エピソード1(脚本)
〇教室
キーンコーンカーンコーン
コウスケ「やっべぇ、もうこんな時間だよ。 どうにもなんねぇ」
峰山先生「あら渋沢くん、まだいたの? 早く帰りなさい」
コウスケ「だって先生、反省文を書き終わるまで帰るなって」
峰山先生「生活指導の矢内先生なら、今日は研修があるから、とっくに帰ったわよ」
コウスケ「なにーーー!!! 俺のしたことは無駄だったのか!」
峰山先生「反省文は先生が預かるから、早く帰りなさい。もうすぐ日が暮れちゃうわよ」
コウスケ「わーったよ。 じゃな先生!!!さよならー」
峰山先生「全然書いてないじゃない」
〇田舎の公園
コウスケ「あーもー真っ暗じゃんか。 早く帰ればよかった」
峰山先生「あら渋沢くん。 ちょうどよかった」
コウスケ「あれ?先生も帰り?」
峰山先生「あなた佐和(サワ)さんのお隣でしょ。 彼女、今日は休んでたから、この書類を渡してほしいのよ」
コウスケ「確かに今日は見てなかったな。 コロナ?」
峰山先生「違うらしいわよ。 とりあえずお願いしたわ。 じゃあね」
コウスケ「ちょ、あー行っちゃった」
コウスケ「俺がちゃんと渡せると思ってんの?反省文のコウスケだぞ」
コウスケ「しゃーねーな」
〇玄関の外
コウスケ「わっ開いちゃった。 マナミさーん・・・」
コウスケ「おじゃましまーす」
〇マンションの共用廊下
コウスケ「たしかに隣だけどさ・・・」
ピンポーン
返事がない。
コウスケ「おーい。俺だよ、コウスケだよ。 マナミ、いるんだろ!」
コウスケ「返事しないとドア開けるぞ?」
〇アパートのダイニング
コウスケ「おーい」
〇可愛い部屋
コウスケ「マナミさーん・・・ いないの?」
猫「にゃーん」
コウスケ「かわいい猫ちゃん。 あれ?ここペット禁止じゃ・・・」
机の上にはキャンディーが散らばっている。
コウスケ「えーと、とりあえず、この書類を机に置いて・・・ 腹減ったから、飴少し貰っとくわ。 じゃあな猫ちゃん」
猫は裾を咬んで離さない。
すると飛ぶように机の上に登り、筆立てのペンを口にくわえると
、器用に机に文字を書いた。
「わたしマナミ」
コウスケ「えっマナミ?」
猫「にゃーん」
猫は鳴いて懇願してくる。
コウスケ「このままに、しとくわけにも いかないよな・・・」
コウスケ「俺、荷物とか着換え取りに、いっかい部屋に戻るわ。 絶対に戻ってくるから、そのまま待ってろよ」
猫「にゃーん」
〇マンションの共用廊下
コウスケ「あっ先生。びっくりした」
峰山先生「心配になって、来ちゃった」
コウスケ「書類は渡したぜ」
峰山先生「様子はどうだった?」
コウスケ「あぁ・・・まぁ・・・寝てたよ。 しばらくすれば治るんじゃね? そうだ! 飴もらったから、先生にもあげるよ」
峰山先生「それならいいんだけど。 ありがとう。また明日ね」
コウスケ「あぁ」
〇玄関の外
コウスケ「おまたせーっと、わっ」
扉を開けたら、
猫は飛び出していった。
コウスケ「まてーーーー」
〇田舎の公園
コウスケ「はぁはぁはぁ。なんだよ」
猫「にゃーん」
コウスケ「なにか?あるのか?」
目の前には屋台があった。
〇奇妙な屋台
コウスケ「こんなのあったっけ・・・」
猫「にゃーん」
店主「おや、こんばんは〜 お客さんを連れて来てくれたのかい?」
猫「ふしゃー!」
コウスケ「えーと、違うみたいだけど。 なんか変なの売ってるの?」
店主「いやだなぁ。 僕は役に立つものしか売らないよ。親切丁寧、商売繁盛だよ。 損はさせないよ〜」
店主「と言っても、飴しか売ってないけどね〜」
コウスケ「飴?まさか・・・」
俺はポケットの飴を取り出した。
店主「やー! それはウチの商品じゃないか! リピーターさんでしたか? 僕は覚えてないけどなぁ〜」
猫「にゃーん!」
店主「あぁ、そういうこと・・・」
コウスケ「どういうこと?」
店主「これは、なりたいものになれる飴。 君は昨日の彼女かな? 猫になりたかったんだね」
猫「にゃにゃにゃーん」
コウスケ「えーと、信じられないけど。 だとしても、戻れるの?」
店主「戻れません」
コウスケ「は、はぁ!?」
店主「ですから、元には、戻れません」
猫「にゃ・・・」
〇川に架かる橋
峰山先生(もう大変。 先生の仕事は好きだけど、困ったことが多すぎるわ・・・疲れた)
峰山先生(もらった飴、食べちゃお)
峰山先生「せめて、もっと体力っていうか、 ムキムキマッチョボディーになれたらなぁ・・・ 鍛えようかなぁ・・・」
峰山先生「えっ」
キラリラリーン
〇奇妙な屋台
コウスケ「どうすりゃいいんだよ。 一生このまま? なんか戻す方法ないのかよ」
店主「そうですねぇ・・・」
店主「ベタですが、 「本当に愛してる人に告白される」というのは、いかがでしょう」
コウスケ「いかがでしょうって、なんだよ」
