霊の件で引っ越してきました。

たらはかに

91回転校した私(脚本)

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〇学校の校舎
  高校一年の六月、通算91回目の転校。

〇散らかった職員室
小島 零子「本日転校してきた、小島零子です」
担田 任「私が担任の担田任です」
担田 任「何かと不安だと思いますが、 うちのクラスは仲良しで」
小島 零子「あ、仲良しとか大丈夫です」
担田 任「あまり友達を作らないタイプかな」
担田 任「何かあったら私に相談を」
小島 零子「あ、相談とか大丈夫です」
担田 任「べ、勉強とかついていけない場合は」
小島 零子「大学の共通テスト全科目9割取れます」
小島 零子「TOEIC900で英会話もOKです」
小島 零子「昨年、司法試験に合格しました」
担田 任「・・・」
小島 零子「何か他に聞きたいことありますか?」
担田 任「だ、大丈夫です」

〇教室
担田 任「という訳で、小島さんと仲良く」
小島 零子「あ、仲良くとか大丈夫です」
小島 零子「零子なんで、霊と思ってもらって」
担田 任「小島さんはユーモアがあるなぁ アハハハ」
小島 零子「あ、愛想笑いとか大丈夫ですから」
担田 任「・・・誰か質問あるか?」
沢田「どこに住んでるの?」
小島 零子「最近閉店したコンビニわかりますか?」
沢田「えっ・・・」

〇コンビニ
  学校の近くのコンビニで、
  強盗に入った男が店員を殺傷した。
  犯人は逃走して行方不明。
  事件後、コンビニは閉店した。
  しかし深夜、人がいないコンビニで
  夜な夜な叫び声が聞こえると言う

〇教室
小島 零子「そこでーす」
小島 零子「私に一目惚れしても遊びに来ないでね」
沢田「い、いかねえよ!」
沢田「店員の霊が出るんだろ?」
小島 零子「そう!出るのよ!霊が!」
小島 零子「サイコーじゃない?」
沢田「俺の中のサイコーじゃ説明つかない」
小島 零子「人間の恋愛なんて面倒 マジで気持ち悪い」
小島 零子「キスなんて赤の他人との唾液の交換よ 気持ち悪っ」
小島 零子「でもね、霊とは心で繋がれるのよ」
小島 零子「あ、昨日の霊の話、聞きたい?」
小島 零子「昨日の夜はね──」

〇コンビニのレジ
小島 凛具「パパはレジで寝るから 二人は雑誌コーナーで寝なさい」
小島 零子「ママは?」
小島 無垢郎「倉庫に縛っておいた」
小島 零子「ねえパパ。どんな霊が出るの?」
小島 凛具「ここで死んだのはバイトしていた 何の罪もないコンビニ店員だ」
小島 零子「うわぁ。成仏してなさそう」
小島 凛具「霊が出たらパパを起こしなさい 除霊するから」
小島 零子「はーい」
小島 凛具「零子、嬉しそうだな」
小島 零子「気のせいよ」
小島 凛具「じゃあ、二人共寝なさい」
「おやすみなさい」

〇コンビニの雑誌コーナー
小島 零子「幽霊くるかな」
小島 無垢郎「そもそも幽霊とかいないし」
小島 零子「いるの!」
小島 無垢郎「非科学的」
小島 零子「姉さんの恋をバカにする気?」
小島 無垢郎「幽霊が恋愛対象とか意味不明」
小島 零子「意味を求めるなんてまだまだ子どもね」
小島 零子「先週出会った霊は一途だったわ」
小島 零子「恋人を冷凍庫で永久に保管したいって」
小島 零子「永遠の愛ってあーいう事を言うのよね」
小島 無垢郎「・・・たぶん、それ愛じゃない」
小島 零子「子どもが愛を語らないで」
小島 零子「大人になったらわかるわよ」
小島 無垢郎「はいはい」
小島 零子「あ、本当にあったっぽい怖い話だ! 読みながら寝よ!」

〇黒
  深夜3時

〇コンビニの雑誌コーナー
コンビニ店員「・・・」
コンビニ店員「・・・立ち読みはご遠慮ください」
コンビニ店員「・・・ましてや寝読みはご遠慮ください」
コンビニ店員「・・・ご遠慮くださいって言ってんだろ」
小島 零子「ぐっ」
コンビニ店員「・・・ご遠慮ください」
小島 零子「あがっ」
コンビニ店員「・・・ご遠慮ください」
小島 零子「あっ!」
小島 零子「あなたがコンビニ店員!?」
コンビニ店員「・・・へ?」
小島 零子「身長181cm、顔はKpopアイドルクラス」
小島 零子「むっちゃタイプです」
小島 零子「名前は?」
コンビニ店員「・・・翔跳」
小島 零子「カッコイイ!」
小島 零子「デートで割り勘派ですか? それともおごる派ですか?」
小島 零子「あ、むしろ女に貢がせるタイプですか?」
小島 零子「その属性もキライじゃないですっ!」
コンビニ店員「・・・何言ってんだ?」
小島 零子「俺を型にはめるなって事ですね!」
小島 零子「ステキ・・・」
小島 零子「好きです 私に憑いて下さい」
コンビニ店員「え・・・」
小島 零子「こっちにきて! パパに紹介する!」

