土地神様と神社家族

菜鳥オウル

カミサカ様と桧室木一家(脚本)

土地神様と神社家族

菜鳥オウル

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〇商店街
  商店街を中心に賑わう商業の町
  「香坂」

〇神社の石段
  その、外れ

〇古びた神社

〇実家の居間
チハヤ「今日もゼロ、昨日もゼロ、一昨日もゼロ・・・」
チハヤ「ああもう!何で誰も来ないんだよ!」
カミサカ様「そりゃみーんな川向こうの恵比寿さんの とこに行っちゃうからじゃない? 商売繁盛祈願に」
チハヤ「何で神様はそんなに平気な顔してるのさ」
チハヤ「うちの神社の祭神でしょ? 参拝者いなかったら困るんでしょ?」
カミサカ様「んー、まあ確かに信仰がなくなれば 僕の存在が消えるけど」
カミサカ様「もう長いこと生きてきたし、 後はなるようになれって感じ?」
イズホ「そうそう。なるようになれ、だよ」
イズホ「第一、神社で大事なのは心。 無理に参拝者を集めたって意味が──」
チハヤ「父さんはそんな事言ってられないでしょ。 この前屋根の修繕にいくら使ったと思ってる?」
イズホ「ウッ!?」
イズホ「ははは・・・どうせこんな町外れの 古神社になんて誰も・・・ブツブツ」
チハヤ「ちょっと!神様が目の前にいるのに!」
カミサカ様「まあまあチハヤ、少し落ち着きなよ。 これ以上イズホの傷を抉らないであげて」
カミサカ様「それにほら、今日はゼロって訳じゃ ないみたいだよ?」
チハヤ「えっ!?」

〇古びた神社
???「・・・」
???「今月発売の小説売れますように!!!!」

〇実家の居間
チハヤ「母さんじゃん!」
カミサカ様「一応参拝者でしょ?」
チハヤ「家族はカウントに入れてない!」
チハヤ「まあ小説が売れて欲しいのは俺も 同じだけど。我が家の貴重な収入源だし」
カミサカ様「そっかあ。でもごめんね、 僕にあの願いを叶える力はないよ」
イズホ「心配しなくても大丈夫ですよ。 前に結構売れた小説の続刊らしいので。 ほら、うちの神社がモデルだった」
チハヤ「あ、父さん復活したんだ。 はい、胃薬」
イズホ「はは・・・ありがとう」
???「ただいま~」
フミ「あら、2人とも遅くなってごめんね。 今から夕ご飯作るから~」
「はーい」
「・・・」
イズホ「神様、夕飯食べていかれる おつもりですか?」
チハヤ「だったら人に化けないと 母さんに気付いてもらえないよ」
カミサカ様「あ、忘れてた」
カミサカ様「よっと!」
フミ「あら、イズホさんのお友達? いついらっしゃったの?」
カミサカ様「今さっきだよ。ごめんね、声も掛けずに」
フミ「いえいえ、お気になさらず~」
フミ「これから夕飯作るんですけど、 よければお友達さんもどうぞ~」
チハヤ「毎回思うけど、よくあれで誤魔化せてるよね」
イズホ「フミは控えめに言っても鈍感だからなぁ」

〇実家の居間
チハヤ「で、話を戻すけど。 どうやったら参拝者増えると思う?」
チハヤ「氏子さんも減っちゃったし、このままだと家も神様もやばいよ・・・」
イズホ「うーん。でも真面目な話、できそうなことは一通りやってきただろう?」
イズホ「チラシを配ってみたり、かわいいお守りを作ってみたり」
イズホ「全部上手くいかなかったけど」
カミサカ様「まあ仕方ないよねえ。こんなしがない 土地神の御利益なんて、だーれも 求めてないだろうし」
カミサカ様「・・・それにもう、神の力なんて 必要としない時代だからねえ」
チハヤ「神様・・・」
アサノ「はぁ・・・」
チハヤ「アサノ?何かあった?」
アサノ「今夜の配信内容が、決まらない・・・」

