藤木さん 明日資源回収ですよ(脚本)
〇地図
時は○✕□年ーーー
恐るべき魔王ウンコーンの
支配により世界の自由は奪われた。
皆が希望を失いかけたその時
勇気あるもの達が
世界を救うべく立ち上がった!
剣士
魔導師
忍
料理人
ネコ
そして
勇者ヒロノブ!!
勇者ヒロノブ「世界を救う勇者に俺はなる!」
こうして勇者ヒロノブと仲間たちは
世界を救うべく
長い戦いの旅にでるのであった。
〇高級住宅街
20XX年、埼玉県郊外――
土曜日午後2時すぎ
藤木宅
藤木恵子「はぁ。庭の草むしりって地獄だわ」
関口さん「おや、藤木さん。頑張ってますね」
藤木恵子「関口さん! 全然、もう嫌になっちゃったわよ。 お散歩ですか?」
関口さん「ええ。やっと明日の準備が終わったんで 気晴らしの散歩」
藤木恵子「あら、明日はどこかへお出掛け?」
関口さん「いいえ、資源回収の準備よ。 新聞がいっぱいたまってるから」
藤木恵子「資源回収・・・?」
関口さん「あらやだ、忘れてたのかい? 藤木さん、明日資源回収ですよ」
藤木恵子「大変!うちも準備しなきゃ」
〇戦場
帝都ナポリタン──
カーリー・ルウ「ご飯デキタヨ〜」
「待ってました〜!!」
カーリー・ルウ「今日は魔物の肉、臭みを取リ 油でアゲテミタ、ドゾ」
ラッキーくん「すっげー、天才!」
ミナ・リバー「また腕をあげたねぇ!」
カーリー・ルウ「照れるダロガ〜」
ステーキ・ミディ・ナイフ「おい、お前達気がゆるみすぎだ! 俺達は魔王を倒すための旅の途中だぞ」
ステーキ・ミディ・ナイフ「ミナ! そんな服装ですぐ戦いに入れるのか?」
ステーキ・ミディ・ナイフ「ラッキーくん なんだか雰囲気が違うが・・・」
ラッキーくん「あ、分かる? ちょっと毛色明るめにしたんだわ」
ステーキ・ミディ・ナイフ「そういうのは戦いが終わってからにしてくれ」
ステーキ・ミディ・ナイフ「カーリー・ルウは・・・」
ステーキ・ミディ・ナイフ「特に問題ない」
カーリー・ルウ「ヨカッタ」
ミナ・リバー「はいはい。着替えてきましたよー」
ラッキーくん「ぼくも即効で脱色してきたよ」
ミナ・リバー「ステーキの意見は正論だけど、 当分冒険は始まらないわ。 本当はあなたも分かってるんでしょ?」
ステーキ・ミディ・ナイフ「それは」
ミナ・リバー「冒険が止まって、もう20年。 勇者ヒロノブは姿を消したままだし 私達はこの都からずっと動けない」
ミナ・リバー「気が緩んでもしかたないわよ・・・」
〇明るいリビング
藤木家リビングーー
明日が資源回収ということを知った恵子は
慌てて古紙をまとめ始めた。
藤木恵子「よし、あとは雑誌と・・・ 二階の子供部屋も整理しましょ」
藤木家には二人の子供がいる。
兄の浩信、妹の佐和。
現在二人は家を出て東京で働いている。
恵子は浩信の部屋へ向かった。
〇一人部屋
浩信の部屋──
藤木恵子「良い機会だから 一気に捨てちゃいましょ」
恵子はクローゼットを開ける。
段ボールには古い教科書やノートが
詰まっていた。
藤木恵子「懐かしいけど、絶対使わないわね」
藤木恵子「これは、落書きノート?いらないか」
〇戦場
シノビ丸「気が緩んでるお前らに朗報だ。 この世界、そろそろ動きがあるぞ」
ミナ・リバー「シノビ丸!?」
ステーキ・ミディ・ナイフ「久しぶりだなぁ!今までどこにいたんだ?」
シノビ丸「忘れてると思った・・・ オムレツの村でヒロノブに頼まれて 偵察に行ってたんだよ」
ミナ・リバー「そうだったわね!お疲れ様。 それで、何が起こるの?」
〇地球
シノビ丸「すぐに受け入れられない話だと思うが この世界は一冊のノートの中にある」
シノビ丸「勇者ヒロノブーーこと 少年浩信がノートに描いた物語。 それが俺達であり、この世界なんだ」
