未来予測システム『GI(爺愛)』

ふゆ

第一話「赤:会う」or「青:会わない」(脚本)

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〇葬儀場
  1月1日、祖父が死んだ
参列者「先生いい顔してるわ」
参列者「正月にポックリいけて先生ラッキーだったな」
  当たり前のことのように大人は言うから
  「良かった」んだね、爺ちゃんって
  思ったんだけど

〇黒
  数日後

〇怪しい部屋
赤梨「おっじいちゃーん」
赤梨「いっちごチョコマロンー♪」
蒼太「アカリ!オヤツはもうダメ!」
蒼太「爺ちゃん、お前に甘いからってなあ──」
「・・・」
  俺たちは
  日常に戻ってようやく気がついた
赤梨「う」
赤梨「うぅっ・・・ひっ」
赤梨「あああ、おじいちゃあああん」
蒼太「アカリ・・・」

〇黒

〇綺麗な一戸建て
「こ・・・」
「こらあ、アカリちゃん!」

〇シックなリビング
白男(父)「返しなさい」
白男(父)「アカリちゃん!」
赤梨「パパのてがみー」
赤梨「どれどれ・・・」
赤梨「『さん・・・いたい。がいないと』」
蒼太(漢字飛ばしてる)
蒼太「貸してみ」
蒼太「『白男さん・・・会いたい、貴方がいないと私・・・もう死ぬしか──』」
蒼太「こ、これ」
蒼太「父さん・・・浮気か?」
赤梨「うわき?」
白男(父)「ちっがーう!」
白男(父)「元・部下で、 ちょっと不安定な子なんだ」
蒼太「不安定って?」
白男(父)「・・・実は」
白男(父)「お義父さんの通夜にも、彼女が現れてね」
蒼太(よく見たら消印がない 家のポストに直接入れたんだ・・・)
蒼太「気味わりい女」
赤梨「パパ、困ってるの?」
蒼太「ああ、家族のピンチだ」
赤梨「じゃあ」
「お爺ちゃんに、聞いてみよう!」

〇怪しい部屋
「GI起動!」
  天才科学者だった祖父
  遺されたパソコンには最先端のシステムが
  インストールされていた

〇幻想
蒼太「あ、出てきた」
蒼太「・・・」
(起動まで長いんだった・・・)
  その名も『未来予測システムGI』
  祖父は、どこにも発表せずに
  ただ家族のためだけにGIを作ったのだ
ジーア「Hello My Family」
ジーア「今日は1月○日。晴れ 気温10度/2度」
ジーア「空気が乾燥しています」
ジーア「乾布摩擦をしましょう」
蒼太「え、カンプー?」

〇怪しい部屋
蒼太(格闘技かな?)
白男(父)「お義父さん、もう令和ですよ」
ジーナ「ジーアはお義父さんではありません」

〇幻想
黒男「だって、年の功ダダ漏れじゃないですか」
ジーア「・・・っ!」
ジーア「仮に」
ジーア「真面目で研究一辺倒だった爺さんに」
ジーア「実は美少女になりたい願望があって」
ジーア「自分の人格をAIで再現したとしましょう」
ジーア「大人ならどうすべきですか?」
ジーア「婿養子の白男さん!」
黒男「・・・気づかない振りをします」
白男(生前と詰め方変わんないなあ)
ジーア「もう」
ジーア「もっと他に聞きたいことがあるんじゃないですか?」
ジーア「部下の女性との距離感を保てぬ、 白男さん?」

〇怪しい部屋
白男(父)「さすが、お見通しですか」
ジーア「自律型電子アシスタントのジーアは、インターネットより情報収集を怠らず、日々進化しております」
ジーア「監視カメラの映像、送受信メール、スマホのカメラ・インカメラ・マイク、その他諸々──ね」
赤梨「うわき、うわきー」
白男(父)「違うんだよ。アカリちゃん!」

〇研究施設のオフィス
  彼女、胡桃川さんは、内気でおとなしい子だけど真面目な子で
  丁寧に扱うようにしてたんだ。そしたら
  『部長はあの子と浮気してる』って噂がたっちゃって
  居づらくなったあの子は退社したんだ

〇怪しい部屋
白男(父)「悪いことをした」

〇幻想
ジーア「それで、白男様ははっきり断れずに」
ジーア「『ぐすっ・・・なんで電話も無視なんですかあ』」
ジーア「『私、お子さんも引き取るって言ったじゃないですかあ!』」
ジーア「『もちろん、白男さんの子供を、う、み、た、い、け、ど♡』」
ジーア「などと言われてしまったのですね」