〇コンビニのレジ
小島 零子「パパ!起きて!」
小島 凛具「なんだ、零子。」
小島 零子「パパに紹介したい霊がいるの」
小島 凛具「じゃ、除霊するか」
小島 零子「違うの! 私に憑いてもらおうと思って」
小島 凛具「またか! お父さんは除霊するのが仕事なんだ」
小島 零子「運命の恋なの!」
小島 凛具「お父さんは認めんぞ」
小島 零子「私の幸せを第一に考えてよ!」
小島 羅仙「まぁまぁ、お父さん 零子が決めた霊なんだから」
小島 羅仙「憑いてもらっても良いんじゃない?」
小島 零子「マ・・・ママ、起きてたの?」
小島 羅仙「私がまだ独身の頃は、 四人の地縛霊に取り憑かれていたわ」
小島 凛具「聞いてないぞ?」
小島 羅仙「お父さんと出会う前ですから」
小島 羅仙「今はお父さん一途でズグガバゥァアアアア」
小島 零子「大丈夫かな」
小島 凛具「ちゃんと縛っておいたんだがな」
小島 凛具「あとで様子見ておくよ」
小島 凛具「じゃあ、その霊を連れてこい」
小島 零子「ありがとう、お父さん 大好き!」
小島 凛具「お父さんも零子が大好きだ」
小島 零子「あ、そういうの大丈夫」
小島 零子「突然バイト中に刃物で刺されてた コンビニ店員の翔輝さんです!」
コンビニ店員「・・・は、はじめまして」
小島 凛具「・・・」
コンビニ店員「・・・」
小島 凛具「なにか言ったらどうだ?」
コンビニ店員「・・・あたためますか?」
小島 凛具「何をだ!」
小島 零子「お父さん、怒らないでよ コンビニ店員の鉄板ネタでしょ?」
小島 凛具「うちの娘に取り憑こうとしてるんだろ?」
コンビニ店員「ま、まぁ」
コンビニ店員「憑いて欲しいと言われて」
小島 凛具「人に言われて憑くなんて 恥ずかしいと思わないのか?」
小島 零子「翔跳くんは突然未来を奪われたのよ」
小島 零子「混乱してるんだからいじめないで」
コンビニ店員「・・・俺、夢があったんです」
コンビニ店員「来年ボーイズグループでデビューする予定でした」
コンビニ店員「でもあの日、全てが奪われました」

〇コンビニのレジ
コンビニ店員「いらっしゃいませ」
犯人「おい、金だせ」
コンビニ店員「や、やめてください」
犯人「どっかで見た事あるな」
コンビニ店員「そんな事無いです」
犯人「踊ってみた動画でバズってなかったか?」
コンビニ店員「あ・・・べ、別人です」
犯人「時の人ってヤツか」
犯人「イケメンで人気者で・・・」
犯人「なんで俺だけ・・・」
犯人「俺には何もない・・・何もないんだよ!」
コンビニ店員「そ、そんな事は」
コンビニ店員「え・・・」
犯人「生配信したら俺もバズるかな」
犯人「いいね、お願いしま〜す」
コンビニ店員「うグッ」
犯人「チャンネル登録よろしくな」
犯人「あ、お前は無理か」

〇コンビニのレジ
コンビニ店員「何もしてないのに・・・」
コンビニ店員「何で俺なんだ!」
小島 零子「あたしに憑いて!」
コンビニ店員「ありがとう!」
小島 凛具「ごめんよ、青年」
小島 凛具「このコンビニに憑いてるのは あんたみたいな小物じゃない」
小島 凛具「そのうすっぺらい嘘と共に去ってくれ」
小島 凛具「風俗に沈めた女に殺された元ホストさん」
コンビニ店員「何言ってるんですか?」
小島 凛具「俺が作った死因特定アプリだ」
小島 凛具「新宿の交差点で後ろから包丁で滅多刺し」
小島 凛具「SNSでは因果応報だと同情されず、と」
小島 零子「嘘・・・あなたゴミ以下じゃない・・・」
小島 凛具「凄いだろ 無料版もあるからよろしくな」
小島 凛具「ホンモノだ」
小島 凛具「うせろ!小物!」
小島 凛具「来たっ!」
霊「あた・・・ため・・・ま」
小島 凛具「こいつが本当のコンビニ店員だ」
小島 零子「キモっ!」
小島 凛具「生への執着がゼリー状になってるな」
小島 凛具「零子、逃げろ!」
小島 凛具「こうなったら最新の発明品を・・・」
小島 凛具「丑三つ時になると 怨霊を食い尽くす牛が現れる」
小島 凛具「その名も丑三つ時時計、うしみつ君だ!」
小島 凛具「丑三つ時時、つまり午前二時になれば!」
  AM03:30
小島 凛具「あと23時間経てば お前はうしみつ君に・・・」
霊「ぐワぁ」
小島 凛具「一瞬で?! うしみつくーーーん!」
小島 凛具「まずいな」
霊「ゲオグググ」

