神様からの三行半

金平 旺大

エピソード1(脚本)

神様からの三行半

金平 旺大

今すぐ読む

神様からの三行半
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇オフィスのフロア
ツクヨミ「あー、もしもし」
タケハ「もしもし、兄ちゃん久しぶりだな」
ツクヨミ「ゲームの製作で忙しかったんだよ。 ようやく新しいゲームができたから、 ダウンロードして遊んでくれよ」
タケハ「やったーー 兄ちゃんのゲーム、面白いからなぁ。 ちょうど暇だったしやってみるよ」
ツクヨミ「おいおい、神社のほうはいいのかよ」
タケハ「いいのいいの。 あんなの、さい銭箱さえ設置してれば 誰かがお金を入れてくれるんだから」
ツクヨミ「まったく。 代々続いている神社なんだから大事にしてくれよ」
ツクヨミ「このままだと 父さんが残してくれた遺産を死ぬまでに食い潰してしまうんじゃないか?」
タケハ「・・・父さんのことは言わないでくれるか」
ツクヨミ「・・あ、悪かった。 ・・・・あとでゲームの感想を教えてくれよ。じゃあな」
  プープープー
ツクヨミ「・・・久しく実家には帰ってないけど、 神社は大変なことになってるんだろうな・・」
押野「すみません、 ツクヨミさんにお客さんが来てますが・・」
ツクヨミ「あー、新しいキャラデザインの人が会いに来るって言ってたな。 会議室に通してください」
ツクヨミ「さてと、 適当にあしらって早退するとするかな」

〇綺麗な会議室
ツクヨミ「いやぁ、どうもお待たせしました」
ツクヨミ「それでどんなキャラデザインを・・」
淡雪「あなたは神を信じますか?」
ツクヨミ「は?」
淡雪「信じますよね? 実家が神社なんですから」
ツクヨミ「・・・・・まず名刺を出すのが礼儀じゃないですか?」
淡雪「すみません、名刺や名前といったものは持っていないんです」
淡雪「私に名前をつけるとしたら、あなたの好きなイチゴの品種の名前をいただいて『淡雪』でどうでしょう」
ツクヨミ「・・キャラデザインの人ではないようですね。気持ち悪いから帰っていただけますか」
淡雪「ここで追い返せば、あなたの一生はメチャクチャになりますよ。」
淡雪「今から会社で大きな問題が発生します。 あなたはその責任を負わせられて、 世間から悪者として扱われます。」
淡雪「あなたはこの会社を追い出され、 他のゲーム会社に自分を売り込もうとしますがすべて失敗。」
ツクヨミ「ちょ、ちょっと」
淡雪「困り果てたあなたは実家の神社に帰りますが、」
淡雪「お父様から譲り受けた神社は弟が何の世話もしてないせいで荒れ果てています。ぐうたらに寝ている弟さんにあなたは呆然とします」
淡雪「それからあなたが死ぬ未来と、生きる未来がありますが、その未来は今のところ決まっていないようですね」
ツクヨミ「待て待て。 何を勝手なことを言ってるんだ? 早く出て行けって言ってる・・」

〇オフィスのフロア
神崎「部長~」
部長「どうした そんな大きな声をだして」
神崎「今、海外から電話がありまして。 ツクヨミさんが作った新作ゲーム『ツントッピー』が盗作だと訴えられそうなんですけど・・・」
部長「えっ?は、早く事実確認をしろ。 ツクヨミはどこに行った?」
神崎「えっとぉ、 昼で早退するって午前中に言ってました」
部長「ふざけんな! ホントに盗作だったらあいつがすべて、作ったことにしろ。いいか、みんな。あいつのせいだぞ」
神崎「は、はぁ」

