海賊の宝

天馬 紅

海賊の宝(脚本)

海賊の宝

天馬 紅

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〇怪しげな酒場
  海賊が集うトォルトゥーガ島の酒場で、
  呑みながら二人の海賊が話している。
エミール「それで、わざわざ酒場に呼び出して、 話って何ですか、船長?」
船長「見てみろ、エミール! これは、宝の地図だ!」
エミール「えっ、そんな胡散臭いモノ、 どこで手に入れたんですか?」
エミール「絶対偽物でしょう...」
船長「いいや、コレは本物だ」
船長「間違いない!」
エミール「どうするんですか、そんなモノ」
船長「もちろん宝を頂戴しに行くさ」
エミール「え、二人でですか?」
エミール「他のクルーはこのまえ襲撃した貨物船が大当たりで、」
エミール「そのまま長期休暇で故郷に帰りましたし」
船長「ほら、あそこと、あそこにいるヤツ。 見込みがありそうだから声を掛けてくる」
エミール「えぇ、やめといた方が...」

〇荒れた小屋
船長「ほら、紹介しよう! まずこいつは、イニャスだ!」
エミール「どうも。 それで、何してた人ですか?」
船長「いや、そもそも仕事を探していたらしい。 給料は見つかった財宝からって事で 手を打った」
イニャス「初めまして! こういった仕事は経験がないので、 とっても楽しみです!」
イニャス「週休2日、土日祝休みで、 給料は頑張った分たんまり貰える 歩合制って聞きました!」
エミール「嘘しかついてない...」
エミール「...船長?」
船長「そ、そして! こいつは、マルク!」
エミール「前職は何ですか?」
マルク「地元がこの辺りで、 実家の底引き網の漁師をずっと!」
船長「なんか使える気がするだろ?」
エミール「いや、どこで! なにに!」
エミール「海賊未経験者ばっかで 不安しかないんですけど!」
船長「ま、地図は嘘は付かない!」
船長「とにかく行くぞ!」

〇海
  船出。

〇島
船長「さあ、見えてきたぞ!」
エミール「いや、さっきから見えてますけど」
エミール「この渦を巻いてる海流に乗ったせいで、 同じところぐるぐるしてるだけですよ」
エミール「よりにもよって」
エミール「入ったら最後、 二度と出られないという 地獄の渦に囲まれた島が、 目的地だったなんて」
エミール「あーどうしよ、 この人に舵を任すんじゃ無かった」
船長「元気出せよ! でもあの島なら、なんかありそうだろ?」
エミール「ワクワクしてる場合か! どうするのこれ!」
マルク「あー、エミールさんと船長ー」
船長「どうした?」
マルク「やっぱり、 どうやっても抜け出せられないみたいです」
マルク「何か引っ掛けられるところがあれば、網を投げてたぐり寄せて脱出できるのに」
エミール「いや、海にそんなところないから!」
イニャス「あの、舵を反対に切ってみては?」
エミール「船が横転する!」
船長「文句ばっかりだな!」
エミール「いや、」
エミール「誰のせいだー!!」

