その夜、病院村へ行かなかったら

法橋行遍

エピソード1(脚本)

その夜、病院村へ行かなかったら

法橋行遍

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〇外国の田舎町
  クルマが止まってしまった

〇パールグレー
  女の人がやって来た。
  何も言わず、通り過ぎていってしまった。
ぼく(あ、行っちゃった。ガソリンスタンドのある場所、聞こうと思ったのに)
ぼく「でも、おかしいな。 なぜ、彼女の体からガソリンの 強烈なにおいが? それに、暗い森の中へ 一人きりで入って行ったぞ」

〇けもの道
(声をかけた方が、いいのかな)
  その時だった。
  森の中で爆発音がして
  大きな赤い炎が燃え上がった
「まさか、そんなこと   ないよね?   彼女が、焼身だなんて...」
  後戻りして、暗い森へ入って行く
  勇気のないぼくは
  闇雲に、道路を前へ
  小走りに進んでいった

〇田舎の線路
  鉄道線路の踏切がある。
  列車が通り過ぎ、遠ざかっていった。
  引き込み線が何本も
  敷設されているところからすると
  一昔前は、にぎわっていた町
  なんだろうな

〇田舎駅のホーム
  線路に沿って歩いて行ったら
  駅があった
  病院村
  駅名表示は、そうなっている

〇田舎駅の待合室
  病院リゾート、という
  古びたポスターが、貼ってあった。
  なるほど、駅の待合室も
  木造建築の高級ホテルみたいだ
「ははっ。   富裕層の老人たちの   パラダイスって   わけか!」

〇山道
(ってことは、   すごい山道だけど   このまま歩けば   人のいる町へ行けるってことだよね)
「もうすぐ   人に会えるぞ!」

〇立派な洋館(観測室の電気点灯)
  廃線跡のトンネルを抜けると
  そのまま
  大きな建物の庭園へ出た
(病院リゾートというより   なんだか   修道院ってな感じだな)
  その時
「うわっー!    なんだ、    これっ?」
  目の前に、見たこともない
  巨大なニワトリが
  現れたのだ
ぼく「危なく   目をくちばしで   突っつかれそうに   なったじゃないか!   今のは、いったい何なんだ?」

〇華やかな裏庭
  逃げていくニワトリを
  目で追いながら
  庭の中に突っ立っていると、
  飼育員らしい中年の男が
  やって来た
飼育員っぽい男「そこで、 何をしてなさる?」
ぼく「ばかデカい鶏が 現れたんです!」
飼育員っぽい男「それが、どうしたね? この病院では 卵が、お金なんだ。 卵を産む鶏さまは 人間より、ずっといいエサをもらっとる」

〇華やかな裏庭
ぼく「いいエサもらってるからって あんな凶暴になるか? しかも、人間より大きい鶏なんて」
ぼく「ようし、ここにいても 仕方ないから 病院の中へ入ってみよう」
ぼく「卵が、お金代わりだとしたら   まず卵を手に入れなくちゃ」

〇洋館の廊下
  でも、なんてことだ!
  ズラっと並ぶ客室のドアが開いていて
  鶏たちが顔を出しては
  エサをついばんでいる!
  赤い大きなトサカを揺らし
  横目でにらんでるっ
  ぼくは、あわてて
  蜘蛛の巣だらけの階段を駆け上った

〇地下広場
ぼく「でも、あのブロイラーみたいな 廊下にいたのは、 雄鶏ばかりだったよね。 どうやって卵を手に入れるんだろう?」
  迷路のような階段を昇ったり、降りたり。
  エッシャーの迷路みたいな階段の
  その先は、
  最上階にある鐘楼だった

〇城の客室
  そこには、若い女の子が...
修道女の瑠奈「ああっ! 来てくれたのね! ねえ、わたしを連れてここから 逃げて!  この病院は、一人前の修道女に なったら」
修道女の瑠奈「めんどりになって  卵を産まなくちゃいけないの!」
  この女の子も、ガソリンの
  強烈なにおいが、した。
  どうやら、森で会った女の子と
  同じ運命をたどるつもりだったらしい
ぼく「で、でも、逃げるといっても どうすれば?」
修道女の瑠奈「そんなこと、自分で考えなさい!  助けに来てくれたんでしょ!?  ここの院長先生は、村長も兼ねていて  欲深くて」
修道女の瑠奈「患者さんたちを鶏のエサに   した報いで   自分も雄鶏に化身したの!   だから   ノーマルな発想、やめてっ!」

〇宇宙戦艦の甲板
  せっぱつまって
  クローゼットの扉を開けると
  そこには、飛行機の
  発射用カタパルトが。
  こないだの戦争で使っていた設備だ!

〇空
  考える間もなく、
  小さなグライダーに乗って
  夜空へ飛び出した

〇戦闘機の操縦席(滑走路)
  ところが、大失敗。
  小型機の操縦は後部座席だろって思って
  彼女と抱き合って乗ったのに
  このグライダーには
  前方しか操縦桿がなかったのだ!

〇青(ダーク)
修道女の瑠奈「う、もうっ、何やってんのよ!」
ぼく「そう、そうだね。 このままじゃ、操縦不能」

〇戦闘機の操縦席(滑走路)
  その上、なんと巨鳥と化した
  雄鶏たちが群れをなし、
  空を飛んで襲ってきたのだ!

〇沖合(穴あり)
  グライダーは海の方へと突き進む。
  もう、身をまかせるしかない。
  こうなったらワームホールか何かに
  突っ込むしかない!

〇星
  あれって、ハクチョウ座かな...
  死を覚悟して
  夜空の星をながめていたら

〇渋谷のスクランブル交差点
  気がついたら、その翌朝
  幸せになっていた

〇駅のホーム
  満員電車も
  交通費全額支給だから
  ぜんぜん気にならないし、快適

〇コンビニのレジ
  電気、ガス、水道、年金、健保...
  次々に、ちゃんと支払うのも
  初心者向けゲームみたいにかんたん

〇綺麗なキッチン
ぼく「ただいま!」
  家に帰れば、元修道女のきれいな彼女。
  専業主婦になりたがっている。
  昨夜、病院村へ行かなかったら
  こんな幸せ、手に入らなかっただろうね
  ただ、彼女が作るのは
  卵料理ばかり。
  オムレツ、卵焼き、スフレ、目玉焼き、
  スクランブルエッグ、卵スープ、卵サンド...
(でも、いいんだ。   卵料理を食べ続けるのが   ぼくの一生のゲーム   だと思えばいいんだから!)
  おしまい

コメント

  • 序盤は怖かったですが、後半人生をゲームに例えたのがおもしろかったです。
    そうですよね。毎日やってることでも、ゲームと思えば楽しいのかもしれません。
    最後のたまご料理ばかりってところでクスッとしました。

  • なんだか夢の世界のような話でした!
    次から次へと目まぐるしく変わる風景や環境…そして現実に起きたら違和感しかないような、でも違和感に感じないそんな感じがとてもよかったです!

  • 発想が豊かなストーリーで楽しく読ませて頂きました。ハッピーエンドなんだけど、ハッピーなの!?(笑)と少し、ドキドキしながら読ませてもらいました。

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