番外編「黒猫と吸血鬼」(脚本)
〇けもの道
──偉大なる魔女が死んだ。
でも魔女は百五十年も生きたので、
寿命だったと言えるだろう。
穏やかに、眠るように死んだ。
多分幸せな最期だった。
魔女「クロ、あなたはこれからどうするのです?」
クロ「あるじには、「私が死んだら自由に生きろ」と言われているニャ」
クロ「誰かに飼われるのはもうごめんニャ」
クロ「気ままに生きるさ」
クロ「幸い偉大なる魔女に教わって、簡単な占い程度ならできる」
魔女「そうですか」
クロ「占いによると、西に行くといいそうだ」
魔女「クロの占いは当たりますからね」
魔女「それなら、西へ行くのがいいでしょう」
偉大なる魔女の遺体は、
魔女の友人たちによって丁重に弔われた。
私はそれを見届けてから、
魔女の友人たちに別れを告げ、
西へ旅立つことにした。
番外編「黒猫と吸血鬼」
〇雑居ビル
〇ビルの裏
クロ(あてもなく西へ来たが、ここは随分と騒がしいな)
クロ(ここには怪異の類が住み着いているようだな。人狼や吸血鬼の気配がある)
クロ(怪異と人の宥和も完全ではない)
クロ(都会で暮らす怪異たちは、人の間を縫うように、廃墟となった建物などに暮らしているとも聞く)
魔女は人が立ち入らないような森で暮らしていた。
だから、このような都会の怪異の住処は珍しかった。
クロが興味深く眺めていると──
???「あ、猫だ」
クロ(赤い瞳・・・吸血鬼か)
クロ「失礼な娘ニャ。私は偉大ニャる大魔女の猫であるぞ」
紅羽「今自分で猫って言ったよね!? しかもニャって言いまくってるし」
クロ「魔女にそう喋るように教育されていたのだ。普通に喋ることもできる」
紅羽(めっちゃ尻尾べしべししてる・・・かわいい)
紅羽「魔女の猫か・・・この前、東の大魔女が亡くなったって聞いたけど」
クロ「いかにも私はその大魔女の猫だ」
紅羽「そうなの? あんな遠くから来たんだ・・・大変だったでしょ?」
クロ「大変なことはほぼなかった 魔女に与えられた知恵があったからな」
紅羽「そっか。すごいんだね」
紅羽「ねぇ、行くところないならうちに来ない? 私以外にも人狼とか蛇男とか色々いるよ」
クロ「ふん。私はもう誰にも飼われないと決めた。一生気ままな野良猫でいるつもりだ」
紅羽「そっか・・・じゃあたまに遊びに来てよ」
紅羽「友達になろう。吸血鬼と猫は仲良しなんだよ?」
クロ「初耳だが・・・まあいい。気が向いたらまた来よう」
この出会いが、占いに出ていたものかはわからない。
けれど、その吸血鬼の少女のことが気に入った。
結局気が向いてしまった結果、私と紅羽は友達となったのだった。
「黒猫と吸血鬼」・終
番外編は短いけど、クロさん目線で、新鮮だった❤️
尻尾ペシペシは犬と違ってやや不満の意味なんですよね‥
ところでクロさんの性別ってオスですかメスですか❓