Kennel 2

wakakasa

前の日は、新しい日の第一歩(脚本)

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〇部屋のベッド
  朝
  目が覚めると
  みどりさんがベッドの上で震えていた。

  みどりさんは女優の卵で
  劇団員をしている。
  ぼくはみどりさんと暮らし始めて
  もう2年になる。

〇幻想空間
  2年かあ・・・
  ・・・
  ・・・物心がついたとき

〇レトロ
  ぼくは
  ベージュ色の
  プラスティックの箱の中にいた。
  そこは

〇ペットショップの店内
  ペットショップというところだった。
  そこには
  違う種族の仲間たちもたくさんいた。
  毎日
  たくさんの人がやって来て
  ぼくたちの箱の中をのぞいていった。

〇レトロ
  ぼくはその人たちを見ていたけど
  その人たちは
  ぼくたちを
  品定めしているようだった。

  そして
  その人たちは

〇ペットショップの店内
  尻尾をよく振る仲間のところに留まると
  あれこれ話しかけ
  お眼鏡に叶うと・・・
  ・・・その子をどこかへと連れ去った。

  ・・・そうやって、僕の仲間たちは次々と入れ替わっていった・・・
  ここには
  ぼくの世話をしてくれる人がいた。
  けんいちくんと
  なつみさんだ

〇市松模様
夏美さん「きみはシャンプーしても暴れないから 楽だわ♡」
夏美さん「ありがとうね、チュ(*´ε`*)」
  とか
健一「食事の時、催促して吠え立てないから 気が楽だよ」
健一「一番最後でも文句言わないもんなぁ ナデナデヾ(・ω・*)」
  僕は二人に好かれていた。

  やがてぼくの身体が大きくなってきて
  ぼくは
  柵で囲まれた大きめの箱に移された。

〇ペットショップの店内
  けんいちくんが言った
健一「おまえね、不器用なんだよ」
健一「もっとアピールしないと」
たっくん「アピールって何?」
健一「愛想良く、こう・・・ ・・・媚びないと」

  けんいちくんは
  奇妙な格好でクンクン鳴いた
  とても気持ち悪かった。

  ある晩
  今まで食べたことがない
  おいしい食事が
  たくさん出た。

〇キラキラ
たっくん「こんなにおいしいご飯ははじめてだ!」
  うれしかった!
  もっともっと食べたかった!
  そして
  けんいちくんとなつみさんが、
  ぼくを優しく撫でてくれた。
  気が付くとぼくは
  二人をペロペロ舐めながら
  クンクン鳴いて
  尻尾を思い切り振っていた。

〇ペットショップの店内
夏美さん「この子わかってるのかな」
健一「そんなことないよ」
たっくん「なんのこと?」
夏美さん「あんたとは今日でお別れなのよ」
たっくん「え?」
健一「明日、引き取り屋が来るんだよ」
たっくん「引き取り屋って?」
夏美さん「譲渡会開いて、 里親探してくれないのかな」
たっくん「ねえ、引き取り屋って?」
健一「店の方針だろ その方が情が移らないし、 面倒くさくないしね」
夏美さん「でもその引き取り屋って ネグレクトとか 虐待の噂が絶えないじゃない?」
健一「ああ、 病気になって 死んじまった子もいるみたいだな」
たっくん「ねえ、一体何を話してるの?」
夏美さん「この子もそうなるかも知れないわ かわいそうよ!」
健一「それ考えたら、 売れ残りはみんな俺たちが引き取らなきゃならなくなるぜ!」
  二人は憐れむようにぼくを見ていた。
  なぜだかぼくは恐ろしくなって
  その夜はずっと震えていた。

〇ペットショップの店内
  あくる朝、お店が開くと
  薄汚い箱を抱えて男の人が入ってきた。
  ぼくは首輪に紐をつけられて
  その人の前に引きずっていかれた。
  その人と店長が
  無理やりぼくを
  薄汚い箱に閉じ込めようとしている。
たっくん「助けて!」
  けんいちくんとなつみさんは
  遠巻きにこちらを見ている。

