夜行バス

Akira-あきら-

出発(脚本)

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〇観光バスの中
あき「はぁぁ・・・!緊張してきたぁ・・・! 毎日Limeでやり取りしてるとは言え、会うのは初めてだしぃー!」
はる「あの・・・」
あき「いきなり抱き締められちゃったり!? 声も可愛いけど、本物のあきはもっと可愛いね、とか言われちゃう!?」
はる「あの・・・、すみません。 俺の席、そっちの窓際みたいなのでちょっと退いてもらえますか?」
あき「きゃっ!? ご、ごめんなさい、スマホに夢中になっちゃってました・・・。今退きますね」
はる「あ、いえいえ。逆にすみません。 ありがとう・・・、よいしょっと」
はる「そう言えば・・・何かずっとブツブツ言ってたみたいだけど、悩み事?」
あき「き、聞こえちゃってましたか・・・。てへへ」
あき「実は初めて恋人に逢いに行くところでして・・・」
はる「えっ、恋人に・・・初めて逢う、んですか?」
あき「あっ、そんなに変・・・ですか? 実はネットを通じて知り合った人と意気投合して・・・その、恋人になったんです」
あき「本当はもっと早く会いたかったんですけど・・・ほら、こういうご時世じゃないですか?」
はる「あぁ、なるほど。最近はそういう形での出会いもありますよね」
あき「はいっ!! もう、優しくてカッコよくて王子様かーってくらい素敵で・・・!!!!!」
あき「私には勿体ないくらいの人なんですけどね!!」
はる「・・・ふふっ、恋人さんの事大好きなんですね」
はる「あっ、このキーホルダー!! もしかして、キジトラ飼ってるんですか?」
あき「あっ、はい!!そうなんですよー。ワガママ可愛くて大好きで!」
はる「わー、驚いたー。見て見て、同じキーホルダー持ってる。俺もキジトラ飼ってるんだよね」
あき「わぁあっ、キジトラ飼ってるだけじゃなくて同じキーホルダー持ってるなんて凄いですね!!」
あき「あ、でも・・・うちの子、最近居なくなっちゃって・・・」
はる「えっ、大丈夫?ちょっと遠くにまでお散歩に行ってるとかなのかな?」
あき「はい・・・。ビラも配ったり、頑張って探したんですけどね・・・。 って、暗い話ですみません!!」
はる「いいよー、気にしないで?」
あき「ありがとう。 自己紹介遅れちゃったけど、あきって言います!!」
はる「あぁ、すっかり忘れてたね。俺は、はるって言います。 目的地までよろしく、あきちゃん」
はる「なんだか凄く気が合いそうで嬉しいな。 他は何が好きなの?俺はMetubeでホラーゲーム実況見るのに最近ハマっててさ」
あき「同じ!!同じです!!!! パソコンのフリーホラーゲーム、好きだけど自分ではプレイ出来ないから実況をよく見てて」
はる「おおー、一緒だね! じゃあさ、せーの、で好きな実況Metuberさん言い合おうよ」
あき「楽しそう!いいですよー。じゃあ、せーの・・・──────」
「うまのしっぽ団!!」
あき「わーー!!!!めちゃくちゃテンション上がるー!」
はる「だねー。 団長のさ、あのホラーゲームに似合わない面白いツッコミ!!聞いてるだけで楽しくなってきます」
あき「ふふふっ!! もうさ、敬語やめちやおっか?はるとはもっと仲良くなりたいなー、なんて」
はる「俺もそう思ってた。改めてよろしく!!」
あき「こちらこそよろしく!! 後はさ、ランニングしながら音楽聴くのとか好きだよー」
はる「分かるわー。俺も朝遊びとかAboとか好きでさ、テンション上がるよな」
あき「!?!?!? 本当に気が合うね!!こんなに気が合う人、恋人クン以外に初めてー!」
はる「・・・ねぇ、これからもっと仲良くしてもらいたいなぁ」
あき「うんうん!! そうだっ、連絡先交換しよー?」
はる「あー!!ごめん、実は夜行バス乗る前に充電切れちゃって。 今、スマホ使えないんだ」
あき「そうなんだー、残念・・・」
はる「ごめんね?むくれないで。可愛い顔が台無しだよ?」
あき「むくれてないよっ!!はるったら、もう・・・──」
あき「あ、そうだ!! それならさ、タップリングっていう音声配信アプリ知ってる?」
はる「タップリング・・・?」