〇綺麗な会議室
淡雪「・・聞こえましたね」
ツクヨミ「・・あぁ」
ツクヨミ「・・・本当に、このあと盗作の責任を押し付けられて辞めさせられるのか?」
淡雪「はい、 最終的には裁判になって、盗作ではないという判決は出ますが、悪いレッテルは簡単には外せないようです」
ツクヨミ「・・・どうしてそんなことが起こるんだ?」
  淡雪は一枚の紙をテーブルに置く
淡雪「こちらをご覧ください」
  『もう安受神社には戻りません
   探さないでください
               神』
ツクヨミ「・・・これは?」
淡雪「ご実家の神様からの三行半です。 安受(やすうけ)神社から神様がいなくなったことで運命が変わる予定になりました。」
ツクヨミ「??? それってどういうこと?」
淡雪「毎年11月くらいに出雲大社本社のほうに 日本のすべての神様が集まるんですが・・」
淡雪「毎年、五人くらいの神様が地元の神社に帰らないですよ。理由は参拝客が少なくてヤル気が出ない、というのが74%です」
淡雪「願いを叶えたいのに、誰も来ない。 ところが出雲大社に行くと、いくらでも参拝客がお願いをしに来る」
淡雪「それで出雲にいるのが楽しくなるようですね。今は向こうで楽しそうに願いを叶えています」
淡雪「そして、地元の神様がいなくなったことでみなさんの運命が変わってしまうわけです」
ツクヨミ「じゃあ、その家出をしている神様を元に戻してくださいよ」
淡雪「それはできません。神様ではない人が神様を無理やり動かそうとすると全てのバランスが崩れてしまいます」
ツクヨミ「あなたは神様なんでしょ? 人間なら無理でも神様なら・・」
淡雪「私は出雲大社、入社4年目のただの人間です。軽い気持ちで面接を受けたら内定をもらってしまって・・」
淡雪「そこから名前と存在は神様が消してしまいました。今は、出雲にこもる神様が多いので、影響が大きくならないように・・」
淡雪「こうやって、神様がいなくなった神社を回って、運命の変わるのをなるべく抑えるようにしています」
ツクヨミ「ここは神社じゃないぞ。 そんなことは弟に言ってくれ」
淡雪「はい、神社のほうには行かせていただきましたが、タケハさんは話をまったく聞いてくれませんでしたので、仕方なくこちらに。」
淡雪「神様がいなくなって、一番運命が大きく変わるのはあなたです。なので、あなたにも知る権利があると社長は言っていました」
淡雪「弟さんは何も変わりません。 結婚もせず、ぐうたらして、ゲームをして数年間は生きていきます」
ツクヨミ「でも、神様が戻せないんだったら運命は変わってしまう。それは決定事項なんだろ?」
  ゴソゴソゴソ
淡雪「運命を変えたいと思ったあなたにこれを差し上げます」
ツクヨミ「・・・指輪?」
淡雪「はい。 そこにルビーのような赤い玉がついています。それがウルトラマンのカラータイマーのように光る時があります」
ツクヨミ「・・・ウルトラマンって、例えが古くないか。まあ、なんとなくはわかるけど・・」
淡雪「やっぱりそうですよね。 マニュアルが古すぎるんです。あとで言っておきます。でも、課長が頭が固い人で、私が何を言っても・・」
淡雪「否定から入るんですよ。 まるで「おまえの言ってることは全部間違いなんだ」と言わんばかりの視線で見るんです」
淡雪「信じられます? 人間界の会社なら一発でアウトの存在ですよ。まったくなんで私、あの会社を受けたんだろ・・」
ツクヨミ「あのぉ、 上司のストレスが溜まってるみたいですけど、・・それは別のところで発散していただけますか?」
淡雪「あっ、すみません。 ・・・説明に戻ります。 えーっと、どこまで・・・、あっ、指輪の石が光るところでしたね」
淡雪「それは 実家の神社で誰かが願い事をすると光るんです。そしてその玉を耳元に持ってくると、願い事を直接聞くことができます」
淡雪「これの優れている所は、考え事をするときのように、肘をついて拳を握り、頬杖をつくように玉を耳元に持っていけば、」
淡雪「周りからはバレることなく、仕事中でも願い事を聞けるという優れものです」
ツクヨミ「・・・まさか、その聞いたお願い事を出雲大社まで行ってお願いしなおす、とか言わないよね?」
淡雪「そんなことは言いません。 その願いをあなたが叶えてあげればいいんです」
ツクヨミ「あー、真剣に聞いていた俺がバカだった。 ・・何?この指輪を売りたいのね」
淡雪「いえ、そんなことは・・ あっ、ちょうど指輪が光りましたね」
ツクヨミ「マジか」
  恐る恐る、点滅する赤い玉を耳元に押し付けてみる