〇海
  遠くから別の海賊船が近づいて来る。
???「はーっはっはっー! ここで会ったが最後! 覚悟しろ!」
エミール「えー、またなんか来ましたよ」
船長「しつこいやつだ」
船長「アルマンといって、 勝手にライバルだと言ってきて、 付きまとってくるんだ」
イニャス「ラ、ライバル会社ですか! 早く潰さないと!」
マルク「あれ?大砲を撃とうとしてる」
船長「え?まだ心の準備が!」
イニャス「撃ってきました!」
  次の瞬間、
  船員のいない場所に砲弾が直撃した。
船長「あー、あいつ! 甲板に大穴が!!」
イニャス「許せませんね! 器物損壊ですよ!」
船長「まだローン残ってるのにー!」
エミール「うえ〜」
エミール「そうだ、マルクさん!」
エミール「この渦の、次の周回で近づいた時、 敵の船に網を投げて引っ掛けてください!」
エミール「上手くいけば、 渦から脱出できるかも!」
マルク「よーし、 了解!」
イニャス「船長! 接近するまで、 こちらも大砲で応戦しますね!」
イニャス「正当防衛!」
船長「え、大砲撃てるの?!」
  しばらく、撃ち合いが続いた。
イニャス「ドッカーン!」
イニャス「バーーン!」
イニャス「ズドーーンッ!」
船長「すげぇ、百発百中だ」
船長「向こうの船がまるで蜂の巣だぞ」
エミール「いや、あんたは止めろ!」
エミール「網を引っ掛ける前に 向こうの船沈んじゃうから!」
イニャス「そろそろ仕留め切れますよ〜」
エミール「話を聞け!」
アルマン「くぅ、このままでは負ける!」
アルマン「なんなんだ、あの狙撃手は!?」
アルマン「こうなったら、 憎き向こうの船長めがけて、 一矢報いてやる!」
マルク「よし、この距離なら! 届けっ、網!!!」
アルマン「みてろよ! 狙いよーーし!」
イニャス「え!?敵の船の大砲の向き!」
イニャス「このまま撃たれたら 船長さんに直撃してしまう!!」
アルマン「くらえーー!」
イニャス「船長さん!! 危なーーーい!」
船長「え?」
イニャス「ドンッ!!」
船長「わっ!」
船長「おっとっとっとぅううううおおおおおあーーーーーーー」
  スローモーション
  たぷーーーーん
エミール「突き落としたーー!!」
イニャス「船長〜〜!!」
イニャス「なんで落ちたのっーー?」
エミール「おまえだろーー!!」
マルク「くっ! このっ!!」
エミール「ん?マルクさん、どうしたんですか?」
エミール「網、船に引っ掛かり、ま、...」
マルク「ええ、昔の感覚は鈍ってませんでした。 確実に捕まえましたよ!」
アルマン「くそ! これで捕らえたつもりか!!」
アルマン「こんな網ごとき容易く抜けてみせるぞ!」
エミール「いや、船体に引っ掛けないと! アルマン包んでどうするの!!」
マルク「負けんぞ! ずっと、この道一筋なんだ!!」
エミール「あんたもう道はずして海賊だから!」
エミール「うおお?! 一応、船が渦の外へ向かってる!」
マルク「なかなか手強いやつだ!」
エミール「あ! そんなに一気に引っ張ったら!?」
アルマン「ぐ!?ぬぉぉおおおぁあーーーーー」
  ぽちゃん
イニャス「落ちました! 敵消滅! やっつけましたね!」
エミール「帰るための頼みの綱(つな)が!」
マルク「いやいや、コレ、網(あみ)ですよ!」
エミール「やかましいわ!」
エミール「とにかく網はたぐり寄せて、 もう一度向こうの船体に 引っ掛けてください!」
エミール「まだ届くでしょう!」
マルク「冗談はさておき、そうですね。 もう一回引っ掛ければ!」
マルク「あれ、よいっしょ! なんか、たぐい寄せるのが重たい気がする」
イニャス「そりゃあ、人が入ってますからねー!」
エミール「え、それって...」
イニャス「いらっしゃいませーお客さまー!」
アルマン「ぶはぁっ! 死ぬかと思ったっ!」
アルマン「はぁ、はぁ、 寒っ!」
イニャス「こちら温めますかー?」
アルマン「大丈夫です!」
アルマン「あれ、ここの船長はどうした!!」
イニャス「う、うう。 船長は、船長はっ!」
イニャス「あの乱戦の末に、海に落ちました」
「えっ?」
アルマン「てことは、つまり...」
アルマン「勝った? そうだ、勝った!!」
アルマン「今から私がこの船の船長だ!」
エミール「なんでだよ!」
マルク「エミール船長! 網が、切れました!」
エミール「...」
アルマン「私が海の中で必死にもがいたせいか、 剣で」
エミール「終わった」
イニャス「このままどうなるんですか?」
マルク「もう渦にのまれるしか道はない!」
アルマン「ったく、どうした? 一時休戦だなー」
アルマン「おい、なんだあの渦!!」
エミール「今気づいたのかよ!」
マルク「グッバイ アディオス、アミーゴ」
  船ごと渦にのまれる。
「うわー!」
「ブクボコッブクフグッーッ!」

