兄といじめ(脚本)
〇センター街
「ガーッ!!」
〇荒廃したセンター街
「政治家の車が怪獣に襲われたぞー!」
「ビルが燃えるー!」
汚染液獣グレイサー「ガーッ!」
「助けてー!」
汚染液獣グレイサー「ガーッ!!」
汚染液獣グレイサー「!?」
「あ、あれは」
「正義の巨人・・・」
「マグマックス!」
溶炎巨人マグマックス「マガーッン!」
汚染液獣グレイサー「ガーッ!!」
〇荒廃したセンター街
こうして戦うヒーローにも──
〇荒廃したセンター街
溶炎巨人マグマックス「マガーッ!」
汚染液獣グレイサー「ガーッ」
「すいませーん!」
セクシーインタビュアー・セシリー「マグマックスさーん!インタビューお願いしまーす!」
溶炎巨人マグマックス「・・・」
セクシーインタビュアー・セシリー「マグマックスさん?」
溶炎巨人マグマックス「あ、いや、仕事があるので失礼!」
〇入り組んだ路地裏
井上 マサヒロ「ふう」
井上 マサヒロ「・・・」
〇荒廃したセンター街
〇入り組んだ路地裏
井上 マサヒロ(な、何考えてるんだ俺!俺には家族が!)
〇入り組んだ路地裏
──家族がいる
でも
〇女性の部屋
「マグマックス、セクシーインタビュアーから逃走!奴は奥手か!?」
井上 ライミ「・・・」
井上 ライミ「キモい」
その家族は色々うざかったりする
マグマックス
ファミリー外伝
〇女性の部屋
「これは襲われた政治家が悪いんだ!」
井上 ライミ「はぁ」
始まったか
〇部屋の前
大声はリビングから聞こえてきた
〇おしゃれなリビングダイニング
案の定、兄がニュースを見て熱く語っていた
井上 アスム「見て見ぬ振りだよ。ただ守るだけじゃ!」
井上 ヒトミ「うんうん。そうだねぇ」
母は兄の一生懸命話す姿が愛おしいといった様子だ
井上 アスム「あっ、ライミ。どー思うよ父さん・・・」
井上 ライミ「うるさい」
井上 アスム「なっ」
井上 ヒトミ「ライミ、せめてかっこよかったねくらい・・・」
井上 ライミ「うざい」
井上 アスム「母さんも、そーいうことじゃないって!」
井上 ライミ「いちいち熱くならないでよ、うるさいから」
井上 アスム「いいか、よーく聞け」
井上 アスム「俺は人を導くヒーローになる男だ!だからただ守るだけの正義を認めるわけにはいかない!」
井上 アスム「くそ〜父さんが俺のヒーロー活動を許可してくれたら・・・」
井上 ライミ「はぁ、そんなうるさく言うなら、許可なんて待たずに勝手にやんなよ」
井上 アスム「・・・」
井上 ライミ「えっ、何「その手があったか」みたいな顔。考えたこともなかったの?」
井上 アスム「と、とにかく!父さんは・・・!」
井上 ヒトミ「そうそう。お父さん帰り早くなるって」
井上 ライミ「は?怪獣出たから遅くなるんじゃないの?」
井上 ヒトミ「早く倒せたから、遅くはならないって」
井上 ライミ「はぁ、早く風呂入らないと。めんどくさいなぁ」
井上 ヒトミ「それなら、お父さんの後にすればいいのに」
井上 ライミ「お父さんの後、炭の匂いがすごいからやだの」
井上 アスム「くそ!だからヒーローは・・・」
兄は、早口でヒーロー論
母は、おっとり
そして父は、炭臭い
井上 ライミ「あーもう!」
皆、あたしをイラつかせる
ヒーローがいる家族は問題ばかりだ
〇赤(ディープ)
第一話 兄といじめ
〇おしゃれなリビングダイニング
井上 マサヒロ「ただいま」
井上 ヒトミ「お帰りなさい」
井上 アスム「父さん!今日の怪獣はバカな政治家の政策が汚染を生んだから・・・」
井上 マサヒロ「アスム、父さん疲れてるんだ」
井上 ライミ「ふぅ」
風呂から戻ると、兄が父に詰め寄っていた
井上 マサヒロ「あっ、ライミただいまー」
井上 ライミ「・・・うん」
井上 マサヒロ「つ、冷たい」
井上 アスム「正しくない父親だからだ」
井上 マサヒロ「なにぃ」
井上 アスム「見て見ぬ振りをして!」
井上 ライミ「・・・」
井上 ライミ「そういうあんたも、自分の成績は見て見ぬ振りしてるじゃん」
井上 アスム「なっ」
井上 ヒトミ「どういうことかしら」
井上 ライミ「あいつの成績表、返ってきてるよ」
井上 アスム「な、なんでお前それを・・・」
井上 ヒトミ「アスム?」
井上 アスム「ひい!でも勉強の優越は決して・・・」
井上 マサヒロ「まぁ、少なくともこの場において正しくないのはお前だな」
井上 アスム「くっ」
兄はリビングを飛び出した
井上 ヒトミ「ちょっとアスム!?」
井上 アスム「走り込み行ってきまーす!」
井上 ライミ「・・・逃げたね」
