注文のない料理店

在日ミグランス人

瓦全料理(脚本)

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〇シックなバー
苺「こんにちは〜」
和真「あらぁ〜 いらっしゃい」
和真「久しぶりじゃない?」
苺「ご無沙汰してます」
春華「お。苺じゃん」
苺「春華さんもお久しぶりです」
春華「元気そうじゃねぇか」
苺「はい。お陰様で」
洋子「苺!?」
苺「あ〜洋子!」
「久しぶり〜」
苺「あ、産まれたんだ」
洋子「そうなの」
洋子「も〜毎日大変よぉ〜」
苺「んふ❤ カワイイ〜」
和真「今日は一人?」
苺「あ、そうそう⋯⋯」
権兵衛「なんじゃぁ、この店は⋯⋯」
権兵衛「酒場なのか?」
権兵衛「それとも⋯⋯?」
和真「ここは『注文のない料理店』」
和真「お客様から話を聞き、最も相応しい料理を出すお店よ」
和真「料金は満足した分だけで構わないわ」
和真「?」
権兵衛「なんじゃその喋り方はーーっ!!」
権兵衛「貴様それでも日本男児かーーっ!!」
和真「あら、やだ⋯⋯」
苺「いいのよ権兵衛さん、和真さんはこういう人なんだから」
権兵衛「嘆かわしい!」
権兵衛「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、」
権兵衛「大日本帝国の復興と繁栄を願い、幾星霜⋯⋯」
権兵衛「輝かしい未来の担い手がこの様な⋯⋯」
洋子「凄いおじいちゃんだねぇ〜」
権兵衛「ぬう!」
権兵衛「メリケンまでおるのか!!」
苺「いや、髪染めてるだけだから」
苺「私だってそうでしょ?」
権兵衛「苺ちゃんは良いんじゃよぉ〜」
春華「なに、このエロジジイ⋯⋯」
洋子「新しい彼氏⋯⋯ じゃないよね?」
苺「ウチの患者さんなの」
苺「実は⋯⋯」

〇シックなバー
「末期癌⋯⋯」
苺「そうなの」
苺「余命三ヶ月と診断されました」
和真「とてもそんな風には見えないけど⋯⋯」
権兵衛「見たらわかるじゃろ!」
権兵衛「今にも死にそうじゃ!」
権兵衛「最後に美味いもん食って、成仏させてくれ!」
苺「またそんな事言って⋯⋯」
苺「最後まで諦めないで」
苺「ここの料理を食べたら、少しは良くなるかも知れないでしょ?」
春華「成程、医食同源な」
春華「確かに病気に効く料理はあるが、病気そのものを治療するワケじゃない」
苺「それでも良いんです」
苺「病は気から⋯⋯」
苺「少しでも病状が軽くなるなら⋯⋯」
権兵衛「い、苺ちゃんがキッスしてくれたら治るかも知れんのぉ〜」
春華「成仏させるのは出来そうだが?」
苺「何とかなりませんか?」
和真「勿論、良いわよ」
和真「そういう店だし」
苺「宜しくお願いします」

〇シックなバー

〇シックなバー
春華「まずは私から行こうか」
権兵衛「カレーじゃと!?」
苺「中華じゃ、ない?」
春華「薬膳カレーだ」
春華「ターメリックやクミン⋯⋯」
春華「カレーに用いられるスパイスってのは、要するに漢方だ」
春華「カレー自体が結構身体に良い料理なんだよ」
苺「成程、意外と中華の要素があるんですね」
春華「如何にも健康に良い料理、だとどうしても身構えちまうだろ?」
春華「カレーなら食べやすい筈だ」
権兵衛「ふん! いらん世話だ」
苺「そんな事言わずに、ね?」
春華「请用饭吧(チンヨンファンバ)」
権兵衛「はもっ⋯⋯」
権兵衛「⋯⋯」
「⋯⋯」
権兵衛「⋯⋯不味くはない」
権兵衛「だが、これが最後の晩餐かと言われたら、ちと寂しいのぉ⋯⋯」
春華「む⋯⋯」
権兵衛「どうせなら腹が裂けるまで美味いもんが食いたい」
春華「余命三ヶ月の爺さんが食べられる豪華な料理なんて⋯⋯」
苺「む、難しいわね」

