呪いの日記帳

里 惠

第壹譚・始まり(脚本)

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〇ファミリーレストランの店内
女子高生2「ねぇ【呪いの日記帳】って、知ってる ?」
女子高生1「【呪いの日記帳】 ?」
  仕事帰りに寄ったファミレス。食後の珈琲を飲みながら、まったり寛いでいると隣の席で話している女子高生の声が聞こえてきた。
女子高生2「なんかね。最近ネットで話題になってる都市伝説なんだ」
女子高生1「あんたって、そう言う話し好きだよね・・・・・・で ? どんな、話なの ?」
  怪談か・・・・・・何時の世も、多種多様な話題が世間に散らばり人々を賑わせている。
  特に、怪談は老若男女問わず共有出来る話題の1つだろう。
  お茶の間で流れるテレビ番組も、怪談系が増えている様に思う。今や怪談は夏特有の風物詩ではない。
橘旬(・・・・・・とは言え、わざわざこんな時間にファミレスで出す話題か ?)
女子高生2「んっとね。見た目は、普通の黒いノートなんだって・・・・・・でね?  古本屋とか図書館に不定期で “現れる” らしいんだ」
女子高生1「ちょっと、 待って。“現れる” って、どう言う事 ?」
女子高生2「それがさ、買い取ったり発注したりした覚えがないのに・・・・・・いつの間にか本棚に紛まぎれ込んでるらしいの ! !」
女子高生1「・・・・・・それって、都市伝説を聞いた誰かが悪戯してるだけでしょ」
女子高生2「まぁ、その可能性も無くはないかもだけど・・・・・・問題は、中身なんだよ !」
女子高生1「中身って、内容 ? なんて・・・・・・、書かれてんの ?」
女子高生2「わかんない」
女子高生1「は ? 何それ ?」
橘旬(は ? なんだそれ ?)
  思わず心の中でツッコんだ言葉は、奇しくも話を聞いていたもう一人と被った。
  肝心な部分が解らないなんて、拍子抜けも良いとこ・・・・・・そりゃ、ツッコミたくもなる。
  だが、そんな反応気にも留めずに女子高生は話を続けた。
女子高生2「だって、読んだ人み~んな死んじゃってるんだもん」
女子高生1「あほくさっ・・・・・・そんなん、どう考えても作り話じゃん」
女子高生2「えぇ ? なんでよ ?」
女子高生1「あのね。読んだ人がみ~んな死んじゃってるのなら、噂を流してるのって誰よ ?」
女子高生2「え ?」
女子高生1「はぁ・・・・・・仮に読んだ人が死ぬ前に噂を流したのなら、本の内容も解る筈でしょ ?」
女子高生1「また、読んだ人の知り合いが流した噂だとしても・・・・・・」
女子高生1「内容が解らない以上、読んだ人が死んだ理由がその本にあるとは言い切れないし証拠がないじゃないの」
女子高生2「な、成程・・・・・・」
  先程まで嬉々として話ていた女子高生は、友の的確な指摘に対し何も反論出来ず・・・・・・すっかり意気消沈してしまっている。
橘旬(正論とは言え、可哀想に・・・・・・)
  名も知らぬ女子高生にほんの少し同情をしながら、すっかり冷めてしまった珈琲を飲み干す。
橘旬「・・・・・・さて、そろそろ帰るか」
  腕時計で時間を確認した俺は、鞄と伝票を手にそのままレジへと向かった。
橘旬(所詮、人間の作り出した妄想や幻覚に過ぎない。本物の怪談なんて、ある筈がないのだから・・・・・・)
橘旬「まぁ・・・・・・暇潰しのネタとしては、ちょうど良いけどな」
  そんな事を独り言ちながら、店を出ると雨が降り始めていた。

次のエピソード:第壹譚・壱

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