ある真夜中の出来事(脚本)
〇おしゃれな廊下
??「・・・では、私がリューク様に、」
??「ああ、この薬をー」
??「これで万事うまくいくー」
深夜、とある屋敷にてこそこそと動く影があった
そして、そんな怪しげな場面をみてしまったのは、屋敷の当主リューク・ジオルドだ。
彼らはリュークに見られている事に気づいた様子もなく、
マカサ「こいつァ良く効くぜ?なんせ、あの紅の魔術師から買ったモンだからな」
紅の魔術師とは、このエルガ国随一を誇る宮廷魔術師であり、薬の手法を手がけることにおいて右に出るものはいない
アリサ「うふふ。これでこの邸は安定ですわね」
ノックス「では、アリサこれを・・」
アリサ「ええ、ありがとうございます」
彼女は、それをリューク専用のティーカップに入れた
ぽちゃん、とそれが紅茶の中に入れられる。
3人は静かに微笑み合っていたー
ノックス「では、私はこちらをリューク様に持っていきます」
アリサ「ええ、よろしくお願いしますね」
マカサ「頼んだぜ!ノックス!」
リューク・ジオルド(そ、そんな・・まさかみんなが俺を殺そうしていたなんて・・・)
リューク・ジオルド(ここにいては、ノックスと鉢合わせになってしまう!部屋に戻らないと!)
〇豪華な部屋
リューク・ジオルド「はぁぁあ・・」
リューク・ジオルド「まさか、飲み物をもらいに行って、あんな場面に出くわすなんて・・」
リューク・ジオルド「普段と違うことはするべきじゃないな・・」
明日は、婚約者を迎える大切な日の前に、背筋が凍りつくような出来事が起こっていた。
リューク・ジオルド「確かに俺は尊敬できる主でもないし、優秀でもない・・至って平凡な男だ・・」
慕ってくれていた者達が自分に害をなそうと、思っていたことにリュークは心が抉られる思いだった。
リューク・ジオルド「死にたく・・ないなぁ・・」
コンコン
リューク・ジオルド「誰だ??」
???「リューク様。ノックスです」
リューク・ジオルド「あ、ああ」
ノックス「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」
リューク・ジオルド「ノックス?そ、それって・・──」
ノックス「はい。リューク様専用のソーサでございますが?」
リューク・ジオルド「あ、いや・・その」
リューク・ジオルド(さっき何かを入れていたソーサじゃないか?!)
ノックス「どうかされましたか?」
リューク・ジオルド「な、なんでもない」
リューク・ジオルド(聞けるわけないじゃないか?!それに毒が入ってるのか?なんて)
ノックス「本日は、明日に備えて良く眠れるようにと、特別に調合していただきました」
リューク・ジオルド「良く、眠れるように・・?」
リューク・ジオルド(ま、まさか永遠の眠りってことじゃないのか?)
ノックス「冷めない内に是非召し上がって下さい」
リューク・ジオルド「あ、ああ・・そうさせてもらうよ」
ごくん、と息を鳴らし恐る恐る、ソーサを手に取った
そしてー
リューク・ジオルド「あ、あれ?」
口の中に広がるのは、ピーチのような甘い味と、すん、と鼻を鳴らすとフルーツに近い香りが漂う。
毒だと思って飲んだが、なんともない。
いや、むしろ心がすう、と落ち着いてくるのを感じた
リューク・ジオルド「な、なぁ・・ノックス、これって」
ノックス「はい。紅の魔術師、アムニーザック様に特別に調合していただいた薬になります」
リューク・ジオルド「薬?これが?」
薬とはもっと苦くて不味い物だと思っていたリュークは、キョトンとしながらもう一口、飲んでみせた。
ノックス「正確には薬、ではなく、リューク様の体調を良くする代物でございます」
リューク・ジオルド「俺の?」
ノックス「はい。明日は待ちに待った婚約者のアンジェ様をお迎えるする日です」
ノックス「そんなめでたい日に肝心のリューク様のお顔はとてもめでたくないです」
リューク・ジオルド「いや、めでたい顔ってなんだよ」
ノックス「その顔ですよ」
リューク・ジオルド「うぐっ・・」
ずい、と指を刺された先は、自分の目の下辺りだ。
ノックス「その隈です」
リューク・ジオルド「く、隈??」
ノックス「なんと大きな隈をこさえて・・しかもその顔色はなんです。白いを通り越して青白いですよ」
リューク・ジオルド「余計なお世話だ」
まるで母親のような言い方につい言い返すが、彼の説教はまだ止まらない。
ノックス「だいたい、明日が大切な日だというのは前々からご存知だったでしょう」
ノックス「なのにここ一週間、ほぼ徹夜、食生活の乱れ、運動不足」
ノックス「はぁぁぁ全くジオルド家当主として嘆かわしいです」
リューク・ジオルド「お前は俺の母親か」
ノックス「こんな大きな子供、持った覚えはありません」
リューク・ジオルド「いやそこじゃねーよ。お前男だろ。産めるわけねーだろ」
ノックス「気合があればいけますよ」
リューク・ジオルド「いけるわけねーだろ、ってかなんの話だ」
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