潜入捜査始めます(脚本)
〇実家の居間
「いただきます」
ヒロ「松ちゃん 美味しい!」
榊「いつも、すまないね」
松元「いいんですよ 好きでやってるんですから」
千紘「ただいまー 松ちゃん 私のもある?」
松元「もちろん 大盛りですね」
千紘「ありがとー」
千紘「私が作るより断然美味しいわね」
松元「おかわりも有りますので」
「ふぅ〜 ごちそうさまでした」
ヒロ「あのさ 姉さんも帰ってきてるし 話したいことがあるんだけど・・・」
松元「じゃ、私は席を外しますね」
ヒロ「何で? 松ちゃんも家族でしょ 聞いてよ」
松元「坊ちゃん」
千紘「そうよ い〜つもヒロの世話焼いて オカンみたいじゃない」
松元「オッ、オカンって」
榊「ハハハ・・・ で、何だ? 改まって」
ヒロ「えーと、この前 芸能事務所にスカウトされたんだ」
千紘「そんなの、今までだって何度もあったでしょ?」
松元「そ、そうなんですか?」
ヒロ「まぁ、何度か」
松元「坊ちゃんの魅力は隠しきれませんからね」
千紘「でも、目立つの嫌だって ぜんぶ断ってたわよね」
ヒロ「うん、でも今回は受けようと思うんだ」
榊「なっ!? 大学進学はどうするんだ?」
ヒロ「そのことなんだけど 進学はしないで父さんの会社の 潜入捜査員になりたいんだ」
ヒロ「芸能事務所に入れば演技の勉強もできるし」
松元「ダメです! 潜入捜査員は危険です!」
ヒロ「母さんを殺した奴を見つけだす為 父さんは働き詰めで、組織を大きくした 姉さんは警察官になった」
ヒロ「自分だけ高みの見物は嫌なんだ」
千紘「私は、いいと思うわよ ヒロの人生なんだから」
千紘「やれることやって納得したいじゃない 父さんは、どう思う?」
榊「千紘は聞かなかったが・・・ 千紘が警察官になることも反対した 家族を危険な目にあわせたくない」
榊「とんだエゴイストだ 松ちゃんをはじめ、社員(ファミリー)を 危険な目にあわせてきたのに」
松元「私は、あなた方の為なら よろこんで命も差し出しますよ」
榊「ありがとう松ちゃん でも、それは重いな」
千紘「うん、重すぎ」
松元「す、すいません」
ヒロ(まだ、母さんを守れなかったこと 気にしてるんだ でも・・・)
ヒロ「松ちゃんは、命の恩人だから・・・ 認めて欲しいんだ」
松元「・・・」
榊「潜入捜査員の件は、とりあえず保留で 俳優は、やる気があるならやってみたらいい」
ヒロ「実は・・・」
ヒロ「ここなんだ 誘われた芸能事務所」
千紘「こ、この事務所って・・・」
松元「捜査対象だって知ってますよね?」
ニヤリ
〇黒背景
13年前
母が目の前で殺された。
その時、松ちゃんが守ってくれた。
母を殺した犯人は
まだ捕まっていない。
ずっと守られているだけ
それじゃ、ダメなんだ!
〇実家の居間
ヒロ「お弁当、ありがとね 松ちゃん」
松元「いいえ」
松元「学校が終わったら 会社に来て下さいね 昨日の話の続きをしますから」
ヒロ「うん いってきます」
松元「お気をつけて」
松ちゃんは訳あって
俺の生まれる前からこの家に住んでいる。
父さんの会社で働きながら
お弁当まで作ってくれる。
〇研究機関の会議室
父さんの会社
表向きはセキュリティ会社
実は
悪を倒す秘密結社
警察で禁止されている潜入捜査を行い
悪事の証拠を掴んだら、実行部隊を使い潰す。
竹之内「聞きましたよ 俳優になりたいって・・・ 潜入捜査員になる為の口実ですよね?」
ヒロ「竹ちゃんは賛成してくれるよね?」
竹之内「いいと思いますよ 『虎穴に入らずんば虎子を得ず』です」
ヒロ「うん 竹ちゃんはそう言ってくれると思った」
竹ちゃん
父さんが立ち上げた秘密結社の創設メンバー
いい歳のはずなのに、見た目が変わらない。
竹之内「でも、実行部隊に入りたかったのでは?」
ヒロ「そうなんだけど 鍛えても全然ダメで・・・」
竹之内「まぁ、私もヒロには向いてないと思います」
ヒロ「だよね それに、松ちゃんも絶対許してくれなそう」
竹之内「あっ ドア・イン・ザ・フェイスって知ってます?」
竹之内「心理学のテクニックです 無理なお願いをして断られた後に ハードルを下げたお願いをすると 断られにくいんです」
榊「ヒロ、もう来てたんだな」
ヒロ「父さん 竹ちゃんは賛成してくれたよ」
竹之内「私は本人の考えを尊重すべきだと思います」
松元「でも、危険だ」
竹之内「危険な目に合わせないよう 全力でサポートするのが 我々の役目じゃないですか?」
ヒロ「今回、芸能事務所に声かけられ 運命だと思ったんだ 潜入調査員になる」
榊「うちが扱う案件だって、何故わかったんだ?」
ヒロ「叔母さん、ドラマの脚本とか書いてるから 芸能界のこと詳しいかなって思って 聞いたんだ」
