サンプル1:9歳女児/少女漫画みたいなお兄ちゃん希望(脚本)
〇一軒家
ひょい、と荷台から降りる。
お兄ちゃん(今日はでっけえ家だな)
お兄ちゃん「ども、『ウンパンお兄ちゃん』です」
希美「やったー! 希美にもお兄ちゃんが来てくr」
希美「・・・」
お兄ちゃん「・・・。 待って、なんで真顔でフリーズ? 女児の真顔、容赦なさ過ぎんのよ」
希美の母「あらあら、すみません。 のんちゃんは人見知りなんです」
お兄ちゃん(単に思ってたんと違うだけだと思う)
希美「ママぁ、キラキラエフェクトついてて さわやかな声でTikTokに出てくるような お兄ちゃんがいいー」
お兄ちゃん(ほらな)
希美「実は生き別れの双子の弟がいるんだけど 小さい頃のきおくがなくて、 さくがは怒慈鎖魔先生であってほしいー」
お兄ちゃん「設定細か! 作画はせめて3Dにしてくれよ」
美人な母親が苦笑いする。
いかん、仕事仕事。
お兄ちゃん「今回の依頼は、 こちらのお嬢さんからですね?」
希美の母「ええ。希美といいます。九歳です」
屈んで希美と目線を合わせる。
お兄ちゃん「よし。今から夕方まで、 希美の好みのお兄ちゃんになってやんよ」
?「・・・」
サンプル1:9歳女児
〇住宅街
お兄ちゃん「俺の名前も希美が決めな」
希美「じゃあー。ヨンゴお兄ちゃん」
お兄ちゃん「シンゴじゃないんか。まあいいけど」
お兄ちゃんシェアリングサービス
「ウンパンお兄ちゃん」では、
お兄ちゃんの名前をカスタマイズできる。
口調や服装も、リクエストのとき選べる。
お兄ちゃん(その割にミスマッチだったぽいけど)
希美「ヨンゴぉ、肩乗っけて」
お兄ちゃん「はいはい」
希美「違う、片側に乗せて」
お兄ちゃん「九歳を片肩はきついわ、 腕で我慢し」
お兄ちゃん「痛え!」
希美「のみ、そんな重くないもん! お兄ちゃんなら余裕でしょ」
俺の妹(今日限定)が狂暴過ぎる件。
でも好みのお兄ちゃんになるって
言ったからな。
お兄ちゃん「悪い悪い。で、何するよ」
希美「お兄ちゃんとしたい10のこと」
お兄ちゃん「急に映画のタイトルみたいなん言うじゃん」
希美「1、ぐうぜん会ったお兄ちゃんの同級生に 一目ぼれされる」
お兄ちゃん「いきなり不可能だし ずいぶん昔の少女漫画読んだな?」
希美「ヨンゴお兄ちゃん、友だちいないんだ・・・」
お兄ちゃん「不可能なのそこじゃねんだわ。 二個目は?」
希美「2、お兄ちゃんに掴まって プールの深いところで遊ぶ」
お兄ちゃん「え。プールはちょっと・・・ 行けなくもなくもないっていうか」
〇遊園地のプール
お兄ちゃん「だから、無理だっつの!」
希美「足つくでしょ。入ろうよー」
お兄ちゃんの水着を引っ張る女児。
踏ん張って拒否する俺。
お兄ちゃんの水着を引っ張る女児。
踏ん張って拒否する俺。
お兄ちゃんの水着を引っ張る女児。
プール客「くすくす。泳げないのかな?」
おねーさんやおばさまに笑われる俺。
お兄ちゃん「えーい! 見てろ」
お兄ちゃん「まず心臓からいちばん遠い足首をつけます」
希美「ヨンゴ、しんちょうー」
お兄ちゃん「膝。腿。腰・・・やばい気がする」
お兄ちゃん「腹、胸えええ」
希美「ヨンゴ、つま先立ちしてる。 でも楽しいー」
お兄ちゃん「手ぇ離したら生き別れだからな・・・」
俺は希美をおんぶしたまま、
つま先立ちで
流れるプールを一周した。
お兄ちゃん「足・・・攣る・・・」
希美「まずい、もう一周!」
お兄ちゃん「もはや三昔前のCMなのよ。 誰に教えてもらったわけ?」
お兄ちゃん「もー勘弁してくれ、 ソフトクリーム買ってやるから」
カクカクと売店に逃げる。
お兄ちゃん「ほら、どれがいい?」