〇怪しい部屋
白男(父)(女性像が微妙に古い・・・)
赤梨「白男さんのこども?」
赤梨「子供うむのはママだよ?パパじゃないよ」
白男(父)「あ、ああ、そうだね」
白男(父)「子供の前で何言ってんですか!」
ジーア「・・・失敬」
白男(父)「とにかく、家族に・・・アオタとアカリに何かあったらと思うと」
白男(父)「僕はもう、生きていけない!」
蒼太(父さん・・・)

〇幻想
ジーア「家族のピンチであると認証しました」
ジーア「未来予測システム許可申請──」
ジーア「承認」
ジーア「選択肢は二つ」
ジーア「赤:会う 青:会わない」
ジーア「さあ、どちらの未来を見ますか?」

〇怪しい部屋
「うーーん」
白男(父)「できれば、会いたくない」
白男(父)「しかし、彼女はうちに来てしまっている」
白男(父)「・・・」
白男(父)「赤:会う の未来を見せてください」

〇大きい研究施設

〇コンピュータールーム

〇地球
  解析完了

〇黒
  「赤:会う」をレンダリング

〇川沿いの公園
胡桃崎ののか「あ・・・」
胡桃崎ののか「来てくれた。嬉しい・・・」
白男(父)「ごめん。もう関わらないでほしい」

〇怪しい部屋
白男(父)「そ、そんな」
白男(父)「冗談じゃない!」
白男(父)「青:会わない の未来も見せてください!」
蒼太「駄目だよ」
蒼太「ジーアは、一度使ったら3日ダウンする」
白男(父)「・・・お義父さん」
白男(父)「よりによってなんで『ドア98』なんてポンコツにインストールしたんだぁ!」
白男(父)「国からたんまり補助金もらって研究してたくせにぃ」
蒼太「警察に・・・」
白男(父)「まだ起こってない事件には 動いてくれないんだよ」
蒼太「そうだ!」
「待ってて」
蒼太「これ!」
蒼太「お腹にいれとけば、 ナイフ防げるんじゃないかな!」
白男(父)「ううむ・・・しかし」
白男(父)「この出血量・・・首かもしれん」
白男(父)「・・・あるいは」
蒼太「じゃあ、俺が抑えつける! 男二人で行けば大丈夫だろ」
白男(父)「・・・大丈夫。一人で行くよ」
白男(父)「アオタは血の気が多いから」
蒼太「父さん!」
蒼太「刃物をもったおかしな女だよ!?」
蒼太「これ以上家族を亡くすなんて 俺、絶対嫌だからな!」
白男(父)「・・・」
赤梨「あははっ、駄目だよ、お兄ちゃん」
蒼太「アカリ・・・」
赤梨「皆で行けばいいんだよ」
「え」
赤梨「GIが、一個しか未来が見えないのは」
赤梨「みんなでもう一個の選択肢作れって ことなんだよ?」
蒼太「・・・!」

〇川沿いの公園
胡桃崎ののか「?」
胡桃崎ののか「あらら、迷子かな?」
赤梨「・・・」
赤梨「う○こっ」
胡桃崎ののか「え」
赤梨「う○こう○こっう○こっう○こっう○こっ」
胡桃崎ののか「あ、ああ、おトイレかな。あっちだよ」
赤梨「ひとりじゃヤダぁ。こわいいい」
胡桃崎ののか「い、一緒に行けばいいの?」

〇川沿いの公園
赤梨「すっきりしたー」
胡桃崎ののか「良かったね」
赤梨「アイス!」
胡桃崎ののか「え」
赤梨「アイスアイスアイスアイスアイスアイス!」
胡桃崎ののか「ね、ねえ、パパかママどこ?」
赤梨「アイスアイスアイスアイスアイス!」
胡桃崎ののか「・・・大のあと、よくソフト食べられるね」
蒼太「オバサン!」
胡桃崎ののか「お、おば?」
蒼太「俺の妹に何してんの」
胡桃崎ののか「あ、あなたの妹?良かったあ」
白男(父)「胡桃崎くん!遅くなった。すまない」
胡桃崎ののか「部長!」
白男(父)「あれ、アオタ、なんでいるんだ」
蒼太「散歩」
胡桃崎ののか「え、息子さん?」
赤梨「お姉ちゃんだったんだ!」
赤梨「ママになってくれるのって」
蒼太「このオバサン?親父趣味悪」
白男(父)「こら、アオタ」
蒼太「だって」
蒼太「二次元の女の方が全然いいのにさあ」
白男(父)「胡桃崎くんは、お前のような反抗期のオタクでも、ママになりたいって言ってくれてるんだぞ」
白男(父)「ねえ?」
胡桃崎ののか「あの、私」
胡桃崎ののか「すみません今日は帰りますっ」
胡桃崎ののか「あ、す、すみません」
赤梨「ママぁ!」
胡桃崎ののか「ま、ママ?」
胡桃崎ののか(この中学生みたいな顔した人が!?)
黒子(母)「初めまして。黒子と申します」
胡桃崎ののか「あ、私」
赤梨「この人、新しいママになってくれるんだって!」
胡桃崎ののか「それは、その」
黒子(母)「まあ、それはそれは」
黒子(母)「可愛らしいママで良かったわね、アカリ」
赤梨「うんっ」
黒子(母)「じゃあ、こうしましょうか」
黒子(母)「私も、娘にしてくださるというのは?」
黒子(母)「それなら皆一緒にいられるでしょう?」
胡桃崎ののか「・・・・・・」
胡桃崎ののか「へ」
「へ?」
「・・・行っちゃった」