〇幻想空間
さくら「どうか、どうか、 今年こそ運命の相手と会えますように」

〇綺麗な会議室
ツクヨミ「なんか聞こえた」
淡雪「その願いを叶えることで、その功績が神様ドットネットに即時アップされます」
淡雪「その功績を積み重ねることで出雲社長は実家の神様に、地元に戻るように言いやすくなるらしいです」
ツクヨミ「・・とは言っても、俺は神様じゃないから願いなんて叶えられないだろ?」
淡雪「大丈夫です。 今のあなたでも叶えられるお願いだけを届けてくれるようになっていますから」
ツクヨミ「それに今のは実家の神社だろ? ここから何時間離れていると思ってるの」
淡雪「それに関しては、あなたのお爺さまが神社を大事に扱っていたようで、犬がこのピンチを助けたいと言ってここまで来てくれました」
ツクヨミ「犬?」
淡雪「窓の外にきていますよ」
ツクヨミ「うわっ、デカっ 三メートルくらいの大きさがあるじゃないか ・・それに空を飛んでるし。下からみんなが見てるんじゃないの?」
淡雪「安心してください みんなには見えてませんよ。 彼は神社の狛犬(こまいぬ)ですよ」
淡雪「神様がいなくなったこのピンチに 神社を救いたいらしいです。 彼の力は物体をワープさせることです」
淡雪「身体に触れると彼が転送してくれるらしいです。 まあ、まず触ってみましょうか」
ツクヨミ「おいおい、そんなの怖すぎるよ」
コマ「グルルルル」
淡雪「機嫌を損ねているみたいですよ。 彼に嫌われたら運命を変えるミッションは難しくなりますよ」
ツクヨミ「わかったわかった ちょっとだけ、触ってみる。 ・・でもこれオオカミじゃないの?」

〇幻想2

〇公園のベンチ
ツクヨミ「ん?ここは?」
淡雪「どこでしょうね?」
ツクヨミ「っていうか、この犬、でかすぎて、すごく気になるんだけど」
淡雪「大丈夫ですよ 見えてませんから」
ツクヨミ「でもなぁ」
コマ「これでよろしいですか」
ツクヨミ「うわっ、変身した それもめっちゃイケメン」
コマ「それよりも、 あそこにいる女性です」
  指さした方向を見ると、
  そこには白いオーラをまとった一人の女性が公園のベンチに座っていた。
コマ「あのオーラが見える女性が神社の参拝客です。 身体にまとわりついているオーラから伸びてる白い紐みたいなものが見えるでしょ?」
ツクヨミ「あー、なんかモヤモヤしたロープみたいなのが見える。 公園の向こう側に伸びてるぞ。」
コマ「あれが運命の糸です。 あれを辿っていけば、お願いを成就できるキーパーソンがいます」
コマ「今回に関してはおそらく 付き合うはずの運命の男性とつながっているのでしょう」
ツクヨミ「それで、俺はどうすればいいんだ?」
コマ「簡単です。 その白い紐をつたって、男性を見つけ、出会わせてしまえばいいのです。もともと運命の相手同志は磁石みたいなもの」
コマ「近くに寄れば、自然とくっつくようにできています」
さくら「はぁ」
ツクヨミ「おい、今、オーラが薄くならなかったか?」
コマ「はい、 願いや思いが強いときは良いのですが、 弱くなってしまうとオーラも弱くなってしまうのです」
コマ「すなわち、 運命の人と出会いたいという思いが無くなれば、つながっているはずの男性を見つけることも不可能になるということ」
コマ「願いなんか叶わないと諦められる前に 早く見つけましょう」
ツクヨミ「お、おう」
ツクヨミ「おい、あれ・・」