店主「いま思いついたものですから。 では、そのようにいたしましょう。最愛の人を探してください。 チャオ〜」
コウスケ「あっ消えた」
〇田舎の公園
コウスケ「おい、どうする?」
猫「にゃーん♡」
猫がすり寄ってくる。
コウスケ「なんだよ、 でもマナミだと思うと、なんだか恥ずかしいな。 よしよし、撫でてやろう」
猫「にゃーん♡」
コウスケ「さっきの本当なら・・・ 「マナミ、愛してる!」」
コウスケ「なーんてな」
ボンッ
マナミ「わー!!! 戻ったーーーー!!!」
コウスケ「えっ」
マナミ「ありがとー」
〇可愛い部屋
コウスケ「おい」
マナミ「なによ」
コウスケ「さっきの告白だけどさ・・・あれマジで?」
マナミ「私が戻ったってことは、いいに決まってるじゃん。よろしく♡」
コウスケ「はぁ〜」
マナミ「もう遅いから、一緒に寝よ♡」
コウスケ「できるかそんなん!」
コウスケ「はーあ。 成り行きで泊まることになったけど、明日も早いし寝るわ。 おやすみ」
マナミ「もぅ〜 おやすみ♡」
〇可愛い部屋
〇教室
キーンコーンカーンコーン
コウスケ「帰ろー」
細川先生「君たち、峰山先生を知らないか?」
コウスケ「きょうは見てないっすねー 昨日は帰り際に会ったけど」
細川先生「そうか。 今朝から連絡がなくてな。 過労で倒れてるんじゃないかと、心配で。忙しかったから」
マナミ「たしか先生の家ってウチの近くだったはず」
コウスケ「そうなのか?俺にマナミの書類を渡せとか言ってたけど。 自分の家近いのに、何で俺に頼んだんだろ」
細川先生「これから行ってみようと思うんだが、家を知ってるなら案内してくれないか?」
マナミ「いいですよ〜 一緒に行きましょ☆」
〇一戸建ての庭先
マナミ「ここよ。 先生は一人暮らしのハズ。 だけど大きいお家ね」
ピンポーン
インターフォン越しに声が聞こえてきた。
「はい、峰山です。」
細川先生「峰山先生、僕です、細川です。 心配で来てしまいました。 生徒も一緒です」
「だ、大丈夫です・・・
ですが、しばらくお休みを頂こうと思ってまして・・・」
細川先生「しばらく休むって、 大丈夫じゃないですよね? 学校に来れない事情を聞かせてください。相談に乗りますから」
「いいのよ、ほぉっておいて・・・」
細川先生「失礼ですが、入りますよ」
「わかりました。
いま玄関に出ますから。
何を見ても驚かないでくださいね」
〇一戸建ての庭先
マッチョ先生「細川先生・・・」
細川先生「わぁっ」
細川先生「まさか・・・峰山先生?」
マッチョ先生「なぜか昨日から・・・ こんな姿になってしまったのですぅ・・・ ウェェェン」
マッチョ先生「ムキムキになりたいと 願ったばっかりに・・・」
コウスケ「先生・・・俺ら、 もとに戻る方法を知ってるよ・・・」
マッチョ先生「えっ」
マナミ「あのね。 「愛してる人」に告白されると、元に戻るんだよ。相思相愛だよ」
細川先生「僕は、峰山先生を愛してる」
マッチョ先生「えっ」
細川先生「元の姿の・・・峰山先生を・・・ ウェェェン」
マナミ「先生どっか行っちゃった・・・」
マッチョ先生「私が・・・愛しているのは・・・」
コウスケ「・・・」
マナミ「・・・」
コウスケ「戻らない・・・ね」
〇教室
キーンコーンカーンコーン
マッチョ先生「はい今日はここまでー」
コウスケ「なんか、俺らも慣れたな」
マナミ「先生も明るくなったし。 みんなからの人気も上がったよ!」
マッチョ先生「吹っ切れたっていうか、 なんかこれで良かったのかな」
めでたし、めでたし
と思います?
「せんせーい」
マナミ「あれは体育の松山先生!」
体育松山「先生!いつも素晴らしい筋肉ですね。 よかったら、僕と一緒にトレーニングに行きませんか?」
体育松山「ワタシは先生が・・・ す・・・す・・・」
マッチョ先生「だめよ!!!」
マッチョ先生「わかっているわ、もうその先は言わないで」
マナミ「先生・・・」
マッチョ先生「行きましょう」
コウスケ「そっか。 元に戻っちゃうもんな」
マナミ「悲しい恋だわ・・・ 告白されたら終わる恋・・・」
〇奇妙な屋台
店主「飴は〜いりませんか〜 あれ、雨が降ってきた。 もう店じまい店じまい」
「それじゃまた」
おしまい
コウスケたちはハッピーエンドでしたが、マッチョ先生は複雑な恋になってしまいましたね……!
不思議な飴の不思議な話、面白かったです😆
別のストーリーで峰山先生が急にマッチョになっていた理由がこれで分かりました。店主さんの商品や購入者のエピソードなど、未読のシリーズ作品をこの機会にまとめて読んでみたいと思います。
ライト感覚で大変面白かったです!
相思相愛とは飴だけに甘い話ですね😆
最後のマッチョの素材は、ああいうのがあるの知りませんでした!勉強になりました🙇