〇黒

〇実家の居間
カミサカ様「ん?何か問題でも起こったの?」
チハヤ「問題じゃなくて大大大問題だよ!」
イズホ「配信内容が決まらなかったら、定期更新が途切れる」
フミ「そうなったらファンが減るかもしれないわ」
チハヤ「つまりアサノの大ピンチってこと!」
チハヤ「何か良い案は・・・」
チハヤ「そうだ!!」

〇空

〇仮想空間
神代三弦「はいはーい!どーも、神代三弦です★」
神代三弦「みんな、今日も元気かなー?」
  元気でーす!
  みつるん待ってたよー!
神代三弦「うんうん、良い返事が聞けて嬉しいよ♪」
神代三弦「今日はちょっと趣向を変えて、 特別ゲストを呼ぶことにしたんだ」
神代三弦「ジャジャーン! 何でも知ってる「神様」です★」

〇実家の居間
イズホ「始まった?反応はどう?」
チハヤ「とりあえず出だしは良さそうだよ」
チハヤ(チャンネルでアサノと神様のトークショーをやって、ついでにうちの神社を宣伝してもらう)
チハヤ(アサノはネタを見つけられるし、 神社の参拝者も増える。 思いつきにしてはいい作戦だ!)
フミ「けど何度見ても慣れないわねえ、 VTuberのアサノちゃん」
チハヤ「ああうん。アサノ、普段と全然イメージ 違うもんね・・・」

〇仮想空間
神代三弦「へえー、神様は二千年も前から 生きてるんだ?」
カミサカ様「まあねえ。だから大抵のことは知ってるよ。聞きたいこととかある?」
  二千年とかマジかww
  設定作りこんでんな
  ¥5000;源義経に会ったことある?
神代三弦「源義経って言えば平安時代に 平氏との戦いで活躍した人だね。 どう、神様?」
カミサカ様「直接は会ったことないねえ。 でも彼の活躍のお陰で助かったって人は たくさんいたよ」
カミサカ様「あ、そうそう。 義経といえば彼のお兄さんの──」

〇仮想空間
神代三弦「──ってことで、そろそろ良い時間だし、 今日はこれくらいにしようかな」
神代三弦「みんなー!今日はどうだった?」
  歴史ギャグ受けたw
  ¥5000;地味に日本史の勉強になる
  ¥10000;シリーズ化してほしい
神代三弦「シリーズ化!それ面白そうだね~。 この後神様と相談してみるよ★」
神代三弦「ちなみに、神様は香坂商店街の近くにある「神坂神社」にいるんだって。 よければ遊びにいってあげてね!」
カミサカ様「運がよければ会えるかもねえ」
神代三弦「じゃ、まったね~♪」

〇実家の居間
カミサカ様「あはは、意外と楽しかったねえ」
アサノ「疲れた・・・」
「アサノ/アサノちゃん!!」
アサノ「わっ、何?」
チハヤ「すごいじゃないか! 反応すごく良かったよ!」
アサノ「別に、あれくらい当然」
チハヤ「なんだよ可愛くないなあ」
チハヤ「でも俺の案採用してくれてありがとう。 お陰で参拝者も増えそうだよ」
アサノ「・・・」
アサノ「まあ、全部みんなのためだし」

〇空

〇空
  ──数日後

〇実家の居間
チハヤ「何で未だに参拝者ゼロなんだーーーー!!」

〇SNSの画面
  あの後、配信のことはTweeterでプチバズした
  けど出てくるのは全部日本史の話
  神社なんて言葉、ひとつもなかった

〇実家の居間
チハヤ「どこ見ても「みつるんと神様の日本史チャンネル希望!」ってコメントばっかり」
チハヤ「神様、別方向で信仰集めちゃってるんじゃないの?」
チハヤ「まあアサノの危機も乗り越えたし、 それで神様が消えないなら別にいいけどさ」
チハヤ「ん?」

