異世界終末鉄道

アシア

World No.■■■■ 水葬図書館(脚本)

異世界終末鉄道

アシア

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〇海辺

〇地下鉄のホーム
時音「やっと着いた」
時音「まったく、お尻が痛くなっちゃう」
時音「けど」
時音「さぁ、この世界を滅ぼすわよ」

〇水中
時音「もがもが、ごぶぁ!?」

〇地下鉄のホーム
時音「ゲホッ、ゴホッ!!」
時音「ウォエ!!」
力也「ねーちゃん、大丈夫?」
時音「いや、何で!?」
時音「何で駅から一歩でたら水の中なの!?」
力也「俺に言われても・・・」
理穂「時音」
理穂「ここは異世界なのよ」
理穂「いきなり出たら危ないじゃない」
知史「そうだぞ」
知史「溶岩じゃなかっただけましだ」
時音「もう嫌、電車に帰る・・・」
時音「着替えたい・・・」
力也「いや、ねーちゃん」
力也「服、乾いてるよ!?」
時音「え?」
時音「あ、あれ? 本当だ・・・」
知史「2人ともこっちだ」

〇大水槽の前

〇海底都市

〇大水槽の前
「み、水に沈んでる──!?」
知史「ここが、今回滅ぼす世界らしいな」

〇水族館・トンネル型水槽(魚なし)
知史「建物同士をトンネルで繋げてる」
知史「水の中の生活に適応してるな」
知史「水没が滅びの原因じゃ無さそうだ」
理穂「見た限り魚も豊富だわ」
理穂「野菜を栽培できてれば食べ物も大丈夫ね」
力也「すげー・・・」
時音「きれー・・・」

〇近未来の通路
知史「また行き止まりだ」
知史「通れなくなってる場所が多いな」
力也「ぶっ壊す?」
時音「止めてよ、危ない!!」
力也「けどさぁ・・・」
知史「いや、止めておこう」
知史「建物が崩落したら不味い」
知史「全員海底行きだ」
知史「ん?」
知史「これは、地図か」
理穂「貴方、読める?」
知史「任せろ」
理穂「どうかしたの?」
知史「いや、この先にある施設だが・・・」
力也「何かあるの?」
知史「図書館、らしい・・・?」
理穂「図書館?」
知史「あぁ、それも巨大ビル丸ごと一つだ」
知史「何だここ?」
知史「生活区域より図書館が大きいぞ?」
知史「翻訳は間違ってないはずだが・・・」
時音「とりあえず行ってみたら良いじゃん」
力也「また痛い目みそう・・・」
時音「何か言った!?」
力也「いえ何にも・・・」
知史「しかし他に行ける場所は無さそうだ」
知史「行ってみよう」
理穂「2人とも走らないようにね」

〇未来の店
知史「ここか」
力也「すげー」
時音「うわ、まじで上まで本ばっかじゃん・・・」
時音「凄い本の数・・・」
力也「ねーちゃん?」
「・・・え?」
プルーヴォ「申し訳ございません」
プルーヴォ「予想外の事に驚いていました」
「え!?」
プルーヴォ「この水葬図書館の管理をしています」
プルーヴォ「プルーヴォと申します」
「えぇーーっ!?」

〇古い本
  World No.■■■■
  水葬図書館

〇未来の店
プルーヴォ「異世界を旅する家族・・・」
プルーヴォ「森家の知史様、理穂様、時音様、力也様」
プルーヴォ「なるほど」
プルーヴォ「そういう事もあるのですね」
時音「驚いてないの?」
プルーヴォ「また人に会えた事の方が驚きました」
プルーヴォ「永い時間、私のみでしたので」
プルーヴォ「それで森家の皆様」
プルーヴォ「この水葬図書館に何用でしょうか?」
理穂「そう、ね・・・」
知史「私達は・・・」
時音「この世界を滅ぼしに来たの!!」
力也「ねーちゃん・・・」
プルーヴォ「あの、世界を滅ぼしに、ですか?」
時音「えぇ、そうよ」
プルーヴォ「それは・・・」
プルーヴォ「もう既に手遅れです」
プルーヴォ「この世界に生きている人間は居ません」
時音「貴方がいるじゃない」
プルーヴォ「いえ、私は・・・」

〇宇宙船の部屋
時音「お願いだから2度としないでね!!」
プルーヴォ「も、申し訳ありません」
プルーヴォ「実際に見てもらった方が早いかと」
時音「だからって頭取るなんて思わないじゃん!!」
力也「ねーちゃん、ホラー映画見れないから」
知史「それにしても機械とは驚いた」
理穂「本当、まったく分からなかった」
プルーヴォ「恐縮です」
知史「しかしそれなら話が早い」
知史「教えてくれないか?」
知史「どうしてこの都市に人間が居ないのか」
プルーヴォ「あぁ、それは・・・」
プルーヴォ「水位が生存環境以上に上昇したためです」
プルーヴォ「都市が水没してしまい生活もままならず」

