素晴らしき名案?(脚本)
〇教室
まずは大きな声でみんなに挨拶だ
冗談はよして下さいお義父さん。
健臣、とりあえずトイレに行っておきなさい
わかってないねぇ二人は。
登校したらまずは、予習をしませんと
インカムから聞こえる三人の声
健臣はそれをスルーしていた
先生「おはよう健臣くん。久しぶりだね」
先生「学校、来てくれて嬉しいな」
天上寺 健臣「・・・」
僕も嬉しいですって言うんだ! 健臣!
笑顔も忘れるなよ
先生「・・・?」
天上寺 健臣「俺も先生に会えて嬉しいです。 おはようございます」
先生「うん、良かった」
さすがお義父さん。100点じゃないですか!
まぁ茂さんたら、
女性を誑かすのが上手なんですねぇ
天上寺 健臣(我慢できんな・・・)
〇学校のトイレ
天上寺 健臣「早速限界なんだけど」
天上寺 健臣「もう帰っていいかな?」
駄目だ
歩とした約束、忘れてないだろうな?
こっちには人質がいるんだぞ?
昨夜のことを思い出し、健臣は歯噛みした
〇汚い一人部屋
天上寺 健臣「何この味方。マジ弱すぎないか・・・」
天上寺 健臣「うっぜ! なんでこれで負けんだよ!」
天上寺 健臣「はぁ、飽きた・・・」
天上寺 健臣「アニメでも見て気分転換するか」
天上寺 歩「入るぞ」
天上寺 健臣「入るぞ、じゃねぇよ」
天上寺 健臣「何勝手に俺の城に入ってんの?」
天上寺 健臣「出てってくれる?」
天上寺 歩「健臣、お前明日学校行け」
天上寺 健臣「行かねぇって!」
天上寺 健臣「そうやって説教すんの何回目だよ!」
天上寺 健臣「俺はあんな下らない箱庭にいるより、 ここにいる方が何倍も楽しいんだ!」
天上寺 健臣「俺に構わないでくれよ」
天上寺 歩「駄目だ。今回は引き下がらない」
天上寺 健臣「はぁ?」
天上寺 歩「本当にこのまま引きこもってるつもりか?」
天上寺 健臣「こっちは楽しんでるんだ。放っといてくれ」
天上寺 歩「そこにずらっと並んでるゲームディスク」
天上寺 歩「あと漫画も、よくわからん人形も」
天上寺 歩「お前のコレクションって奴を全部、 俺が捨てるって言ったらどうする?」
天上寺 歩「健臣、学校に行くんだ」
天上寺 歩「それが出来ないと言うのなら・・・」
天上寺 歩「俺はここにあるコレクションを、 1つずつ破壊していくぞ?」
天上寺 歩「お前が焦る顔を見るのは久しぶりだよ」
天上寺 歩「健臣、下らない箱庭にいるのはお前の方だ」
天上寺 歩「今を楽しめるのは今だけなんだ」
天上寺 歩「たまには外に出て羽を伸ばすのもいいだろう?」
天上寺 健臣「・・・」
天上寺 歩「もちろんただ学校に行けとは言わん」
天上寺 歩「か弱い子猫を森に放つ真似はしないさ」
天上寺 歩「これを付けていけ」
天上寺 健臣「なんだよ、これ」
天上寺 歩「俺が工学系の会社に勤めてるのは知ってるだろ」
天上寺 歩「小型のインカムだ。 おまけに極小のカメラも付いてる」
天上寺 歩「お前の状況がこっちに伝わるようになってる」
天上寺 歩「お前の長髪なら、上手く隠せるだろう」
天上寺 健臣「何のために、こんなの付けんだよ」
天上寺 歩「お前がもし行き詰まったときに アドバイスをしてやるんだよ」
天上寺 歩「そうすれば問題なく学校生活を遅れるだろ?」
天上寺 歩「ちょっと面白そうって思ってきたか?」
天上寺 歩「よし、ではそんなお前をサポートしてくれる 心強いアドバイザーを紹介しよう!」
直後、健臣は目を丸くした
〇おしゃれなリビングダイニング
天上寺 茂「別に気にすることもないだろ」
天上寺 茂「先生も喜んでたじゃないか。 その調子で行けばすぐに溶け込めるぞ」
不登校が急に来てあんな風に挨拶かますとか、
逆に笑われるよ
天上寺 幸「笑う? 健臣はみんなを笑わせるほどの子なのかい?」
天上寺 茂「そういう意味ではない」
天上寺 和「心配は無用よ、健臣」
天上寺 和「私がモテる男の立ち回りを教えて上げるから!」
天上寺 幸「フフフ、和さんは恋愛に詳しいんだねぇ」
天上寺 茂「ただの昼ドラ好きだろうが・・・」
天上寺 茂「とにかくわかったら教室に戻れ。 困ったことがあれば、ワシたちがサポートする」
・・・ったく、わかったよ
〇教室
天上寺 健臣(何が人質だ。あんなのただの脅迫だよな)
先生「ではこの問題、わかる人?」
健臣、手ェ上げろ
天上寺 健臣「なんでだよ、わからないのに上げるのかよ」
安心しろ。こっちには電卓がある。
完璧な答えを教えてやる
天上寺 健臣(それ、アドバイスじゃなくてズルだろ)
先生「はい、天上寺くん」
天上寺 健臣「0.1875です」
先生「正解です」
先生「やるね、天上寺くん。 勉強は欠かさずやってたのかな?」
天上寺 健臣「まあ・・・」
そこから三人によるラジコンが始まった
日本史教師「これ、わかる人?」
お前、こういうの得意じゃないのか?
