泣けるの!? 桃太郎篇(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
アリス(お伽話の古書の精)「8時だよぉ、 全員集合〜」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「どうせならオイーッスもつけろよ」
有栖 望(ありす のぞみ)「まだ洗い物残ってたのに」
有栖 由依(ありす ゆい)「・・・」
有栖 健斗(ありす けんと)「ったく、もうすぐイベント開放だっての」
有栖 繭(ありす まゆ)「みんな不機嫌〜」
ミケ(ミケランジェロ)「♥」
アリス(お伽話の古書の精)「みんなどうしたのかなぁ? ノリがよくないよぉ」
有栖 健斗(ありす けんと)「とっとと始めろよ」
有栖 由依(ありす ゆい)「今日の話は何なの?」
アリス(お伽話の古書の精)「うん、今日はねぇ、皆もよく知ってるあのお話だよ」
有栖 繭(ありす まゆ)「あの?」
アリス(お伽話の古書の精)「そう、 桃太郎でーす」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「桃太郎・・・」
〇黒
〇黒
それは、1ヶ月前のこと
〇おしゃれなリビングダイニング
有栖 貴俊(ありす たかとし)「ただいま」
有栖 望(ありす のぞみ)「おかえりなさい」
有栖 望(ありす のぞみ)「また古本買ったの?」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「ああ、いつものように古本街をみていたんだが」
〇古書店
「その本が妙に気になってしまって」
〇おしゃれなリビングダイニング
有栖 貴俊(ありす たかとし)「気がついたら買っていたんだ」
有栖 望(ありす のぞみ)「ふーん 『世界と日本のお伽話百選』、ねぇ」
有栖 望(ありす のぞみ)「もしかして呪われてたりして」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「はは、まさか──」
〇おしゃれなリビングダイニング
有栖 貴俊(ありす たかとし)「な、なんだ!?」
有栖 望(ありす のぞみ)「きゃあ!」
アリス(お伽話の古書の精)「ふう、やっと出れた」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「誰だお前は!?」
アリス(お伽話の古書の精)「ワタシ?」
アリス(お伽話の古書の精)「うん、アリスとでも名乗っておこうか」
有栖 望(ありす のぞみ)「いったい何しに来たの!? お金ならないわよ!」
アリス(お伽話の古書の精)「それは家族が揃ったところで話すね」
アリス(お伽話の古書の精)「さ、皆呼んできて」
アリス(お伽話の古書の精)「あ、結界を張ったので逃げるのは不可よ」
〇黒
〇おしゃれなリビングダイニング
有栖 由依(ありす ゆい)「で、このコスプレ女は何なの?」
有栖 健斗(ありす けんと)(ちょっとカッケェ)
アリス(お伽話の古書の精)「よく聞いてくれたわ! ワタシはアリス、この本から生まれた妖精だよ!」
有栖 繭(ありす まゆ)「妖精さんはどうしてウチにいるの?」
アリス(お伽話の古書の精)「うん、最近ね ワタシの中のお話ってあまり読まれてないみたいなの」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「まぁ、皆で幸せに暮らしました、メデタシメデタシってのは今は流行らないかもな」
アリス(お伽話の古書の精)「ぶっちゃけこのまま読む人がいなくなると、ワタシは存在してられなくなっちゃうんだよ」
有栖 繭(ありす まゆ)「へー、可哀想」
アリス(お伽話の古書の精)「でしょ?でしょ?」
アリス(お伽話の古書の精)「そ・こ・で」
アリス(お伽話の古書の精)「お話をアップデートすることにしましたぁ!」
アリス(お伽話の古書の精)「最近だとなんて言うんだっけ?」
有栖 由依(ありす ゆい)「エモい?」
アリス(お伽話の古書の精)「そう、それ! 昔ながらのお話にエモさをプラスしてがっつりバズっちゃおうってことよ!」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「それがウチとなんの関わりが?」
アリス(お伽話の古書の精)「その作業をやってもらうのが、皆だからでーす」
「はあっ?」
アリス(お伽話の古書の精)「これから毎週土曜8時に、この本から一つ話を選びまーす」
アリス(お伽話の古書の精)「それを皆がエモく出来たら成功!」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「失敗したら?」
アリス(お伽話の古書の精)「死にます」
有栖 健斗(ありす けんと)「逃げたら?」
アリス(お伽話の古書の精)「死にます」
アリス(お伽話の古書の精)「名付けて『百物語の会』!」
有栖 貴俊(ありす たかとし)(百物語ってそんなだったか?)