〇水族館・トンネル型水槽(魚なし)
知史「水没が滅びの原因じゃ無さそうだ」

〇宇宙船の部屋
プルーヴォ「また農耕も出来なくなり・・・」

〇水族館・トンネル型水槽(魚なし)
理穂「野菜を栽培できてれば食べ物も大丈夫ね」

〇宇宙船の部屋
プルーヴォ「病気や事故で人類は数を減らしました」
知史「そ、そうか・・・」
知史「つまりは海面上昇か」
プルーヴォ「はい」
プルーヴォ「もう既にここは滅んでいます」
プルーヴォ「皆様に出来ることは何もありません」

〇大水槽の前
知史「Fish!!」

〇水中

〇近未来の通路
理穂「あらあら、入れ食いね」
理穂「なら、私も」
理穂「いよー」
理穂「もういっちょう」
理穂「それで時音?」
理穂「何を悩んでるの?」
時音「・・・え!?」
理穂「プルーヴォさんと別れてから静かね」
時音「何が出来るのかな、って」
理穂「私達が? それとも貴方が?」
時音「い、いや」
時音「私、皆みたいに特別な能力無いし」
理穂「そうかしら?」
時音「気休めはいらないから」
時音「でも、本当にどうすればこの世界を」
知史「最終手段は、プルーヴォを破壊する事だ」
時音「パパ!?」
知史「この世界の未練はおそらくプルーヴォだ」
知史「彼女を破壊すれば世界にとどめを刺せる」
時音「けど!!」
知史「しかしこれが1番てっとり──」
理穂「──貴方」
知史「め、眼鏡が!?」
理穂「あ、そーれ」
知史「あぁ!?」
理穂「娘に意地悪な事を言う父親は反省です」
知史「め、眼鏡 眼鏡・・・」
知史「痛っ!?」
理穂「大丈夫よ」
理穂「すぐに声をかけるから」
理穂「何にしてもまずはご飯を食べましょ?」
理穂「それから考えればいいわ」
理穂「そろそろ力也も帰ってくるでしょうし」
理穂「ほら?」
力也「ただいまー」
力也「ね、途中で父さんが・・・」
理穂「大丈夫大丈夫」
力也「・・・あ、そう」
理穂「まずはご飯にするわよ」
力也「あ、その前に」
力也「これ、海底で見つけたんだけど」
理穂「力也!!」
理穂「深くまで潜らないようにって!!」
力也「い、いや・・・」
力也「ここ、たぶん水圧とかほとんど無いよ?」
力也「ねえちゃんの服もすぐに乾いてたし」
力也「『水』が他の世界と違う」
理穂「力也、これ海底で見つけたのよね?」
力也「海底でこのまま沈んでた」

〇屋上の入口

〇高層ビル群

〇ラブホテル

〇ラブホテルの部屋

〇屋上の入口

〇高い屋上

〇近未来の通路
時音「今のって・・・」
知史「眼鏡、眼鏡・・・」

〇未来の店
時音「プルーヴォ!!」
プルーヴォ「時音さん?」
時音「こ、これ!!」
プルーヴォ「皆様が回収してくださったのですか?」
プルーヴォ「ありがとうございます」
プルーヴォ「海底探査機等を使用しているのですが」
プルーヴォ「やはり取りこぼしがありますね」
時音「そ、それよりも!!」
時音「これ、なに!?」
プルーヴォ「本、ですが・・・?」
時音「いやいや!!」
時音「これ開いたら変な物見えたんだけど!?」
プルーヴォ「はぁ・・・」
プルーヴォ「変な物ですか?」
プルーヴォ「ふむ」
プルーヴォ「記憶に幻覚が入り込んでいた?」
プルーヴォ「あるいはよほど特殊な人の記憶でしたか」
時音「え?」
プルーヴォ「けれど結局は他人の記憶です」
プルーヴォ「気にすることは無いかと」
時音「え、いや、え!?」
時音「本の話だよね?」
プルーヴォ「はい」
時音「え?」
プルーヴォ「え?」

〇未来の店
知史「プルーヴォ、本とは何だ?」
プルーヴォ「人の感情が堆積してできた物です」
知史「どのようにして作られる?」
プルーヴォ「水の中で自然に」
プルーヴォ「人の感情は水と共に溢れ出します」
プルーヴォ「『怒り』の『赤』」
プルーヴォ「『喜び』の『黄』」
プルーヴォ「『哀しみ』の『黒』」
プルーヴォ「混ざり合って『青』」
プルーヴォ「それぞれの感情が水の中で集まり」
プルーヴォ「本が生成されます」
「なんじゃそりゃ!?」
知史「水葬か・・・」
理穂「水槽じゃなかったのね」
知史「つまりここは図書館では無く」
時音「・・・お墓って事?」