希美「青汁味ー」
お兄ちゃん「ブレねえな。 すみません、青汁ソフトください」
売店店員「はーい」
売店店員「女の子と若い男!?」
お兄ちゃん「待って、なんで誘拐犯に遭遇したときの リアクション?」
希美「のみのお兄ちゃんだよ」
売店店員「あ・・・、ああ。そうだったの。 はい、青汁ソフト三つね」
お兄ちゃん「余るんだわ」
売店店員「1500円です」
お兄ちゃん「お詫びじゃないのかよ。ったく」
チャリン
売店店員「優しいお兄ちゃんだね」
希美「えへへー」
お兄ちゃん「はあ・・・。ほら、そこのベンチで食」
売店店員「きゃあーっ!」
お兄ちゃん「っと、おねーさん怪我ない?」
売店店員「あ・・・青汁の箱が崩れちゃった。 重くて持ち上がらないっ」
お兄ちゃん「マジかよ。つかこんな在庫要る?」
近くに、
力のありそうな若い男は俺しかいない。
お兄ちゃん「ったく。よっこらせ」
売店店員「ありがとうございます・・・!」
希美「お兄ちゃんとしたい10のこと、3。 人助けするギャップを見せてもらう!」
お兄ちゃん「何か知らんけど 俺にキラキラエフェクトついたのか?」
ポッポー、ポッポー、ポッポー
お兄ちゃん「うお、もう三時か。ぼちぼち帰るぞ」
希美「・・・帰らない」
お兄ちゃん「あ?」
希美「ヨンゴお兄ちゃん、ずっと帰らないで!」
お兄ちゃん「はああ!?」
〇住宅街
希美「お兄ちゃんとしたい10のこと、4。 生き別れのお兄ちゃんと 禁だんのけっこん式をあげる!」
お兄ちゃん「一個目と矛盾してんのよ。 あと生き別れでもねえ。 はい、おうちに帰りまーす」
行きと同じように希美を抱え上げる。
希美「やだー!」
お兄ちゃん「ちょ、足バタバタすな。 お兄ちゃんの大事なとこ掠ったわ」
希美「・・・はあ。お兄ちゃんが生きてたらな」
お兄ちゃん(え。まさかのおセンシティブ系?)
希美「っていう、ひげきのヒロインになって ちやほやされたい」
お兄ちゃん「女児なのに腹黒いのよ。 お兄ちゃんはこんな悪女に育てたつもりは ありません」
希美「三じかん前に会ったばっかりだよー?」
お兄ちゃん「マジレスかよ」
でっけえ家が見えてきた。
希美「・・・えんちょうとか、できないの?」
お兄ちゃん「ははっ。何でも屋じゃねえからなぁ。 それに、うちで弟が待ってんだわ」
希美「! そっかー。 今日、さびしい思いさせちゃったかな?」
お兄ちゃん(さびしい思い・・・)
弟「『三時間で十万円の配兄リクエストきた! がっぽり稼いできてよ、お兄ちゃん♪」
お兄ちゃん「それはないから気にすんな。 それより、希美」
お兄ちゃん「最後にしたいことねえか? 10のことの5から10はたぶん無理だけど」
希美「じゃあー、お兄ちゃんとひみつのお話」
希美がこしょこしょと耳打ちしてくる。
希美「さいしょはね、のみ、 弟をねだろうとしたの」
お兄ちゃん「あー。 今は家族増やすのコストかかるからなあ」
希美「お金ならある」
お兄ちゃん「その札束をしまえ。 いらん誤解を生む」
希美「でも、ほんとに弟ができたら ママとパパを取られちゃうでしょ。 だから、」
希美「一日だけのお兄ちゃんをねだったの。 ごめんね、ヨンゴ」
お兄ちゃん「なーに気にしてんだよ。 ウンパンお兄ちゃんは そういうサービスだ」
お兄ちゃん「割とどんなリクエストも受けてっから、 またマッチングしたら遊ぼうな」
希美「うん!」
〇一軒家
お兄ちゃん「ほい、到着」
希美の母「ありがとうございました、四号さん」
お兄ちゃん「こちらこそ。またな、希美」
希美「ばいばーい。 ママとパパにヨンゴお兄ちゃんの話 いっぱいするね!」
希美と家に入っていくのは、
美人な母親と、少年。
少年・・・?