ヒロ「そしたら 『この事務所は悪い噂があるからやめた方がいい』って そは以上は教えてくれなくて・・・ 気になって調べたんだ」
榊「梅ちゃんを呼びましょう」
梅林「お呼びですか? ボス」
ヒロ「叔母さん、ゴメン 勝手なことして」
梅林「おばさんじゃない 『梅さん』って呼びなさい」
ヒロ「だって、俺の叔母さんでしょ」
梅林「ここの潜入捜査員になるなら 私は上司よ」
梅さん
母さんの妹
潜入捜査員のトップ
名の知れた脚本家でもある。
梅林「ボス、諜報・IT部から報告あがってると思いますが・・・」
榊「ああ ヒロの為にもう一度たのんでみるよ」
ヒロ「いいの!?」
〇諜報機関
芸能事務所X
所属タレントへの売春斡旋
性的接待の強要
地下アイドルに対する過度なグッズ等の販売ノルマ
以上を確認済み
メンズ地下アイドルがファンにドラッグを売っている
もしくは売らされている疑いあり
現在調査中
警察が捜査に入るもタレント個人が行った事として処理
タレントは不都合なデータや写真等
弱みを握られ逆らうことは不可能
潜入捜査員を派遣し証拠を押さえる必要あり
〇研究機関の会議室
榊「ありがとう、つばき君」
梅林「若者の夢を食い物にするなんて 許せないわ」
竹之内「ドラッグの件が事実なら看過できませんね 直ぐに実行部隊が必要になるかと・・・」
ヒロ「松ちゃん 俺、本当は実行部隊に入りたいんだ」
松元「実行部隊なんてとんでもない!」
ヒロ「じゃ、潜入捜査だったらいいでしょ?」
松元「また、そんな顔して・・・」
松元「わかりました! でも、安全第一ですよ!」
竹之内「チョロい」
梅林「初任務だから さくらと一緒に行かせるわ」
梅林「ヒロ、スカウトされた時って制服だった? 本名は言ってないわよね?」
ヒロ「大丈夫、私服だった 名前も咄嗟にササキヒロトって」
梅林「OK」
梅林「シナリオは出来たわ」
〇黒
かくして
各部門と連携のもと
潜入捜査の計画が綿密に練られた。
〇研究機関の会議室
さくら「ヒロく〜ん 久しぶり〜」
ヒロ「さくらさん なんか今日、やたらキュルンとしてません?」
さくら「やだ〜 さくらさんじゃなくてお姉ちゃんでしょ もう役に入ってるの」
さくら「ドルオタ ちょっとおバカで極度のブラコン 佐々木紗良23歳でーす」
梅林「さくら、やりすぎ」
さくら「すいません」
ヒロ「ハハハ・・・」
梅林「だいぶサバを読ませちゃってるからな こう見えて、さくらはベテランだからね」
さくら「ヒロ君 大船に乗ったつもりでいていいわよ」
梅林「ヒロは潜入用のプロフィール ちゃんと頭に入ってる?」
ヒロ「もちろん 広斗18歳、浪人生 アイドルに興味はないんだけど 姉に無理やり で、この髪も姉に」
梅林「そっ 嫌々って感じで そうすれば向こうはヒロを取り込もうと まずはさくらを狙ってくるはず」
さくら「それを逆手にとって カモになったフリで メン地下アイドルに近づけばいいのね」
梅林「そんな感じだけど 報告はこまめにするように 状況にあわせてシナリオ変えていくから」
「了解」
松元「さくらさん、坊ちゃん わかってますよね? 捜査対象者とは性的関係をもたない」
さくら「でも、ギリギリはいいですよね?」
松元「ギリギリってなんですか ギリギリって!」
竹之内「ハニトラのつもりが 『ミイラ取りがミイラになる』 可能性がありますからね」
榊「さくらさん、それだけじゃないんですよ」
榊「これはあくまで仕事です あなたの大切な心や体を 犠牲にして欲しくないんです」
榊「少しでも嫌だとか危険だと感じたら 直ぐに退避して下さい」
さくら「はい! ボス! 一生ついていきます」
榊「ヒロも絶対に無理をしないように」
ヒロ「はい、ボス!」
松元「あぁ、坊ちゃん 心配です」
松元「何かあったら直ぐ連絡して下さい 一番近くにいる実行部隊員を 直ぐに行かせますから いや、待機させておきますか?」
榊「タクシーじゃないんだから」
松元「いっそ私が──」
竹之内「さあ、準備はいいですね」
ヒロ「はい」
ヒロ「潜ってきます」
家族経営の現代版必殺仕事人みたいな感じでワクワクしますね。母親の殺人事件がベースにあるので物語が軽くなりすぎず、適度な緊張感もあっていいですね。松元さんの存在もフックになっていて興味がそそられます。これからいよいよ「潜る」ヒロ。スリリングな展開を期待します。
続きがとても気になります。私は登場人物の人間関係を頭に入れておくのが苦手なのですが、人数も多すぎず、特徴もあるのでスッと入ってきました。
冒頭のほのぼのとした感じとストーリーのギャップもあって惹きつけられました。
続きも期待して待ってます!
面白そうな展開で続きが気になります!母親の死と物語が今後どのように繋がっていくのか楽しみです。登場人物もそれぞれ魅力的でした。