白い夢の果てに(脚本)
〇高級マンションの一室
なんてことはない普通の日。私達は今日も
未来の家で、コンビニで買ったおつまみと
お酒を広げてくだらない話をしていた。
希望「それでね、戻ってきた伊藤くんが俺のスマホ知らない?って言うの。右手にしっかり スマホ持ってるのに。もうおかしくて!」
未来「それは確かに笑っちゃうね」
希望「だよね。未来は今日会社でなにか面白いことあった?」
未来「僕は特になかったかな。それより、希望の話もっと聞かせて」
いいよ、と話し始めようとした時、暗がりの中で突如発光したスマホがけたたましい音を奏でながら振動した。
『臨時ニュース
世界は明日の零時に終わりを迎えます
各自明日のために備えて下さい』
無言で目を合わせた私達。スマホが照らし出した未来の顔には、困惑と恐怖が見え隠れしている。私も同じような顔してるんだろうな
希望「明日世界が終わる・・・・・・? なにかのドッキリだよね、これ」
未来「そう思いたいところだけど、逮捕されるリスクを冒してまでこんな壮大なドッキリを仕掛ける人はいないんじゃない、かな」
希望「じゃあ、これは本当ってこと?」
未来「誤報の報せも入らないから、必然的にそういうことになる、ね」
希望「明日って・・・・・・待って、今何時?!」
未来「二十三時、五十五分だよ」
世界が終わるまで、残り五分を切ろうとしている。
まだ死にたくない。なんでもっと早く教えてくれなかったの?
思うところは色々あるけど、もうすぐ世界が終わるなら私は未来に伝えなければいけないことがある。
希望「未来、話があるの」
未来「う、うん。どうしたの?」
希望「受験の時、就活の時、仕事で悩んだ時、未来が隣にいてくれたから頑張れた。これまで沢山支えてくれたよね。本当にありがとう」
未来「待ってよ。そんな最後みたいな言い方やめようよ。きっと生き残る方法はあるはずだ。だから、」
その時、深夜だというのに部屋の中が、世界が明るくなった。窓の外を見れば、見慣れた街は白夜みたいな明るさに包まれている。
ザアァというノイズにも波音にも聞こえる音が遠くから聞こえる。見ればスカイツリーは白い何かに呑み込まれて消失していた。
白いなにかはゆっくりとこっちに向かってくる。それが通ったあとには、何も残っていない。言葉通りの無が広がっていた。
ああ、本当に世界は終わるんだな。いやでも分かってしまった。
未来「希望っ!」
初めて聞く未来の叫び声と一緒に、温かい腕の中に閉じ込められる。未来の心臓は今にも止まっちゃいそうなくらい早く脈打っていた
温かくて、悲しくて、寂しい抱擁だった。ずっと夢見ていたことなのに、ちっともときめけないのが悲しい。
未来「希望、僕も聞いて欲しい話がある。こんな状況になるまで言い出せなかったけど、僕はずっと希望のことが・・・・・・っ!?」
未来の言葉を唇でせきとめる。その先を聞いたら、欲張りな私はそれ以上を望んで死ぬどころじゃなくなってしまう。だから、
希望「その先は、来世でまた会えた時に聞かせて?」
未来「っ・・・・・・うん、分かった。ならせめて、最後までこのままでいさせて」
希望「泣かないで、未来。また会えるよ、絶対」
未来「うんっ、うん、そうだね・・・・・・っ」
やがて白いなにかに包まれた私達は、一瞬の内にこの世界から消えてなくなった。
???「あのね、僕ずっとずーっと前からきみに言いたかったことがあるんだ」
???「うん、なーに?」
なんでだろう。いつかこうなると、すでに知っていた。
???「好きだよ。きみを愛してる。生まれる前から、きみのことだけを」
???「うん。わたしもずっと、ずっと好きだよ」
「ああ、ようやく伝えられた」
残された時間が少なすぎていても、お互いの気持ちを知り合えてよかったと思いました。
転生後、再び出会えたのもよかったです。
なんだかほっとしました。
何かのきっかけがないと本当の気持ちには気が付かないものですね。いつも自分の心に敏感になって伝えたいことをすぐに伝えられたらいいのに…
世界の終わり5分前とは唐突でしたが、その時点で一緒に過ごしていた二人は運命の赤い糸で結ばれていたみたいですね。自分の人生と照らし合わせて、夫と前世でこういう別れをして又出逢えたのかなあと考えると嬉しかったです。