒家
赤座「誰がジジイだ!ゴラァ!」
赤座「やるってんなら相手になんぞ!」
  男達を睨み付ける赤座
手下「んだ?このハゲ!」
手下「粋がってんと怪我すんぞ!」
  恐らく格闘技の経験が有るのだろう
  男達は構えると赤座に向う
手下「オラッ!」
  赤座に殴り掛かる
赤座「んなもん当たるか!」
  赤座は男の拳を躱すと、腕を掴み捻じりあげた。
手下「この野郎!」
  もう一人の男も殴り掛かってきた
  しかし、その攻撃も躱す。
赤座「おらよっ!」
  両腕で掴んだ男達を振り回す
  男達の頭同士をぶつけた。
手下「こ、この野郎・・・」
手下「・・・一旦引こう」
  男達は目配せをすると立ち去った。
赤座「ふぅ」
奥さん「貴方・・・強いのね!」
奥さん「えっと・・・」
親方「赤座だよ」
親方「よく働く若いもんが来たって言ったろ?」
赤座「そんな風に言ってくれてるんすか?!」
赤座「なんか・・・照れるっす」
親方「デカい図体でモジモジすんな!」
奥さん「有難う赤座君」
奥さん「助かったわ」
赤座「それにしても・・・」
赤座「アイツ等何だったんですかね?」
奥さん「誰かに頼まれたんでしょうけれど・・・」
奥さん「怖いわ・・・」
親方「おお」
親方「まあ、明日にでも警察に相談しに行ってくるわ」
赤座「そうすね」
親方「メシだメシ!」
親方「気晴らしに寿司でも取ろうや母ちゃん!」
奥さん「そうね」

〇綺麗な一人部屋
  みずきの家。赤座の部屋
赤座「うーん・・・」
  唸ると赤座は起き上がった。
赤座「駄目だ!」
赤座「気になりすぎる!」
  着替えると部屋を出た。

〇システムキッチン
みずき(お水でも飲もうかな)
みずき「ん?」
みずき「赤座君?どうしたの?」
赤座「先生!」
赤座「実は・・・」
  赤座から昼間の出来事を聞くみずき。
みずき「それで、どうにも嫌な予感がすると・・・」
赤座「ああ」
みずき「君は勸が良い子だからね・・・」
みずき「僕も行くよ」
赤座「いいんすか!」
みずき「何か有れば役に立つかもしれないし」
みずき「何も無ければ、それでいいし」
赤座「先生」
赤座「あざっす!」
みずき「うん」

〇住宅街の道
  親方の家に向う、赤座とみずき
みずき「ん?」
赤座「どうしたんすか?」
みずき「・・・焦げ臭いね・・・」
赤座「え?!」

〇一軒家
  炎に包まれている親方の家。
赤座「マジかよ!」
みずき「消防車を呼ぼう!」
赤座「それじゃ間にあわねえっすよ!」
  素早く周りを見回す。
  どうやら近隣住民は、まだ火事に気づいてはいない様だ。
赤座「誰も見てねえし・・・やるぜ!」
赤座「鬼刻(おにとき)!」
  掛け声と共に鬼の姿に変わる赤座。
みずき「赤座君?」
赤座「助けに行くんすよ!」
みずき「分かった」
みずき「それなら・・・」
  水が赤座の体を濡らす。
赤座「!」
みずき「少しは楽になると思う」
みずき「気をつけてね」
赤座「ああ!」

〇実家の居間
  燃え盛る家
  赤座は親方夫婦を捜す
赤座「くそっ!どこだよ!」

〇古風な和室
  親方達の寝室
  部屋の中には、黒煙が充満している。
  何とか妻を担ぎ、フラフラと親方は逃げようとしていた。
親方「しっかりしろ!」
  煙を吸ったのか、親方の妻はグッタリとしている。
奥さん「・・・」
親方「母ちゃん!」
  親方の呼び掛けにも目を開かない。
親方「おい!」
  ミシミシと音を立て、柱が折れてきた。
親方「うわあ!」
  妻を庇いつつ目を閉じる。

〇古風な和室
  何かを殴る音がした。
親方「え?」
  恐る恐る目を開ける。
  そこには鬼が立っていた。
  殴る音は鬼が柱を殴り壊した音だった。
親方「な、なんだ!おまえ!」
赤座「・・・」
  鬼は答えず親方達を担ぎ上げた。
親方「おい!」
赤座「・・・大丈夫っす」
親方「その声・・・」
親方「まさか・・・」
赤座「・・・・・・」

