教団「F」

鷹志

第1話 バレンタインで悩める人々を救う(脚本)

教団「F」

鷹志

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〇祈祷場
  信者はみんな家族
  教団「F」の目的は、悩める信者を救うこと
大介「私が教団「F」代表の家神大介である!」
大介「・・・」
大介「ではこれより、定例会議を始める」
大介「今日の議題はバレンタイン」
大介「バレンタインで悩んでいる人たちを、我々が救う」
ミライ「バレンタインで悩んでいる人っていえば、そりゃあモテない男でしょ」
ミライ「チョコ0個だったらショックだよね」
ミライ「でしょ? いつも0個のお兄ちゃん」
健治「うるさい、黙れ」
大介「うむ。それでは、これから悩める信者を救う方法を考える」
大介「何か考えのある者は?」
健治「はい!」
大介「健治、言ってみろ」
健治「そもそもバレンタインなんて日本人には関係ない」
健治「バレンタインにチョコを配るなんておかしい!」
健治「俺は「バレンタインチョコ廃止」を訴える!」
ミライ「モテない男は哀れね」
ミライ「そんな考え方になるなんて・・・」
健治「うるさい」
大介「うむ。では、副代表の意見を聞く」
アスカ「モテない健治には、モテない男子の気持ちがよくわかる」
健治「・・・」
アスカ「健治、やってみなさい」
健治「うん。絶対成功させるよ」
ミライ「マジで? こんなバカな方法を認めるの?」
健治「お前は黙ってろ」
大介「では、決まりだ」
大介「今回は健治のアイデアでいく」
大介「それでは、長老と大老からひと言アドバイスをいただく」
耕三「わしはチョコより団子が好きじゃ」
ヤヨイ「チョコには抹茶よりほうじ茶かしら」
大介「健治、頼んだぞ。悩める信者を救ってくれ」
大介(ついでに、教団の収入も増やしてくれ)
健治「大丈夫、任せてよ!」

〇実家の居間
健治「見てみろ」
ミライ「何これ?」
健治「ネットでバレンタインチョコ廃止集会の開催を案内したんだ」
健治「すでに100人以上集まっている」
健治「参加料は千円だから、けっこうお金も入るぞ」
ミライ「こんな集会に100人以上?」
ミライ「モテない男、キモッ!」

〇武術の訓練場
健治「バレンタインチョコなんていらない!」
健治「廃止すべきだ!」
信者「そうだ、そうだ!」
信者「廃止しろ! 菓子メーカーに騙されるな!」
信者「健治様!」
信者「健治様、最高!」
健治(こんなに支持されるなんて)
健治(何か教祖や革命家になった気分だ)
健治(なんて気持ちいいんだ)
健治「みんな!」
健治「今日はみんなで、バレンタインチョコの愚かさについて語り合おう!」
信者「健治様!」
信者「実はここ数日、街中でバレンタインイベントなるものが開催されています」
健治「は?」
信者「けしからん! 今からみんなで行って反対を訴えよう!」
信者「そのイベントをめちゃくちゃにするぞ!」
信者「健治様、行きましょう!」
健治「えっ!?」
信者「バレンタインイベントなんて廃止だ!」
信者「さ、すぐに行きましょう!」
健治「いや、そういう過激なことはちょっと・・・」
信者「さ、早く!」
ミライ「非モテ、キモッ! 恐っ!」
ミライ「どーすんの、これ」
アスカ「さあ・・・」

〇おしゃれな通り
健治「みんな、少し落ち着こう」
信者「バレンタインチョコ反対!」
信者「今すぐこんなイベント中止しろ!」
  おい、何かヤバい奴らが来てるぞ
  バレンタインチョコ反対? モテない連中の腹いせか?
  惨めで哀れね・・・
信者「突撃だー!」
信者「おおー!」
健治「いや突撃って・・・みんな、落ち着こうよ」

〇祈祷場
健治「面目ない」
ミライ「全く。何がお金もけっこう入るよ」
ミライ「壊した施設の弁償代で大赤字じゃないのよ」
健治「面目次第もない」
大介「バレンタイン作戦は失敗だったか・・・」
ミライ「待って」
ミライ「まだバレンタインまでは日にちもあるわ」
ミライ「私に秘策があるの」
大介「うむ。ミライの考えを聞こう」
ミライ「やっぱり、モテない人も本当はチョコが欲しいのよ」
ミライ「だから、バレンタインチョコ廃止なんて訴えてもダメなのよ」
健治「ぐぬぬ・・・」
ミライ「私の作戦はズバリ「アイドルがあなたにチョコを手渡し♥️」よ」
ミライ「アイドルから直接チョコをもらえたら、悩みなんて吹っ飛ぶでしょ」
ミライ「ね、お兄ちゃん」
健治「まあ確かにそうだな」
健治「でも、そんなこと頼めるアイドルなんていないだろ」
ミライ「いるでしょ、目の前に」
ミライ「超絶かわいい女の子が」
健治「は?」
ミライ「わたしがアイドルになるのよ」
ミライ「そして、チョコがもらえなくて苦しんでいる人たちを救ってあげるのよ」
健治「はー!?」
ミライ「お父さん、いいでしょ?」
大介「うむ。では副代表の意見を聞こう」
アスカ「ミライは学校でも7番目くらいにかわいいから、案外イケるかも」
ミライ「微妙なほめ方ね・・・」
アスカ「やってみなさい」
大介「では、決まりだ」
大介「今回はミライの考えでいく」
大介「それでは、長老と大老からひと言アドバイスをいただく」
耕三「わしはばあさんからチョコをもらったことがない」
ヤヨイ「甲斐性なしに渡すチョコなどない」
大介「ミライ、頼んだぞ。悩める信者を救ってくれ!」
大介(そして、教団の収入も増やしてくれ)
ミライ「私に任せて!」

