魔王様は謝らない

戸羽らい

俺は悪くない(脚本)

魔王様は謝らない

戸羽らい

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魔王様は謝らない
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〇闇の要塞
「い、いない!」

〇地下室
シヴァ「俺の大事なペットたちが・・・いなくなってる!」
エルナ「気持ち悪いので全部逃がしました」
シヴァ「逃がしたって、お前」
シヴァ「あの子たちを集めるのに、俺がどれだけ苦労したと」
エルナ「はぁ?」
エルナ「私がアレを管理するのにどれだけ苦労してたか知ってますか?」

〇洋館の廊下
  屋敷中を徘徊するわ
  臭いわ
  廊下はヌメヌメするわ

〇魔王城の部屋
  テーブルの上で盛り合ってた時は殺意を覚えましたよ
  部屋中に飛び散った粘液を、私がどんな気持ちで掃除していたか分かりますか?

〇地下室
エルナ「貴方は餌だけあげて満足なのでしょうがね、掃除するのは私なんですよ」
エルナ「放っておいたらどんどん繁殖する。数が増えれば増えるほど、部屋も汚れる」
エルナ「流石に我慢の限界です」
シヴァ「だからって、勝手に逃がすことねえだろ」
シヴァ「一言、俺に言えよ」
エルナ「言ったところで、貴方は聞く耳を持たないでしょう」
シヴァ「持つわけねえだろ」
エルナ「呆れた」
シヴァ「あーあ・・・まじかあ・・・」
シヴァ「最悪・・・」
シヴァ「お前本当・・・まじで」
シヴァ「あの魔物たち、どれだけレアか分かってるのか?」
エルナ「知りません。ただ邪魔なだけの汚物です」
シヴァ「物の価値が分からない女が・・・」
エルナ「人の気持ちが分からない男に言われたくないですね」
シヴァ「人の気持ちだと?」
シヴァ「逆にお前に俺の気持ちが分かるのか?」
シヴァ「大切なものを失った俺の気持ちが」
エルナ「分かりますよ」
エルナ「おもちゃを取り上げられて拗ねてる子供のような気持ちでしょう」
シヴァ「よくいるよな。「没収」とか言って子供のおもちゃを取り上げる親」
シヴァ「叱ることと、感情に任せて怒ることは違うんだよ」
シヴァ「俺が親なら、子供が大切にしてるものを取り上げたりなんかしないね」
エルナ「貴方は大人でしょうが!」
シヴァ「例えだわ。お前のヒステリーはまるで毒親みてえだって言ってんだ」
エルナ「はぁ?」
シヴァ「お前あれだろ?」
シヴァ「子供が勉強せずにゲームしていたら、突然怒り出してゲーム機壊したりするタイプだろ?」
エルナ「壊しませんよ!」
シヴァ「いーや壊すね。ヒスって子供の私物全部処分するね」
エルナ「・・・仮に壊すとしましょう。ですが、壊される方にも原因があるのでは?」
シヴァ「何言ってんだ?」
シヴァ「どんな理由があろうが、人の物を壊すのはダメだろうがよ!」
エルナ「・・・」
シヴァ「どうした?」
シヴァ「言い返せないなら俺の勝ちだが?」
エルナ「勝ちとか負けとかどうでもいい」
エルナ「もういい」
エルナ「貴方には何を言ってもムダ」
シヴァ「またそうやって感情的になる」
エルナ「はぁ・・・」
シヴァ「おい!どこ行くんだよ!」
シヴァ「まだ話は終わってねえぞ!」

