粗茶と魔人と男と女(脚本)
〇不気味
神我「我は 神我 命(ジンガ ミコト) 45歳」
神我「今 とっても・・・」
神我「ワクワクしています」
〇おしゃれな玄関
神我「今日は一人娘のリリカが新しく出来た友達を紹介してくれるという・・・」
神我「どんな娘だろうか? ワクワクが止まらない」
神我「ここは父親としてお出迎えせねばならん。 顔色よし、スタイルよし」
神我「アー、アー」
神我「発声よし! さあ、いつでも扉を開けるがよい!」
神我「はーい! いらっしゃいませこんにち・・・」
青嶋「こんにちはー」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「は?」
リリカ「お父さん、 ただいまー」
神我「リ、リリカ!? どういうことだこれは! こやつ、男じゃないか!」
リリカ「そう。 新しい友達の青嶋くん」
青嶋「りり、リリカちゃん? おおおおお父さんって、コスプレが趣味なの?」
神我「誰がコスプレイヤーだと、貴様!」
青嶋「ひえっ!」
リリカ「青嶋くんごめんね、言ってなかったけど、うちのお父さん魔人なの」
青嶋「まま、魔人?」
リリカ「うん。ひょんなことから人間界に来たお父さんと、お母さんが愛し合って生まれたのが私」
青嶋「ひょんなことからで片付けた・・・」
神我「おいリリカ。 こやつに何も説明してないのか?」
リリカ「百聞は一見に如かずでしょ。 それに言ったらみんな萎縮して来てくれないし」
リリカ「さ、まずは上がって」
青嶋「おお、お邪魔します・・・」
〇シックなリビング
神我「粗茶と粗クッキーですが」
青嶋「あ、ありがとうございます・・・!」
神我「くそ、何てことだ、 てっきり女の友達だと思って準備していたのに・・・!」
リリカ「ありがとうお父さん」
青嶋「あの、お父さん」
神我「貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」
神我「神我でよい」
青嶋「はいっ。 ・・・神我さん」
神我「何だ」
青嶋「リリカさんと、お付き合いさせてください!」
神我「な・・・ぬ?」
リリカ「青嶋くん、急に何を・・・」
青嶋「急じゃない。 初めて会ったときから好きだったんだ」
青嶋「君は友達としてしか見てなかったかもしれないけど・・・」
青嶋「君の可愛いところも、優しいところも、勝ち気なところも、面白いところも・・・」
青嶋「全部大好きなんだ!」
青嶋「俺と付き合ってください!」
リリカ「青嶋くん・・・」
リリカ「・・・・・・」
リリカ「・・・私も、青嶋くんが好き」
リリカ「初めて見たときから、カッコいいなって・・・」
リリカ「いや! 見た目だけじゃなくて、仕事に一生懸命なところとか、みんなに優しいところとか・・・」
リリカ「笑顔が素敵なところとか・・・とにかく好きなところがいっぱいなの」
リリカ「私の方こそ・・・付き合ってください!」
青嶋「リリカちゃん・・・」
リリカ「青嶋くん・・・」
神我「まてーーーーーーーい!!」
神我「二人で何を勝手に話を進めとるのだ!」
神我「お父さんは認めんぞ! 男女交際は禁止だ!」
リリカ「お父さん、私もう22歳よ!?」
リリカ「男と見るやいつも追い払って・・・ これじゃ私いつまでも恋愛できない!」
神我「リリカ、恋愛というのはそんな簡単なものではないのだ」
神我「お父さんはお前の為を思って・・・」
リリカ「思うことが束縛することなの!? お父さんなんて大嫌い!」
青嶋「リリカちゃん!」
青嶋「すみませんお父さん、失礼します!」
神我「リリカ・・・」
〇川に架かる橋
青嶋「リリカちゃん!」
リリカ「青嶋くん・・・」
リリカ「ごめんね、せっかく遊びに来てくれたのに・・・」
リリカ「うちのお父さんが・・・」
青嶋「リリカちゃん・・・」
青嶋「・・・・・・」
青嶋「・・・俺、頑張るよ」
リリカ「え?」
青嶋「お父さんに認めてもらえるように、男を磨く!」
青嶋「リリカちゃんを大事にすることが、お父さんの一番望むことだと思うから・・・」
青嶋「せっかく両想いになれたんだから、諦めたくないんだ」
青嶋「・・・リリカちゃんは、どうかな?」
リリカ「私・・・は」
リリカ「・・・・・・」
リリカ「私・・・も、一緒に頑張る」
リリカ「やっと出会えた、本当に好きな人だから・・・」
青嶋「リリカちゃん・・・」
〇シックなリビング
それから私たちは一緒に家に戻ったのだけれど──
お父さんの姿はなく、この日は仕方なく解散したのだった──
〇怪しげな酒場
その頃、魔人行きつけの酒場──
神我「べらんめぇちくしょう・・・」
酒場のおやっさん「ミコトちゃん、荒れてるねぇ」
神我「娘が男連れてきやがったんだよちくしょう」
酒場のおやっさん「リリカちゃんに彼氏!? めでてぇじゃねぇか」
神我「ちっともめでたくねぇぞ! あんな優男・・・リリカを守れるわけねぇ」
神我「リリカは・・・我が守ってやるんだ・・・」
酒場のおやっさん「あー寝ちまったよ。 リリカちゃん、前途多難だなぁ・・・」
