第壹譚・壱(脚本)
〇高級マンションの一室
家に帰ると鞄を置きネクタイを緩めながら、直ぐにリモコンを手に取ってテレビを点けた。閑散とした部屋の中に賑やかな声が響く。
たった其れだけの事で、心がほっと安らぐのを感じる。仕事を終え、今日も無事家に帰って来れたと言う妙な安心感。
実家に居た時は、誰かしら家に居て何かしら物音が聞こえていた。
当時はそれを疎ましく感じ、一人の時間が欲しいとか勉強の邪魔だと思ったものだ。
しかし、就職を機に一人暮らしを始めた当初は静かで快適だと思っていた生活も・・・・・・
時が経つと段々と寂しさを感じる様になり、家に帰っても誰も居ないと言うのは疲れた心と身体を更に落胆させた。
その所為か、最近では特に見たい番組がなくても帰宅すると同時にテレビのスイッチを入れるのが癖と言うか習慣化してしまってる。
司会者「実優さんは、怖い体験とかした事ありますか ?」
実優「えーー・・・・・・そうですね。怖い体験とかは皆無なんですけど、最近知り合いに聞いた話なら一つだけありますよ」
着替えを済ませてリビングへ戻ると、番組は怪談特集になっていた。
他のチャンネルに変えても良かったが、なんとなく気になってそのまま見る事に。
橘旬「このタレント、最近良く見るな・・・・・・」
そう呟きながら、冷蔵庫から取り出した缶ビールを開け口を付けた。
司会者「どんな話なんですか ?」
実優「えっと、確か【呪いの日記帳】って話なんですけど・・・・・・」
偶然にも、タレントの口から語られた怪談は先程ファミレスで聞いた話と同じモノだった。
一瞬驚きはしたが、別に有り得ない事ではないだろう。
橘旬「ふーん・・・・・・結構、有名な話なんだな」
そんな事を考えていると、ふっとパソコンが目に着いた。ほんの少しの興味本意・・・・・・軽い好奇心だったんだ。
同じ話を一日二度も耳にするなんて良くある偶然なのに、何故か気になってしまい。
パソコンの電源を入れると、インターネットに接続し検索ワードを入力した。
【呪いの日記帳】っと・・・・・・検索結果がずらりと並ぶ中で、一つ気になるブログ記事を見付けた。
(【呪いの日記帳】を差し上げます)
見るからに胡散臭いタイトルだが、内容が気になりマウスを操作する。
画面をスクロールし、書かれている文章を目で追った。
三月二十三日二十二時四十五分
今日で日記帳を手に入れて、一か月になった。
中身を見ていないので、今の処・・・・・・命の危険は無い。っと思う。
只、夜中に誰かが部屋の中を歩き回る音がする。
昨夜は、遂に声を聞いた。
『読め・・・・・・早く、日記帳を読め・・・・・・・・・読め、読め、読め、読め、読め、よめよめよめよめよめよめ ! ! 』
限界だ。
赤トンボ「オカルトハンターのプライドに賭けて、この日記帳の呪いを解く ! !」
と今日まで頑張って来たが、俺の手には負えない。日記帳は現在、木箱に仕舞っている。
先日、お寺で頂いたお札も貼ったままだ。誰か、俺の代わりにこの日記帳の呪いを解いてくれる方は居ませんか ?
お願いします。妹の無念を晴らす為にも力を貸して下さい。
読めば読む程、阿呆らしい内容だ。ここまで来ると、もはや呆れを通り越して笑ってしまう。
このブログを書いた人物は相当頭がイカれている。
橘旬「そもそも『妹の無念を晴らす為』って・・・・・・」