〇貴族の応接間
エルナ「はぁ」
ダリア「ママ〜。またパパと喧嘩したの?」
エルナ「はい」
エルナ「・・・私、ダリアのおもちゃを取り上げたことなんてありませんよね?」
ダリア「ないよ!ママは優しいもん!」
シヴァ「俺は未来の話をしてるんだ」
エルナ「うわっ」
シヴァ「俺はお前が毒親になってしまわないか心配だよ」
シヴァ「何せ、俺の大事なペットを無断で逃がすような女だからな」
エルナ「だからそれは貴方にも原因が!」
ダリア「ペット・・・?」
ダリア「ママ、もしかしてスライムさんたち逃がしたの?」
エルナ「え・・・」
シヴァ「ダリアも悲しいよなぁ」
シヴァ「勝手に逃がすなんて酷いよなぁ」
ダリア「・・・ママ、最高!」
シヴァ「え?」
ダリア「あいつら臭いし汚いし、いい加減邪魔だったんだあ」
ダリア「ママが掃除してくれなかったら、お屋敷が大変なことになってたよ」
シヴァ「そんな!ダリアもあんなに可愛がってただろ!」
ダリア「最初はね。でも数が増えてからはちょっと」
ハジャ「お〜。あの者たちもついに在るべき場所へ帰ったのじゃな」
シヴァ「ジジイ!」
ハジャ「窮屈そうにしておったからのう」
ハジャ「屋敷で飼うより、ダンジョンに放った方が彼らのためじゃ」
シヴァ「クソ!ジジイもエルナの味方かよ!」
ハジャ「ワシは魔物の味方じゃあ」
ハジャ「お主も魔王なら、魔物の気持ちを考えるんじゃ」
シヴァ「うるせえ!言いたい放題言いやがって!」
シヴァ「傷口に塩を塗られる俺の気持ちを考えろ!」
シヴァ「ペットを失ったんだぞ!」
シヴァ「あんなに大事にしてたペットを!」
ダリア「ここはパパだけのお屋敷じゃないよ」
ダリア「ペットは家族みんなで飼うのです」
シヴァ「ぐぬぬ」
シヴァ(まるで俺が悪いみたいじゃないか)
シヴァ(確かに俺にも落ち度はあるが)
シヴァ(いかん。認めてはダメだ)
シヴァ(俺は魔王だ。魔王は絶対的で在らねばならん)
シヴァ(俺は悪くない)
シヴァ(そうだ!俺様は悪くない!)

〇黒
シヴァ「フフフ」

〇魔界
シヴァ「フハハハハ!」
「!」
ダリア「パパが戦闘モードに」
エルナ「何が何でも非を認めないつもりですね」
シヴァ「娘よ。「ペットは家族みんなで飼う」と言ったな」
シヴァ「間違っていないが、惜しい」
シヴァ「正しくは「ペットは家族」だ」
ダリア「ペットは家族?」
シヴァ「そうだ。彼らは家族の一員」
シヴァ「そんな家族をいきなり追い出すなんて可哀想じゃないか?」
ダリア「家族、か。考えたこともなかった」
ダリア「私、「邪魔」だなんて酷いこと言ったかも」
シヴァ「「屋敷で飼うよりダンジョンに放った方がいい」これも違う」
シヴァ「紫スライムは絶滅危惧種の超激レアモンスターだ」
シヴァ「我々の手で保護しなければ、淘汰されてしまうだろう」
ハジャ「た、確かに」
ハジャ「シヴァよ、そこまで考えておったのか!」
エルナ「屁理屈です・・・」
エルナ「騙されないでください」
シヴァ「エルナよ。貴様、最初「気持ち悪いから逃がした」と言ったよな」
ハジャ「なんじゃと!そんなこと言ったのか!」
ダリア「気持ち悪いなんて酷いよ!」
シヴァ「スライムではなく、可愛い妖精だったら対応も違ったのか?」
シヴァ「だとして、それは差別だ」
シヴァ「見た目や習性で魔物を差別し、排除する。貴様の行為は極めて非人道的」
シヴァ「俺にも、魔物たちにも謝るべきだ」
エルナ「・・・」
シヴァ「どうした?」
シヴァ「言い返せないなら俺の勝ちだが」
エルナ「・・・」
エルナ「「差別」そう言いましたね」
シヴァ「ああ」
エルナ「つまり、魔物は平等に扱うべきと」
エルナ「なら・・・」
エルナ「ペットにするなんて特別扱い、あってはならない!」
シヴァ「何をッ」
エルナ「魔王は全ての魔物を統べる者。そんなお方がペットなどと言い、特定の魔物を贔屓するなどありえません」
エルナ「貴方もレアだから飼うのでしょう。レアじゃないなら、見向きもしない」
エルナ「差別しているのはどちらでしょうか」
ハジャ「確かに!魔物をペット扱いなんて、そもそもおかしいんじゃ!」
ハジャ「皆、一生懸命生きておる。レア度なんかで判断するなど、言語道断!」
ダリア「でも、家族だよね?」
ダリア「スライムさんは私たちの家族で、それを追い出すなんて」
エルナ「いえ、彼らには彼らの家族があります」
エルナ「それをこの魔王は、自分の趣味のためだけに誘拐したのです」
シヴァ「ぐっ」
ダリア「そんな!パパ酷い!」
ハジャ「最悪じゃな」
シヴァ「ぬぬぬ・・・」
エルナ「どうしました?」
エルナ「言い返せないなら私の勝ちですが」
シヴァ「・・・」
エルナ「まあ、勝ち負けなんてどうでもよくて」
エルナ「ペットを飼うなら飼うで、責任を持ってください」
エルナ「別に趣味は否定しません。でも掃除くらい」
シヴァ「・・・保護だ」
「・・・」
シヴァ「誘拐じゃない。保護だ」