〇近未来の通路
知史「水位上昇の原因は感情か・・・」
力也「いや、そもそもさ」
力也「何で俺たちこの世界に呼ばれたの?」
力也「この世界は何かしてほしい事があるんだよね?」
理穂「そう、ね・・・」
理穂「たぶんプルーヴォちゃんの事だと思うのだけれど」
知史「そのはず何だが・・・」
力也「ねーちゃんはどう──」
時音「よし」
時音「私、ちょっと行ってくる」
力也「え?」

〇未来の店
プルーヴォ「時音さん?」
時音「プルーヴォ」
時音「貴方の事を教えて!!」
プルーヴォ「・・・私は水葬図書館の管理を」
時音「そうじゃなくて!!」
時音「貴方の未練は何?」
時音「何か貴方のやりたい事は!?」
プルーヴォ「あの、私は機械であって・・・」
時音「けど最初に言ってたよね?」
時音「驚いた、って」
プルーヴォ「・・・比喩表現ですよ」
時音「嘘」
時音「私を驚かせた時も楽しんでた」
時音「そして今も」
時音「話誤魔化してるよね?」
時音「未練なんて無いって答えればいいのに」
時音「・・・何か怖がってる?」
プルーヴォ「・・・時音さん」
プルーヴォ「感情とは何なのでしょうか?」

〇宇宙船の部屋
プルーヴォ「これは、私の管理者だった方の本です」
プルーヴォ「時音さん」
プルーヴォ「私はこれを理解できるでしょうか?」
プルーヴォ「色は黒」
プルーヴォ「悲しみの本です」
プルーヴォ「あの人が何を悲しんでいたのか」
プルーヴォ「私は・・・」
時音「読もう、プルーヴォ」

〇未来の店
  水葬図書館に小さな管理人がやってきた
  プルーヴォ
  『雨』という意味の少女

〇宇宙船の部屋
  彼女はよく働き、そしてよく笑った
  機械とは思えないほどに
  私が死んでも何も問題無いだろう
  だからこそ、1つ心配だった

〇未来の店
  私が死んでも
  この都市が沈んでも
  この世界が滅びようとも
  この図書館がある限り彼女は存在する
  人との会話が好きな娘だ
  そんな彼女を1人にしてしまう
  私にはそれが何よりも悲しくて
  願わくばどうか
  彼女に幸福な終わりを

〇宇宙船の部屋
時音「プルーヴォ」
プルーヴォ「・・・まったく」
プルーヴォ「何を悲しんでいたのかと思えば」
時音「え?」
時音「プルーヴォ?」
時音「プルーヴォ!?」

〇宇宙船の部屋
力也「ねーちゃん、ヤバイ!!」
力也「ここ崩れてきてる!!」
時音「はぁ!?」
力也「行くよ!!」
時音「分かった!!」

〇未来の店

〇近未来の通路
知史「時音!! 力也!!」
理穂「無事ね!!」
力也「う、うん!!」
力也「けど」
知史「力也、時音を連れて電車まで全力で走れ」
時音「2人は!?」
知史「力也、やり方は教えてたろ?」
力也「ぶっつけ本番かよ!?」
力也「あー、もう!!」
力也「ねーちゃん、行くよ!!」

〇近未来の通路

〇水族館・トンネル型水槽(魚なし)

〇大水槽の前

〇地下鉄のホーム
力也「落ち着け、落ち着け!!」
時音「り、力也?」
力也「慌てるな」
力也「糸が張るのを待って──」
力也「──今だ!!」
時音「パパ、ママ!?」
知史「ど、どうだ力也」
知史「釣りも便利だろう・・・?」
力也「これ、絶対釣りと違う・・・」

〇黒

〇地下鉄のホーム
知史「おそらくだが」
知史「プルーヴォの動力は水だったんだろう」
知史「自身の感情の流出で水を使用して・・・」
時音「感情が混ざり合って青色、だっけ」
時音「何が機械です、よ」
時音「綺麗な青じゃない」
時音「さよなら、プルーヴォ」
時音「湿っぽいのは嫌いなんだ」

〇水中

〇地下鉄のホーム

コメント

  • 水槽ではなく水葬であることがずっと気になっていたらそういうことですか。感情の堆積で本ができるって素敵な発想ですね。プルーヴォも最後の気がかりが無くなったから幸せな消え方だったな。異世界を列車移動するのは銀河鉄道の夜とか銀河鉄道999みたいで雰囲気あって好みです。

  • プルーヴォ……名前の意味を聞いて妙に納得しました。
    こういう機械とかAIの話、マイブームなのでグサッと刺さりました。
    異世界×家族もの、いいですねぇ!(^ ^)

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