お義母さんはいい人ですよ?(脚本)
〇一戸建て
カナデ「こんにちは! 私の名前は、佐藤 カナデ。 最近、この町に越してきました」
カナデ「ご近所さん同士、仲良くして下さいね!」
カナデ「実は私、新婚なんです」
カナデ「旦那様のユウヤさんは とても素敵で優しい自慢の旦那様です♪」
カナデ「でも、ユウヤさんはお仕事が忙しくて、 なかなか夫婦の時間を持てません」
カナデ「大きな新居にひとりぼっちは 寂しかったので・・・」
カナデ「あなたと出会えて良かったわ」
カナデ「これからも仲良くして下さいね!」
カナデ「それにね・・・ 幸いなことに、お義母さんが頻繁に 遊びに来て下さるんです」
カナデ「私、周囲の方々に恵まれて幸せだわ」
〇黒
〇明るいリビング
カナデの義母「カナデさん、このお茶菓子は何なの? 随分と素朴なお菓子だこと」
カナデ「はい、駅前に新しくオープンした ケーキ屋さんで購入したんです」
カナデの義母「まぁ、あの行列が絶えない人気店で?」
カナデ「ええ、友人がやってるお店なんです」
カナデの義母「カナデさんのご友人が?」
カナデの義母「何だか不安だわ!」
カナデの義母「私も歳だし、添加物とか気にするのよね。 やはりお菓子は手作りじゃなくっちゃ」
カナデ「そうですか?」
カナデ「申し訳ありません」
カナデ「お義父さんへのお土産用に菓子折を 用意したんですけど、 処分しますね」
カナデ「すみません、 添加物のことなど考えていませんでした」
カナデの義母((美味しそう・・・))
カナデの義母「そのお菓子、どうするつもり? まさか息子に食べさせるんじゃ ないでしょうね?」
カナデ「いいえ、お義母さん。 お菓子は私が責任をもって、 全部処分しますので、お気遣いなく」
カナデ「うふふ、この店の焼き菓子は どれも絶品なんですよ」
カナデ「使っている卵やバターの素材が 違うんですよね」
カナデの義母((ごくり・・・))
カナデの義母「・・・そ、その量を一人で食べるのは 大変でしょう? 私が手伝ってあげる」
カナデ「いえいえ、大切なお義母さんに 市販のお菓子など食べさせられませんよ」
カナデ「心遣い、ありがとうございます」
カナデの義母((ぐぬぬ・・・))
〇黒
〇カフェのレジ
カナデ「・・・といったことがあったんだ」
カナデ「だから、今度お菓子の作り方を 教えて欲しいんだけど。 お願い、ハルミ!」
ハルミ「はぁ?」
ハルミ「ねえ、カナデ。 お菓子作りを教えるのは 別にいいんだけどさ・・・」
ハルミ「そのお義母さんの言動って、 いわゆる「嫁いびり」じゃない?」
カナデ「えっ、嫁いびり!?」
カナデ「いやいや、お義母さんは そんな人じゃないですよ?」
カナデ「私の気が利かなくて、 困らせてしまっただけで」
カナデ「お義母さんはオーガニックとか、 自然派とかに興味がある人なんです」
カナデ「なのに、手作り以外のお菓子を お出しするなんて、嫁失格ですね」
ハルミ「そのお菓子は私の手作りだし、 別に怪しい添加物とかは 使ってないんだけどなぁ・・・」
カナデ「私もそう思うんだけど、 お店で買った物はダメみたいなの」
ハルミ「面倒なお義母さんね」
カナデ「いい人よ? 出張で留守がちな夫に代わり、 私の事を気に掛けてくれるんだから」
ハルミ「まぁ、カナデがそれで良いのなら、 私がとやかく言うことじゃないけど・・・」
ハルミ「お菓子の作り方、教えてあげる。 でも、ちょっと条件があるの」
ハルミ「実はご近所の奥様にも、お菓子作りを 教えて欲しいと頼まれてるの」
ハルミ「だから、カナデの家のキッチンを使って、 一緒に教える・・・という形でもいい?」
カナデ「もちろん!」
ハルミ「今週木曜日。 ウチの定休日に合わせて 行なう予定なんだけど、都合はどう?」
カナデ「大丈夫よ。 特にお義母さんとも約束はしてないし」
ハルミ「じゃあ、その方向で調整するからね!」
〇食器
そして約束の木曜日・・・
〇おしゃれなキッチン
ハルミ「では、お菓子作り教室を始めま~す。 今日はシフォンケーキを作りますよ」
ナツコ「うふふ、楽しみね。 ・・・ええと、カナデさんと お呼びしてよいかしら?」
カナデ「もちろんですよ、奥様!」
ナツコ「あら、そんな他人行儀な呼び方は嫌よ」
ナツコ「私の事はナツコと呼んでちょうだい」
カナデ「よろしくお願いします、ナツコさん」
ハルミ(相変わらずカナデは 人と仲良くなるのが早いわね)
ハルミ(もう親子みたいに 意気投合しちゃってる)
〇黒
〇おしゃれなキッチン
カナデ「わー、いい匂い。 ナツコさんのケーキ、 すごくふわふわで美味しそう!」
ナツコ「ありがとう、カナデさん。 そうね、かなりの自信作よ」
ハルミ「では、粗熱が取れるまで、 こちらで冷やして下さい」
ハルミ「次はカナデのケーキを焼くよ。 さっさとオーブンに入れて~」
カナデ「はーい!」
ハルミ「よし、では焼き上がるまで休憩ね」
カナデ「私、お茶を用意しますね。 天気がいいから、 お庭のテラス席で飲みません?」