〇シックなバー

〇シックなバー
洋子「じゃあ次は私の番かな?」
洋子「私にはママみたいな知識はないからね」
洋子「シンプルに正攻法で行くよ」
権兵衛「巫山戯るな!」
権兵衛「儂は日本男児じゃ!」
権兵衛「メリケンの料理なんぞ食わんぞ!」
苺「そんな事言わないで⋯⋯」
苺「折角作ってくれたんだから」
洋子「その様子だと、洋食なんて滅多に食べた事ないんじゃない?」
権兵衛「あるわい! ビフテキとか牛鍋とか」
洋子「じゃあノンプロブレムだね」
権兵衛「ぬ⋯⋯」
洋子「マナーなんて気にしなくて良いからさ」
洋子「食べてみなよ」
洋子「Bon appétit(ボナペティ)」
権兵衛「はむ⋯⋯」
権兵衛「⋯⋯」
「⋯⋯」
権兵衛「これも悪くはない⋯⋯」
権兵衛「しかし老人の胃には少々重いな⋯⋯」
洋子「ダメか⋯⋯」
洋子「食前酒や前菜で胃の具合は整えられる筈なんだけど⋯⋯」
苺「身体自体が弱っているから⋯⋯」
権兵衛「⋯⋯」
権兵衛「なんでも良いが、あんた⋯⋯」
洋子「?」
権兵衛「子供を背負ったまま働いているのか?」
洋子「はい。まだ目が離せなくて⋯⋯」
権兵衛「家族経営の店なんだろう? 母親に任せては駄目なのか?」
洋子「私が働いている姿を見せたいんです」
権兵衛「!」
権兵衛「天晴だ」
権兵衛「昔の母親はみんなそうしたもんじゃ」
権兵衛「儂の妻もそうしていた」
洋子「おじいちゃん、結婚出来たの!?」
権兵衛「放っとけ!」

〇シックなバー

〇シックなバー
和真「それじゃ、最後は私かしら?」
苺「大本命のご登場ね」
権兵衛「先に言っておくが、儂は和食など食い飽きておるからな」
権兵衛「余程の物でもない限り⋯⋯」
「なっ!?」
苺「これは⋯⋯ 一体⋯⋯」
和真「何の事はない」
和真「余った食材を適当に煮込んだだけよ」
和真「勿論、それなりの味付けはしてあるけど」
権兵衛「どういうつもりじゃ? 自棄にでもなったか?」
和真「いいえ。これが貴方の元気が出る料理」
権兵衛「⋯⋯」
和真「さあ、召し上がれ」
権兵衛「もぐ⋯⋯」
権兵衛「⋯⋯」
「⋯⋯」
権兵衛「⋯⋯不味い」
苺「そりゃそうよ」
苺「酷いわ和真さん」
苺「幾ら何でもこれはないわ⋯⋯」
和真「⋯⋯」
権兵衛「不味い⋯⋯」
権兵衛「酷い味じゃ⋯⋯」
苺「え? 不味いって言いながら食べてる?」
権兵衛「この味⋯⋯」
権兵衛「まるであの頃に戻った様な⋯⋯」

〇狭い畳部屋

〇シックなバー
権兵衛「あの時代⋯⋯」
権兵衛「食料はおろか、まともな調味料さえなかった⋯⋯」
権兵衛「それでも妻は何とか食事を作ってくれた⋯⋯」
権兵衛「嫁入り道具の着物を売って⋯⋯」
権兵衛「闇市でヤミ米を買って⋯⋯」
権兵衛「箸も立たん様な薄い粥でも⋯⋯」
権兵衛「儂らにとってはご馳走だった⋯⋯」
苺「権兵衛さん⋯⋯」
権兵衛「酷い店だな⋯⋯ ここは⋯⋯」
権兵衛「なんて物を食わせるのか⋯⋯」
和真「ご満足いただけないかしら?」
権兵衛「ああ⋯⋯」
権兵衛「『次は』もっと美味いものを食わせてくれ⋯⋯」
和真「お待ちしています」

〇シックなバー

〇シックなバー
権兵衛「じゃから! 女はもっと淑やかにせんか!」
春華「うるせぇな! これが私のキャラなんだよ!」
権兵衛「折角のべっぴんさんが台無しじゃろが!」
春華「⋯⋯」
権兵衛「あんたの旦那さんも、奥さんと子供を置いて何をやっとるんじゃ!」
洋子「え〜と⋯⋯ 今ワールドツアー中で⋯⋯」
権兵衛「こ〜んな可愛い子供を置いていくなんて!」
洋子「!?」
権兵衛「けしからん! 実にけしからん店じゃ!」
和真「あれから毎日来てくれるんだけど⋯⋯」
和真「ずっとあの調子で⋯⋯」
苺「なんか、癌も消えちゃったみたいで⋯⋯」
和真「⋯⋯そうなの?」
和真「元気にさせ過ぎちゃったかしら?」

コメント

  • とても面白いです!

  • キャラが濃くて良いですね😄 全員ほのかに訳ありな雰囲気なのも良いです。
    おじいちゃん、元気になって何より😄 店の片隅にいつもいるレギュラーになるのでしょうか🎵

  • どのキャラも個性が際立っていて楽しいですね!イケオジ店主のビジュアルでオネエ口調ってww
    老若男女、洋の東西を問わず色々なお客さんにも対応できそうですね!

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