井上 マサヒロ「いやぁ、ありがとうライミ〜」
井上 ライミ「・・・」
井上 ライミ「若い女に鼻の下伸ばさないでね。きもいから」
井上 マサヒロ「ラ、ライミ!?」
〇公園の入り口
井上 アスム「くっそー、俺が正しいのに」
「うわっ、漏らしやがった」
「常にくせぇよなぁお前」
井上 アスム「ん?あれは・・・!」
〇広い公園
坂田 クラオ「偶然会った僕らにこんな芸を見せてくれるとは・・・」
満地 キレゾウ「いや流石!あっぱれウンチ君!」
道岸 ナサ「うう」
井上 アスム「おい」
坂田 クラオ「・・・ってなんだ中学生か」
満地 キレゾウ「焦ったぜぇ・・・あれ?でもあの制服、西高のじゃね」
坂田 クラオ「えっ高校生?・・・にしては」
満地 キレゾウ「背ぇ、ちっちぇな」
井上 アスム「くっ、気にしていることを」
井上 アスム「あっ違う。今はそんな場合じゃない」
井上 アスム「君達、見た所いじめをしているようだな」
井上 アスム「そんなことはやめるべきだ」
坂田 クラオ「えっ、何言ってんすか」
満地 キレゾウ「俺達、遊んでいただけっすよ」
井上 アスム「・・・」
井上 アスム「やっぱ!バカ共には・・・!」
満地 キレゾウ「おー。お兄さん、俺らとヤるきっすか?」
坂田 クラオ「でも、その小ささじゃあ・・・ぷっ」
満地 キレゾウ「いやぁ、俺らも手加減しますけど」
井上 アスム「・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
〇広い公園
井上 アスム「勝手にやるよ」
井上 アスム「変身」
正義炎人ファイアックス「正義炎人ファイアックス!」
「!?」
正義炎人ファイアックス「ファイアシュート!」
「アッ、あチッ!」
正義炎人ファイアックス「これは、警告だ」
正義炎人ファイアックス「次、君達が悪行を行った時」
正義炎人ファイアックス「俺の聖火が君達を焼き消す!」
「ひーー!?」
井上 アスム「ふぅ・・・あっ俺の正体喋っても燃やすからなー!」
井上 アスム「・・・」
井上 アスム「ヤバいか、これ」
井上 アスム「まぁ、いいや・・・君!」
道岸 ナサ「!」
井上 アスム「君はもう泣かなくていい。これからは俺が君達を導く」
道岸 ナサ「えっ」
井上 アスム「また、あいつらが君にちょっかい出すようなことがあったら」
井上 アスム「大きな声でファイアーックス!って呼んでくれ。俺が正しに行ってやる」
道岸 ナサ「は、はい!」
井上 アスム「わかったら早く帰りな。お母さんも心配するぞ」
道岸 ナサ「はい!・・・あの、ありがとうございました!」
井上 アスム「おう!」
井上 アスム「・・・へっ遂に始まったか。正義炎人の伝説が!」
〇大きな木のある校舎
井上 ライミ「ふぅ」
安らげるのは学校にいる時だけだ
井上 ライミ「ん?」
〇教室の外
あれはナサ君。でも様子が変だ
坂田 クラオ「ご、ごめんて」
道岸 ナサ「まぁやってくれたお返しはしないとね」
満地 キレゾウ「てめっ」
道岸 ナサ「おっとファイアッ」
満地 キレゾウ「っ」
どうして・・・
〇華やかな広場
〇教室の外
あの優しいナサ君が
道岸 ナサ「僕には正義炎人がいるからね」
井上 ライミ「正義炎人?あ!」
〇学生の一人部屋
井上 ライミ「入るよ」
井上 アスム「お、おう!?」
井上 ライミ「慌てないでよ気持ち悪い」
井上 アスム「べ、別に慌ててなんて」
井上 ライミ「まぁいいや。あんた力使ったでしょ」
井上 アスム「ああ」
井上 ライミ「認めんだ」
井上 アスム「そうさ」
井上 アスム「ついに正義炎人伝説は始まったのさ!」
井上 ライミ「ほんとあほ、最低ね」
井上 アスム「な!」
井上 ライミ「とにかく、もう変なことしないで」
井上 アスム「お、おい!」
〇部屋の前
井上 ライミ「離してよ」
井上 アスム「最低ってどういうことだよ」
井上 ライミ「ナサ君、あんたの力で威張ってる」
井上 ライミ「力の恐怖でいじめっ子達にいうこと聞かせてる!」
井上 ライミ「ナサ君の優しさをあんたは奪ったの!」
井上 アスム「なるほど・・・ふんっ」
井上 アスム「傍観者のお前が!俺の正義にケチつけるわけか!」
井上 ライミ「力任せのあんたの何が正義?いじめと一緒じゃない!」
井上 アスム「なに!」
「どうしたのー!」
母の声で兄は止まった。
井上 ライミ「・・・お母さんに言うね」
井上 アスム「・・・勝手にしろ」
〇おしゃれなリビングダイニング
井上 マサヒロ「アスム、ちょっと」
井上 アスム「なんだよ、父さん」