ミナ・リバー「そんなことを急に言われても」
ステーキ・ミディ・ナイフ「だが納得できる部分はあるぞ。 なんというか、全体的に雑だからな」
カーリー・ルウ「それで、動きというのは?」
ラッキーくん「(こいつ、急に普通の口調に)」
シノビ丸「俺は忍という立場なんで この世界の外の情報も分かる」
シノビ丸「ずばり言うが、この世界となるノートは」
シノビ丸「明日回収されてリサイクルされる!」
カーリー・ルウ「それって」
ラッキーくん「僕達の世界が終わるってこと!?」
シノビ丸「─そうだ」
「そんなの嫌だ〜〜〜!!」
〇明るいリビング
藤木家リビング──
藤木佐和「ただいま!あれ、母さんー?」
藤木恵子「はいはい〜。 急に帰ってくるなんてめずらしいわね、佐和」
藤木佐和「近くまで来たからね なに?そのノートの束!」
藤木恵子「ああこれ? 明日資源回収だから、浩信の古い 教科書とか処分するのよ」
藤木佐和「あーー!! このノートは捨てちゃダメ!!」
藤木恵子「浩信の昔の落書き? こんなの残しといてどうすんの?」
藤木佐和「母さんには落書きでも 私にとっては宝物なの!」
藤木佐和「小学生の時、風邪で長く休んで そのまま学校に行きずらくなっちゃったときあったでしょ?」
〇女の子の一人部屋
自分でも理由が分からず塞ぎこんでたけど
お兄ちゃんは毎日このノートを
見せにきてくれた
お兄ちゃんが好きなアイドルの
川田みーなちゃんそっくりな女の子や
変わった仲間たちが
勇者ヒロノブーー
お兄ちゃんと冒険するの。
魔王はウンコみたいな名前で
ちっとも怖くなかった
くだらない話だけど、おもしろくて
〇明るいリビング
藤木佐和「元気もらったんだよね」
藤木佐和「何よりお兄ちゃんなりの励ましが 嬉しかったの」
藤木恵子「そんなことが」
藤木佐和「私、このノートもらっていいかな?」
藤木恵子「もちろんよ」
〇オフィスビル
東京、午後7時──
藤木浩信「もしもし? めずらしいな、佐和から電話なんて」
藤木浩信「え?あのノートまだあったの? 恥ずかしいから捨てろよ」
藤木浩信「まあ、佐和が欲しいならいいけど」
藤木浩信「続き? 忘れたよ。 はいはい、後でな」
藤木浩信「(俺も久々に実家帰るかな)」
〇戦場
ミナ・リバー「今日が最後の夜かぁ」
ステーキ・ミディ・ナイフ「無念」
シノビ丸「大変だ!」
シノビ丸「勇者ヒロノブが帰還した! 冒険の再開だ!」
「え?!」
シノビ丸「しかも俺達 新しい敵と戦うみたいだぞ」
ステーキ・ミディ・ナイフ「やります!できます!頑張ります!」
ミナ・リバー「もうなんでも嬉しいわ~」
勇者ヒロノブ「おまえら!!」
勇者ヒロノブ「またせたな!」
勇者ヒロノブ「行くぜ〜〜!!!」
「おーー!!」
〇洋館の玄関ホール
ウンコーンの手下
クソ上司レベル100が現れた!
クソ上司レベル100「ノルマ!接待!」
▶たたかう
にげる
勇者ヒロノブ「負けるかぁ!俺はライブに行く!」
ヒロノブの冒険はまだ終わらない!
私が絵を描くのが好きになったのが、弟が喜んでくれるから、だったことを思い出しました👐
やけに小学生男児みたいなネーミングだな…と想っていたらそういう設定だったのか!と衝撃です😆
付け足された設定がアイドルオタクであったり敵が上司になっていたりと、今のお兄さんの状況が間接的に伝わってきて大人になったんだな、と笑
作品タイトルがこれ以上にないくらいマッチしていてとても好きな作品です
最後、勇者がアイドルオタクになっていたのが大好きな展開です。上司をやっつけちゃうのも、イイ!
自分も小学生の頃、ノートにたくさん書いていて、捨てずらかったのを思い出しました。
感動しました!