〇魔界
シヴァ「魔物の生態系を守るのも魔王の役目!」
シヴァ「レア度は言い換えれば希少度だ!希少性の高い魔物はそれだけ数が少ない!」
シヴァ「保護して当然だろう!」
エルナ「し、しつこ・・・」
シヴァ「俺はただの魔物オタクじゃない。ブリーダーだ。希少な魔物を繁殖させ、立派なモンスターに育て上げる」
シヴァ「趣味であると同時に仕事でもある。俺は貴様より数百倍魔物に詳しいのだから、素人が偏見で物を語らないでほしい」
シヴァ「「臭い」と言ったな。アレは魔物のフェロモンだ。良質なフェロモンは繁栄の証。貴様は生命の神秘を否定するのか?」
シヴァ「ヌメヌメには害虫が嫌う成分が含まれている。屋敷にゴキブリが出ないのは彼らのおかげだ。それを「汚れ」だの無知が過ぎる」
ダリア「パパ・・・」
シヴァ「まず人の所有物を勝手にどうこうするなどありえん。俺が貴様の服を「邪魔だ」と言って捨てたらどうだ?最悪な気分になるだろう?」
シヴァ「物事を決めるには議論が必要だ。無断で逃がす前に、一度話し合いの場を設けるべきではなかったのか?貴様の行為は暴走に等しい」
エルナ「「貴様」って言うのやめて」
シヴァ「エルナ」
シヴァ「それでも・・・俺が悪いか?」
エルナ「・・・」
エルナ「私が悪うござんした」
ダリア「ママが屈した・・・」
ダリア「めんどくさすぎる・・・この父親」
シヴァ「クハハッ」
シヴァ「やはり最後は」
シヴァ「正義が勝つッ!」

〇闇の要塞
「フハハハハ!」

〇地下室
シヴァ「やはりペットがいるって良いなあ!」
シヴァ「エルナの許しも得たことだし、思う存分増やしまくるぜ!」
シヴァ「まず餌だな!クハハッ!」
シヴァ「・・・ん?」
シヴァ「扉が・・・開かない」
シヴァ「鍵が・・・腐ってる」
魔物「あふあふ」
魔物「きゅうん」
シヴァ「まずい」
魔物「あふあ」
魔物「きゅうん」
シヴァ「繁殖が・・・止まら」
魔物「あふああ」

〇地下室
シヴァ「ごぼご (ダメだ!)」
シヴァ「ごぼごぼご (こいつら俺の手に負えん!)」
シヴァ「ごぼごぼ (このままじゃ溺れる!)」
シヴァ「ごぼごぼごぼご (誰か!誰か助けてくれ!)」

〇闇の要塞
「ごぼごぼ (誰かァー!)」

コメント

  • もっと壮絶な夫婦喧嘩が見たかった。

  • スライム可愛い~♡♡
    ペットにしたくなるのもわかります

  • 魔王様、、、とにかくメンドクサイ存在ですね……
    屁理屈を駆使して勝った気分になっているところのラストのこのオチ、最高です!

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