寝百物語

はるたみあお

第?夜(脚本)

寝百物語

はるたみあお

今すぐ読む

寝百物語
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇古風な和室
  ママ〜・・・・・・
九十九百合(つくもゆり)「・・・あらあら、カズくんどうしたの?」
  ねむれないの・・・お話きかせて〜
九十九百合(つくもゆり)「まあ、それは大変。今日はママがカズくんにお話ししましょうね」
  やった〜!
九十九百合(つくもゆり)「ふふ、甘えん坊さんね」

〇黒
  『もも太郎』

〇古民家の居間
  むかーしむかし、あるところに
  おじいさんと
  おばあさんがいました

〇山道
  おじいさんは山へ芝刈りに

〇山中の川
  おばあさんは川へ洗濯へ行きました
  おばあさんが洗濯をしていると、どこからか大きなももが流れてきました
  おばあさんはびっくりしましたが、そのももを家に持って帰っておじいさんに見せることにしました

〇古民家の居間
  おばあさんは家に帰るとご飯の支度をしました

〇古民家の居間
  さて、ご飯を食べたあとで、おじいさんとおばあさんはももを割ってみることにしました
  すると、なんということでしょう
  ももから可愛らしい赤ん坊が出てきたのです
  2人は驚きましたが、子どものいなかったおじいさんとおばあさんはたいへん喜びました
おばあさん「きっと神様がこの子をわたしたちにさずけてくださったに違いない」
おばあさん「この子をなんと名付けましょう」
おじいさん「ももから生まれたから、もも太郎と名付けよう」
おばあさん「それはいい、それはいい」

〇古民家の居間
  それからもも太郎はあっという間に大きくなり、優しく立派な少年になりました
  ある日、もも太郎は2人に言いました
もも太郎「この近くに、悪い鬼が住んでいると聞きました」
おじいさん「どこでそんな話を聞いたのか」
もも太郎「山で迷子になっていた子どもが言ったのです」
もも太郎「お父さんやお母さんに悪さをするかもしれません。私を鬼退治に行かせてください」
おじいさん「もも太郎や、おまえはまだ子どもじゃ」
おじいさん「まだ教えていないこともある。鬼に勝てる訳がないじゃろう」
もも太郎「いいえ、お父さん、私はきっと勝ってみせます!」
おじいさん「・・・そこまで言うなら仕方ない。やってみなさい」
  おじいさんとおばあさんはもも太郎のために、旅の支度をしてくれました
  もも太郎は、きびだんごを腰の袋に入れると鬼退治に旅立ちました

〇山道
  旅の途中、もも太郎は犬に出会いました
犬「もも太郎さん、もも太郎さん、袋の中に何が入ってるんだい」
もも太郎「日本一のきびだんごだよ」
犬「僕に一つくれればおともします」
  犬はもも太郎からきびだんごを一つもらい、家来になりました
  もも太郎と犬が歩いて行くと、今度は猿ときじがやってきて、
「もも太郎さん、もも太郎さん、袋の中に何が入ってるんだい」
もも太郎「日本一のきびだんごだよ」
「僕に一つくれればおともします」
  こうして犬と猿ときじがもも太郎の家来になりました

〇山間の集落
  犬猿きじと、いい家来ができたので、もも太郎はずんずん山を下っていきました
  やがて開けた場所に着きました
もも太郎「あれが鬼が島に違いない!」
  もも太郎は言いました

〇集落の入口
  麓につくと、鬼たちは宴の真っ最中。飲めや歌えのどんちゃん騒ぎです
  これは好機ともも太郎は大きな石を投げました
  鬼たちは悲鳴を上げ、逃げようとします
  犬と猿は鬼たちが逃げられないように囲い込みました
  そして、きじは鬼の目をつつきます
  きび団子を食べたもも太郎たちは百人力。鬼たちをどんどんこらしめていきます
  参った参った、降参だ!金銀財宝全てやる、だからどうか命だけは助けてくれ!
  鬼たちのかしらが言いました
もも太郎「だめだ。鬼の言うことは信じられない」

〇山道
  もも太郎は鬼から取り上げた宝物を山のように車に積んで、犬猿きじと元気よく家に帰りました
  そして、末永く幸せに暮らしたとさ

〇黒
  ──おしまい

〇古風な和室
九十九百合(つくもゆり)「カズくん、・・・カズくん?」
九十九百合(つくもゆり)「ふふ、寝ちゃったのね・・・」
九十九百合(つくもゆり)「・・・・・・」
九十九百合(つくもゆり)「これで今日も生きられる」

コメント

  • 主人公の苗字が"九十九"というのも、百になった時に何か変化があり終わることを意図しているように感じます。
    最後に百合ママが桃太郎の話しを終え、子供が寝入った後「これで今日も生きられる」とぽつりともらしましたが、「千夜一夜物語」のようにもし成功しなければこの子供に殺されてしまうなど、読み手によって何通りにも話を想像できる点が良いと思いました。

  • 文字や音声のみでは、いわゆる普通の昔話「桃太郎」。ところがどっこい、果物と動物を人間に置き換えた画像を伴うと、こんなにも陰惨な物語になるなんて。アイデアの勝利ですね。最後の思わせぶりなママの一言はなんなんだろう・・・。

成分キーワード

ページTOPへ