2(脚本)
〇ダマスク模様
篠と須賀崎、対照的なのは赤と青の髪色だけではない
いつだって輪の中心にいる学年の陽キャ代表の篠と
必要がなければ他者と会話したがらない、一匹狼の須賀崎
目はぱっちりとして大きいが、あまり凹凸のない日本人らしい顔立ちの篠と
眼窩が影を作りそうなほど深く、鼻も高い彫像のような顔立ちの須賀崎
半年前から、この接点のなさそうな二人が行動を共にするようになった
大学デビューという言葉があるが、篠も入学を機にキャラ変したうちの一人だ
姉と妹に挟まれて育ったせいか、物心ついたときには周りにいるのは女の子ばかりだった
それがいわゆるモテと言われるもので、自分が同性から嫉妬される対象である、ということに長らく本人は気づいていなかった
〇教室
中学でも高校でも近づいてくるのは色目を使ってくる子ばかりで、友だちが作れない
言われるがまま次々付き合っていたら、最終的には女の子達にもハブられてぼっちになった
悩んだ結果、大学入学をきっかけに篠は意図的に「遊び人」というレッテルを自らに貼ることにした
〇黒
誰の特別にもならなければ、誰からも好かれる
わかりやすく遊んでいるスタンスでいると、不思議と女の子たちは自分を彼氏候補から外してくれる
髪を真っ赤に染めたのも、あえてチャラい印象を与えるためだった
見た目と社交的な性格に惑わされて、変わらず女の子は群がってきたが、本気の子はいなくなった
しかし思惑通り大学デビューを果たした篠の前に隕石が落ちてきた
〇古い大学
成績優秀者、すなわち入試の首席合格者として入学式で壇上に立った須賀崎実は、学年の有名人だった
着せられた感満載のスーツに、ぼさぼさと伸び放題だった髪、ぼそぼそした覇気のない声
そんなフィルターを持ってしても、彫像のように整った顔立ちと、それを引き立てる体躯の美しさは隠しようがなかった
存在自体がチートと言っても過言でない須賀崎の、最大の欠点はコミュニケーション力が極端に低いこと
花に群がる蝶のように、男も女も彼の気を惹こうとしたが、誰一人そのバリケードを越えられた者はいなかった
たった一人、篠を除いては