  その時だった。

〇ペットショップの店内
「待ってください!」
  きれいな女の人が近寄ってきた。
  ぼくはその人に見覚えがあった。
  時々お店に来て、
  ぼくのことをチラチラと見ていた人だ。

〇ゆめかわ
みどりさん「あの・・・ ・・・その子が欲しいんですけど」

〇ペットショップの店内
  その瞬間
  店長の顔が綻び、
  男の人の顔が険しくなった。

引き取り屋「どうするんですか」
店長「この方が欲しいと仰ってるんで・・・ ・・・今日のところはお引き取り下さい」
引き取り屋「ふん!」
  男の人は帰っていった。

〇ペットショップの店内
店長「こいつ、もう大きくなっちゃってるんで 十万でいいです」
「はあぁぁ!?」
  けんいちくんが駆け寄ってきた。
健一くん「店長! それは酷いんじゃないですか!?」
健一くん「今、二万払って 引き取ってもらおうとしてたんでしょ!?」
  店長とけんいちくんが揉め始めた。
  なつみさんが来て、
  ぼくの首輪についた紐を女の人に渡した。
夏美さん「さあ、行ってください!」
みどりさん「え?でも」
夏美さん「おとなしいし、いい子ですよ しっかり面倒見てやってください」

〇幻想空間
  ぼくは・・・
  たっくんという名前をもらった・・・

〇幻想空間

〇幻想空間

  ・・・昨夜・・・

〇玄関内
  傘を持たずに出かけたみどりさんが
  ずぶ濡れになって帰ってきた。
  朝の天気予報が当たった。
みどりさん「ごめんね、遅くなって」
たっくん「オーディションどうだった?」
  ぼくは聞いたけど・・・
  みどりさんはそれに答えず・・・
みどりさん「晩ごはん食べよっか!」

〇モヤモヤ
  ベランダの窓に打ち付ける
  雨の音が聞こえる。

〇部屋のベッド
  ベッドの上でみどりさんは
  大きくため息をついて
  膝小僧に顔を埋めた。
みどりさん「女優なんて・・・私 ・・・向いてないのかなぁ」
みどりさん「・・・品定めするように私を見るの・・・」
みどりさん「あれこれやらされて・・・ いろんな質問されて・・・」
みどりさん「上手くできなかったし、 上手く答えられなかった」
みどりさん「・・・やっぱ、だめかな・・・」
たっくん「大丈夫だよ、きっと」
  ぼくはみどりさんの隣で
  ずっとそう言い続けていた。

〇霧の中
  朝。

〇部屋のベッド
  みどりさんはベッドの上で震えていた。
  携帯電話の画面を見つめて・・・
  ・・・みどりさんの様子がおかしい。
  ぼくは訊ねた。
たっくん「どうしたの?」
  みどりさんはいきなり僕を抱きしめた!
みどりさん「主役はダメだったけど、 友達の役で決まったの!」

〇空
  窓の外に目を遣ると
  雨はすっかり上がっていた。
  前日にどんなことがあっても
  それは、必ず
  新しい日の第一歩なんだ。

〇雲の上

〇白
  おわり

コメント

  • うちにも引き取って10年以上経つ保護犬がいるので、他人事とは思えず拝読しました。生体を展示販売するペットショップは社会に必要ないと思います。たっくんとみどりのような出会いが増えることを願うばかりです。

  • すごく心が温かくなるお話でした。
    たっくんがどうなるかとハラハラしてましたが、彼女の元へと行けてよかったです。
    彼女も明るい未来が見えてきて、本当によかったです。

  • 心に温かい風が吹きました。彼女の様な感受性の持ち主はきっと少しづつでも良い女優に成長できるでしょうね。一人と一匹のとても素敵な関係が羨ましいです。

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