井上 マサヒロ「お前、中学生を脅したらしいな」
兄がこっちを見る。別に攻めているような視線ではなかった
井上 マサヒロ「事情は聞いた。だが、お前がいじめに力で介入するのは良くないことだ」
井上 アスム「・・・見て見ぬ振りだ」
井上 マサヒロ「ん?」
井上 アスム「あんたが・・・最低だ!」
井上 マサヒロ「なっ・・・親に向かってなんだ!」
井上 アスム「・・・いって」
井上 アスム「息子しか殴ることができない・・・やっぱ、あんたは」
井上 アスム「ヒーロー失格だ!」
井上 マサヒロ「なに?」
井上 アスム「自分勝手に生きるバカ共がいるせいで」
井上 アスム「苦しみ、悲しい目に遭う人が後をたたないのは分かっているだろ!」
井上 アスム「だったら救わなくちゃ」
井上 アスム「そんな世界は早く正さなくちゃ。だから!」
井上 アスム「力という早く深く人に刻めるものを使い」
井上 アスム「絶対的正義が!バカを殴り、正し、人を導く!」
井上 アスム「導きの父!それがヒーローだ!」
井上 マサヒロ「な、アスム・・・」
井上 アスム「それができないあんたは」
井上 アスム「見て見ぬ振りの最低な・・・」
井上 アスム「っ」
井上 ヒトミ「・・・いい加減にしなさいアスム」
井上 アスム「・・・」
兄はリビングを飛び出した
父と母は、深刻そうな顔で話し始めた
〇部屋の前
・・・「傍観者」
〇渡り廊下
〇華やかな広場
〇渡り廊下
〇部屋の前
井上 ライミ「・・・」
〇教室の外
井上 アスム「今日は学校に登場だぜ」
井上 アスム「見てろよ。ライミや皆の前で俺の正義を示してやる」
道岸 ナサ「ほら、しっかり反省してね」
満地 キレゾウ「くっいい加減」
道岸 ナサ「え、ライミさん?」
井上 ライミ「・・・」
道岸 ナサ「何だよ。やり返しは良くないとか言うの?」
井上 ライミ「・・・」
道岸 ナサ「僕はやられる側の気持ちを教えてやってるんだ!」
道岸 ナサ「悪いことした報いを・・・」
井上 ライミ「そんな乱暴なのナサ君らしくない」
道岸 ナサ「えっ」
井上 ライミ「誰かの力のせいで、」
井上 ライミ「あなたはあなたを忘れてる」
道岸 ナサ「!」
井上 ライミ「優しさを忘れたナサ君はナサ君じゃないよ」
道岸 ナサ「・・・」
道岸 ナサ「そんなの」
井上 ライミ「勝手、だよね」
井上 ライミ「今まで、何もしてくれなかったくせにって」
井上 ライミ「でも」
井上 ライミ「自分を誰かの力で曲げられちゃダメだよ」
井上 ライミ「優しさを無くさないで」
道岸 ナサ「・・・」
道岸 ナサ「っ」
井上 ライミ「・・・ごめん、勝手で」
井上 ライミ「でも、優しいナサ君でいてほしいよ」
道岸 ナサ「うう」
井上 ライミ「・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
あの後、兄は皆に謝った
〇教室の外
〇広い公園
〇おしゃれなリビングダイニング
井上 マサヒロ「アスム、誰かを導くことは立派なことだと思う。でも、」
井上 マサヒロ「力任せは、人の心を殺すことになりかねないと思うんだ」
その夜、兄はほとんど喋らなかった
〇部屋の前
・・・でも、兄は人を救おうとしただけなのだ
それを自分は、
〇部屋の前
〇部屋の前
井上 ライミ「・・・入るよ?」
〇学生の一人部屋
井上 アスム「んー」
兄は、黙々と何かを書いていた
井上 ライミ「あ、あの」
井上 ライミ「前はごめ・・」
井上 アスム「これだーー!」
井上 ライミ「えっ」
井上 アスム「決まったぞ!お前のヒーロー名!」
見せてきたノートには、びっしりと色々な名前が書かれていた
井上 アスム「『平和炎人エンブレス』」
井上 ライミ「???」
井上 アスム「俺は悟った!導きの父だけでは力で人を正しきれない。だから!」
井上 アスム「寄り添いの母も必要なんだ!」
井上 ライミ「あー」
井上 ライミ「もう!!!」
やはり、兄は兄で
ヒーローがいる家族は問題ばかりだ
闇雲に力を行使するだけでは、誰かを救うどころか歪めてしまうこともあるんですね。ヒーローにも心や感情があるから楽な稼業ではないかも。でもアスムくん、まっすぐでいい子だから将来は立派にお父さんの後を継げそう。
お父さんがお風呂入った後、炭の匂いするのめっちゃおもしろいです😂
バーベキューとか彷彿とさせるから私は炭の匂いが好きです。笑
ナサくんいじめられてたの可哀想だし、復讐したくなる気持ち、とてもわかるけど権力で押さえつけるのは違うし、複雑ですね🥲