〇一軒家
  家の外には、みずきが呼んだ消防隊が駆け付けていた。
  消火活動を始める。
みずき(赤座君達・・・大丈夫だろうか)
  思いながらも燃え盛る邸宅を見つめる。
  野次馬も駆けつけ、人だかりが出来た。
みずき(ん?)
  どこか柄の悪そうな男達が、微笑みを浮かべながら邸宅を見ている。
みずき(彼等・・・)
業者「帰るか」
「はい!」
みずき(・・・)
  こっそりと、みずきは男達を写した。
赤座「先生・・・」
  人型に戻った赤座が、フラフラと現れた。
みずき「赤座君!」
  赤座は、みずきへと倒れ掛かる。
  みずきは、なんとか抱き止めた。
  赤座は全身に火傷を負い、息を切らしている。
みずき「大丈夫・・・では無いよね」
赤座「へへっ」
みずき「親方さん達は、どうだったの?」
赤座「助けられたっすよ!」
赤座「二人共、消防さんに見つけてもらえそうな所に降ろしたっす!」
赤座「ただ、急いで離れてきたから・・・」
赤座「ちっと疲れちまって・・・」
みずき「・・・」
赤座「大丈夫!歩いてる内に治るっす!」
赤座「帰りましょ」
みずき「うん」
みずき「頑張ったね」
赤座「あざっす!」
  家へと向う2人。

〇明るいリビング
  火事から数日が経った。
  親方の自宅は全焼。
  親方は軽い火傷で済んだが、妻は未だに意識を取り戻さない。
赤座(親方さん・・・)
  あれ以来、赤座は親方には近付いていない。
トンカチ「あーちゃん」
赤座「ん?どした?」
赤座「つうか、今日は先生のとこ行かねえのか?」
トンカチ「うん・・びょういんお休みだから・・・」
赤座「どうしたどうした?」
赤座「いつものお前ぇらしくねえな! 元気が無くてよぉ!」
トンカチ「元気がないのは、あーちゃんだよ!」
赤座「お、俺が?」
トンカチ「そうだよ!」
トンカチ「しょんぼりしてる!」
トンカチ「こないだからずっと!」
トンカチ「だから・・・心配なの・・・」
赤座「トンカチ・・・」
赤座「・・・」
トンカチ「そうだんのるよ!」
赤座「相談て・・・お前が?」
トンカチ「そうだよ!」
トンカチ「だめなの?」
トンカチ「トンカチが小さいから?」
  捲し立てるトンカチ。
トンカチ「トンカチが・・・人間じゃないから?」
  感極まったのか泣き出した。
赤座「おい!」
  しゃくり上げるトンカチ。
  思わず赤座はトンカチを抱き締めた。
赤座「お前ぇはよ・・・」
赤座「確かに人間じゃないんだろうが・・・」
赤座「俺はお前を人間と同じに見てる!」
トンカチ「あーちゃん・・・」
赤座「・・・すまねえな」
赤座「心配かけちまって・・・」
トンカチ「ううん!」
  トンカチの涙を手で拭うと、赤座はトンカチと向き合った。
赤座「確かに・・・へこんではいたな」
トンカチ「そなの?」
赤座「おお」
赤座「俺の事雇ってくれた人達に・・・」
赤座「俺に良くしてくれた人達に・・・」
赤座「俺ぁ、何も出来なかったんだからよ・・・」
トンカチ「あーちゃん・・・」
「そんな事は無い」

〇明るいリビング
  みずきの声がした。
「せんせー! 先生!」
みずき「赤座君、頑張ったじゃないか」
  言葉を続けるみずき
みずき「君が頑張らなかったら、親方さん達は生命を落としていたかも知れないよ?」
赤座「でも・・・」
みずき「あれが君に出来る精一杯だったと、僕は思うよ」
みずき「だから『何も出来なかった』なんて事は無い」
みずき「それは確実だよ」
赤座「先生・・・」
トンカチ「あーちゃん、よかったね!」
赤座「ああ!」
「せんせ、ええですか?」