〇シックなリビング
黒子(母)「可愛らしいお嬢さんだったわね」
白男(父)「あ、ああ」
白男(父)(どう考えても、母さんに一番怯えてたな)
蒼太「やったな。アカリ」
赤梨「いつもの私たちだったのにねー?」
蒼太「え、俺は違うよ?」
赤梨「だって、すきな二次元少女って」
赤梨「ジーナのことなんでしょ?」

〇綺麗な一戸建て
蒼太「はぁ!?何言ってんだお前!」

〇怪しい部屋
  3日後
ジーア「Hello My Family」
蒼太「ハロー・・・」
蒼太「液晶の光のせいじゃない」
蒼太(ジーアが眩しい・・・)
蒼太(アカリの奴めえ)
ジーア「ジーア、何か悪いことしましたか?」
蒼太「あ、いや」
  今日来たのは
  もう一つの選択肢『青:会わない』を
  見るため
ジーア「起こりえなかったもう一方の未来、青」
ジーア「なぜ解決した後に?」
蒼太「・・・」
蒼太「色んな角度で物ごとを見ろ、って 爺ちゃん言ってたろ?」
ジーア「アオタ様」
ジーア「男子三日会わざれば刮目して見よ」
蒼太「え」
ジーア「・・・・・・」
ジーア「男っぽくなったという意味です」
蒼太(落ち着け落ち着け落ち着け あれは爺ちゃんが孫の成長を喜んだんだ 「また背が伸びて」と変わらないんだ!)
ジーア「承認」
ジーア「それでは、次の未来予測の日まで」
ジーア「ByeBye」

〇川沿いの公園
胡桃崎ののか「来ない。そっか・・・」

〇怪しい部屋
蒼太「あ・・・」
蒼太(自分を刺した?)
蒼太(もしかして、赤の選択肢の時も)
蒼太(父さんを刺したんじゃなかったのかな?)
赤梨「お姉ちゃん、優しかったね」
蒼太「・・・オバサン、ではなかったな」
  大人って、色々なんだな

〇屋根の上
蒼太「・・・俺さ」
蒼太「なんで爺ちゃんがポンコツパソコンに GIをインストールしたのか」
蒼太「分かった気がするよ」
  最新鋭の頭脳と、
  老朽化した体
蒼太「爺ちゃんみたいじゃね?」
赤梨「・・・」
赤梨「う」
赤梨「うあ」
赤梨「うああ、おじいちゃあああん」
蒼太「泣くなって」
  これからも皆一緒だから

コメント

  • 2つの選択肢のうちどちらを選ぶか…となるのかと思えば、1つしか見られないとは!そのうえで行動しなければならないというところに、お爺ちゃんの家族へ託した思いがなんとなくわかるような気がします。
    ドア98だとそのうち動かなくなりそうで怖い…

  • 遅ればせながら予選通過おめでとうございます🙇
    斬新な構成で脱帽です!
    2つの選択肢を提示していながら、第3の選択があるとは!
    そして選ばなかった選択肢にも、まさかのどんでんがあるとは…
    巧みな手腕を、見せていただきました😀

  • 『未来を予知して事件を未然に防ぐ』というサスペンス要素になりがちなアイデアを、ファミリー作品としてコミカル且つとても感動的に仕上げており、最高に面白かったです!😆👍
    予知してから3日ダウンする設定により、便利すぎず家族のチームワークを生み、事件解決後の“オチ”にも活用できる…🤔
    ストーリーの構成としても技術の光る、とても勉強になる傑作だったと思います!!🥰

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