読切(脚本)
〇広い和室
先輩「ありがとう、助かったよ」
先輩「入ったばかりなのに、荷物運びなんてさせちゃってごめんね」
いえ、お茶のこと色々勉強させて貰えましたし
先輩「でも大変でしょう 本当は他の人も来るはずだったんだけど」
元運動部ですし
それに先輩となら‥
先輩「うん?」
いえ!二人なら倍速いですから
先輩「ふふ、そうだね それじゃあもうひと頑張りしちゃおうか」
〇川沿いの道
先輩「ついて来られてる?」
は、はい!
先輩「荷物も持ってるから足元気をつけてって‥!」
グラッ
先輩「おっと!危なかった」
す、すみません!言われたそばから
それに荷物が!
先輩「平気だよ それより怪我はない?」
はい、ありがとうございます
手伝いに来たのにすみません‥
先輩「大丈夫、大丈夫 ここ危ないから気を付けてね」
先輩「それに足元もだけど ちゃんと俺のことも見て無きゃだめだよ」
ふぇ!?
先輩「ここからの道は分かりにくいからね」
は、はい!
〇大きな箪笥のある和室
先輩「ふぅ、やっぱり部室は落ち着くね~」
先輩「そういえばどうして茶道部入ってくれたの?」
えっ
そ、それは‥
先輩「無理に言わなくていもいいけど」
い、いえ
あ、あの先輩が‥
先輩「俺が?」
部活紹介のときの先輩がとても素敵で‥
先輩「え!それは嬉しいけど‥」
姿勢いいし、動作がとてもしなやかで、一挙手一投足がきれいで‥
先輩「わ、わかったから、もういいよっ 恥ずかしい‥」
いえでも本当に!
先輩「そ、そうだ折角だからお茶の練習しよう」
先輩「準備してくるからっ」
〇大きな箪笥のある和室
先輩「ふぅおまたせ、どうぞ」
いただきます
先輩「どうかな?」
とても美味しいです!
先輩「今日は部屋もお菓子も用意できなくてごめんね」
そんな!お茶だけで十分ですよ!
先輩「ううん ちゃんとあなたのことを思って準備しましたって、伝わるようにしなきゃ」
そ、そうなんですね
先輩「片付けるからちょっと待ってて ああ、足崩していいからね」
〇大きな箪笥のある和室
先輩「ねえ、このあと折角だから着物も着てみない?」
ええ!?まだ習ってないですし
先輩「俺ちょっとなら着付けできるから 服の上から着てみようよ」
じゃあ、お願いしまっ‥!
フラッ
先輩「ふぅ良かった間に合って ごめん、足痺れちゃったよね」
いえ私が勝手にしてただけで‥
何度も本当にすみません!
先輩「頑張ってくれたんだよね それに、いつもこれくらい積極的でいいんだよ」
へ?
先輩「俺のことはいつでも抱きしめていいから」
も、もうしません!
着物お願いしますっ
先輩「はーい」
〇大きな箪笥のある和室
先輩「苦しくない?」
大丈夫ですけど、
こんな良い着物、申し訳ないです
先輩「そんなことないって 似合うと思って俺が選んだんだから」
ありがとうございます
でも‥さっきから近くないですか‥?
先輩「うーん? そんなことないよ」
先輩「せっかく二人きりなんだから、親睦を深めとかないとね」
み、耳元で話さないでください‥!
先輩「ごめんごめん ほらできた!」
わぁ、すごい‥!
先輩「うん、きれい とっても似合ってるよ」
おだてても何も出ませんよ‥
先輩「本当だって いつも可愛いけどもっと可愛いよ」
や、やめてください!
恥ずかしい‥
先輩「さっきは恥ずかしかったから、お返し」
ううう‥
先輩「うーん 髪の毛こうやって耳にかけたら?」
ひゃ!?
いえ、このままでいいです!
先輩「えぇ かわいいと思うんだけど」
そ、それはそうと‥
脱ぐの勿体なくなってきました
先輩「お!気に入ってくれた? そうだ、このあと時間ある?」
はい、ありますけど‥?
先輩「じゃあデートしようよ」
ででデート!?
先輩「そう、着物デート 今日のお礼もしたいし、だめ?」
そんなふうに言われたら断われないですよ‥
先輩「やった、じゃあ早速行こうか」
〇中庭
先輩「すっかり夕方になっちゃたね 今日は本当にありがとう」
先輩「って、そんなにビクビク歩かなくていいのに」
な、慣れてなくて
それに着物を汚すわけには
先輩「もし倒れそうになったら、また受け止めてあげるから」
それは大丈夫ですっ
先輩「えー、じゃあ手繋ぐ?」
それも大丈夫です!!
先輩「ふふっ でも今度はさ」
はい?
先輩「ずっと俺のこと見ててね」
着付けって超至近距離で行われるので、否が応でもドキドキしてしまいますよね。しかもこんな素敵な先輩なら。距離の詰め方がズルい先輩ですね。
最後の先輩の言葉がキューンとなりました。今まで何だか気恥ずかしそうだったのに最後は男らしい感じがうよかったです。楽しく読ませて頂きました。
乙女ゲー的なドキドキストーリーよかったです!
着物って着慣れないと難しいと思ってましたが、先輩が寄り添っててくれるなら安心ですね。