▶はじめから

丘田

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〇バスの中
モブ男「おい!また道路に魔物が居るぞ!」
  ​──バスが止まる。
モブ女「もう!またマンホール吹っ飛んでるじゃない!朝から時間ないってのに・・・!」
  ​──道が遮られる。
須々木 晴(・・・びっくりするぐらい、しょうもない事しか起きないな)
  1年前​──突如として魔王が復活した。
  なんの前触れも無く、
  目的すら言いやしない。
  コスプレだ悪ふざけだとも言われていたが、
  誰もが一目でわかる。
  あれは人間ではない存在だった。
  だからこそ、期待した。
  退屈な日々から離れて・・・
  何かが、物凄く
  変わってしまうんじゃないかって。
モブ女「あ、バスもようやく動き出したわ。 今日は朝から魔物が元気ねえ。 こっちは6連勤目だってのに」
モブ男「まぁ、今日も張り切って仕事しますかぁ・・・」
  ・・・やってられっかよ!

〇教室
先生「はい、じゃあ授業を始めますよ。 号令​──」
須々木 晴(学校だって普通にあるんだもんなぁ)
  魔王が復活して、この世が魔物だらけになった。
  それでも社会が滅茶苦茶にならず「しょうもない事」で留められる理由がある。
  この国の政府が、本気で脅しにかかったんだ。
  魔王に「この国の力の全てで対抗する」と。
先生「で、ある事から​、 この問題の答えは​──」
  それで、魔王のヤツがなんて言ったと思う!?
  「怖っ(笑)」だぞ・・・!
  やる気がないのか・・・!?
  同じように現れた女神も女神だ。
  「魔王を倒す為に来た、戦争をする気は無い」と。
  地味な三つ巴の完成だ。
  ・・・。
  もちろん、不謹慎なのは分かっている。
  平和な事を喜ぶべきなんだ。
先生「じゃあ、この問題を・・・ 須々木くん!答え分かりますか?」
須々木 晴「・・・」
須々木 晴「分かりません」
  ・・・受験が嫌なんだよな。

〇おしゃれなリビングダイニング
  ━自宅━
母親「あら、おかえり晴。 今日もテストは最悪だった?」
須々木 晴「・・・ただいま。 頭が悪くて申し訳ないね」
母親「フフっ。 そんな事どうでも良いんだけどね。 お母さんこれから買い物行ってくるから、お留守番よろしく!」
  受験生なんだけどな。
  どうでもいいなんて言う親は珍しいだろう。
母親「あ、そうそう。晴宛に手紙が来てるのよ。 ピンクの封筒にハートのシール・・・これ、やっぱりそういう事?」
須々木 晴「て、手紙・・・?」
  母さんから手紙を受け取る。
  「晴くんへ」と書かれた字も丸く、ほんの少し、ほんの少しだけど期待してしまう。
須々木 晴(悪ふざけし合えるような友人も居ないしな)
  母さんが出たのを見て、すぐに封を開ける。
  受験どころじゃなくなるかもなんて考えながら。
  晴くんへ
  突然のお手紙ごめんなさい。
  普段の晴くんの素行を見てて、
  とっても素敵だなと思いました。
須々木 晴(そ、素行?何かしたっけ? 学校じゃ1人で行動してるし、捨て犬拾ったりもしてないけどな)
  程々に友達も居なくて、
  やる気が無くて、
  生きてる意味も無さそうな所・・・
  魅力的です。
須々木 晴(・・・・・・)
  もし良かったら、
  こっち側に来ませんか?
  今の現状よりは楽しい毎日を
  送れると思いますよ。
  ​──魔王より。
須々木 晴「ま・・・・・・?」
魔王「読んでくれた?」
須々木 晴「おわああ!??」
母親「あらら!お財布忘れちゃってた」
須々木 晴「おわあああ!??!??」

〇一人部屋
  ━晴の部屋━
須々木 晴「ハァ・・・ハァ・・・え?」
魔王「お母さん優しそうだね」
  落ち着け。
  テレビで見た通りの魔王が居るだけだ。
  何も魔王軍に入れとか、そういう話じゃない。
魔王「晴くん暇そうだし、良かったら魔王軍に入らないかって話なんだけど・・・」
  そういう話なのか!
魔王「知ってると思うけど、敵の"勇者軍"って最近のかなり人数多くてね。 こっちも負けてらんなくて」
魔王「人生に飽きてる人、野生の動物、とにかく魔物に変えてってさ。 "魔王軍"として働いて貰うわけ」
  よく知ってる。魔王軍に入れるのは運だと、魔王の気まぐれだと噂で聞いた。
魔王「まぁ働いて貰うって言うより遊んでるだけだけどね。 数さえ増えれば威嚇になるから。 魔物として生きてみない?」
魔王「絶対に、晴くんは向いてるよ」
須々木 晴(・・・)
須々木 晴「いや。お断りします」
須々木 晴「確かに毎日つまんないし、受験だって嫌だけど・・・魔物になるって事は体がバケモノに変わるって事だ」
須々木 晴「俺は、家族を裏切れません。 だから・・・魔物として生きるなんて出来ない!」
  小っ恥ずかしいけど、本音だ。全部。
魔王「・・・」
魔王「姿はそのままでも魔物になれるよ?」
須々木 晴「はい!?」
魔王「人間離れした力を持つことにはなるけど。 あと魔王軍だって事を隠しながら過ごすことになるけどね。 両立が出来るって事」
須々木 晴「う、嘘ですよね!?」
魔王「いやホント。たまに人目につかないところで悪さして貰えれば、過ごし方も好きにしていいし・・・」
  き、聞いてない!そんな事!
  でも・・・
  そんな・・・!
  絶対楽しいに決まってるだろ・・・!!
魔王「いい顔だね」
  魔王がおもむろに手のひらを俺の頭に乗せ、つい後ずさりしてしまう。
魔王「おぉ・・・、いや、魔物と言っても適正という物がある訳でね。 「生物自体の元のエネルギー」ってイメージして欲しいんだけど」
須々木 晴「適正・・・?」
魔王「晴くんはそこそこに強いよ!・・・本当に魔物になるなら、明日学校の屋上に来てね。力をあげるよ」
魔王「もし明日来てくれるなら、明日から晴くんは・・・」
魔王「「上から4番目に強い中ボス役」だ!!」
須々木 晴「・・・」
  微妙だろそれ!
  ━終━

コメント

  • 笑いながら読ませて頂きました、まさかの魔王からの手紙、しかも出世コース。素晴らしいですね。お茶目な魔王がとても可愛らしかったです。

  • ハートのシール付きの封筒で手紙を送って魔界に招待するお茶目さがとても好きです。魔が差す、とはよく聞く言葉ですが、魔に入ることのできるのは限られた人だけなんでしょうね。彼の今後の活躍に期待しましょう。

  • 僕の所にも魔王が来ないかな?そしたら、すぐ幹部になれるから良いよな〜。いろんな力を手に入れて、やりたい放題にしたいな。それがダメなら、女神様が来ないかな。

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