〇街中の公園
筒原「あれ?おかしいな」
ツクヨミ「あの男でいいのか?」
コマ「はい、間違いないようです」
ツクヨミ「それでどうやってあの女性と会わせればいいんだ?」
コマ「それはあなたが考えてください。 私はみんなには見えてないのですから」
筒原「どこに落としたんだろ・・」
ツクヨミ「どうかしましたか?」
筒原「いや、腕時計がジョギング中に邪魔だったのでポケットに入れていたんですが、・・どこかに落としてしまったみたいで・・・」
筒原「赤いバンドの腕時計だからすぐに見つかると思ったんですけどねぇ」
ツクヨミ「赤いバンドの、腕時計ですか・・ それなら・・・あっちのベンチの近くに落ちていたような気がしますよ」
筒原「ホントですか? 助かりました」

〇公園のベンチ
ツクヨミ「あそこのベンチ付近で見ましたよ」
筒原「ありがとう 探してみます」
筒原「あのぉ、すみません、 そこのベンチに落とし物があるかもしれないので、少しいいですか」
さくら「あ、はい」
筒原「あれ?おかしいな やっぱりないかぁ」
さくら「何を探しているんですか?」
筒原「赤いバンドの腕時計を・・」
さくら「もしかして、これですか?」
筒原「それです、それです 良かったー。 失くしたら買いなおすこともできなかったので・・」
さくら「アニメの限定グッズですもんね。 私も持っています」
筒原「え、本当に?」
さくら「はい、あのアニメ大好きで、 全部見てるんですよ」
筒原「僕もです。 アニメのオープニングを聞きながらジョギングすると、どこまでも走れそうな気がするんですよね」
さくら「わかります。 気分が高揚する感じですよね」
筒原「・・あの、このあとお時間があるようでしたら、コーヒーでも飲みながらお話でもしませんか?」
筒原「なかなか同じ趣味の人がいなくて、 寂しい思いをしてたんですよ」
さくら「いいですよ。 私も、この腕時計を落とした人とお話してみたいと思ってたところだったので」
筒原「・・じゃあ、行きましょうか」
ツクヨミ「これでよかったのか?」
コマ「はい、 よく見てください。 白かったオーラが赤くなったでしょ。 これであの二人は付き合うことになるでしょう」
コマ「すなわち、 心願成就です」
ツクヨミ「それで、これを何回繰り返せば、神様は戻ってくるんだ?」
淡雪「突然すみません」
ツクヨミ「うわっ、どこにいたんだよ」
淡雪「公園の横のたい焼きを食べてました」
淡雪「それで、先ほどの質問ですが、答えはよくわかりません。 成果を上げていけば私も嘆願書の類いを出しやすくなりますが、」
淡雪「結局は神様の気持ち次第ということになります。なので、今回の神様奪還プランはどんどん参拝者の願いを成就させて、」
淡雪「評判を上げ、参拝客が増えれば、神様も戻ってきたくなる、という計画なのです」
淡雪「あとは、弟さんの教育も必要かもしれません。 神社はひどい有り様でしたから、あれでは参拝者が離れていくのも自明の理、かと」
コマ「私もそう思います。 昔は境内もきれいで、私の身体にも枯れ葉一つ落ちていなかったというのに、今では・・・」
ツクヨミ「そっか、おまえ、狛犬だったよな。 ・・・狛犬って呼びづらいな」
コマ「では、コマでよろしくお願いします」
淡雪「コマさんですね。 では、私は失礼します。 困ったことがあったらコマさんに言ってください。可能な限り、駆け付けますので」
淡雪「それでは」
ツクヨミ「それじゃ、 ・・・マンションに帰るのも面倒くさいから実家に帰るか。神社がどうなっているかも知りたいしな」
コマ「それでは私の身体に触れてください。 鳥居までお連れします」
ツクヨミ「お、便利~」
ツクヨミ「・・・じゃあ、神社じゃなくてマンションに帰ることもできたか・・」
コマ「再建のために、 一度神社を見てください。 よろしくお願いします。」
ツクヨミ「わかったよ。 それじゃあ、行こうか、コマ」

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 鯛焼き食べていました・・すごくうけました!なんて軽快でリズムカルな文章なんだろうと読んでてとっても楽しかったです。神社にいらっしゃる神様も色々な思いをされているんだろうなあと思わされました。続きが楽しみです!

成分キーワード

ページTOPへ