アリス(お伽話の古書の精)「百物語の会で使うのはこの2つのダイス! 1つはどんなエモさを加えるかを決めるものだよ」
『●●の泣ける話』
『●●のコワ〜い話』
『●●の感動する話』
『●●のちょっとムフフな話』
『●●のスカッとする話』
『●●のスベらない話』
アリス(お伽話の古書の精)「もう一つは普通のダイスだよ 出た目がその話に参加出来る人数なの!」
(スベらないで1は最悪の組合せだ)
有栖 由依(ありす ゆい)「待って、 うちは5人家族なんだけど6が出たらどうするの?」
アリス(お伽話の古書の精)「ネコちゃんがいるじゃない」
有栖 由依(ありす ゆい)「・・・」
有栖 健斗(ありす けんと)「ふざけんな! なんで俺達がそんな事やんなきゃいけないんだよ」
アリス(お伽話の古書の精)「もちろんご褒美はあるよぉ! 無事に百の話をアップデート出来たら」
アリス(お伽話の古書の精)「家族皆の望み、ドーンと叶えちゃう!」
有栖 健斗(ありす けんと)(あれも!?)
有栖 由依(ありす ゆい)(アレも)
???「♥」
アリス(お伽話の古書の精)「さぁヤル気も出て来たところで、第一回始めるよぉ!」
有栖 健斗(ありす けんと)「ちょっと待て、まだ心の準備が」
〇黒
そして再び今──
〇おしゃれなリビングダイニング
有栖 貴俊(ありす たかとし)「・・・『感動する話』で『3』か」
有栖 繭(ありす まゆ)「繭行ってみたーい」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「いや、桃太郎はバトルがあるかもしれないから、繭は今回はダメだ」
有栖 繭(ありす まゆ)「えーつまんない」
有栖 健斗(ありす けんと)「母さんは?」
有栖 望(ありす のぞみ)「ムフフがよかった・・・」
有栖 健斗(ありす けんと)「それじゃ」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「この3人か」
有栖 健斗(ありす けんと)「前回のちょっとムフフの『花咲じいさん』は軽く地獄だったから、今回は見送りたかったけど」
「行くか」
〇黒
アリス(お伽話の古書の精)「それじゃ第5回百物語」
アリス(お伽話の古書の精)「行ってらっしゃーい」
〇黒
〇草原の道
有栖 健斗(ありす けんと)「で、どうすんの?」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「話に干渉するなら桃太郎の家来の動物になるのが早いだろうな」
有栖 由依(ありす ゆい)「同感だわ」
有栖 健斗(ありす けんと)「じゃあ俺キジがいいや 楽そうだし」
有栖 由依(ありす ゆい)「なら私イヌ」
有栖 貴俊(ありす たかとし)「・・・サル」
有栖 健斗(ありす けんと)「けどこれじゃ読んでる人、混乱しないか? 語尾にピーとか付けとく?」
有栖 由依(ありす ゆい)「文字数増えるような事はやめて」
有栖 由依(イヌ)「物語に同期したから平気よ」
有栖 貴俊(サル)「おい 向こうから誰か来るぞ」
有栖 由依(イヌ)「桃太郎なら接触しましょう」
〇美しい草原
桃太郎「ふう、なかなか道は遠いな」
桃太郎「ん?」
〇けもの道
イヌサルキジがあらわれた
ももたろう「な、なんだ!?」
イヌサルキジはなかまになりたそうにこちらをみている
ももたろう「そ、そんな急に!?」
イヌサルキジはなかまになりたそうに こちらをみている
イヌサルキジはなかまになりたそうに こちらをみている
ももたろう「わかった、わかったから!」
イヌサルキジがなかまになった!
