第壹譚・呪いの再誕(脚本)
〇おんぼろの民宿(看板無し)
掲示板への書き込みの一週間前。俺は、とある廃村を訪れた。
二十年前に山火事が原因で全焼してしまった【彼女】の故郷だ。
橘旬「ここか・・・・・・」
今は焼け焦げた空き家だけが並んでいた。【彼女】の家を探す。
花束を片手に一件一件、表札の文字を確認して回る。
橘旬(ここも違う、ここじゃない・・・・・・違う)
そして、一番小さな小屋の様な家の前で俺は足を止める。表札には【篠原】と書かれていた。
村外れだからか、家自体は他に比べると綺麗な状態だ。
橘旬(この家だ・・・・・・)
一度、小さくお辞儀をしてからゆっくりと扉を開く。真っ直ぐ進むと、襖が開いたままになっている部屋だった。
四畳程の部屋の隅に、小さな仏壇が置かれている。
俺は、仏壇の前に座るとまず持っていた花を供え鞄から線香と例の黒いノートを取り出した。
線香に火を点け、持ってきた小さな灰皿の上に置く。それから、手を合わせ拝んだ。
橘旬(・・・・・・もう、こうするしか無いんだ。・・・・・・・・・・・・許してくれ !)
俺は足早に村を出る。ノートは、あの家の庭に埋めて来た。
橘旬(早く・・・・・・早く、早く・・・・・・・・・・・・ ! 後は、神社でお祓いして貰えれば全て終わる ! !)
【彼女】の呪いは、ノートさえ読まずに手離してしまえば逃れられる筈だ。後は、青白い男・・・・・・
あのブログの主をどうにかすれば日常を取り戻せる。
〇高級マンションの一室
そして、お祓いも無事に済ませた俺は、直ぐに自宅へと戻った。
朝早くから向こうに行き山道を歩き、疲れ果てていた俺は自宅に着くと直ぐベッドに倒れ込んだ。
橘旬(助かった。・・・・・・これで、もう安心だ)
緊張から解放されたのか、俺はそのままは深い眠りに就いてしまう。深夜、物音に目を覚ました。
橘旬「ん ? ・・・・・・なんだ ?」
起き上がると音のする方へと向かう。何かが床に落ちている。
しかし、暗くてそれがなんなのか解らない。壁のスイッチを押すが、電気は点かなかった。
橘旬(停電か ?)
ブレーカーを上げに行こうにも足元が見えない、 仕方無く携帯を取りに戻ろうと思ったその時。
ふっと、姿見に目をやると窓から差し込んだ僅かな月明かりが反射して映ってしまった。
自分とその後ろに立つ青白い男の顔が・・・・・・・・・息を飲んだ。夢であって欲しいと願った。
橘旬「あ・・・・・・あぁ、・・・・・・・・・・・・」
赤坂椛「・・・・・・読め、読め・・・・・・・・・・・・読め、読め、よめよめよめよめよめよめよめよめよめよ」
赤坂椛「よめよめよめよめよめよめよめよめよめよめよめよめよめよめよめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
赤坂椛「読め ! ! ! !」
橘旬「う、・・・・・・あっ・・・・・・・・・・・・」
逃げられない。あの本の呪いは、 感染するんだ。
読んだ人間が死ぬと、次はその死んだ人間の思念が本の呪いと同化する。そして、次に呪い殺す人間を探す。
そうやって、人から人へと渡りより多くの思念を取り込む事で呪いが強くなる。
橘旬「・・・・・・・・・はは、ははははは ! !」