「賛成~!」
〇華やかな裏庭
カナデ「お茶をどうぞ~」
インターホン「ピンポーン」
カナデ「あれ、誰だろう?」
カナデ「・・・あら、お義母さんだわ。 ちょっと応対してくるね」
ナツコ「カナデさんのお姑さんって、 隣町の佐藤さんよね? 私、同じヨガ教室に通っているのよ」
ハルミ「ヨガをやってるんですか。 どおりでナツコさんはお若く見えますね」
ナツコ「あら、まあ。 ありがとうね、ハルミさん」
ハルミ「あ、そうだ! お姑さんともお知り合いなら、」
ハルミ「こっそり様子を見に行って 2人を驚かしちゃいましょうよ!」
ナツコ「いいアイデアね!」
〇黒
〇明るいリビング
カナデの義母「カナデさん、ココに埃が溜まってるわよ! 掃除もろくに出来ないのねぇ・・・」
カナデ「あらあら、 見つけて下さってありがとうございます」
カナデの義母「ほら、ここにも汚れが残ってる。 やり直しよ!」
カナデ「はい、今ケーキを焼いているので、 後で拭いておきます」
カナデの義母「そういえばキッチンの方から いい匂いがするわね・・・」
〇川のある裏庭
ナツコ「・・・隣町の佐藤さんって、 嫁いびりをするような人だったのね」
ナツコ「上品な奥様だと思っていたのに、 幻滅したわ」
ナツコ「あんなに可愛いカナデさんを いびるなんて信じられない!」
ナツコ「キッチンにいるカナデさんが心配だわ。 私たちも行きましょう!」
ハルミ(我ながらグッジョブ!)
〇おしゃれなキッチン
カナデの義母「これは何を焼いているの?」
カナデ「シフォンケーキです」
カナデの義母「あら、カナデさんにしては 気が利いてるじゃない? 私、シフォンケーキ大好きなのよ」
カナデの義母「早速焼けたみたいね。早く食べたいわ」
カナデ「ダメですよ、お義母さん。 この後、粗熱を取らないといけないので」
カナデの義母「あら、そうなの? だったら、こっちの冷えている方の ケーキにするわ」
カナデ「そ、それはダメです!!!!」
カナデの義母「うるさい、 嫁の分際で口答えするんじゃない!」
〇黒
〇おしゃれなキッチン
ナツコ「ああぁぁぁ、私のシフォンケーキが・・・」
カナデの義母「ナツコさん? どうしてここに?」
ナツコ「それはこちらの台詞です。 なんで私のケーキ、 食べちゃったんですか・・・」
カナデの義母「えっ、コレ、ナツコさんの・・・?」
カナデの義母「ごめんなさい、 この不肖の嫁が作ったものだと 勘違いしちゃって・・・」
ナツコ「これ以上カナデさんの悪口を言わないで! お友達なんだから! 嫁いびりするような人とは絶交よ!」
カナデの義母「えっ、お友達?」
ナツコ「そう、カナデさんとは 今日お友達になったの」
ナツコ「でも、残念。 佐藤さんとは今日でお友達終了ね」
カナデの義母「そ、そんなこと言わないで下さいよ~」
カナデ「ナツコさん、 お義母さんは私の事を思って、 色々言って下さってるんです」
カナデ「決して嫁いびりなんかじゃないですよ」
ナツコ「ああ、カナデさん、 お姑さんを庇うなんて。 なんて優しい子なのかしら・・・」
カナデ「いや、庇っているわけじゃなくって、 私、本当にいびられてるなんて 思ってなくてっ!」
カナデ「ね、お義母さん?」
カナデの義母「・・・・・・」
カナデ「・・・お義母さん?」
ハルミ「・・・カナデ。 逆効果だから、もうやめてあげて」
カナデ「そ、そう?」
〇黒
〇明るいリビング
ユウヤ「ただいま、カナデ」
カナデ「お帰りなさい、ユウヤさん」
ユウヤ「なんかさ、母さんからカナデに 謝りたいとメールが届いてたんだけど、 何かあったのか?」
カナデ「実は・・・」
〇黒
〇明るいリビング
ユウヤ「そ、そんなことが・・・。 大変だったね、カナデ」
ユウヤ「・・・母さんのいびりのこと、 気づいてやれずゴメンな」
カナデ「私は平気よ? でも、ちょっとお義母さんの立場が 大変みたい・・・」
ユウヤ「うーん、ナツコさんの旦那さんって、 この辺りの大地主で、 町内会長もされている方だろ?」
ユウヤ「これはちょっと・・・まずいかも」
カナデ「私、どうすればいい?」
ユウヤ「そうだね、カナデは大人しく 見守ってくれればいいよ」
カナデ「一緒に謝りに行った方がいいのかな?」
ユウヤ「・・・カナデは大人しく、ね?」
カナデ「はーい!」
〇一戸建て
〇黒
お・し・ま・い
自分のことを「至って普通の主婦である私」と言い切る人に普通の主婦はいないんじゃないだろうか。「鈍感」と「天然」のギリギリの線をいっているようでいて、もし「天然」を装った「養殖」だったら、それはまた別の意味で最強かもですね。
天然なカナデさん、最強ですね✨彼女ならどんなトラブルも丸く収めてくれそうです😉
嫁いびりする姑、ゆるさーーん😡
はい「最強」ですね(←タイトルに対して)
お見事なまでのお義母さんのぐぬぬ展開に終始ニヤニヤです。カナデさん、近所のモンスタークレーマーに対してもステキな対応するのでしょうね!