第4話 山桜を見に来たらダンジョンへ(脚本)
〇古風な和室
真樹「う~ん・・・。」
朝の陽射しが目にしみる。チラリとスマホを見たら朝の8時だ。
ふとこれが夢じゃないか不安になり、ソリアの手を握る。
柔らかくて温かい、これは夢じゃないんだ・・・良かった。
真樹「今日もかわいいな・・・起きてる時はなかなか言えないけど・・・優しくて可愛くてソリア大好きだよ」
寝顔を見ながら起きない程度に頭を撫でる。サラサラな髪も幼さの残る顔も愛しく感じる。
昨日は長い時間起きてたからな・・・まだまだ起きないかもしれない。ん・・・手を握る力が強くなったような気がする。
想里愛「心の声「ぁぅぅ、大好き!大好きって言われちゃった!そう想ってくれてたんだ・・・あたしのこと大切にしてくれてうれしい・・・」
想里愛「えへへ真樹さん大好き♪今度は起きてる時に言われたいなぁ・・・♪」」
想里愛「えへへ・・・おはようございます♪」
真樹「あ、おはよ~」
想里愛「心の声「まだドキドキしてる・・・どのくらい心音早くなってるかな・・・あれ?あたしの手こんなに大きかったっけ・・・あっ!」」
想里愛「「ぁぅぅ・・・。」」
真樹「「えっ・・・!」」
ずっと繋いだままの手が、ソリアの2つの山脈へ移動する。しかも互いに驚いた拍子に僕の手のひらが山頂に到着・・・
いや置き去りにされてしまった。これはしゅごい・・・雄大な大地の恵みは山のふもとまで指先が降りることを許さない。
想里愛「「こ、これは間違えちゃって。たまに寝てる間に服のボタンが外れたり脱げちゃったりするんですけど、わざとじゃないんです。」」
真樹「『あ、朝だもんね・・・寝起きだし・・・仕方ないよ。誰だってくせはあるよ』」
互いに顔を真っ赤にしつつも、なんとかソリアを励ます。なんか上着のボタンがかなり外れてるぞ。
そうか、ボタンでは山の厚みに対抗できないのだ。火山が噴火する様な勢いでボタンが外れるのだろう。
そしてソリアの世界にブラの概念は無い、つまりあの感触は・・・精霊様、ソリア・・・ありがとうございます。
真樹「『ソリアのパジャマ・・・似合ってるよ。』」
想里愛「『ありがとうございます。苺のパジャマ・・・良いですね♪』」
苺の絵とマッチしていて、ソリアがすごく可愛い。顔の幼さもさらに可愛さを手伝っている気がする。
決してやましい気持ちは無いのだが、ついパジャマのボタンの開いている所の隙間に視線がいってしまう。
うん、やはりしゅごい。だがこれ以上見るのは無粋というもの。
僕もわざとでは無いが、本来はソリアの心の準備ができてから初めて視界に入るべきものなのだ。
某漫画の某キャラの気持ちで僕は待つ。でもダメダメもっと熟れてからの我慢我慢我慢!!!!あ、僕は決して変態ではありません。
真樹「『その・・・体冷えたらまずいし・・・ボタン付けるよ。』」
想里愛「『あ・・・ありがとうございます。』」
顔を赤くして俯くソリア。時間がかかったが無事ボタンをつけ終えた。
〇綺麗なリビング
その後はリンゴジュース、目玉焼き、バターを塗りハムを乗せて温めた食パン、キャベツとコーンのサラダの朝食を摂る。
想里愛「『すごく美味しいです!真樹さん、料理お上手なんですね♪』」
真樹「『そうかな?ソリアの口に合って良かったよ♪』」
ソリアの笑顔は朝の陽射しより眩しい。僕を照らしてくれる太陽だ。このあとはソリアの世界で山桜デートかな、すごく楽しみだ。
しばらくまったり過ごしてから精霊の前に二人で座る。ソリアの世界では森にモンスターが現れる可能性があるので、
精霊に祈る前に肩さげ付きの竹刀を用意した。その他は飲食物やお風呂の上蓋の開いた大きな樽、マッチや木材、スマホを用意した。
想里愛「『それじゃあ行きますね。一緒に山桜見に行くの楽しみですね♪』」
真樹「『楽しみだね♪準備もできたし行こう~』」
二人で目を閉じてソリアの家で暮らしたいと祈る。目を閉じてても明るい光に包まれているのがわかる。
〇桜並木
ほどなくして温暖な空気を感じ目を開く。無事二人とも転移できたようだ。ソリアが服を外出用に着替える。
目を閉じてれば良いですよと言い、僕が目を閉じてる間にソリアは着替える。ここで目を開けなかった自分は偉いと思う。
お風呂の時にきっと見れる・・・!そう思って我慢する事にした。
想里愛「心の声『ドキドキ・・・あ、真樹さんちゃんと目を閉じてる。見ちゃっても良いのに・・・でも素直な真樹さんも好き♪』」