〇オフィスのフロア
七海「へえ、それでお父さんと口きいてないのね」
リリカ「だってわからずやなんだもん」
七海「青嶋さんも大変ね、いきなりお叱り受けちゃって」
リリカ「笑い事じゃないんだってば」
七海「ごめんごめん。 でもお父さんが魔人だって聞いても気持ちが揺るがないなんてなかなかやるじゃない、彼」
七海「人間と魔人の共生が認められてきたとはいえ、絶対数も少ないし、まだまだ偏見を持つ人も多いのに」
七海「ちゃんと捕まえときなさいよ」
リリカ「・・・わかってる」
鷹邸「なになに、何の話?」
リリカ「おはようございます、鷹邸さん」
七海「リリカの恋バナ」
リリカ「ちょっと七海!」
鷹邸「え、神我さん恋人いたの!?」
リリカ「ち、違います、 いや、違わないけど・・・ まだ、何というか、発展途上といいますか・・・」
鷹邸「なんだ、まだ正式に誰かのものってわけじゃないんだね」
鷹邸「安心したよ」
リリカ「え?」
鷹邸「あ、そろそろ始業の時間だ。 じゃあまたね、二人とも」
リリカ「・・・・・・」
七海「これから面白くなりそうね」
リリカ「何が!? てか、笑い事じゃないんだってば・・・」
〇教室
青嶋「はい、今日の授業はここまでー」
斉賀 雅「青嶋先生」
青嶋「おお斉賀、どうした?」
斉賀 雅「聞きたいことが、あるんですけど」
斉賀 雅「先生って彼女、いますか?」
青嶋「どど、どうしてそんなことを!?」
斉賀 雅「昨日橋の上で女性と話しているのを見かけたものですから」
青嶋「あ、ああそう!? そうだったかなぁ、えっとあの・・・」
斉賀 雅「ふふ、いいんですよ そんなに怯えなくて」
斉賀 雅「ただ、先生人気あるから」
斉賀 雅「あんまり大っぴらにいちゃいちゃしていると、嫉妬したり文句をつける人もいるかもしれないと思って」
斉賀 雅「ちょっとご忠告を」
青嶋「あぁあ、そうだよな。 ありがとう、気を付けるよ」
斉賀 雅「・・・・・・」
斉賀 雅「・・・私のように、ね」
〇上官の部屋
神我「・・・優希子」
神我「我とお前の子は、立派に育っているよ」
神我「・・・こんな時、お前がいてくれたらな」
リリカ「・・・お父さん」
神我「リリカ・・・」
リリカ「青嶋くん、悪い人じゃないよ」
リリカ「ちょっと頼りなく見えるかもしれないけど、真面目だし、穏やかだし・・・」
リリカ「何よりお父さんのこと受け入れてくれたじゃない」
神我「・・・・・・」
リリカ「私も人間と魔人の子で、小さい頃から色々陰で言う人はいたけど」
リリカ「お父さんと死んだお母さんの愛をたくさん受けて育ったから、くじけないで今まで生きてこられた」
リリカ「・・・私もお父さんお母さんのように、愛する人を見つけちゃ駄目なのかな」
神我「・・・リリカ」
神我「・・・青嶋とやらの人となりは理解した」
神我「今までの男友達は、我を見るや小便を垂れ流し逃げ惑っていたからな」
神我「その点だけでも見所がないわけではない」
リリカ「お父さん、じゃあ・・・!」
神我「まあ待て。 にしてもあやつとはいつ知り合ったのだ?」
リリカ「半年前に、合コンで」
神我「・・・・・・ What?」
リリカ「会社の友達と行った合同コンパで」
神我「・・・・・・」
神我「ゴ・・・・・・」
神我「青嶋、あの、合コン野郎・・・!!」
〇お嬢様学校
神我「ここが青嶋が教師をしている高校か」
神我「随分立派な学園ではないか・・・ん?」
神我「あ、あやつ! 女子を侍らせおって・・・!」
女子生徒「ねぇ先生、今度先生の家で勉強教えて?」
青嶋「な、何を馬鹿なことを・・・」
斉賀 雅「いいじゃありませんの。 減るものじゃありませんし」
青嶋「減るとか減らないとか、そういう問題じゃあ・・・・・・あれ?」
神我「・・・青嶋」
青嶋「お、お父さん!?」
神我「貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」
神我「女たらしに、娘はやらん!」
青嶋「ご、誤解です! この娘らは生徒で、俺は何も・・・」
神我「言い訳はいい」
神我「少しでも貴様を信じた我が愚かだった」
神我「今度娘に近づいたら──」
神我「命はないと思え」
青嶋「いやけっこう現代的武器!?」
神我「こんな優男との交際なんぞ・・・」
〇地球
「お父さんは、許しませーーーーーん!!」
完
魔人お父さんの、 『What's?』が受けました(笑)なんかすごく不器用そうだけど、亡くなった奥さんのことも娘のことも大きな愛情で想っているんだなあと感じました。
魔人のお父さん、娘を大切に思うが故に猛反対しちゃうんですね!😂
でも青嶋さん、とっても優しくて良い人そうだから安心して交際認めてあげても大丈夫そうな気がします💗笑
粗茶と粗クッキーを用意する魔人、「べらんめぇちくしょう」と酔いつぶれる魔人・・・。とにかく見た目とギャップのあるお父さんのキャラがお茶目でキュートです。「吾輩はミチルである」もそうでしたが、会話の表現や流れが自然で読みやすいです。