放課後の教室にて(脚本)
〇教室
言亜輝「紗紀美さんの特殊能力はね・・・・・・」
紗紀美「そ、それは?」
学級委員長がゴクリと唾を飲み込みながら、教室の隅で彼の言葉に耳を傾けている。
言亜輝「クラスメートを納得させるオーラを纏うことかな」
知佳「おおっ、紗紀美にピッタリだよ。それで私は?」
言亜輝「知佳さんはね・・・・・・」
今度は図書委員が、興味津々の眼差しを彼に向けていた。
言亜輝「頭の中に行間の声が自然と響くでしょ?」
彼の名前は言亜輝(ことあ てる)。
最近女子生徒に人気のクラスメートだ。
知佳「すごい、すごいよ! 輝君に言われると、なんかそんな特殊能力を持ってるような気になっちゃうよ」
そりゃそうだろ。
学級委員長に図書委員。
彼女たちは、自分自身の得手不得手と向き合って、その委員を選択したに違いない。
委員名から推測されるその過程を、ちょっと中二病っぽく言い当ててるだけじゃねえか。
ていうか、行間の声が響くってなんだよ。
紗紀美「ほら、多拓君もこっちに来たら?」
ヤバい、彼女たちに見つかっちまった。
「お、俺はいいよ」
紗紀美「そんなこと言わないで、多拓君も輝君に調べてもらいなよ」
知佳「そうだよ、すごいよピッタリだよ」
だから、そういうのは信じないんだって。
拒み続ける俺に向かって輝は腕を組み、目を閉じて意識を集中させていた。
そしておもむろに口を開く。
言亜輝「君の特殊能力はね・・・・・・」
「俺は平凡な男子高校生だよ。じゃあな、バイバイ!」
慌てて俺は放課後の教室を後にした。
〇怪しい部屋
その日以来、彼の言葉の続きが気になってしょうがない。
俺の特殊能力って・・・・・・何?
いやいや、そんなのあるわけない。
彼の診断なんて、中二病のまやかしに決まってるじゃないか。
しかし後日、俺は偶然耳にしてしまったんだ。
輝が俺の特殊能力について、他のクラスメートと話しているところを。
〇教室
クラスメート「多拓君の能力って何だと思う?」
言亜輝「彼の特殊能力はね・・・・・・」
それは何だ?
言亜輝「怪しいものを見定める魔眼だと思うんだ」
くっくっくっ、やはりな。
思わず俺は、ほくそ笑んでいた。
完
「特殊能力」なんていう、自分が人からどう見られているか気になって気になって仕方がないお年頃の中二病の大好物のパワーワードをテーマに取り上げた作者さんのセンスが👍。これぞ中二病たちによる中二病のための正しい中二病の放課後の過ごし方、といった感じで、大人から見ると実にくすぐったくもあり、微笑ましくもあるストーリーでした。
言亜輝くん、お見事なトーク術ですね!相手の特徴を分析して、それをポジティブに表現することって、なかなかできないですよね!
使うワードや学友達の様子がリアルで、その雰囲気を懐かしく楽しめました。
自分の特殊能力、自身でも感じていることを誰かに言い当てられたら、それほど嬉しいことはないでしょうね! 輝君はどのようにしてみんなの特殊能力を見抜くのでしょうか。