〇美しい草原
桃太郎「何なんだ急に!?」
有栖 由依(イヌ)「話が早くて助かるわ」
有栖 健斗(キジ)「よろしく」
有栖 由依(イヌ)「早速だけど健斗は鬼ヶ島まで偵察に行って」
有栖 健斗(キジ)「え?なんで やだよダルいし」
有栖 貴俊(サル)「物語後半に何かねじ込むんだったら鬼ヶ島しかない」
有栖 由依(イヌ)「健斗はキジの役だから飛べるはずよ」
有栖 健斗(キジ)「チェッ こんな事なら別のにすりゃよかった」
「あ、飛べた!」
有栖 貴俊(サル)「凄いな、役の能力が使えるんだな」
有栖 由依(イヌ)「ええ、だからお父さんあまり風上に立たないでね」
有栖 貴俊(サル)「父さんは、どうするかな」
有栖 由依(イヌ)「木にでも登ってれば?」
「うほー、高いなぁ!」
桃太郎「あの、いったい何を」
有栖 由依(イヌ)「あ、こちらの話なのでお構いなく」
〇黒
〇島
有栖 健斗(キジ)「あれが鬼ヶ島か」
有栖 健斗(キジ)「メンドくせ、直接聞いちゃえ」
〇荒廃した市街地
Q.桃太郎を知ってますか?
通りすがりの鬼「ああ、鬼ヤベェらしいよね、隣のクラスの奴が目が合っただけで金棒取られたって」
〇城門沿い
Q.鬼ヶ島の名物を教えてください
通りすがりの鬼「それなら虎柄家の『鬼盛りチャーシューメン』だね 絶対食べた方がいいって」
有栖 健斗(キジ)「現場からでした」
〇黒
〇山の中
有栖 健斗(キジ)「以上が偵察で得た全てだ」
有栖 貴俊(サル)「一つも役に立たない情報だらけだな」
有栖 健斗(キジ)「そんな事ないよ、チャーシューメンは美味かった」
有栖 由依(イヌ)「待って」
有栖 由依(イヌ)「鬼って背中に皆同じ痣があるのね」
有栖 健斗(キジ)「ああ、鬼族の証って言ってたよ」
有栖 由依(イヌ)「ふーん・・・」
有栖 由依(イヌ)「いけるかも」
〇黒
〇島
桃太郎「ついに鬼ヶ島にやってきたな」
有栖 由依(イヌ)「ええ、省略するけどとても長く辛い闘いだったわ(棒)」
有栖 貴俊(サル)「それでは行くか」
桃太郎「ああ、出航だ!」
桃太郎「・・・そういえば、キジは?」
「あ、別行動してるので現地集合で」
桃太郎「あ、そう」
〇城門沿い
〇城門沿い
通りすがりの鬼「あ、あれは!?」
通りすがりの鬼「やべーよ、桃太郎じゃね?」
通りすがりの鬼「鬼メンチ切ってんぞ!」
〇城門沿い
有栖 貴俊(サル)「誰も目を合わさないな」
有栖 由依(イヌ)「タチの悪いヤンキーみたいな扱いね」
???「待てぇい!」
〇城門沿い
鬼極 轟鬼(きごく ごうき)「桃太郎!」
鬼極 轟鬼(きごく ごうき)「この鬼ヶ島四天王、 鬼極轟鬼がいる限り」
「この門の中には1歩たりとも」
鬼極 轟鬼(きごく ごうき)「──」
〇城門沿い
有栖 貴俊(サル)「桃太郎、清々しいまでに迷いがないな」
有栖 由依(イヌ)「このペースだと1時間もあれば殲滅かしら ・・・健斗、遅いわね」
有栖 健斗(キジ)「待たせたな」
有栖 由依(イヌ)「遅いわよ」
有栖 健斗(キジ)「今どき紙の資料探すなんてダリィんだって! ああ、検索してぇ」
有栖 由依(イヌ)「で、あったの?」
有栖 健斗(キジ)「ああ、これ」
有栖 貴俊(サル)「よし、始めるか」
有栖 由依(イヌ)「ええ、鬼がいなくなる前に」
〇城門沿い
蒼鬼(そうき)「くっ 最後の四天王のこの蒼鬼を追い詰めるとは、本当に只の人間なのか!?」
「その通り!」
有栖 由依(イヌ)「桃太郎は只の人間じゃないわ」
桃太郎「なに!?」
有栖 由依(イヌ)「この18年前の記事を見て!」
有栖 由依(イヌ)「当時の鬼の族長の息子が、人間の女性と駆け落ちして消息不明になったとあるわ!」
有栖 健斗(キジ)「見つけたの俺な」
有栖 由依(イヌ)「桃太郎の強さ・・・ それは、鬼の血を引いているからなのよ!」