想里愛「『着替え終わりましたよー♪』」
真樹「『あ、じゃあ目を開けるねー。』」
その後昼食はソリアの用意してくれた食べ物と水をごちそうになった。甘味のある水も豊穣な大地で育った食物もとても美味しい。
想里愛「『畑で芋や枝豆や果実を育てていて・・・食べ物にはそんなに困っていないんです。』」
真樹「『どの食べ物もすごく美味しいよ。こんな自然が豊かな所で暮らせて良いな~。』」
楽しく話つつお昼を食べ終わり、二人で山桜を見に出かける。山桜はソリアの家から少し登った所にある。
以前はソリア以外にも村人が多く住んでいたので、ある程度整地されておりモンスターも滅多に現れないという。
想里愛「『道の途中には食べ物になる実や、植物もあるんです。家の近くなのでよく採集しに行くんです。』」
真樹「『そうなんだ、暮らしやすい場所で良いね。』」
想里愛「『あ、ここを登った先です。もうすぐ山桜が見えます♪』」
ソリアが言った通り登り切った先から一面山桜の平地が続いている。視界のすごく小さい奥がまた登り道になっているがすごい広さだ
想里愛「『見晴らしが良いからモンスターが近づいてもすぐ気付くので安全です。一年中満開なんでいつ来ても景色を楽しめるんですよ♪』」
真樹「『ほんとだ、すごく綺麗だね。や、山桜も綺麗だけど・・・ソリアはもっと綺麗だよっ♪』」
想里愛「『えへへ・・・♪あたしも真樹まさきさんはかっこよくて優しくて大好きです♪』」
真樹「『僕もソリア大好きだよ♪』」
えへへと二人で笑う。照れ交じりだがこうして言葉にするのは大切だと思う。想ってるだけじゃ全てが伝わらない場合もあるからだ。
山桜デートはさっそく大成功で僕はもちろん、きっとソリアも喜んでくれているだろう。二人きりの素敵な世界に感謝して過ごす。
想里愛「『ここらへんの樹は千年樹がたくさんあって、中には万年樹もあると言われています。』」
真樹「『そうなんだ、とても神聖な場所なんだね。』」
現に千年樹か万年樹かもわからない大きな樹に、僕とソリアは背中を預けている。視界を上に向けると太い幹や枝と桜の花で
樹の高さは計り知れない。
ソリアが言うには山のふもとはおろか、少し離れた街から山の樹を見てもその高さは測り切れないと言う。さすがは万年樹だ。
ソリアの頭を撫でながら話をする。ソリアの家のすぐ近くに水が湧いてる場所があるそうで、水には困ってないという。
帰ったら持ってきた樽を使ってお風呂に一緒に入る事になった。すごく楽しみだ。ちゃっかり苺の水着も持ってきた。
ビキニだ。裸で入るか水着で入るかはわからないが、どちらにしても僕としてはアリだ。・・・ん?何か声が聞こえるぞ。
???「け・・・て・・・助けて。」
今にも消え入りそうな声が聞こえる。ここには僕とソリアしかいないはずだぞ?
真樹「『「ソリア、何か声が聞こえない?』」
想里愛「『いえ、あたしには・・・どこから聞こえるんですか?』」
真樹「『もしかしたらこの樹の裏かな・・・危ないかもしれないから・・・遠巻きにして見てみる?』」
想里愛「『そうですね・・・遠くから見れば安全だと思います。』」
僕とソリアはゆっくりと音を立てずに移動する。遠くから見た限り誰も居ない。気のせいだったのだろうか?
想里愛「『誰もいません・・・ね。』」
真樹「『うん・・・僕の気のせいかな?ビックリさせてごめんね。』」
想里愛「『・・・大丈夫ですよ♪何も無くて良かったです♪』」
〇桜並木
ゆっくり二人でさっきの樹まで近づいて戻る。目を凝らしても何も居ない・・・
ただよく見たら、樹に人が数人通れる大きな空洞があった。奥行きもかなりあるようだ。
想里愛「『まさか座ってた樹の裏がこんな風になってるなんて・・・。』」
入口から中を覗くとものすごく広い。ソリアの家よりも広く感じる。
いや、実際に広い。そういえばこの世界には魔法が存在しているとソリアに教えてもらった。
もしかしたらこの樹にも魔力がこもっていて、魔法で実際の空間より広がっている可能性もある。
真樹「『さっき聞いた声はこの奥から聞こえたのかな・・・。魔物のいる様子は無いけど・・・危ないかも知れないから今日は帰ろう。』」
想里愛「『そうですね・・・桜もたっぷり見れたし今日は帰りましょう。』」
そうして桜の平地を抜けてソリアの家にゆっくり帰った。家に着いた頃には空は暗くなり始めていた。