〇明るいリビング
  声と共に蓮が部屋に入って来た。
みずき「蓮君。どうしたの?」
蓮「調べもん終わったで」
赤座「調べもん?」
みずき「ああ」
みずき「彼等が誰なのかをね、調べてもらってた」
  携帯端末に入ってる画像を見せる。
  そこに写っていた男達を見て赤座は眉を寄せた。
赤座「こいつら!」
蓮「赤兄知っとるん?」
赤座「こっちの2人!親方さん達脅かしてた奴等だ!」
赤座「もうひとりは分んねえけど・・・」
赤座「つうか、何で先生がアイツらの写真を?」
みずき「うん」
みずき「その人達・・・火事の時に居たんだ」
赤座「え?」
みずき「微笑みながら・・・火事を見てた」
赤座「そんな・・・」
みずき「だから気になってね。蓮君に調べて貰ったんだ」
赤座「そうだったんすか・・・」
蓮「そんでな」
蓮「そいつ等・・・他の工務店のもんなんやけど・・・」
  言葉を続ける蓮。
蓮「ハッキリ言うて、工務店なんか半グレなんか分からんような輩や」
みずき「そうなのかい?」
蓮「へい。 で、親方さん等を狙ったんは親方さんの工務店に注文が多く入ってたからや」
赤座「・・・」
蓮「買収しようとしたけど失敗」
蓮「口封じの為に・・・」
赤座「火つけたってのか!」
蓮「そやな・・・」
赤座「許せねえ・・・」
  赤座は拳を震わせる。
  そして部屋を出ようとした。
みずき「赤座君?」
赤座「・・・止めねえでくれ!」
みずき「いや・・・止めはしないよ」
みずき「ただ・・・一人では危ないよ?」
トンカチ「そだよ! みんなでいこうよぉ!」
蓮「せやで」
赤座「いや・・・」
赤座「今回は俺一人でやらせてくれ・・・」
赤座「やらなきゃ・・・なんねえんだよ・・・」
トンカチ「あーちゃん・・・」
蓮「赤兄・・・」
赤座「・・・」
  赤座は部屋から出て行った。
トンカチ「せんせ~」
蓮「ほんまに、ええんやろか・・・」
みずき「・・・信じよう」
みずき「大丈夫。 彼は・・・強い子だから」
トンカチ「うん」
蓮「せやね」

〇工房の倉庫
  輩の集う工務店。
  終わりじまいをする輩達。
業者「今の所、あの店の再開の目処は立たねえみたいだ」
業者「いちいち交渉決裂する度に燃やしてたら面倒だからな」
業者「お前等今度はうまい事やれよ?」
手下「はい!」
手下「すんません!」
「てめえ等・・・」
  低い男の声が響く
  暗がりから鬼が姿を現した。
赤座「ぜってえ許さねえ!!」
  叫びながら、鬼は男達へと向かってきた。
「う、うわあ!!」
  鬼は男達の首根っこを掴む。
赤座「この間みてえに加減はしねえ!」
  鬼は男達の頭を打ち付け合う。
  その勢いは強く、男達の頭蓋骨は割れた。
「・・・」
  血と脳髄を巻きながら倒れる男達。
業者「こ、この野郎!」
  自分に背を向けた鬼の背中に向かいナイフを振りかざす。
  しかし
業者(な、何で身体が動かねえ・・・!!)
赤座「ん?」
  鬼は男の方を振り向く。
赤座「なめんな!」
  鬼は男の頭を掴んだ。
業者「ギャァァァ!!!」

〇工房の倉庫
  店の外
みずき(・・・)
「信じてたんと違うん?」
蓮「せ〜んせ♪」
みずき「見守りに来ただけだよ」
みずき「帰ろうか」
  立ち去るみずきの背中を見つめる蓮。
蓮(多分・・・おっさんの血流をいじったんやろな・・・)
蓮(水を操る・・・か)
蓮「怖い怖い・・・」

〇総合病院
  数日後。
  親方の妻が入院する病院の近くを通り掛かる赤座。
  見舞いに行きたい気持ちはあったが、行く勇気は出なかった。
赤座(・・・親方さん)
赤座(お元気で・・・)
「赤座か?」
  聞き覚えのある声がした。
  そこには親方が居た。
赤座「あ・・・」
  会釈して親方に背を向ける赤座。
親方「おい!待てよ!」
赤座「・・・」
  赤座は足を止めた。
親方「・・・有難うな」
赤座「え!」
親方「店は絶対再開させるからよ!」
親方「又・・・働きに来てくれ?な?」
赤座「親方・・・」
親方「お前は、よく働いてくれる」
親方「それに、鬼なんだから身体は強いだろ?」
赤座「・・・」
親方「頼りにしてるぜ」
赤座「・・・・・・あざっす!」
  微笑み合う2人。
親方「今から母ちゃんの見舞いに行くんだ! お前も来い!」
赤座「いいんすか?」
親方「おお!母ちゃんな?意識取り戻したんだよ!」
赤座「良かった・・・!」
親方「おお!それでな・・・」
  話しながら病室へと2人は向かった。
  どちらの表情も明るいものだった。

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