えぇ、長篠の戦いですよ
だそうだ健臣! 手ェ上げろ!
天上寺 健臣「はぁ・・・ったく」
日本史教師「うん、その通りです」
日本史教師「天上寺くん、ありがとう」
今度は英語か。出来る奴はおらんのか?
待って、お義父さん
翻訳しました! 多分大丈夫です!
天上寺 健臣「I like to watch movies.──です」
英語教師「OK。グレート! ミスター天上寺!」
〇学校の廊下
橘 水樹「凄いね! 天上寺くん!」
橘 水樹「久しぶりに学校来たと思ったら、 バシバシ正解出しちゃうんだもん!」
天上寺 健臣「橘・・・」
橘 水樹「もしかして、猛勉強してた?」
天上寺 健臣「どうだろうな・・・」
橘 水樹「ふ~ん。企業秘密ってことか」
橘 水樹「まあいいや!」
橘 水樹「だったらさ、また昔みたいに勉強を教えてよ」
天上寺 健臣「考えとくよ」
イエスと言いなさいよ
天上寺 健臣「いや、うん・・・」
橘 水樹「ホント? やったー!」
橘 水樹「あ、そうだ天上寺くん」
橘 水樹「これから屋上に行こうと思ってるんだけど、 お昼一緒に食べる?」
もちろんイエスよ! 健臣!
ほほ、和さん、熱いわねぇ
天上寺 健臣「・・・」
天上寺 健臣「いや、いいよ」
天上寺 健臣「昼休みは図書室に行こうと思ってたんだ」
橘 水樹「そっか、なら仕方ないね」
天上寺 健臣「ごめんな、せっかく誘ってくれたのに」
橘 水樹「気にしないで! 私が突っ走っただけだから!」
橘 水樹「その代わり、勉強教えるのは忘れないでよ?」
天上寺 健臣「あぁ、もちろんだ」
橘 水樹「うん、ありがと」
橘 水樹「それじゃあね!」
良い子じゃないか。何故断る?
天上寺 健臣「うるせ。こっちにだって考えはあるんだよ」
天上寺 健臣「橘は小学生の頃からあんな調子なんだ」
天上寺 健臣「中学は別だったけど、 まさか高校で再会するなんてな」
天上寺 健臣「あんな優しい奴が、 俺と一緒にいちゃ損なんだよ」
〇古い図書室
天上寺 健臣「・・・ん?」
生徒「ったく、酷い目あったぜ」
生徒「まさか盛山が屋上に来るなんてよ」
生徒「マジそれな」
生徒「わかっていりゃ、行かなかったんだけどな」
生徒「適当に漫画でも読もうぜ」
〇おしゃれなリビングダイニング
天上寺 茂「盛山とはどんな奴だ?」
じいちゃんもお節介だね
要は不良だよ
あの二人も屋上に行ったんだろ。
で、軽くシメられたんじゃないのか?
天上寺 茂「お前も行かなくていいのか?」
なんで?