〇山中の滝
  宝の島、深部。
船長「ふー、よいしょっ あれ、ここは?」
船長「なんだろうなー 洞窟...みたいな...」
船長「そうか。 この島、 海底からしか中に入れない構造で」
船長「渦にのまれたから侵入できたって事か!」
船長「そしてあまりの流れの強さで、 窒息する前に陸に押し出されたって感じか」
  勢いよく水飛沫が上がる。
エミール「ぶはっ!」
イニャス「空気、息できる! 良かった!」
マルク「ただいま、アミーゴ」
アルマン「うえっ、また海に落ちるなんて」
船長「あれ、みんな!」
イニャス「船長!ご無事で!」
イニャス「船長なら生きてると思ってました!」
エミール「マジかこいつ」
マルク「ちなみにここは、どこですか?」
船長「島の内部みたいだ」
船長「ここは一応砂地だけど、 たびたび勢いよく海水が噴き出すから」
船長「ほら。 奥の方では海水が溜まって、 大きな池みたいになってるぞ」
イニャス「本当ですね! あっー!」

〇湖畔
船長「そう。 そして隙間から外の光がさして、 財宝が描かれた、 巨大な壁画が見える」
アルマン「海岸に絵画...」
  かいがんに かいが
アルマン「宝は絵で描いてあるだけか」
エミール「この水面... 海水が噴き出してるせいで 常に砂が混じるから濁ってるのか」
エミール「だから光が反射して、 水面にもお宝があるように映るんだ」
エミール「これが鏡池か、 初めて見るなぁ...」
イニャス「本当ですね! でもなんだか、 水面に映る方は本物みたいに見えます」
マルク「財宝が本物にみえて、 しかも鏡池で視界全部が宝の山。 気分だけでも大金持ちか」
船長「マルクー、 水面の方なら網で取れちゃうかもな」
エミール「おいおい」
イニャス「たしかに!」
イニャス「水面の方にしか、 あのダイヤを散りばめた 十字架みたいなのは、 描かれてませんもんね」
エミール「は? いや、 ちょっと待てよ?!」
船長「どうした? 今のは冗談で...」
エミール「すっ──」
  水中へ潜る。
エミール「ぶはー!」
エミール「ほら、 鏡池に映っているのと同じ配置で、 本物のお宝が沈んでますよー!!」
船長「なにー!?」
船長「マルク!網だ! 根こそぎ持って帰るぞ!」
マルク「待ってましたー!」
  急いで宝を網で引き上げる。
アルマン「壁画は今までのコレクションの模写のように見せて、鏡池のトリックも本物を隠すカモフラージュか。よくできてんな」
アルマン「ふっ...」
エミール「そういえば ここからどうやって出ればいいんだ?!」
船長「ん?」
船長「知らん」
エミール「コイツ...」
イニャス「ほら、これ!」
イニャス「大砲一式セット! 火薬もー!」
エミール「さすがに、 湿気ってないかな?」
イニャス「大丈夫でーす!」
イニャス「撃てーー! アチョーーー!!」
  ドカーン!!

〇海辺
  岩壁を撃ち破り、砂浜へ。
イニャス「やったー! 出られたー!」
エミール「なんて強引な...」
マルク「あ! あんなところに船がー!」
船長「おぉー!頂いて行こう!」
船長「乗り込めー!野郎ども!」

〇海
  乗り込んだ船は、渦にも飲まれることなく
  進むことができるしろものだった。
マルク「そういえば、 あんな凄い宝の地図 一体どこで手に入れたんですか?」
アルマン「確かに、 あんな子供の手書きみたいなモノ」
イニャス「山のように財宝を隠してたなんて、 喉に傷のあるという」
イニャス「生きる伝説の海賊、 "ブラック"のモノとかですかね?」
エミール「まさか、そんなぁ」
船長「いや。 トルトゥーガ島で若い娘を助けたら、 それがいつも行く酒場のマスターの娘で、 お礼にってもらったんだ」
船長「...あ、そういや、 あのマスターって喉に傷あったわ」
船長「伝説の海賊も、今は娘が宝って事か!」
「えぇーーーっ!」
  .........fin.

コメント

  • 笑劇的な冒険活劇、楽しかった。スローモーションのシーン、笑えました。エミールのツッコミがないと成立しない三バカトリオだなあ、と思っていたらいつの間にかバカが一人増えてた。でもイニャスは使える子でしたね。海賊未経験者だけど、私も海賊のバイトしてみたいなあ。

  • ドタバタコメディ、おもしろかったです。出てくるキャラみんな自信満々なところが心地よかったです。そしてまさかあんなトリックが!さらに落書きのような宝の地図の出どころも最後に分かって、どんでん返しのような展開も楽しめました。船長さんはなんだかんだといい船長なんですね。

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