〇古びた神社
女の子「うう、ひっく・・・」

〇実家の居間
チハヤ「参拝者・・・にしては 様子がおかしいような?」

〇古びた神社
チハヤ「どうしたの?何かあった?」
女の子「ぐすん・・・あの、神様いますか?」
チハヤ「神様?」
カミサカ様「なあに?呼んだ?」
チハヤ「ああうん。この女の子が神様の名前を 出してさ」
女の子「お姉ちゃんが見てたVTuberが 言ってたよ。ここに何でも知ってる 神様がいるって・・・」
チハヤ「そのことか。うん、確かにいるよ」
カミサカ様「本当に「何でも」知ってる訳じゃ ないけどねえ」
チハヤ「神様は少し黙ってて」
チハヤ「で、その神様に何か用かな?」
女の子「あのね、キーホルダーがどこにあるか聞きたいの。ウサギさんのぬいぐるみがついてるやつ」
女の子「お母さんがくれた大事なキーホルダーだったのに、落としちゃって・・・」
女の子「うわーん!!」
チハヤ「あああ、泣かないで!」
チハヤ(でもどうしよう、どこに落としたかも 分からないキーホルダーを探すのは、 さすがに・・・)
カミサカ様「キーホルダー、キーホルダー・・・」
カミサカ様「うん、多分大丈夫だよ」
チハヤ「え?」
カミサカ様「チハヤ、今から僕の言う通りに行動して」

〇商店街

〇店の入口

〇ゆるやかな坂道

〇空

〇街中の階段
カミサカ様「そう、そこの植え込みだよ」
チハヤ「えーっと──」
チハヤ「あ、なんか出てきた」
女の子「わあ!それだよ、私のキーホルダー!」
女の子「お兄ちゃんすごーい!どうしてわかったの?」
チハヤ「神様が教えてくれたんだ」
女の子「神様が? そっか、さすがは何でも知ってる神様だね!」
女の子「神様、キーホルダー見つけてくれて ありがとうございます」
カミサカ様「どういたしまして」
女の子「じゃあ私帰るね!ばいばい、お兄ちゃん!」
チハヤ「うん、気を付けて」
チハヤ「・・・で」
チハヤ「神様、なんでここにあるって分かったの?」
カミサカ様「それは神の不思議な力のお陰、だよ」
チハヤ「え?大した力はないんじゃ・・・」
カミサカ様「まあねえ。けど香坂で起こったことは、 大きな事から些細な事まで ぜーんぶ知ってる」
カミサカ様「だって僕は土地神だからねえ。 そうやってずっと昔から、僕はこの町を見守ってきたのさ」

〇空

〇空

〇空

〇古びた神社

〇実家の居間
チハヤ「今日も参拝者・・・」
カミサカ様「ゼロ、でしょ。 チハヤ、そろそろ諦めたら?」
チハヤ「何言ってるの、 諦めたらそこで終わりだよ!?」
イズホ「まあまあ、神社は心が──」
チハヤ「父さん、現実見て」
イズホ「ウッ!!」
イズホ「あはは・・・ 境内の掃除でもしてこようっと・・・」
チハヤ「はあ・・・」
チハヤ(何かないかなあ。 どばっと人を呼ぶいい案は・・・)
イズホ「チハヤ!神様!」
カミサカ様「イズホ?」
チハヤ「掃除に行ったんじゃ──」
イズホ「あれ見て!」

〇古びた神社

〇実家の居間
チハヤ「あれは・・・」
イズホ「参拝者!久々の参拝者だよ!」
チハヤ「・・・そっか」
チハヤ(まあ、焦らずゆっくりでもいいのかな)

コメント

  • ほろっとくるお話でした✨

    お父様の胃の調子が心配なので、少しずつ参拝者が増えていくといいなぁと思いました✨そしてみんなそれぞれが、家族思いでいいですね✨😊

    癒されるお話ありがとうございました✨(*^ω^*)🌸

  • 高齢化と人口減少に伴い氏子も減って神社の経営は苦しいところが多いみたいですね。クラウドファンディングで資金を集めて敷地内にカフェをオープンした神社もあるとか。カミサカ様の歴史トークやお悩み相談ができるカフェなんかどうでしょうね。私だったら絶対行くんだけどなあ。

  • 恥ずかしながら神社の経済について考えたことが無かったので参拝者が少なかったら経済的に困ると言うことを知りませんでした😂カミサカさんが何でも知ってるって、言ってるだけなのかと思っていたけど少女のキーホルダーの場所を当てた時は、すご!!!っと思ったし、カミサカさんを最初から信用しなくてすみませんでした🙇🏻‍♀️という気持ちです😂

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