お兄ちゃんいるじゃん!
〇研究所の中
ひょい、と荷台から降りる。
弟「おかえり、お兄ちゃん。 今回の依頼者はどうだった?」
お兄ちゃん「まーワガママ女児よ。 疲れたから弟吸いさせて。 すうはあ・・・」
弟「よしよし」
お兄ちゃん「・・・」
お兄ちゃん「この白衣何日目!? 溶剤みたいなニオイすんですけど」
弟「はは。 僕はまだ加齢臭がする歳じゃないよ あと、明後日もリクエスト受けていい?」
弟「これは・・・八十歳のおじいさんから」
お兄ちゃん「シンプルにお兄ちゃん面むずいわ」
弟「それか、ハムちゃん」
お兄ちゃん「種族越えてるわ」
弟「それか、二十五歳のおねえさま」
お兄ちゃん「ほほう」
弟「猿みたいな顔やめて。 お兄ちゃんは、お兄ちゃんすることしか できないんだからね」
お兄ちゃん「わーかってるって。 ・・・あの、さ」
お兄ちゃん「今日の依頼者から リピートリクエスト入ってねえ?」
弟「! 楽しかったんだ?」
お兄ちゃん「おまえこそ猿みたいな顔やめろ」
弟「弟、としてはどんな子だったのか 気になるなあ」
お兄ちゃん「別に、振り回されただけだよ。 女児なのに、」
お兄ちゃん「お兄ちゃんの同級生に一目ぼれされたい! とか漫画みたいなこと言ってさ」
弟「あ、僕が中学のとき流行ったやつだ。 書庫にコミックスあるよ、学習しとく? リピートが入ったときのために」
お兄ちゃん「・・・。お兄ちゃんも楽じゃないぜ」
俺は弟の部屋から書庫に向かった。
〇研究所の中
弟(ん? お兄ちゃんが廊下に落ちてる。 バッテリー切れ早いな)
弟(ああ、水に浸かったのか。 それ以外にも貴重なデータが取れたし、 早速フィードバックしよう)
お兄ちゃん「お兄ちゃんの足首持って引きずんな!」
弟「あっ、キレた」
お兄ちゃん「・・・」
弟「やっぱり切れた」
男性非老化現象研究・代替労働力開発所
では、「お兄ちゃん型AI」β版の
体験リクエストを随時お待ちしています。
作り物のAIなら超有能なイケメンに作りそうなものなのに、適度にポンコツ感を残してリアリティ重視なところがかえってリアルでした。青汁のCMまで学習してるなんて最新型なんだか古いんだか。希美に本当のお兄ちゃんがいたなんて、美人ママも含めて金持ち一家の心の闇を表している感じで怖かったです。
なんと4号さんはAIだったんですね! 小さい頃よく姉とけんかしてはお兄さんがいたらよかったのになあ・・と思っていた事思い出しました。需要結構あるでしょうね!
まさかの最後。面白かったです。