エピソード2(脚本)
〇古びた神社
ツクヨミ「・・・草もボーボーだし、 ・・・社にもコケが・・ ・・・これは、ひどい」
コマ「言いたいことはわかります」
コマ「最後に実家を訪れた六年前は もっと綺麗だったと言いたいんでしょう。」
コマ「ツクヨミ様は お父様のお葬式が終わってから、 一度もこちらには来ていないですからね」
ツクヨミ「・・・何が言いたいんだ」
コマ「いえ、タケハ様に会えば先に文句が出そうだったので、」
コマ「この状況を生み出した責任の一端はあなたにもあると理解してほしかったのです」
ツクヨミ「・・・・・」
タケハ「・・・ったく、何が騒いでいるんだ? また近所の子供か・・・」
タケハ「あっ、兄さんだったんだ。 どうしたの? ・・まだ、ゲームには手をつけてないよ。 だから感想は・・」
ツクヨミ「いや、違うんだ」
ツクヨミ「・・・今日、若い女性がここに来ただろ? 神社の神様、とか、運命が変わる、とか言ってなかったか?」
タケハ「若い女性? ・・・あぁ、朝一番に来たね。 寝ぼけていたから、すぐに追い返したよ。 それがどうしたの?」
タケハ「〈チラッ〉」
ツクヨミ「ここの神社の神様がいなくなったらしいんだよ」
タケハ「へぇー、そうなんだ。 〈チラチラ〉」
ツクヨミ「おい、何をチラチラ見てん・・・ 見えるのか? ここにいるイケメンの男が」
タケハ「あぁ、見えてるよ」
ツクヨミ「それなら話は早い。 こいつは・・」
コマ「お久しぶりです、タケハ様」
タケハ「やっぱりか~。 久しぶりだな」
ツクヨミ「えっ?おまえら、知り合いなの!?」
コマ「そうですね。 あれは、タケハ様が五歳のとき・・・」
タケハ「僕が、神社の裏の森で遊んでたときに、 霊みたいなやつに襲われたんだ」
〇森の中
タケハ(子供)「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
霊「うわ、 うわ、 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
霊「な、なななな、なんだ貴様は?」
タケハ(子供)「それはこっちのセリフだよ。 なんで神社の裏に変なのがいるんだよ」
霊「こここ、ここの神様はいないんだろ? だったら少しくらい神社を独り占めしても、い、い、いいだろうよ」
タケハ(子供)「ダメだよ。 ここはおじいちゃんの大事なところだよ。 変な人は入ってきちゃダメなんだよ」
霊「うるさいうるさーい こうなったら黙らせてやるー キエーーー」
コマ「やめなさい」
霊「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
霊「やー」
霊「らー」
霊「れー」
霊「たー」
霊「なー」
霊「やられたなー」
コマ「大丈夫でしたか」
タケハ(子供)「うわぁぁぁぁぁぁぁ また知らない人が来たー」
コマ「安心してください。 私はお爺様の友達ですよ」
タケハ(子供)「・・・おじいちゃんの?」
コマ「おや、さっそく来たようですね。 それでは失礼します」
おじいちゃん「何か叫び声が聞こえていたが どうかしたか?」
タケハ(子供)「怖かったよ──」
タケハ(子供)「変な化け物に襲われたんだけど、 金髪の人に助けられた。 なんか、おじいちゃんの友達って言ってた」
おじいちゃん「ほぉー」
おじいちゃん「それは狛犬じゃな」
タケハ(子供)「狛犬?」
おじいちゃん「鳥居の近くに座っとる犬の像じゃよ」
おじいちゃん「この時期は、神様も出雲大社に会議に行っとるから、変な妖怪まがいが来るんじゃろうな」
おじいちゃん「狛犬が追い払ってくれたんじゃろうな。 タケハ、ちゃんと狛犬にお礼を言っとくんじゃよ」
タケハ(子供)「うん、わかった。」
タケハ(子供)「今度撫でてみるね」
〇古びた神社
コマ「・・・と、そんなことがありまして。 タケハ様とは面識があります」
ツクヨミ「それなら話は早い。 タケハ、頼む。」
ツクヨミ「俺の運命が変わりそうなんだよ」
ツクヨミ「この指輪を使って、みんなの望みを叶えて、ここに神様を連れ戻してくれないか?」
タケハ「・・・・・・・」
ツクヨミ「・・そうだ、この狛犬も手伝ってくれるぞ。 名前は・・」
タケハ「もういいよ。 何も言っているのかわからないけど、 僕は兄さんの力にはならない」
コマ「・・・・・」
ツクヨミ「えっ?どうして ・・・おまえの運命も変わるんだぞ」
コマ「もうやめたほうがいいですよ」
ツクヨミ「おまえの運命が好転するなら、 おまえも嬉しいだろ?」
タケハ「別に運命が悪く変わったってやることは変わらない。 それで寿命が短くなったとしたら、それも運命だと思うよ」
タケハ「狛犬が言っているなら本当のことなんだろうから、兄さんは頑張って運命を変えるといいよ」
ツクヨミ「・・ほら、でも、俺たち兄弟じゃないか。 助け合って生きるのが基本だろ?」
タケハ「・・そういうところも含めて、兄さんのことは嫌いなんだよ」
コマ「・・・」
タケハ「兄さんは周りの人間を駒のようにしか考えていない。 父さんも母さんも、兄さんが神社を継いでくれると考えていたから、」
タケハ「あれだけ愛情を注いだと思うよ。 でも、兄さんは勝手に家を飛び出して、 好きなことばっかりして、」
タケハ「挙句、僕に神社を継げ、って言ったでしょ。 僕は兄さんに気を使って、やりたいこともやらずにいたから、」
タケハ「別に神社を継いだって良かったんだよ。 でも・・・父さんの葬式のときの、兄さんの物言いには正直ムカついた。」
タケハ「そして、また兄さんは僕のことを道具みたいに使おうとして、・・またムカつかせたいの?」
ツクヨミ「そんなことは・・・・・」
タケハ「もういいよ」
コマ「・・・・・」
ツクヨミ「おい、タケハ、性格変わったんじゃないのか?」
コマ「そんなことはありませんよ。 昔から変わりません」
ツクヨミ「じゃあ、なんで俺の言うことを聞けないんだ? あいつの運命も変わるかもしれないっていうのに・・」
コマ「一つ言えることは、 ツクヨミ様と、今は亡き妹のヒルコ様が御両親の愛情を吸い取ったせいで、タケハ様は自分が愛されなかった。」
コマ「そう思っているのです。 それはツクヨミ様がどう言い訳しようと、 これはタケハ様の捉え方なので、どうしようもありません」
ツクヨミ「・・・・・」
ツクヨミ「じゃあ、どうすればいい?」
コマ「タケハ様に頼らずに 神様を連れ戻すしかありません」
コマ「私も精一杯、お手伝いいたします」
ツクヨミ「わかった・・・」
コマ「・・・どうしましょう? もう一度、マンションまで帰りますか?」
ツクヨミ「・・・・・そうしようか。 すまないが連れて行ってくれるか?」
コマ「はい、わかりました」
ツクヨミ「〈タケハ、いつからおまえは あんな視線を俺に向けるようになったんだ?・・・俺が悪いのか?〉」