あき「そうそう!! ラジオみたいに、私が雑談したりするのを皆にネットで配信するアプリなんだー」
はる「・・・あきちゃんは、それをやってるの?」
あき「そうだよー?あき、人気あってねー? もし興味あるなら、はるも登録してみてー。人気キャストにあき、ずっと並んでるからー!」
はる「へー、すごいな。そんなに人気あるんだ?」
あき「うん!! えへへー、実はね?今の恋人クンが、あきの声にメロメロになっちゃって、毎月5万円くらいアイテム投げてくれるのー」
はる「5万円って、すごいね」
あき「でしょでしょー? 他にも投げてくれる人はいるけど、しょっぼいアイテムばっかりでさー」
あき「お金無いなら、あきの配信に来んなって感じー。人気配信者だよー?馬鹿にしないでほしいー」
あき「でもでも!!恋人クンは高額アイテムばっかり投げてくれるし、超気持ちイイの!!」
あき「それに、そんなにあきの事好きなら、恋人にしてあげてもいっかなーって!!」
はる「いいね、凄く羨ましいなー」
あき「はるもさー、音声配信アプリやらない?良い声だし、顔も並以上だから直ぐに人気出ると思う!!」
はる「うーん・・・自信ないかなー」
あき「いけるいける!! あきがプッシュしてあげるし、なんならコラボしてあげてもいいよー!!」
はる「ありがとう。考えとくね」
あき「あ!!でも、はるは良い人そうだから気を付けてねー?ネットは変な人いっぱいだし」
はる「ふふ・・・っ、ありがとう。肝に銘じとく。 てか、さっきからスマホ鳴ってるよ。大丈夫?」
あき「本当だ!!ちょっと待っててー!!」
あき「・・・てへへ。もう、私無しでは生きられないんだってー。早く会ってめちゃくちゃにしたいって!!」
あき「結婚の約束もしてるの!!」
はる「・・・結婚って、会ったことも無いのに大丈夫なの?」
あき「大丈夫大丈夫ー!! 私ってさ、昔から人生良い方向にしか向かないの」
あき「人生イージーモード、あざまーっす、って感じ。毎月それだけ課金出来るんだから、フツメンだけど絶対お金持ちだしー、妥協妥協」
あき「・・・──!! と、そろそろ降りなきゃ!」
はる「・・・気をつけて行ってきてね?楽しい夜を」
あき「ありがとうー!! はるもねー、アプリやってよー?待ってるからね!」
はる「・・・うん、そうだね。また直ぐに会おう?恋人さんによろしく。バイバイ」
  ────ピッ
はる「──もしもし。 あぁ、今バカみたい浮かれた顔で降りてった。バスの座席教えてくれてありがとな」
はる「────あいつ!!!! やっぱり俺の顔なんて覚えてやがらなかった!!」
はる「こっちは学生時代あいつに苛められたトラウマで未だに夜中に飛び起きるっつぅのに!!やっぱり・・・アイツだけは許せねぇ」
はる「音声配信アプリで偶然、アイツの声を聞いた時は震えたよ。誰も居ないフリートークで相も変わらずクソみたいな自慢話ばかり!!!」
はる「あの他人をバカにしたような笑い声が耳から離れねぇんだよ!!!!!!」
はる「何が気が合うね、だ・・・。お前がフリートークでペラペラペラペラ全部喋ってんだよ!!クソがっ!!」
はる「アイツの猫は今頃・・・、く、はははは────!!!!!!!!!!」
はる「・・・──あぁ、ごめん。 今日まで協力してくれて本当にありがとな。これで最後だよ」
はる「あぁ・・・計画通りに頼む」
はる「この礼は必ずするから。 ・・・・・・うん、うん。了解」
はる「また直ぐに会おう」
はる「アイツと3人で──────」

コメント

  • あきにとっては、溜まりに溜まった悪の所業が一気に精算される地獄行きの夜行バスでしたね。はるが最初から怪しかったので、あきが自慢話を喋れば喋るほど得体の知れないヤバさがバスのスピードと共に加速していく感じがすごかったです。Aboはともかく「朝遊び」には笑ってしまった。

  • 夜行バス!臨場感がヤバいですよね!フルボイス楽しみにしてますー!!

  • ラストで一気にキました…、恐ろしい……
    はるちゃんのアレな内面が会話で徐々に露わになっていく展開から、物語がどのように帰結するのかと思っていたら、ゾクリですね!

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