試験前日にインフルエンザだって!?(脚本)
〇病院の診察室
医者「インフルエンザね」
1月31日の夜、大学受験は目の前。
だが容赦なく突きつけられた現実は、まさにそれだった。
ボク「そう、ですよね」
医者「なんでワクチン打たなかったのよ。受験生でしょ?」
ボク「病院に行く時間が惜しくて」
医者はやれやれとばかりにため息を吐く。
医者「受験はいつ?」
ボク「明日です」
医者「すべり止め? それとも本命?」
ボク「本命です、ゴホゴホッ」
医者「今年じゃなきゃダメなの?」
ボク「はい」
医者「親御さんは?」
ボクは返答に詰まる。
これを話してしまったら、トドメを誘発する格好になるからだ。
だけど、嘘を考える体力も残っていない。
ボク「やめとけ、と」
なるほどね、と医者はうなずいた。
ボク「やっぱり、ダメですか?」
わずかな静寂の後、彼女は話を切り出す。
医者「正直に言うわね。あなたが受験に挑むのはおすすめしない。これは医者としての見解よ」
ボク「ですよね」
医者「だけど一方で、受験生の先輩としては応援したいと思う」
ボク「え?」
医者「大学に連絡しなさい。何とか試験を受けさせてもらうのよ」
医者「こっちはこっちで、身体のほうを何とかするから」
それは返答を反復しようとしたボクにとって、思いもよらない一言だった。
熱でぼんやりしていた景色が一瞬だけ鮮明になる。
彼女の真剣なまなざしは、まっすぐ俺の目を捕らえていた。
医者「薬局で薬が飲めるように処方箋を出すわ」
医者「急いで向かいなさい。 薬局では経口補水液も買って、家に帰ったらすぐに寝ること」
医者「水分補給と睡眠が生命線よ。 しっかり飲んで、しっかり寝る」
医者「そしてあとは、向こうの運次第でしょうね」
ボク「あ、あの」
医者「何かしら?」
ボク「いや、なんというか、結構びっくりしてて」
ボク「てっきり猛反対されるのかと思ってたから、少し安心できました。 まだボク、可能性が残ってるんですね」
医者「だと思うわよ。でも医者の立ち位置としては反対の身だからね?」
ボク「え? じゃあなんで、何とかするって励ましてくれるんですか? ゴホッ」
医者「フフフ、君がまだ諦めてなかったからよ」
ボク「どういうことです?」
医者「受験前の体調不良っていうのは、絶好の言い訳になるのよ」
医者「本調子じゃなかったから落ちた、行けなかったってね」
医者「だけど君はそれを言い訳にせず、真正面から医者に相談してる」
医者「どこまでの気持ちかは分からないけど、私はその気持ちを応援したくなった」
医者「ただそれだけのことよ」
ボクの顔はさらに熱を帯びた。
だがインフルのせいじゃない。
恥ずかしくなったからだ。
医者「可能性はまだあるはずよ。明日のために、じっくり体を休めなさい」
ボク「はい、ありがとうございます」
医者「今後、少しでも可能性があるのなら、決して諦めちゃダメよ」
医者「君の熱も、熱意も、すべて解答用紙に注いでみなさい」
医者「人間ってね、追い込まれた後の方が強いのよ?」
私も実は高校受験の前日にインフルエンザになりました。
そして保健室で受験を受けて…受かりはしましたし、今となっては笑い話ですが、当時は相当焦りました…。
なかなか男前(?)の女医さんですね!無事受験できたのかが気になります!こういう場合大学側としては、特別に個室で受験させてくれたりするのかなぁ?
大学入試に際して、体調を崩す人やそれを言い訳にする人も多く見てきているので、昔を思い出して懐かしくなります。現在流行中の感染症でも同様のケースがあるでしょうが、受験生には強い気持ちで臨んでほしいと切に思いました。