〇実家の居間
ミライ「見て、お兄ちゃん」
ミライ「バレンタインライブの宣伝をしたら、ネットで話題になってる」
  この子、けっこうかわいくね
  この子からチョコの手渡しだと!?
  モテない俺たちの救世主だ!
健治「へえー、けっこうすごいな」
ミライ「でしょ」
健治「って、おい・・・」
健治「お前の自己紹介に「近日全国デビュー予定」って書いてあるぞ」
健治「これ詐欺じゃないのかよ」
ミライ「べ、別にいいのよ」
ミライ「本当にそのうち全国デビューするかもしれないし」
健治「で、当日はその100円チョコを配るのか?」
ミライ「そうよ。これに私のサイン入り写真をつけて、なんとたったの3千円」
健治「高っ!」
ミライ「何言ってるの」
ミライ「私の歌を聴いて、私と握手をして、私から直接チョコを手渡し」
ミライ「安すぎるくらいよ」
健治「・・・」

〇神社の本殿
ミライ「みんな、今日は来てくれてありがとう!」
ミライ「ミライがあなたの未来を占っちゃう♥️」
ミライ「みんなの未来は、ミライでいっぱい♪」
ミライ「ミライの笑顔で、未来はハッピー♥️」
信者「ミライちゃん、かわいい!」
信者「僕の未来はミライちゃんとともにある!」
「ミライちゃーん!」
ミライ(何、この人気?)
ミライ(すごくない?)
ミライ(やっぱり私は人気者なのね)
ミライ(このまま本当に全国デビューできちゃうかも)

〇実家の居間
健治「そんなに大量にチョコを買ってどうするんだ?」
ミライ「明日の第2回バレンタインライブで配るのよ」
ミライ「前回の3倍の量は買ったわよ。しかも、今度は1個500円のいいやつ」
ミライ「これに私のサイン入り写真を3枚もつけて、1万円で売るのよ」
健治「1万円!? さすがに高すぎないか?」
ミライ「この前のライブを見たでしょ?」
ミライ「あっという間に売り切れるわよ」
ミライ「未来のスーパーアイドル・ミライちゃんからの手渡しチョコよ」
健治「はあ・・・」

〇神社の本殿
ミライ「何これ・・・」
ミライ「もうライブの開始時間になったのに、誰もいないんだけど」
ミライ「どういうこと!?」
アスカ「さあ・・・」

〇実家の居間
ミライ(どういうこと?)
ミライ(どうして誰も来なかったの?)
健治「ただいまー♪」
ミライ「えらく機嫌がいいわね。何かあったの?」
健治「実は今日、隣町の神社でバレンタインライブがあったんだよ」
ミライ「神社でライブ?」
健治「それがなんと、巫女さんのライブなんだよ」
健治「みんなかわいいし、歌と踊りも上手いんだよ」
健治「しかもなんと、巫女さんのサイン入り御朱印帳とチョコももらえたんだよ」
ミライ「これいくらしたの?」
健治「1万円だよ」
ミライ「高っ! バカじゃないの」
健治「何言ってんだ。巫女さんからの手渡しだぞ。安いもんだよ」
アスカ「ミライ」
アスカ「今日のライブに誰も来なかったのは、ひょっとしてその神社でのライブのせいじゃない?」
ミライ「えっ!?」
健治「めちゃくちゃたくさん人が集まってたぞ」
ミライ「ぐぬぬ・・・」
健治「わっ! この大量のチョコは?」
ミライ「うるさい」
健治「まさか、お前が用意したチョコの売れ残りか?」
ミライ「・・・」
健治「どーすんだ、これ」
ミライ「・・・」
大介「バレンタイン作戦は失敗だったか・・・」

〇実家の居間
  1か月後・・・
ミライ「お母さん、何これ?」
ミライ「何か高そうなものがいっぱい」
アスカ「もらったのよ」
健治「もらった?」
ミライ「誰に?」
アスカ「バレンタインのとき、ミライが大量に買って余ったチョコ」
アスカ「あれを町内にいる大地主さんや社長さんに配ったのよ」
健治「何でそんなことを?」
アスカ「あの人たち、見栄っ張りだから」
アスカ「プレゼントなんてもらったら、何倍もの値段のもので返さないと気がすまないのよ」
ミライ「それで高級品がこんなにたくさん」
アスカ「まあ、私の美しさに惚れちゃったのもあるかもね」
アスカ「これで健治とミライが作った赤字はチャラね」
健治「まいった」
ミライ「なんてしたたかさ・・・」

〇祈祷場
大介「私が教団「F」代表の家神大介である!」
大介「・・・」
大介「では、これより定例会議を始める」
大介「今日の議題は新生活」
大介「春から就職や進学で環境が変わり、不安や悩みを抱えている人たちを救う」
大介「何か考えのある者は?」
「はい!」

コメント

  • 面白かったですー!!!!!✨😊

    法螺貝が良い味出してますね✨

    個人的に長老と大老の一言が好きすぎますね!!✨間も、内容もバッチリで、ずっと聞いていたいくらいです✨😂





  • 法螺貝の使い方が勉強になりました!
    あれ何で使うんだろうと思ってたのでww
    バレンタインは苦労しますね…
    私もバレンタインネタが、さっぱり人気がないので嫌になります。
    なるほどこうしたら面白かったのか…
    いやいやコメディは難しい。なのにさすがですね。感服いたしました🙇

  • 副代表の子供たちに対する評価が結構辛辣な所、笑いました🤣
    代表の中身ない設定も良いですね。
    それぞれのキャラの役割がハッキリしてて、一言を考えるのが楽しそうです❗️

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