〇コンビニの雑誌コーナー
小島 零子「キャー!」
小島 凛具「おおおお!」
霊「グォングォン」
小島 無垢郎「うる・・・さい・・・な・・・」
霊「グワわわわわわぁあぁ!」
ムクロウの生霊「ウルサイ」
霊「グ?」
霊「グ・・・」
ムクロウの生霊「ボクネテンノ」
霊「ウギャアア」
小島 凛具「怨霊退散! 霊粒レンジへ転送!」
小島 凛具「ふぅ」
小島 凛具「12000Wで5分、と」
小島 凛具「おやすみ」
小島 零子「無垢郎の寝相、相変わらず怖い」
小島 零子「なんであんな生き霊出せるの?」
小島 凛具「家族で一番霊力があるからな」
小島 凛具「ゆくゆくはパパの跡を継いで欲しい」
小島 零子「あんなに超現実主義なのに」
小島 凛具「それが問題だ さぁ、早く寝なさい」
小島 零子「おやすみなさい」
小島 凛具(このコンビニも違ったか)
小島 凛具(羅仙、スマン。 必ず見つけるから)

〇教室
小島 零子「昨日の霊はそんな感じ」
小島 零子「あの後、レンジで完全に封印しました」
沢田「除霊ってもっとお札とか・・・」
小島 凛具「除霊も新しいソリューションで イノベーションする時代だよ、学生」
担田 任「あなたは?」
小島 凛具「零子の父です」
小島 凛具「突然だが引越しする事になった。 零子、今日の夜出発だ」
担田 任「え?」
小島 凛具「皆は娘と別れるのが辛いだろう」
小島 零子「そういうわけで転校します。 名前も知らないけど みんなの事、忘れません」
担田 任「ど、どういう事ですか?」
小島 凛具「なんだこの担任は。 飲み込みが悪いな。胃カメラか?」
担田 任「え、えっと。 小島さんは今日で転校、ですね?」
担田 任「転校しても小島さんの事は忘れ」
小島 零子「あ、思い出さなくても大丈夫です」
沢田「行っちゃったな」
担田 任「なんだったんだ」
沢田「そういや・・・」
担田 任「どした?」
沢田「結局、偽コンビニ店員どうなったんだ?」
コンビニ店員「・・・お呼びですか?」
「ええ?!」
担田 任「私は・・・霊と・・・か 苦・・・手な・・・ん・・・だ・・・」
沢田「大丈夫か。せんせ?」
担田 任「大丈夫・・・じゃない」
沢田「おい、先生! 顔が真っ青だよ!」
沢田「うそっ!体が冷たくなってる!」
コンビニ店員「・・・」
コンビニ店員「・・・あたためますか?」

〇学校の校舎
小島 零子「ねぇパパ 次はどんな所?」
小島 凛具「先月イケメン俳優が 自殺したマンションだ」
小島 零子「わぁ」
小島 凛具「何考えてる?」
小島 零子「んー? パパ大好きって考えてたよ」
小島 凛具「パパも零子の事が大好き・・・」
小島 零子「そういうの大丈夫」

コメント

  • 転校手続きはちゃんとやるところに妙な親の愛を感じる。

    面白かったです。あまりにチートすぎる頭脳な事も現実の人間ではなく、霊に思いを馳せる一因だったりするんですかね?

  • すごく面白くかったです!
    主人公のサイコ味と軽快なセリフ回し、その後の展開を想起させるお母さんなど、確かな実力に基づいたストーリー創りを感じました!!🤣
    お腹抱えて笑ってしまった…!
    ありがとうございました!!🤣🤣🤣

  • 主人公の、誰にでも塩対応なのに霊のことになると饒舌になるのがヲタク気質っぽくて大好きです。
    家族も色々と訳ありで、特に弟ちゃんがトンデモない能力を秘めているのがヤバイ。
    めちゃくちゃ面白かったです。

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