桃太郎「ば、馬鹿な!」
〇城門沿い
「な、なんだってぇ!?」
〇城門沿い
有栖 由依(イヌ)「その首の後ろの、半分の鬼の痣が何よりの証拠よ!」
〇黒
〇城門沿い
「本当だ・・・という事は!?」
〇城門沿い
桃太郎「そんな馬鹿な!」
有栖 貴俊(サル)「もういいじゃないか」
有栖 貴俊(サル)「桃太郎、お前が鬼を憎むのは、人にも鬼にもなりきれない葛藤が」
有栖 貴俊(サル)「無意識のうちに現れていたんだろう」
有栖 貴俊(サル)「でも、もういいんだ さあ、勇気を出して心を開くんだ」
桃太郎「そんな・・・ そんな」
〇黒
「うわあぁっ──」
〇黒
〇城門沿い
桃太郎「確かに、戦いは何も生まないかもしれない」
桃太郎「私の中に鬼と人、両方の血が流れているのなら──」
桃太郎「私はその架け橋となろう」
蒼鬼(そうき)「桃太郎!」
〇城門沿い
「桃太郎さん!」
〇城門沿い
有栖 貴俊(サル)「桃太郎、いい顔で笑うようになったな」
有栖 健斗(キジ)「ああ」
有栖 由依(イヌ)「すごい大量に斬った後だけどね」
「・・・」
有栖 貴俊(サル)「上書きが始まるようだ!」
〇黒
〇おしゃれなリビングダイニング
有栖 健斗(ありす けんと)「ふう」
有栖 繭(ありす まゆ)「あ、おかえり〜」
有栖 健斗(ありす けんと)「何やってんの?」
アリス(お伽話の古書の精)「暇だったからタコパしてたのぉ」
(コイツ)
有栖 由依(ありす ゆい)「判定して頂戴」
アリス(お伽話の古書の精)「はーい♥ それじゃ判定しま〜す」
〇黒
アリス(お伽話の古書の精)「今回の判定は〜」
「・・・」
アリス(お伽話の古書の精)「──」
アリス(お伽話の古書の精)「成功!」
アリス(お伽話の古書の精)「本当はギリだったんだけどぉ」
アリス(お伽話の古書の精)「タコヤキの分加点しとくね♥」
(なんだその採点基準)
〇一軒家
〇一階の廊下
有栖 健斗(ありす けんと)「にしても姉ちゃん、よく痣の事に気付いたな」
有栖 由依(ありす ゆい)「そんな訳ないでしょ あれは隙をみて私がマーカーで描いたのよ」
有栖 健斗(ありす けんと)「ええ!?」
〇山の中
有栖 由依(ありす ゆい)「桃太郎、首に蚊が」
桃太郎「ああ、すまない」
有栖 由依(ありす ゆい)「あ、今度はカメムシが」
桃太郎「ええ!?」
有栖 由依(ありす ゆい)「あ、ウデムシ」
桃太郎「・・・」
〇一階の廊下
有栖 由依(ありす ゆい)「健斗に記事を探させたのも話に現実味を付加するためだし」
有栖 健斗(ありす けんと)「え? バレたらどうすんの?」
有栖 由依(ありす ゆい)「バレないわ あの話は上書きされたし」
有栖 由依(ありす ゆい)「めでたしめでたしの後には「その後の物語」なんてないんだから」
有栖 由依(ありす ゆい)「じゃあね、おやすみ」
有栖 健斗(ありす けんと)「スゲ・・・」
有栖 健斗(ありす けんと)「あ、そういえばイベント!」
〇黒
何度も痣を書く犬と桃太郎の姿を想像するとスゴい笑えます🤣
鬼たちの暮らしぶりがとっても文化的で、ソコを躊躇なく襲った桃太郎サンのバーサーカーっぷりが際立って面白かったです🤤
面白かったです😆
昔話を刷新していく、しかもお題にのっとって。私だったらどんな物語を変えたいかなぁ、なんて考えてしまいました。
物語の中に入り込むのが強引で笑っちゃいましたが、知られざるその世界の日常を垣間見たりできるのは楽しそうだなぁ、私もこの家族に入りたいなーなんて思ってしまいました😂
誰でも書きやすい、すごくいいフォーマット! 冒頭でちょっぴり触れられた「花咲じいさん」の怪しくアップデートされた話が気になりますね。笑
自分だったら何をモチーフにするかと、つい色んな昔話を調べてしまいました^^(意外と細かいあらすじを忘れてます…)