あのさ、じいちゃん。
さすがにボコられに行くのはただの馬鹿だよ
天上寺 和「そうじゃないでしょう、健臣?」
天上寺 和「橘さんのこと、心配じゃないの?」
別に・・・
天上寺 茂「お前の言うとおりなら、 その女の子が襲われるかもしれないんだぞ?」
天上寺 幸「女を襲う?」
天上寺 幸「そんな野蛮なことをするのはどいつじゃ!」
天上寺 幸「お前か? 健臣、お前なんか!?」
天上寺 幸「おめぇは、おなごを襲う奴なんかね!」
天上寺 茂「幸、落ち着いてくれ」
天上寺 幸「・・・」
天上寺 茂「健臣」
天上寺 茂「お前たちがどんな関係かは知らんが、 彼女は親身に思っていてくれたように感じたぞ」
天上寺 茂「そんな子を見過ごすのか?」
行かなかったら、ゲームを壊すって?
天上寺 和「本当はどう思うの?」
天上寺 幸「健臣、わたしは知っとるぞ」
天上寺 幸「お前は馬鹿だが、根は良い奴だ」
天上寺 幸「正直になりなさい」
〇古い図書室
天上寺 健臣「・・・」
天上寺 健臣「・・・」
天上寺 健臣「・・・あーもう!」
天上寺 健臣「わかったよ! 行くよ! 行けばいいんだろ!」
天上寺 健臣「どうせ意味ないと思うが、 耳元で騒がれても落ち着かないしな!」
「静かにしてください」
天上寺 健臣「とにかく行くよ。助けに行きゃいいんだろ」
〇学校の屋上
橘 水樹「ここはみんなの場所でしょ!」
橘 水樹「勝手なことばかり言わないでよ!」
友人「水樹、あまり怒らせない方が・・・」
盛山「ピーピーやかましい奴だな」
盛山「お前に何ができんだよ」
橘 水樹「そうやって威張っていられるのも今のうちよ!」
橘 水樹「すぐに倒してやるんだから!」
盛山「ほう、俺にケンカを挑むのか?」
盛山「面白ェ。やってやるよ橘!」
〇階段の踊り場
天上寺 健臣「案の定だな・・・」
天上寺 健臣「で、こっからどうすんだよ?」
天上寺 健臣「素晴らしいアドバイスを下さいな、お三方」
男なら拳で語れ。一発かますんだ!
駄目ですよ。健臣がケガしちゃうでしょう?
ほほほ、買収じゃ。金で解決せぇ
天上寺 健臣(話が纏まらないな)
「オラァァ!」
いいから行け、健臣!
突っ立ってる場合じゃないぞ!
天上寺 健臣「あぁ、わかったよ!」
〇学校の屋上
橘 水樹「天上寺くん! 危ないよ!」
顎を引いて、足は上下に開け
天上寺 健臣「大丈夫だ、橘。あとは俺に任せろ」
天上寺 健臣「で、次はどうするんだ?」
臨戦態勢になる二人
無線の言葉を静かに待つ健臣だが──
あとは、アドリブだ
天上寺 健臣「へっ──?」
一瞬にして、健臣は宙を飛んでいた
橘 水樹「天上寺くん!」
橘 水樹「もう! 私、本気で怒ったからね!」
盛山「怒ったらどうなるんだ?」
橘 水樹「せぇええい!」
〇空
「──空ってこんなに青かったんだな」
天上寺 健臣「負けた」
天上寺 健臣「結局俺は、1人じゃ何もできないのかな」
「そんなことないよ!」
橘 水樹「私は天上寺くんが助けに来てくれて 嬉しかったよ」
橘 水樹「ありがとう!」
天上寺 健臣「・・・嬉しい、か」
天上寺 健臣「そっか」
なら、いいのかな
ちょっと歳は食ってるけどアベンジャーズ家族がピンチをフォローしてくれるなんて、健臣は幸せ者ですね。自宅の箱庭を出て久しぶりに見上げた空のシーンにはしみじみしました。いつか歩に感謝する日が来るでしょう。橘さんとのデートをラジコン操作されないうちに、早く自力での思考&行動力を発揮してほしいな。
引きこもりという題材が実に明るく軽快な物語になっていて、面白いくらいに説得力のなる感じがすごいなあと思いました。どうかこのラジコンがバレずに健臣君が学生生活完全復帰になりますように。
引きこもってて久々に登校した矢先に、不良のところに行く羽目になるなんてハードですね😂
そして、やっと勇気を振り絞って屋上に出向いたかと思いきや綺麗な土下座を決め込むとは…😂とてもおもしろかったです!
続きも読みたいと思いました😆